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原油価格暴落、甚大な損失被る日本人が大量発生の恐れ!世界的な倒産連鎖も
http://biz-journal.jp/2015/12/post_12823.html
2015.12.11 文=編集部 Business Journal
原油価格が急落している。代表的な油種であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)価格は、12月に入り2009年2月以来6年10カ月ぶりの安値をつけている。原油を輸入に頼っている日本にとって、原油価格安は恩恵が大きい。一方、エネルギー関連企業の業績悪化が、金融商品を経由して日本の投資家に思わぬ損失を与える可能性も指摘され始めている。
今年9月、スイスの資源会社グレンコアに経営不安説が浮上した。石油のデリバティブ取引で多額の損失を出したのではないか、との見方から月末に株価が約3割も下落。当時、金融の保険に相当するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が、デフォルト(債務不履行)の確率を50%織り込んだ水準になったという。株価はその後持ち直したものの、現在は再度安値をうかがう状況にある。
資源価格の下落は、開発業者の経営を圧迫している。これだけなら、企業と従業員の問題だが、これを商品化したものが、日本の投資家にも幅広く販売されているのである。原油価格の下落の背景はいくつもあるが、そのひとつがシェールオイルやガスとの価格競争だ。技術の進歩によって、これまで掘削が不可能とされた場所から取れるようになったシェールと、産油国が採算を無視した競争を繰り広げている。シェールは2000年代後半から実用化され、一時もてはやされた経緯がある。
■原油価格低下でMLPの収益が悪化
そこで組成されたのが、MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)で運用するファンドだ。MLPとは、米国で行われている共同投資事業形態のことで、主な投資対象となるのは石油や天然ガスの精製、備蓄、パイプライン(輸送)施設など、エネルギー・インフラにかかわる事業。1980年代に米国で誕生したものだが、2000年代にシェールガスが注目されるようになり、MLPへの注目度も高まった。
日本でも証券会社が提供するようになり、大手の対面証券やネット証券の大半が取り扱っている。その結果、MLPで運用するファンドに投資する個人が増加している。総所得の90%以上をシェールガスなど天然資源の採掘や精製などで上げていることがMLPの要件で、これを満たすと原則として法人税が免除される。金融商品取引所で取引されており、REIT(不動産投資信託)の資源版といえる商品だ。石油やシェールガスなどの需要が拡大し価格が維持されていれば、MLPは魅力的な投資商品だ。一方、エネルギー価格が下がり需要が減少すると、MLPの収益は悪化する。
大手投信が運用している米国MLPファンド(毎月分配型)米ドルコースの12月7日現在の基準価額は6370円。この1年間で33%の下落となっている。ほかのMLPファンドも似たり寄ったりの水準だ。劣悪な運用成績だが、先行き原油価格が一段安になった場合、さらに厳しい事態も考えられる。原油との競争でシェールガスの価格が下がれば、シェール事業者の経営が行き詰まる可能性がある。
つまり、MLPの投資先が破綻すれば、複数に投資していたとしても基準価額の暴落が避けられないのである。大手調査機関の調べによれば、14年のMLP時価総額は約6500億ドル(当時の為替レートで約67兆円)に達し、これは米REITの7882億ドル(同約81兆円)に匹敵する規模だ。1カ所でも破綻して投資家が資金を一気に引き上げれば、倒産の連鎖も考えられる状況だ。
今はまだ表面化していないものの、世界の金融市場を揺らすだけの不安をMLPは抱えていると考えられる。
(文=編集部)
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