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日本郵便本社ビル(「Wikipedia」より/Rs1421)
極めて利便性高い日本の伝統・郵便事業を破壊!郵政民営化&上場は国民に深刻なデメリットばかり
http://biz-journal.jp/2015/12/post_12727.html
2015.12.05 文=神樹兵輔/マネーコンサルタント Business Journal
「米国の忠犬ポチ」と揶揄された当時の小泉純一郎首相が固執した末に実現した「郵政民営化」ですが、10年の時を経て今年11月4日、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が親子上場といういびつなかたちながらも、ついに東証一部上場を果たしました。
いまだ、株式の大半を政府が持っているという国営企業のままですが、いったいこれから、この巨大な「ゆうちょ」と「かんぽ」という2大マネーカンパニーはどんな道筋をたどるのでしょうか。
また郵便や小包配達事業で赤字を抱える日本郵便を子会社に持つ親会社の日本郵政は、将来切り離される予定の「ゆうちょ」と「かんぽ」からの窓口使用料をずっともらい続けられるのでしょうか。もしそれが得られなくなると、日本の郵便事業は大赤字となって成り立たなくなってしまう危険性が高いのです。
郵便事業の公共性による赤字を、利益の出やすい貯蓄事業や簡易保険によって補うという日本のこれまでの伝統的な仕組みを破壊してまで、何ゆえの郵政民営化だったのでしょうか。
■よい制度をバラバラに破壊
なぜ、こんなおかしなことになってしまったのか。
たしかに、「ゆうちょ」や「かんぽ」の事業は、貸し出しや投資運用という営業的視点もなく、特殊法人に資金を垂れ流し、国債を買い続けるしかない存在でしたが、特殊法人に資金が流れる構図が悪ければ、そちらの入り口をシャットアウトすればよいだけのことでした。何も、うまく機能していた組織をバラバラにする必要などどこにもなかったのです。
それは、日本のメガバンクをはるかに超える預金量をもった「ゆうちょ」と、日本一の保険料収入をもった「かんぽ」という金融会社そのものを、自由競争にさらさせ、あわよくば合計で300兆円を超えるその資金を米国へと還流させたい――という米国政府の思惑にほかならなかったからでしょう。
大部分の国民は、「なぜ郵政民営化が必要なのか?」という肝心な点がはっきりのみ込めないまま、当時の小泉首相の「民間でやれることは民間に!」や「聖域なき構造改革!」などといった勇ましいワンフレーズのスローガンに乗せられて、小泉首相に拍手喝さいを送ったのでした。
当時、小泉首相に異を唱えると、「守旧派」のレッテルを貼られてしまいましたから、今の安倍政権の集団的自衛権容認に自民党内で誰も反対できないのと同様の状況がここでも起きていたわけです。小選挙区制の浸透によって、自民党から派閥の力がもぎ取られ、総裁の一極支配が可能になっていたからこそできた――といえる構図でしょう。自民党は、このころから多様な意見が交わされる国民政党ではなくなり、独裁色が強くなってきたわけです。
■公共性と市場主義経済は相容れない
米国は自由競争の守護神のような国ですが、市場主義経済がはびこりすぎれば、公共性や弱者の存在がないがしろにされるのは当たり前です。
今や、米国では有権者よりも、多国籍大企業が政治の主導権を握っています。日本も戦後70年で、そうした構造が米国にだんだん近づいていますが、へき地や山間部に住む国民は、今後郵便事業などが危機に陥れば真っ先に犠牲にされかねないわけです。
ユニバーサル事業は、公益性、公共性が第一に求められます。国民誰もが均一性、利便性を享受できるという体制は、本来市場主義とは相容れないのです。
「ゆうちょ」も「かんぽ」も1兆円に上る郵便窓口使用料を日本郵便に払うかたちだからこそ、日本郵便も事業継続が図れますが、株式会社としての効率性重視が求められれば、今のように郵便窓口使用料をいつまでも日本郵便に払い続けることが許されなくなる可能性を秘めていることに気が付かなければいけません。
「ゆうちょ」や「かんぽ」のような膨大な資金量をもつマネーカンパニーの行方も不透明です。今までのように国債を買い続けていても、将来の成長性は見込めないからです。
では、いったいどんな運用をすべきなのか。答えは見えません。与信能力がないのですから、貸し出しもままならないわけです。住宅ローンに乗り出すぐらいが関の山でしょう。
このように見てくると、「郵政民営化」は、日本の古きよきシステムをバラバラに破壊しただけで、国民のためになるような仕組みは、どこにもないのです。まさしく大山鳴動して鼠一匹どころか、日本を米国の都合の良い国へと近づけただけにすぎなかったわけです。
小泉首相の罪深き業績として、記憶に留めておきたいゆえんなのです。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)
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