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TSUTAYAが運営受託する海老名市立中央図書館に感じる猛烈な違和感
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151212-00021835-jprime-soci
週刊女性PRIME 12月12日(土)16時0分配信
2013年から、ビデオレンタルショップ「TSUTAYA」で知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブが佐賀県武雄市図書館を運営受託。全国から注目されて、経済効果は約20億円にもなると、話題になった。
だが、その一方、図書館の運営を民間委託することへの批判の声も高く、購入図書の選び方をはじめとした運営方法への疑惑が噴出。市民団体が武雄市図書館の民間委託を進めた前市長に損害賠償訴訟を起こすなどの騒動になっている――10月1日にリニューアルオープンした、海老名市立中央図書館もTSUTAYAが運営受託。そして、やはり、運営方法へ市民たちから批判が高まっている。
東名高速道路の海老名インターを降りて、少し進むと、昔からの街道沿いに駐車場の広いラーメン屋さんや定食屋さん、住宅などが雑然と並んでいる道がある。それが相模線の踏切を渡ると……一気に目の前の風景が変わる。原っぱや畑の中に忽然と新しい現代風の街が出現する。
海老名市立中央図書館に海老名市文化会館、イオンシネマやイオン海老名店ほかの商業施設……。中央図書館は屋根にプラレタリウムの球体をのせてさらに目立っている。
古くからの街並みが急にタイムスリップしたようである。
中央図書館をぐるっと外から一周してみる。
駐車場側の裏側からと横から、エレベーターのある小さめのエントランスがある。そこに、簡易的な机と椅子が置いてあって、図書館の貸し出しカードを作るコーナーが設けてある。
TSUTAYAの図書館専用Tカードをつくれば、スタバの利用などではポイントもつく。入り口は狭い。表の入り口は間口も広い。
入り口を入ると、3階まで吹き抜けになった館内が一望できる。
入ったところは蔦屋書店。流行の書籍と関連の雑貨やおしゃれな食べ物、瓶づめが置いてあったりする。
左側にはスターバックス。1階の敷地面積からしたら、わりとゆったりめにつくったであろう喫茶コーナーだ。椅子席は超満員。空席はない。
アウトドアコーナーやきれいな雑誌がきれいに並べてあり、そこに身をおくだけで、自分がおしゃれになった気がする、そんな本屋さんだ。
そこに置いてある本を、スタバや大きなウインドウの横のソファでパラパラめくる。そこにいるみんなは、気持ちがよさそうだ。
レジの横にあったインフォメーションのカウンターで、「図書館の本はここで検索できるの?」と聞くと、「向こうのiPadで検索できます」と教えてくれる。iPadが固定してあって、そこで調べる。
ボクの本と友人の作家さんのものを検索してみた。
ボクの本では、マニアックすぎるかもしれないと思ったからだ。
ボクは20冊以上の本を出しているが、あるのは4冊だった。
しかも、20世紀に出版された古い本しかない。
その本がボクの代表作であれば納得もいくが、そこそこの売れ具合。なんで、この本が?というものだった。
友人の作家の本は3冊だったが、それも同じようだ。とにかくボクの本に会いに行こうと図書館部分に突入だ。
で、車椅子で図書館2階にあがるため、最初に行った間口の狭いエントランスからエレベーターに乗る。4階の「こどもとしょかん」には直通のエレベーターもある。なんだ、もしかして図書館はこの地味なほうの入り口がメインなの? そんなふうに思わせるように、ちょっとした区別がある。
2階に行くと新しくできた学校の図書館のような、そんな様子の図書館だ。iPadを貸し出してくれるという。検索やインターネットに使用可能。ボクには『誇大毛想』(扶桑社/2004年5月刊)という、ハゲの有名人にハゲについて語ってもらった本がある。自分で言うのも何だが、名著である。その本の分類はなんと「皮膚科」で、その棚にあった。
ハゲだからね。しかし、皮膚科にあったんじゃ、皮膚病で悩んで、検索しているまじめな方にはちょっと趣旨が違ってしまうだろうな。
だいたい、皮膚科の棚にハゲの本は、ボクのもの1冊しかなかったからね。「旅行」の書棚の『るるぶ』も10年のもの。旅行ものがこんなに古くちゃね……噂になっている、TSUTAYAが要らなくなった本を在庫処分のように置いているというのは本当なのかもしれない。そう思ってしまう。新しくなる前の海老名市立中央図書館にあった本なのかもしれない。が、1階の最新のきれいな本に比べたら、雲泥の差である。
しかし、海老名市民へのアンケート。「新しい図書館に満足しているか?」という問いに8割満足していると答えているという。
Tカード付きの図書館カードで、個人データーもTSUTAYAに渡るが、このおしゃれな空間は譲れない。
片や、TSUTAYAも慈善事業ではないのだ。商売するところはする。財政難の海老名市の救世主でもあるらしい、TSUTAYA。財政難の地方都市の救世主に、これからもまだまだなりそうである。
海老名市立中央図書館では「キッズバリスタ講座」や「3Dプリンタでクリスマスオーナメントをつくろう!」など、いままでの図書館では味わえないイベントもたくさん企画している。街の人が8割いいと言っているのだから、何の問題もない。おしゃれな空間で本を読むという、最近の人々が忘れていたことを再生してもくれそうだ。
ボクの好きな図書館という場所にしては、薄っぺらに見えてしまう。
一人目の子供が2歳くらいのとき、住んでいた家の近くの多摩川図書館に毎日のように通った。家族3人で5時間くらい過ごした。
館内にある喫茶コーナーでかけうどんを1杯頼んで、3人で食べた。ちょうど『一杯のかけそば』が流行った頃で、何となく自分の身の丈にあったようで(ベストセラーを出して浮かれた自分を反省して)、自分が自分で微笑ましかった。
その頃、学生時代に読めなかった古典はすべて読んだ。図書館に2年、通いつめて読んだのだ。
図書館といえばあの多摩川の土手で本を広げて、毎日毎日通ったあの図書館、それに、仕事で通った国会図書館を思い出す。
ボクは何となくあの空間のなかでは、落ち着かなかった。本屋ならいい。図書館というものがどうしてもおざなりに見えてしまうのだ。
〈筆者プロフィール〉
神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari
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