6. 2015年12月09日 07:11:51
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国を捨てる韓国人が急増、不満の矛先は日本へ 祖国のための偽善活動も実は逆効果、安全保障上も問題に 2015.12.9(水) 森 清勇 安倍首相と朴大統領が初会談、慰安婦問題の交渉加速で一致 韓国ソウルの青瓦台(大統領府)で、首脳会談に臨む安倍晋三首相(左)と朴槿恵大統領(2015年11月2日撮影)〔AFPBB News〕 先に上掲した「天に唾する慰安婦問題、韓国の言論弾圧に世界も注目―事大主義で権力に媚びる司法も後進国そのもの」の末尾に、「言論の自由などを求めて韓国を脱出した先で、生まれた国を思う心も捨てられず、海外での反日活動などでは祖国を支援する気持ちに同化して、無責任な言論を吐き散らされてはたまらない」と書いた。 数日後に「産経新聞」(平成27年11月25日付)が、米韓議員ら5人による「性奴隷制の犠牲者のための国際議会連合」を創設し、日本政府に謝罪を求める声明を発表と報じた。 5議員のうちカナダ、ニュージーランドそして韓国の3議員はいずれも韓国出身である。政治的弾圧や言論封殺などから韓国を脱出した政治家であれば、日本糾弾よりも韓国における言論の自由などを訴え、社会改革を促すのが真の祖国愛ではないだろうか。 脱出先の米国で日本批判のために歪曲された言論を支持することは祖国の閉塞感を高めるだけで、真の社会改革はできない。反日運動への加担は、韓国社会を近代以前に押し戻すことになる道理が理解できないのだろうか。 韓国系と中国系米国人の急増 中韓が米国で発言力を増しているのは、中国系や韓国系米国人が急増していることに一因がある。「Statistical Abstract of the United States 2003」による2000年の人口比は白人81%(うちヒスパニック系11.6%)、黒人12.7%、アジア系3.8%であった。 また、高濱賛氏のJBpress論文「在米韓国人の反日運動、実は100年の歴史あり」による2014年の人口比は、77%(17%)、13%、5.4%となっており、白人全体は減少し、黒人はほとんど変らず、ヒスパニック系とアジア系が増加していることが分かる。 なかでも1965年の国別移民割当を撤廃する移民法改正で、中国、韓国およびフィリピンなどのアジア系が急増し1700万人となっている。内訳は中国系379万人、フィリピン系341万人、インド系318万人、ベトナム系173万人、韓国系170万人、日系130万人である。 1988年にロナルド・レーガン大統領が日系人の強制収容を謝罪し、日系米国人補償法に署名した時点で日系人に対する差別をなくす教育基金も作られたことなどから一時的に日系人は増加したが、二重国籍取得の厳しさなどから、その後は減少することもあったという。 他方で、中国系や韓国系は一貫して増加し、1990年から2010年の20年間に中国系は倍増して350万人に、韓国系は7割増加で140万人になったとされる。この増加率から逆算すると、中国系が年間8万人台、韓国系が年間3万人台で増加したことになる。 上記人口から2010年以降の4年間では中国系は年間約10万人、韓国系は年間7.5万人の増加となり、2010年以前の増加率よりさらに大きくなっており、特に韓国系が著しい。 2013年の韓国ギャラップ社の調査では一般の韓国人にも移民を真剣に考えているという人が5人に1人おり、就職サイトが725人のサラ―リーマンを対象にした調査では97.4%が「ほかの国に移民したい」と答えたそうである。最大の理由が「改善されることのない韓国社会に対する不満」であったという。 2003年初頭に20歳以上の男女1500人を対象にしたアンケートで「韓国社会は住みにくい」が64%、「移民したい」が40%(呉善花著『虚言と虚飾の国・韓国』)と比較しても、脱出人口の急増は理解できる。 韓国の国営テレビKBSの時事番組が昨年10月明らかにしたところでは、韓国の10大財閥の一族921人中95人が米国籍を取得していたそうである。 表向きは留学中に取得したことになっているが、実際は兵役逃れや有事に韓国を脱出する予防策とみられ、高学歴や富裕層が自国に見切りをつけているということでもあろう。 先の3議員の日本非難も韓国内の反日団体を応援することにつながり、結果的には韓国の社会改革を阻害し、自分たちが韓国のくびきを脱したのと真逆の結果をもたらす軽薄な行動と言わざるを得ない。 「日本に生まれてよかった」が9割を超し、ほとんどが「生まれ変わっても日本に住みたい」という日本人から見ると、改めて韓国は異質の国であることが分かる。 朴大統領の国連演説 朴槿恵大統領は昨年9月の国連総会における一般討論演説で、「戦時の女性に対する性暴力はどの時代、どのような地域かを問わず、人権と人道主義に明らかに反する行為である」と述べた。 日本のメディアは、抑制的で「日本」を名指しはしなかったが、「間接的に日本を牽制」したと受け止める報道が多かった。 慰安婦問題で日本に謝罪と補償を要求し、外国首脳との会談では告げ口外交を行ってきた大統領であるから、「性暴力」批判を日本批判と受け取るのは自然かもしれない。 しかし、今や性暴力を行ったのは日本軍のみではなかったことが分かっている。見方によっては、日本軍の性暴力にかかわる慰安婦たちの証言には齟齬も多いが、韓国軍の性暴力はより明確になりつつあると言えよう。 朴大統領は暴露されつつある韓国の悪行批判を避けるために、あえて性暴力が行われた時期や場所を拡散して人権と人道主義に反する行為であると神の高みから警告を発し、一方で韓国に焦点が当たらないように精いっぱいの細工を施そうとしたのかもしれない。 慰安婦問題は、詐話師吉田清治氏による強制連行の偽物語を日本糾弾のために韓国が発信し続けたものであった。しかし、在米の韓国系米国人、それに加勢した中国系米国人によって、ニュースバリューが高まり、国際社会にまで拡散してしまった。 しかし、ホーチミン大学に留学していた韓国人女性ク・スジョンさんは、ベトナム政府調査による「南ベトナムでの韓国軍の罪」という資料を手にして仰天する。爾後今日まで17年余にわたって調査し続けている。 韓国軍がベトナム戦争中にベトナム人に対して行った虐殺や強姦は、米国軍が行ったソンミ事件(500人を虐殺)の比ではなかった。しかも、米国は軍事法廷を開き責任者を処罰したが、韓国は虐殺の事実を隠匿して認めず、もちろん処罰などはしていない。 また、昨年は韓国政府の管理下で米軍慰安婦として働いた122人が韓国政府に国家賠償を求める集団訴訟を起こした。そして今年は、朴大統領の訪米時に、ベトナム人被害女性たちが「韓国兵からの性的暴力」を訴えて、韓国政府に謝罪と賠償を求める記者会見をワシントンで開いた。 このように、韓国軍の悪行がまぎれもない事実として明らかになってきた。 『帝国の慰安婦』は個別の国を論うのではなく、「帝国の問題」として考えるべきであるとした理性的研究で、これから糾弾され始めるであろう韓国の悪行をも「帝国」に吸収することになったであろうが、韓国と反日団体にとっては日本糾弾のトーンを弱めることになり、看過できないものであったに違いない。 以下にも述べるように、自国の韓国軍や米軍相手の慰安婦の存在を隠して日本だけを攻撃し、世界に告げ口をしてきた韓国であるが、いまや日本攻撃のブーメランは韓国に確実に返ってきつつあるようだ。 見捨てられている韓国軍慰安婦 近年の研究で、日本軍慰安婦よりも、もっと多く、もっと過酷な生活を強いられた韓国軍(や米国軍)相手の慰安婦たちが韓国やベトナムにいることが判明してきた。 そうした史実を明らかにすることで圧力を受けながら、亡命も国籍放棄もしないで言論活動をやっている韓国人も多数いる。こういう人たちこそ、良心と祖国愛を持ち合わせた真の勇者というにふさわしい。 そうした視点から言えば、国際議会連合の5議員の行動は、真の人権擁護でも人道的行動でもなく、日本非難という偏狭心でしかない。また韓国の反日団体の歪んだ史観を応援するもので、韓国社会の改善にはむしろ弊害でしかない。 そもそも日本軍に強制連行されたという韓国人慰安婦たちの証言には疑問があり、信憑性が揺らいでいる。 実際に慰安婦の調査を担当した安秉直(アン・ビョンジク)ソウル大名誉教授は、「当時の調査方法は全然だめです」「(挺対協は)慰安婦を利用している」「挺対協には近づきたくない」(「週刊文春」2014.4.10)などと語っている。 その後教授は「恣意的歪曲」として否定するが、インタビュー者は安氏のことを案じつつビデオ公開で内容の正当性を主張する。 また、先述したように、1996年まで続いた慰安婦制度で、米軍慰安婦として働いていた韓国人女性たちが声を上げて韓国政府を訴えてきた。日本軍相手の80過ぎの老女ではなく、韓国軍(と米軍)相手の60代の慰安婦で、記憶もしっかりしている女性たちである。 今では「ヤンガルボ」(見捨てられた人)と悪態をつかれるが、当時は「ドルを稼ぐことは国の役に立つことだ。米軍にはちゃんとサービスしろ」と教えられ、青春を国家に奉仕してきた女性たちだ。 外国人にサービスするお姫様という意味で「洋公主(ヤンコンジュ)」とか、外貨を稼ぐ「愛国者」「民間外交官」などとも呼ばれていた。 当時の韓国では『淪落行為防止法』という立派な法律があり売春は違法であった。そうした中で、米軍を相手にする慰安婦を国家、すなわち現大統領の父である朴正煕大統領の政府が奨励していたのである。 韓国の国会議員が提示した「基地村浄化対策」という慰安婦の健康管理に関わる資料には1977年5月2日の日付で父大統領のサインがある。超法規的とも言うべき行動(現実には特例法を制定)を政府主導で行っていたわけで、法治国家とは決して言えない実態がうかがえる事案である。 マイク・ホンダ議員や韓国系米国議員たちも日本を非難するのではなく、今も現在進行形で進んでいる韓国軍と駐留米国軍相手の慰安婦たちの人権擁護に注力し、また韓国政府に韓国軍及び米軍慰安婦の援護を献言すべきではないだろうか。 なぜならば、日本政府はすでに日本軍慰安婦に対して人道的措置を行ってきたからである。 低次元の首脳会談 安倍晋三首相に随行した萩生田光一官房副長官は産経新聞(平成27年11月24日付)の「単刀直言」で、「(朴槿恵大統領と)きちんと話をすれば理解は深まると確信しました」と語っている。 続けて「慰安婦問題は我が国としては基本的に解決済みの案件です。解決済みであるにもかかわらず、人道的なフォローアップもずっと続けてきた。このことをきちんと確認して話をスタートさせた。この問題を次の世代に引きずることがないようにお互いに知恵を出し合うことで、話し合いを続けていくことが確認できた」という。 「確信」や「確認」の用語が使われているが、いずれも「前向きの内容」ではない。「理解は深まる」という確信であり、「解決済みの案件」「話し合いを続ける」という確認である。 解決したら、二度とぶり返さないことは話し合いの基本である。日韓基本条約では「最終的かつ完全に解決した」と明記した。 それを、憲法裁判所や大法院などの司法機関は、慰安婦や工員たちの人道的な補償に関しては再提起できると解釈する。これでは「最終的でも完全に」でもない。これほどいい加減なものはないだろう。 記憶に新しいところでは、先の世界遺産登録に当たって、韓国は一部の施設で強制労働があったということを問題にしてきた。そこで、外相会談が開かれ決着した。ところがユネスコの最終場面で、韓国は問題をぶり返し、採決が翌日に延期された。 ことほど左様に、国家間の約束を反故にする国はない。そういう意味では、初歩的なことではあるが「確信」と「確認」は「大きな成果」かもしれない。しかし、何とも低次元の首脳会談であったと言わざるを得ない。 萩生田氏が言うように、歴代内閣は日韓基本条約にある通り誠意をもって対応してきた。しかし、韓国の司法は人道問題として再燃させる。正しく韓国は「ゴールポストを動かす」と言われるゆえんである。 日本大使館前の慰安婦像については、民間が設置したもので官憲は関与できないとして撤去を拒んでいる。 これは外交関係に関するウィーン条約で大使館の業務の妨害を避けなければならないとする規約に違反する行為であり、国家としては取り締まるのが当然であり、官憲の責任であろう。 おわりに 韓国から優秀あるいは裕福な人物が外国へ逃げていき、気づいたら国内はガラパゴス化してしまっていたという状況は、日本の安全にとっても好ましくない。 中国にすり寄る韓国であるが、中国は利用するだけ利用し、役に立たないとなればスパッと切り捨てる。いまの北朝鮮と中国の関係を見れば一目瞭然である。韓国が北朝鮮の二の舞にならないことを期待したい。 その点、相手が困った立場になれば、何としても助けたいという心が働くのが日本である。あとで、馬鹿なことをしたと臍を噛むこともしばしばである。 例えば天安門事件で孤立していた中国を陛下がご訪問され、中国の窮状を救った。また、習近平副主席(当時)は1か月ルールを無視して拝謁を要求してきたが、柔軟に対応された。 あるいは韓国が経済破綻してIMF(国際通貨基金)の管理下に入った時、日本は通貨スワップを拡大して支援した。しかし、日韓間がギクシャクしてくると、日本が押しつけた(のだから要らない)かのような発言も聞かれた。 韓国を法治ならぬ「放置」国家といったのは前川恵司氏だが、問題に終止符を打つ手は簡単には見つからない。 日米の幾人かの識者は、在韓日本大使館前と同じく、在韓米国大使館や米軍慰安婦を管理していた大統領官邸(通称青瓦台)前に慰安婦像を建て、毎週水曜日に「韓国と米国は慰安婦に対する法的責任を認めろ!」「韓国と米国の大統領は慰安婦に謝罪せよ!」とデモって、シュプレヒコールを繰り返すのが最も効果的であると提案するが、日本は「目には目を」の考えも、相手国に惨めな思いをさせるようなみっともないことを奨めることもしない。 ただ、慰安婦問題で、間違った認識の下に日本の名誉を傷つけ続ける行為は許せない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45468 少しずつよい方向へ動き出した慰安婦問題日本にとって事態が好転、その5つの根拠とは 2015.12.9(水) 古森 義久 安倍首相と朴大統領が初会談、慰安婦問題の交渉加速で一致 韓国ソウルの大統領府で首脳会談を前に握手をかわす安倍晋三首相(左)と朴槿恵(パク・クネ)大統領(2015年11月2日撮影、資料写真)。(c)AFP/YONHAP〔AFPBB News〕 慰安婦問題はいまどうなっているのか――。
11月の日韓首脳会談で「日韓関係改善の最大の障害物」とされた慰安婦問題はその後、どうなったのか。この問題の背後で重要な役割を果たしてきた米国はどのように認識しているのか。私がふだん駐在する米国の首都ワシントンから見る限り、きわめて少しずつではあるが、慰安婦問題は日本側にとって有利な方向へ動き出している。 以下では、事態が好転していることの根拠を5点ほど報告したい。 歴史学者たちの抗議声明に反論 第1は、米国歴史学会(AHA)の機関誌『歴史展望』(Perspective on History)12月号に日本側の学者50人の反論が掲載されたことである。 『歴史展望』は今年3月号に、米国の歴史学者20人による「日本の歴史家に連帯して」と題する日本外務省への抗議声明を掲載していた。その抗議声明に対する反論である。 米国側の歴史学者を主導したのは、慰安婦問題で長年日本を糾弾してきたことで知られるコネティカット大学のアレクシス・ダデン教授だった。ダデン教授らは、米マグロウヒル社の高校教科書の慰安婦記述の間違いを正そうとした日本外務省を非難していた。 その教科書には、慰安婦について「日本軍が強制連行」とか「20万人の性的奴隷」「天皇からの贈り物」などという根拠のない記述があった。日本外務省は当然のことながら、マグロウヒル社に訂正を求めた。だが、ダデン教授らは「米国の教科書の内容への日本政府の不当な干渉であり、検閲だ」と抗議したのである。 それに対して日本側では、大阪市立大学の山下英次名誉教授や歴史家の秦郁彦氏ら50人の学者がダデン教授らの主張を正面から否定する声明を『歴史展望』に送り、掲載を求めていた。『歴史展望』には当初その掲載を渋る様子もあった。だが、12月3日発行の最新号にようやく掲載した。反論の内容は「米国の歴史家は日本政府に対する抗議声明を出すよりも、米国の歴史教科書の内容の妥当性について、全面的な検討作業を開始するよう米国内で働きかけ、自分たちもその方向で行動すべきだ」という骨子だった。 日本側の歴史学者たちが慰安婦問題について連名で反論を投稿し、米国の紙誌に堂々と掲載されたことはこれまで前例がない。米側の歴史学者全般にその反論が幅広く行き届くことが期待される。 韓国人学者の起訴に日米の学者が抗議 第2は、韓国当局が慰安婦問題の書『帝国の慰安婦』の著者、世宗大学・朴裕河教授を名誉毀損罪で起訴したことに対して、米国や日本の学者54人が抗議声明を発表したことである。 11月26日に公表されたこの抗議声明には、日本の大江健三郎氏、上野千鶴子氏らのほか慰安婦問題に関する日本政府の主張に反対してきたハーバード大学のアンドリュー・ゴードン教授やジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授も名を連ねた。 『帝国の慰安婦』は慰安婦問題に関して日本政府を非難しながらも、「日本軍と慰安婦たちは同志的な関係にあった」などと書き、日本軍の強制連行も朝鮮半島においてはなかったという立場を示していた。韓国政府は、その内容が韓国側の当事者らの名誉を傷つけたなどとして刑事訴追の措置をとった。 年来の日本糾弾の急先鋒のダデン教授らは、韓国政府を非難する声明には加わっていない。だが、「日本軍による集団連行はなかった」という立場をとる韓国人学者を擁護する声明が米国で出てきたことは、慰安問題についての米国側の事実認識にヒビが入ってきたことを意味するといえる。 日本糾弾の主張から消えた「強制連行」という言葉 第3は、朝日新聞の大誤報訂正に象徴される慰安婦問題の虚構部分が、米国の専門家たちにボディブローのように伝わり始めたことである。 米国の“左翼系”歴史学者たちは長年「日本軍が組織的に約20万人の女性を強制連行し、性的奴隷にしたことが慰安婦問題の核心だ」と主張してきた。「慰安婦」というのは、日本の軍隊が政策として一般女性を強制的に徴募して自国将兵たちのための売春行為を強要した国家的犯罪だと断じていたのだ。 だが、その「国家犯罪」部分の主張が、朝日新聞の記事撤回や、秦郁彦氏ら日本の歴史学者たちの事実提示により虚構だと証明された。「日本軍による強制連行」も「20万人」も「性的奴隷」も証拠がないことが明らかになった。 そのように事実が明らかになることで、米国の学者たちは主張を変えていかざるをえなくなった。長年、日本叩きの先頭に立ってきた前述のダデン教授でさえも、最近では「強制連行」などの虚構キーワードを使わなくなった。その代わりに「女性の人権弾圧」「女性たち本人の意思に反した」「日本軍の関与」といった表現を使うようになった。日本叩きの主張が後退しているのである。 ダデン教授が音頭をとって米国、欧州、日本などの学者、活動家の総計500人ほどの署名を集めた安倍政権への圧力文書にも、「強制連行」という言葉は出てこなかった。 米国の裁判や国連で日本側が正面から反論 第4は、米国や国連の第一線で慰安婦の真実を知らせる日本側の努力が少しずつ米国の国民や国際社会へ伝わり始めたことである。 全米で最初に慰安婦像が建てられたカリフォルニア州のグレンデール市では、地元在住の日本人、目良浩一氏らにより同市に対する抗議の訴訟が起こされた。訴訟は昨年から今年にかけて連邦裁判所と州裁判所に相次いで出された。いずれも原告側に不利な裁決が出たものの、日本側の主張は米国のメディアでも報じられ幅広く知られることとなった。米国ではそれまで、公式の場で日本側が慰安婦問題について正面から反論することはまったくなかったのだ。 2015年7月には、国連の女子差別撤廃委員会の準備会合で、慰安婦問題の虚構を正す日本女性の団体「なでしこアクション」の山本優美子代表らが「慰安婦問題は強制連行の事実はなく、反日の政治宣伝に使われている」と報告した。国連の場で日本側がこれほど明確に事実を報告した前例はない。同撤廃委員会の委員長らは「慰安婦問題で異なった主張があることを初めて知った」と述べていたという。 また、日本国内で2015年10月から口頭弁論が初めて開かれた朝日新聞に対する集団訴訟では、従来の「日本軍による強制連行20万人」という虚構を打破するために在米の日本人100人近くが原告に加わっている。 オバマ政権が韓国に日本との関係改善を要望 第5は、日本糾弾を執拗に繰り返す韓国にオバマ政権が批判的な姿勢を示し始めたことである。 これまで朴大統領は安倍首相との日韓首脳会談開催の前提として「日本がまず慰安婦問題で誠意ある措置をとる」という条件を突きつけていた。そのことに対して今年春頃から、オバマ政権のウェンディ・シャーマン国務次官らが「日韓両国間の安全保障協力を優先すべきだ」という意向を伝え始めた。 オバマ政権はそれ以前は、慰安婦問題などの歴史認識について日本よりも韓国側の主張に同調する傾向が見られた。だが、それが少しずつ変わってきた。 その背景には、中国の南シナ海などでの軍事攻勢や理不尽な行動がある。穏健な対中国政策を続けてきたオバマ政権も、ついに対中姿勢を硬化させるようになった。そうなると、東アジアの同盟国である日本および韓国との安全保障面での協力強化が必要となる。日韓両国があまりに距離を置いたままという状況では困るのだ。 このため、今年に入ってオバマ政権は韓国政府に対して、慰安婦問題などの歴史案件にこだわることなく日本との関係改善に着手することを促すようになった。その新政策を朴大統領に通知する最初の使者がシャーマン次官だったというわけだ。 オバマ政権のこの優先順位の修正に対して、韓国のメディアは激しく反発した。明らかに韓国政府の意向を受けての抗議である。だが韓国政府にとって、自国の安全を保障する米国の意向は大きい。結果的に朴大統領は年来の前提条件を引っ込めて、安倍首相との会談に臨むことになった。この点も、慰安婦問題を好転させる大きな潮流の変化だといえよう。 事態を逆戻りさせてはいけない 以上のように、慰安婦問題に関して日本にとって有利に見える要因が拡大しているが、米国ではその後も各地で慰安婦の像や碑を建てる動きが続いている。慰安婦像の設置や日本の「残虐行為」を示す博物館などの開設には、韓国系だけでなく、むしろ中国系の「世界抗日戦争史実維護連合会」がより大きな役割を果たすようになった。中国政府と直結した在米中国系組織である。 米国の歴史学者たちの多くも、朝日新聞の誤報訂正や秦郁彦氏らの指摘を無視するような態度は変えていない。国連でも、虚偽の「クマラスワミ報告」が修正されたり撤回されるという気配はまだない。 しかし、それでも、米国の学者や中韓両国政府からの「日本軍による強制連行20万人」という虚構の糾弾になんの反論もしなかった数年前までの状況が大きく変化してきたことは間違いない。 前述したように、今や「強制連行20万」という非難を正面から叫ぶ声はほぼ皆無となった。その代わりに論点をシフトさせた日本非難が述べられるようになった。日本糾弾のこうした質的変質の意味は決して小さくない。攻守が入れ替わったといっても過言ではない。だからこそ今後も日本の官民が一体となって、強制連行などなかったことを主張し続けることが重要である。 その点で危険なのは、今後の日本政府の韓国に対する対応だろう。慰安婦問題の核心部分について、これまでの外務省のように相手の虚構を決して突かず、「慰安婦問題は解決済み」との主張だけで事態収拾を図ろうとすれば、事態は逆戻りしかねない。そんな危険な陥穽が大きな口を開けているのである。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45474
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