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12月9日、直近での原油価格急落を受け、日銀はインフレ予想と賃上げへの影響を注視している。写真は都内で6月撮影(2015年 ロイター/ Toru Hanai)
焦点:日銀、原油安を注視 インフレ期待や賃上げがポイントに
http://jp.reuters.com/article/boj-oil-idJPKBN0TS0SG20151209
2015年 12月 9日 17:41 JST
[東京 9日 ロイター] - 直近での原油価格急落を受け、日銀はインフレ予想と賃上げへの影響を注視している。下落が長期化すれば、消費者物価の下押し圧力となり、物価上昇期待の後退や来年の賃上げ交渉への影響が懸念されるためだ。一方、交易条件の改善に伴う企業の収益増で賃上げ原資が増えるとの見方もあり、原油安の功罪が再び論点に浮上してきた。
<原油安は供給要因、継続なら物価2%再延期へ>
日銀内は、最近の原油価格の軟調な動きについて、イラン増産の思惑や石油輸出国機構(OPEC)による減産見送りなど供給要因の比重が大きいとみている。
夏場に強まった中国など新興国経済の減速懸念も、ひところに比べて和らぎつつあるとみており、需要面から原油価格を下押しするような追加的な材料は出ていないとの認識だ。
このため、原油安による資源国経済や資源関連産業への悪影響に注意を払いながらも、現時点では世界経済全体として先進国を中心に緩やかに回復していくとの見方を維持。最近の原油価格の下落は、原油輸入国の日本にとって中長期的な経済の支援材料とみている。
もっとも、短期的にはガソリンなどエネルギー価格の下落を通じて消費者物価の下押し圧力につながることは確実で、日銀が目指す物価2%目標の早期達成には逆風となる。
日銀は10月末の金融政策決定会合で、消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しを引き下げ、物価2%の到達時期を2016年度後半に先送りしたばかり。
見通しの前提となるドバイ原油価格は足元1バレル50ドル、先行き同60ドル台前半と見込んでいるが、すでに足元のドバイ原油はバレル40ドルを割り込んでいる。原油価格の低迷が続けば、2%の到達時期のさらなる先送りは避けられない。
<物価基調は当面しっかり、来年初以降の継続性が焦点>
その際、日銀が追加緩和に動くかどうかの鍵を握るのが、需給ギャップやインフレ予想、賃金動向などで判断する「物価の基調」。
今のところ最近の原油価格の下落は供給要因が主因と判断しており、世界経済下振れに伴う需給ギャップへの影響は大きくないとみているが、懸念されるのがインフレ予想と賃上げへの影響だ。
原油安によって実際の消費者物価の低迷が続けば、企業や家計が予想する先行きの物価見通しにも下押し圧力が加わり、インフレ期待が後退する可能性がある。
さらに日銀が最も注目している来年の賃上げ交渉がこれから本格化する中で、物価が思ったよりも上がらないということになれば、企業が賃上げ水準の抑制に動く可能性も否定できない。
一方、原油価格の下落は、交易条件の改善によって実質所得の増加につながる。高水準にある企業収益のさらなる上振れ要因となる。
昨年は、消費増税に伴う消費の停滞によって、非製造業の収益が圧迫されたが、今回は逆に恩恵が大きくなる可能性がある。円安水準の定着で製造業の収益が好調な中、全体として原油安が来年の賃上げに向けた原資の増加に直結する構図だ。
日銀では、独自に試算しているエネルギーの影響を除いたコアCPI(日銀版コアコアCPI)を物価の基調を判断する1つの指標として重視している。
同CPIは10月に前年比1.2%に伸び率を高めており、来年2月頃まで上昇傾向が続くとみている。
もっとも、その後も企業の価格転嫁が継続するかは、企業・家計の物価見通しと賃金の動向に大きく依存する。足元で再び急落している原油価格が、順調に上昇を続けている物価の基調に与える影響が注目される。
(伊藤純夫 編集:田巻一彦)
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