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破産する家が続出中「認知症」実はこんなにカネがかかる 医療・介護費用だけじゃない、成年後見人の弁護士報酬もバカ高い
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46711
2015年12月08日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
漠然と「いつか来る」と思っていては、持ちこたえられない。「何とかなるだろう」という楽観も、なけなしの老後資金も、簡単に吹き飛ばされる。現実を知ることしか、認知症に立ち向かう術はない。
■「認知症1000万人時代」
「疲れた」—。
47歳の娘は、晩秋の朝の冷たい利根川へ、81歳の母と74歳の父を軽自動車に乗せて突っ込んでいった。母の認知症介護、そして生活苦に疲れての一家心中だった。父母は亡くなり、ひとり救助された娘は、冒頭の言葉を漏らした。11月22日、埼玉県深谷市でのことだ。
同日、東京都江東区の都営アパートでは、死後数ヵ月経った81歳と71歳の老兄妹の遺体が見つかった。兄は以前、認知症のような症状を見せていた、と近くの住民が証言している。
認知症そのものが、人命をすぐに奪うわけではない。しかし、認知症は人の暮らしを一変させる。平穏な日々は、二度と帰ってこない。長い介護生活の中で、老後の資金が底を突き、破産や心中に追い込まれる家庭が、現に続出している。
肉親が認知症になったとき、今のところ、とるべき道は4つに限られる。(1)公営の特別養護老人ホーム(特養)に入居する。(2)民営の有料老人ホームか、サービス付き高齢者住宅(サ高住)に入居する。(3)認知症の高齢者が数人で共同生活を送る、グループホームに入居する。(4)在宅で介護する。
どの道を選んでも、それなりの出費は避けられない。だが今後、認知症という「カネ食い虫」から逃れることは、いよいよ難しい。なにしろあと10年で、全国で1000万人超、日本人の10人に1人が認知症とその予備軍になるのだ。
まず、最も多くの人が利用すると思われる、(2)の民間有料老人ホーム・サ高住と、(3)のグループホームでかかる費用を具体的に見てみよう。大阪市で高齢者の福祉施設入居の相談を受けている、「シニアの暮らし研究所」代表の岡本弘子氏が言う。
「ほとんどの施設は、家賃に加えて管理費、食費、介護保険の自己負担金、雑費を合わせた月額料金が15万~20万円ほど。入居の時に、一時金として月額料金の1~数ヵ月分を支払うことになっている施設も多いですね。
思いのほか費用がかさむのが、介護サービスの利用料金です。民間施設が提供する介護サービスには保険が適用されないものも多いため、前述の月額料金に加えて、さらに20万円以上の負担がかかることも珍しくありません」
介護保険が適用されない「保険外サービス」は、医療で言えば「自由診療」のようなもので、施設側が価格をある程度自由に決めることができる。使い過ぎれば、あっという間に月々の介護費用は30万円、40万円と膨れ上がってしまうのだ。
■年金では絶対にムリ
入所した当初は軽い認知症でも、症状が進み、身の回りのことが自分でできなくなれば、介護サービスの利用額は増えてゆく一方である。
「最近では、料金をきちんと把握せずに保険外サービスを使いすぎ、利用額を支払えなくなる利用者のために、『月額20万円分を越えたら、サービス受け放題』というパック料金プランを採用している施設もあります。
施設の側にとっても、空き部屋を作るよりは入居者を増やしたほうが得なので、保険外サービスの料金は割り引くという施設や、場合によっては1~2割の自己負担で大丈夫、というところもあります」(前出・岡本氏)
仮に、ひと月の負担額を低めの25万円と見積もった場合でも、年間での出費は300万円。高齢者ひとりにつき、平均介護期間はおよそ5年だから、必要な金額は、安くとも総額1500万円。本人の年金をすべてつぎ込んだとしても、100万円単位で赤字が出るケースが少なくない。
医療・介護事業サポート会社「地暮」を運営する中村聡樹氏は、「認知症の介護に最も向いているのは、グループホームではないかと思います」と言う。前出の(3)の施設のことだ。
「認知症高齢者グループホームは認知症の人の専用施設で、1ユニット最大9人で共同生活を送る施設です。個室に共用の台所や食堂、浴室が付いていて、常時5人ほどのスタッフが介護にあたります。夜間も必ず職員が常駐し、24時間での見守り体制もある」
グループホームの利用料金も、基本的には介護付き有料老人ホームやサ高住の料金と大きな隔たりはなく、食費を入れて月額11万5000~16万5000円ほどが一般的である。
「ただし、施設の夜間支援サービスを利用すると追加料金を請求されたり、おむつ代、イベントの会費、ベッド以外のテレビや家具などの生活用品は自腹、という施設も多い。医療費やもろもろの実費を加算すると、月額料金に4万~5万円のプラスが出ることは珍しくありません。また、基本料金の他に介護保険の自己負担額も加算されます。月々の自己負担額は、要介護認定を受けている人で2万2770~2万5560円と決まっています。
パンフレットに『月々13万円で入れます』などと大書している一方、隅に小さく『介護保険利用料と実費が別途かかります』とあることも多い。グループホームは安いと言われますが、基本料金に、最低でもプラス5万円はかかると見たほうがいいでしょう」(中村氏)
■施設を突然、追い出されて…
前出(1)の特別養護老人ホーム(特養)は、入居時の一時金がなく、施設による価格の差もないが、部屋のタイプや本人の要介護度数、また年金収入の額によって大きく負担額は変わってくる。特養だからといって、誰もが格安で利用できるわけではないのだ。
「介護保険料の自己負担や実費を合わせると、一般的にはどんなに安くても月額13万円程度は覚悟しなければなりません」(前出・中村氏)
しかも、特養は全国で約7800ヵ所の施設に対して、52万人もの高齢者が入所待ちをしている「狭き門」。順番待ちをしている間にも、どんどん認知症は進んでゆく。
そもそも、こと認知症の高齢者の介護に関しては、これまで見てきたような施設には「限界」もあるという。前出の岡本氏がこう語る。
「徘徊や大きな声を出す、暴力を振るう、不潔な行為をするといった、認知症の『周辺症状』が出ている人の場合は、入所を断る施設があります。また、入所した後に認知症が進んで、施設側が『安全の確保が難しい』と判断したときにも、退去させられたり、他の施設に移ることを余儀なくされるケースがあるのです」
ただでさえ、呻吟しながら月々の利用料をやりくりしているところに、いきなり「出て行ってください」と言われれば、家族へのダメージは計り知れない。もっと高額な施設に移るか、それとも在宅で介護するのか—そんな、究極の選択を迫られることになる。
政府と厚生労働省は、介護保険費の膨張に歯止めがかからないこともあり、在宅介護を増やすという方針を掲げている。在宅介護は、施設に比べて月々の費用も安くすむといわれるが、実際には、認知症の進行度合いによって千差万別である。
千葉県に住む50代の女性は、認知症の義父を在宅介護している。自営業者だった義父は年金が少なく、一家の貯蓄も乏しかったため、施設への入居は考えなかった、という。この女性が言う。
「うちの義父は、足腰は立つのですが、トイレで用を足すことがまったくできなくなってしまったんです。部屋の床や押し入れの中で出してしまうので、家中の床をビニール製のクッションフロアに取り換え、カーテンは撥水のものにし、階段や扉もすべてリフォームしました。補助金は出ましたが、それでも200万円近い出費でした。
デイサービスをお願いしても、迎えの車に乗りたくないと大暴れするので、施設に預けることもままなりません。民間の見守りサービスの利用料が、毎月3万円かかっています」
親子で心中を図った冒頭の家族の場合も、娘と父親が、認知症の母親を在宅で介護していた。父が体調を崩して職を失い、収入がなくなって、追い込まれてしまったのだ。
肉親の老後の面倒を家で見るのは、介護される側にとって幸せなことかもしれない。しかし、介護する側には必ず、経済的にも体力的にも限界がやってくる。まして、介護する側に病気や離職といった不測の事態があれば、それまでの人生設計は一発で吹き飛んでしまう。
■後見人ですっからかんに
さらに今、認知症の介護には新たな問題も浮上している。あくどい「成年後見人」の餌食になり、高額の報酬を払わされたあげく、財産をむしり取られるケースが急増しているのだ。成年後見制度に詳しい、一般社団法人「後見の杜」代表の宮内康二氏が解説する。
「成年後見人とは、認知症で判断能力が不十分な人にかわって、必要な医療・介護サービスを探して契約を結んだり、財産管理を行う、いわば『もう一人の自分』。家族が役所などに勧められて、弁護士や司法書士などの専門職を紹介してもらうのが一般的です」
しかし、この専門職後見人こそが曲者。「弁護士の先生だから、信用できるはず」と思って安心していると、痛い目に遭う。ある弁護士が言う。
「何も仕事がなくても、基本報酬だけで最低で月額2万~3万円。財産がある人の場合、もっと吹っ掛けられます。実際に月々6万円、年間72万円の報酬を、後見人の弁護士に10年以上支払っている高齢者もいました。また報酬以外に、交通費や交際費、電話代などが実費として請求されます」
当然ながら、遺産相続や土地取引、遺産整理などを行う際も、この成年後見人が代行するわけだが、こうした「仕事」が発生するたびに数十万~数百万円の「ボーナス」を取られる。さらに、これほどのバカ高い報酬に飽き足らず、認知症高齢者の財産を横領する弁護士・司法書士も跡を絶たない。成年後見制度を悪用した不正被害額は、昨年1年間だけで、全国で56億円を超えている。
「私の経験では、役所に『後見人を付けたほうがいい』と言われたケースで、実際に必要なのはせいぜい5件に1件です。後見人の不正行為を防ぐには、個人ではなく、成年後見の実務に詳しく、内部の監視がしっかりしている法人と契約するのがいいでしょう」(前出・宮内氏)
認知症は誰の身にも降りかかる。しかも、遭遇するのは一度きりとは限らない。夫婦が二人同時に認知症になったら。親を看取った後、次は自分が認知症になったら—。
他人事ではない。現実を直視しなければ、乗り越えることはできない。
「週刊現代」2015年12月12日より
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