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マンション購入の「最悪の結果」…管理組合で修繕積立金の不正横行、無駄&法外な工事
http://biz-journal.jp/2015/12/post_12838.html
2015.12.12 文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト Business Journal
『第二次世界大戦』という本を書いてノーベル文学賞を取ったイギリスの元首相、W・チャーチルは著書の中でこう言っている。
「民主主義は最悪の政治体制だ。ただし、これまで試みられてきた民主主義以外のすべての政治体制を除けばだが」
彼は第二次世界大戦時にイギリス国民を鼓舞して勝利に導いた人物として知られるが、その政治家としての軌跡は波乱に満ちている。しばしば選挙に悩まされ、失脚も経験した。そんなチャーチルの「民主主義」に対する嘆きとも、ひねくれた賛辞とも解釈できる言葉がこれである。
先日、スキーと温泉の町として知られる新潟県南魚沼市にある500戸超のリゾートマンションで、前理事長による11億7800万円の横領事件が発覚した。この人物の本業は公認会計士。15年にもわたり理事長を続けていたという。
あまり世間には知られていないが、分譲マンションの管理組合という組織は1962年に施行された区分所有法によってその運営手法が定められている。約53年前にできたこの法律は、今となってはいろいろな制度疲労を起こしている。しかし、この法律の基本的な精神は、マンション管理を「民主主義」的に運営しようというものだ。
管理組合の日常における最大の使命は、集合住宅であるマンションの共用部分がつつがなく機能して、清潔に保たれるべく必要な業務を行うことである。そのために、区分所有者から徴収した管理費を経費として使う。こういえば難しいが、ほとんどのマンションはほぼすべての管理業務を管理会社に委託している。集めた管理費は、ほぼ右から左で管理会社に支払われる。
管理組合のもうひとつの大きな役割は、建物の維持・保全に必要な業務を行うこと。つまり、壊れたところを適宜補修したり、壊れそうなところを予め予防的に修繕しておく。このために、管理費とは別に「修繕積立金」という名目で区分所有者からお金を集めている。これは通常、十数年に一度の頻度で行われる大規模修繕のために、管理組合名義の銀行口座に積み立てられる。
今回11億円超の横領が行われたのは、この修繕積立金だと報道されている。500戸超の規模になると、毎年1億円前後の修繕積立金が積み上がる。15年も理事長をやっていれば、11億円を横領するのは理論的に十分可能だ。自分が管理している銀行口座の通帳残高を偽造すればよいだけだから。
■丸投げの代償
しかし、なぜこんなずさんな手口の横領が行われてしまったのか。
1戸あたり200万円強の規模である。今後、このマンションが大規模修繕を行うためには、戸あたり200万円程度の一時金を負担しなければならないはずだ。ただでさえ資産価値が低下している南魚沼エリアのマンションとしては、戸当たり200万円の一時金負担というのは、かなり非現実的だ。
管理組合という組織は、小さな自治体みたいなものである。区分所有法によると、管理組合は1年に1回の総会を開くことになっている。これは選挙のようなもの。理事以外の区分所有者が管理組合の活動に関わり、チェックできる貴重な機会だ。
そこでの主な議案は、前年度の決算と本年度予算の承認である。その他、規約の改正や共用部分の使用細則変更なども議案になりやすい。議案書は理事会が作成することになっているが、実務はほとんど管理会社に任せるのが普通。多くの区分所有者は、自分のマンションの管理組合が出してくる総会の議案書をろくに読まない。それどころか、総会にも参加せず委任状も出さない。
総会の議事が有効となる定足数は、区分所有法第39条で過半数と定められている。だから、全区分所有者の半数以上が総会に出席するか委任状もしくは議決権行使書を提出してもらうために、多くの管理組合の理事たちや管理会社が苦労している。
管理組合の理事というのは、自治体でいえば議員のような存在である。そのマンションに関するさまざまな問題を話し合って対処法を決める。事実上、その管理組合が集めた管理費や修繕維持積立金をどのように使うかを決めることができる。本年度の予算案の作成作業がこれに当たる。
■利権の構図
自治体においても、予算をどう使うかは最重要な政策課題である。市民の監視が緩いと、役人が勝手にヤミ手当を支給したり、業者と癒着して「税金の無駄遣い」や「横領」が起こる。これは、マンションの管理組合でも同じ。
大規模マンションの広いエントランスホールに置かれていたいくつもの植栽の設置や管理が、すべてある理事が経営する企業に発注されていたり、修繕工事を理事長の関係する建築会社に請け負わせるなどというケースはよくある。また、元は無償だった理事や理事長の報酬を、いつの間にか規約改正して1人当たり年間数十万円も支払うことにした管理組合もある。お金が集まるところには、利権が生まれるのである。
区分所有法は、マンションの管理組合が民主的に運営されることを目指している。制度もそのように設計されている。しかし、民主主義はその前提として選挙民がしっかりと政府の行動をチェックして、賢明な判断をすることでしか機能しない。もし、選挙民が自ら選んだ政府の行動に無関心で、デマやプロパガンダに誘導されやすく、賢明な判断を下せないとすれば、それはチャーチルの言うように「最悪の政治体制」でしかない。
同様に、マンションの管理組合においても、各区分所有者が理事会の活動に必要な関心を示して議案をチェックし、総会に出席して意見を述べ、賛否を投ずる活動をしていないと、それは「最悪」の結果を招く。今回の11億円横領事件がその典型だ。
この前理事は15年間も理事長を務めていたというから、ほぼ絶対的な権力を持っていたはずだ。そうでなくても、総会を開けば「議長一任」の委任状は議長を務める理事長が握ることになる。
■多くの管理組合で不正蔓延
「絶対権力は絶対的に腐敗する」
これは、政治学上の常識である。区分所有法は、肝心なところが非常に大雑把にできている。また、理事長や理事が不正を働く、ということをほとんど想定していない。性善説的な法律だ。しかし、現実には多くの管理組合で理事や理事長が不正を働き、私腹を肥やしている。管理費や修繕積立金を、最終的には自分の懐に仕舞い込もうと、さまざまな悪事を働いているのだ。
一方で、やる気のない理事長や理事で構成される管理組合は、管理会社のいいようにたかられる。無駄な修繕工事を提案し、自社施工で高い見積もりを出してくる。管理会社は、自社が業務委託されている管理組合が集める管理費や修繕積立金は、すべて自社の売り上げだと思い込んでいる。実際、管理費はほとんど管理会社に支払われるし、修繕積立金は未来の「売上予定」なのだ。
管理組合の運営は、基本的に民主主義的に行われる。しかし、各区分所有者が民主主義の前提を忘れて、権利と義務を放棄すると必ずや大きな損失を被る。我々国民がダメな議員を選挙で選び、国会や地方議会に送り出すのと、構造的には同じなのである。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)
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