1. 2015年12月04日 14:21:00
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コラム:ドラギマジックの蹉跌、期待制御の難しさ浮き彫りに 13:49 JST 田巻 一彦 [東京 4日 ロイター] - 欧州中銀(ECB)が3日に追加緩和を決めたが、ユーロは下落せず逆に大幅上昇した。「ドラギマジック」にとって初めての蹉跌(さてつ)であり、市場の期待をコントロールする難しさを浮き彫りにした。 利上げ直前の米連邦準備理事会(FRB)や1年以上政策維持が続く日銀にとっても「対岸の火事」ではないはずだ。日米欧の中銀は2016年に向け、大きな課題に直面している。 <期待値上げたドラギ発言> ECBのドラギ総裁が打ち出した追加緩和策に市場は失望し、ユーロ/ドルEUR=EBSは一時、1.0981ドルまで急上昇。1日としては6年半ぶりの上げ幅を記録した。 追加緩和による一段のユーロ安ないしユーロ安水準での安定的な推移を目指し、輸出主導による緩やかな景気を回復を目指していたとみられるドラギ総裁にとって、このユーロ上昇は「見たくない現実」であったはずだ。 最近のドラギ総裁やECB幹部の発言で、市場の期待値は上がる一方だった。特にドラギ総裁の「いかなる手段も排除しない」というメッセージは、市場にとって「追加緩和は大幅」という認識を形成させる大きな材料になった。 だが、中銀預金金利をマイナス0.30%に引き下げ、月額の買い入れ規模を据え置いたパッケージは、「目線」の上がった市場のイメージからみると、陳腐に映ったようだ。 <ゼロ金利下の金融政策の制約> ドラギ総裁の会見からは、マイナス金利をどんどん押し下げることに慎重なニュアンスもみられた。 ここからは私の推理だが、短期金利のマイナス幅拡大を続けて行くと、いずれ長期金利もゼロからマイナスに切り下がる可能性が出てくる。 その場合、現行のビジネスモデルを維持したままの銀行は、収益性が大幅に低下し、金融システムの安定性に疑問符が付く事態の発生可能性を高めるだろう。 ここに政策金利がゼロ近辺になってしまった中銀による金融政策の「悩み」があるのではないか。 つまり「奥行き」のあまりない家を広くみせるために、ドラギ総裁が「口先」で説明していたが、実際に玄関を入ると、狭い応接間に通された。 その客は「もっと広い部屋で応接されると思ったのに・・」と不満を持ったということだ。 だが、その客が「本当にこの家は、言われたように広いのか」と疑問を持ち出すと、さらにやっかいなことが起きる。ECBと市場の関係に戻れば、ECBの信認低下のリスクとその弊害の存在である。 市場関係者の一部には「いずれユーロ安に戻る」との見方が根強いが、果たしてそうなるのかどうかは、市場の期待の動向にかかっている。ECBの政策運営能力に疑問符が付けば、追加緩和を次に実行しても、思い通りにユーロ安や長期金利の低下が現出されない可能性も出てくる。 <対岸の火事と言えない日米中銀> 同じことは、FRBにも言えるのではないか。2、3日のイエレンFRB議長の発言に対し、多くの市場関係者は想定よりもタカ派的と捉えたようだ。 もし、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、2016年の利上げペースに関し、計4回・100bpの利上げを織り込ませるようなメッセージを出せば、一部の市場関係者は「タカ派的な色彩が過剰」と受け止め、米利上げセッションの途中における「米経済腰折れ」シナリオの可能性を高めるかもしれない。 FRBと市場の「対話」で、市場の期待がFRBの思惑通りに推移しないシナリオにが現実化すれば、ECBが直面しているような苦境に陥るリスクも出てくるだろう。 日銀にとっても、「遠い世界の出来事」と等閑視できないと考える。10月に2回あった金融政策決定会合のどちらかで、日銀が追加緩和に踏み切るのではないかと予想していた市場関係者は、かなりの規模に上っていたとみられる。 その後、11月会合でも政策維持が公表され、日銀の金融政策の先行きに関し、多くのシナリオが語られ始めた。BOJウオッチャーの中には、ECBの対応を見て日銀もマイナス金利を採用するのではないかとの声も出てきている。 これをハイキングにたとえると、眺めのよい峠までは、歩きいやすい登山道が整備されていたが、その先は突然、整備された道が見えず、どれも前人未到の「獣(けもの)道」のようなルートがいくつもある──という状況ではないか。 こうした時は、中銀サイドからのちょっとしたメッセージの変更でも、市場が大きく変動する可能性が高まる。 市場の期待を日銀の思惑通りに「誘導」するのは、量的・質的金融緩和(QQE)が始まってから2年超の期間よりも、ハードルが高くなっている可能性がある。 日米中銀にとって、ECBが直面した苦境からくみ取るべき「教訓」は、かなりあるのではないか。 おすすめ記事 米ゴールドマン、2016年はドル高予想 米金利予想より速く上昇 2015年 11月 20日 コラム:マリオットのスターウッド買収額は妥当か 2015年 11月 17日 コラム:シェアリングエコノミー、潜在成長率を高める救世主か 2015年 11月 26日 http://jp.reuters.com/article/2015/12/04/ecb-frb-idJPKBN0TN08Q20151204?sp=true
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