8. 2015年12月04日 13:02:19
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コラム:失望誘ったECB追加緩和の「一石二鳥」 [3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が3日に打ち出した追加金融緩和策は、より深刻な政策上の失敗をせずに済んだと同時に、金融市場の失望を誘ったが、これはかえって「一石二鳥」と呼べるだろう。
ECBは中銀預金金利の引き下げ幅を0.10%ポイントにとどめ、債券買い入れプログラムは増額せずに期限延長と対象範囲拡大のみ決めた。全体として市場の期待に届かず、欧州株は約3.5%下落し、ユーロは急伸した。 しかしある面では、中銀預金金利の下げ幅を0.10%にしたのは良かった。マイナス金利が進めばそれだけ、ユーロ圏経済が頼りにしなければならない銀行貸出の環境が厳しさを増すからだ。 ハイ・フリクエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ氏は顧客向けノートで「ユーロ圏を苦しめているのは銀行貸出不足であり、それがコア消費者物価指数(CPI)上昇率を2%の目標に押し上げられるほどに経済成長の速度が上がらない理由だ。信用収縮は銀行システムの資本不足が原因で、これはかつてないほどに自己資本基準が引き上げられたことに関連している」と指摘した。 ユーロ圏の銀行が抱える問題は2層構造になっている。つまり資本が必要という点と、もうけが得られる利ざやで融資をしなければならないという点だ。中銀の流動性供給とマイナス金利は前者にはほとんど効果がなく、後者には実害を及ぼす。 スイスでは1月以降に政策金利がマイナス0.75%まで下がったが、住宅ローン金利は実質的に上がった。銀行にとって資金調達コストは、国債利回りほど急激に低下しなかったからだ。 ECBは債券の買い入れ対象に地方債を加えた。毎月600億ユーロの買い入れで、条件に見合う国債がどんどん少なくなりつつある中では必要な面があった。 もっともECBはせっかくの好機を逃したともいえる。もしよりリスクの高い、銀行のバランスシートで塩漬けになっているローン債権をも買い入れ対象としていれば、貸出行動に好影響を与えられただろう。 <市場の甘え> ECBがいわゆる市場との対話、つまり市場にサプライズを与えるという面で現実に問題を抱えているが、それは幼稚な期待に基づくものだ。ECBの理事会内に意見対立があるのは周知の事実であるとはいえ、むしろ問題なのは市場が自分たちの望む政策が約束され、いつも適切なタイミングでそれが実施されると考えていることだろう。 金融政策の透明化は適切な流れだ。しかし中銀は過去の発言に合わせて現実世界やイベントを作り変える能力までは持っていない。ユーロ圏の危機においてECBのドラギ総裁が見せた英雄的な行動が、自身や市場に有益に働く以上の過大な信頼性をもたらしてしまったのかもしれない。 万物は流転し、金融政策も情勢に応じて変わっていく。だからこそフォワードガイダンスは、自分勝手なこどもたちに間違った教育を施してしまった。フォワードガイダンスは恐らく市場を落ち着かせるが、短期的にも長期的にも相当なコストを支払わなければならない。 翻ってECBが市場の期待を裏切ったことが経済にもたらすコストを考え見ると、それほどの大きさでないのは確かだ。要は市場が現実に順応するまでのボラティリティを甘受するか、あるいは先に示唆した約束に固執して政策の間違いをそのままにするかを選ぶことになる。 米連邦準備理事会(FRB)を筆頭に世界中の中銀が政策の透明性向上を進めようとしている。ただ、それが市場にショックを与えないことと同一視されてしまってもいる。 金融危機の間は、中銀が市場を鎮静化したいと考えることに十分な妥当性がある。それでも危機モードの政策を続けるほど、物価上昇率が極めて低く経済成長がさえない局面から抜け出せず、こうした政策を維持するべきという意見の説得力は薄れていくように見える。 結局のところ、中銀の信頼性が大事だとむやみに唱える場合の問題は、雇用や物価の目標達成に関することではなく、市場の期待通りの政策を実行することと定義されるだろう。 ECBはもっとうまく政策運営できるので、今回の市場の混乱を過剰に心配するべきではない。 http://jp.reuters.com/article/2015/12/04/markets-saft-idJPKBN0TN02G20151204?sp=true
アングル:ECBの物価押し上げ能力に不安を抱き始めた金融市場 [ロンドン 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が3日の理事会で打ち出した追加緩和策について、市場は積極性に欠けた内容と受け止めた。 このため「スーパーマリオ」の異名を取るドラギ総裁ですら、ユーロ圏の物価を目標まで高めることはできないのではないかとの不安がくすぶり始めている。 ECBの緩和策は中銀預金金利の0.1%ポイント引き下げと債券買い入れプログラムの6カ月間延長などにとどまり、欧州株は3カ月ぶりの大幅安に見舞われた。ユーロは3月以来の急伸となった。 しかし最も分かりやすい反応を示したのは国債市場だ。ドイツをはじめとするユーロ圏の国債は軒並み利回りが高騰し、ドイツ2年国債利回りは2011年3月以降で最大の上昇を記録した。 さらにECBがしばしば期待インフレ率として引き合いに出す5年後からの5年間の予想物価上昇率は、理事会前の1.81%程度から1.75%に切り下がった。 これは事実上、予見し得る将来において、ユーロ圏の物価上昇率はECBが掲げる2%弱に達することは引き続きないだろうと投資家が判断したことを表している。 資産運用会社カルミニャックのマネジングディレクター、ディディエ・サンジョルジュ氏は「経済と中央銀行の政策運営能力がともに期待外れだとすれば、市場が備えをしていないような事態になる」と語り、デフレの現実化を示唆した。 ユーロが対ドルで1.09ドルを上回ったほか、ポンドや北欧通貨に対しても大きく値上がりしたことで、デフレ懸念は増幅された。 今週発表された11月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は前年比上昇率がわずか0.1%。しかもECBが3日に示した最新の物価上昇率見通しは2016年が1%、17年が1.6%で、投資家の戸惑いは増すばかりだ。 アバディーン・アセット・マネジメントの投資マネジャー、パトリック・オドネル氏は「誰もがドラギ氏が欧州を救う白馬の騎士としてさっそうと登場すると期待していたが、実際にはそうした姿で現れなかった」と述べた。 ECBウオッチャーにとっての問題は、今回の措置はドラギ氏や他のECB理事会メンバーがユーロ圏経済の新たな落ち込みに備えて一部の手段を温存しただけのか、それとももはや打つ手がなくなりつつあるのかという点だ。 ウニ・クレディトのユーロ圏チーフエコノミスト、マルコ・バッリ氏は「本日の市場の反応が今後数日間続くなら、金融環境はECBの見通しに対する下振れリスクが高まり始める。追加緩和は金融環境がこれからどう進展するかにほぼ左右されるので、事態を注視し続ける価値はある」と指摘した。 (Marc Jones記者) http://jp.reuters.com/article/2015/12/04/europe-markets-ecb-idJPKBN0TN00F20151204 アングル:ドラギECB総裁、任期中の利上げはあるか
[ロンドン 3日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が任期を全うすると仮定すれば、退任は2019年10月だ。そして金融市場は、総裁のこの8年間の任期中に一度も利上げが実施されない可能性はかなり大きいとみている。 これは注目に値する。ベン・バーナンキ氏、つまり超ハト派の前米連邦準備理事会(FRB)議長として08年の金融危機対応で都合3回の量的緩和(QE)を打ち出したあの人物でさえ、利上げを行った。それも1回だけでなく3回もだ。 しかしECBの場合、今回の追加緩和発表後に5年先からの5年間の予想物価上昇率は下振れし、短期市場が織り込む最初の利上げは19年半ばとドラギ氏の退任予定時期直前のままだった。 G+エコノミクスのディレクター、レナ・コミレバ氏は「ドラギ氏はまったく利上げできない、というのが最もありそうなシナリオだ。3年以内にECBが物価目標を達成するのは極めて難しい」と指摘した。 足元のユーロ圏消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は0.1%にとどまり、ECBが目標とする2%弱には程遠い。 ECBは債券買い入れプログラムの期限を17年3月まで半年間延長した。それからドラギ氏が退任するまでにはまだ2年余りもあるが、イングランド銀行(英中央銀行、BOE)の例はQEを解除して政策金利を過去最低水準から引き上げるのがいかに困難かを物語る。 BOEの政策金利はほぼ7年間、最低の0.5%に据え置かれており、市場では16年終盤まで利上げはないと予想されている。 ユーロ圏のソブリン危機が急速に拡大しつつあった11年11月にECB総裁に就任したドラギ氏は、翌12年7月にユーロ防衛のために「やれることは何でもやる」と宣言。実際にユーロ解体の懸念を後退させ、ユーロ相場は持ち直して多額の債務を抱える周縁国の国債利回りも急低下した。 ただ昨年半ば以降、原油などのコモディティ安を背景に物価上昇率が縮小したことで、ECBはユーロ圏のデフレ突入阻止に万全を期さなければならなくなった。 そこで総額1兆ユーロに上るQEとマイナス金利という賛否両論のある非伝統的な政策が導入された。 アバディーン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、パトリック・オドネル氏は「ドラギ氏のこれまでの任期を特徴づけるのは、伝統的および非伝統的な金融政策の緩和を続けているということだ。こうした局面は、世界経済の成長が大きく上向かない限り、これからも変わらないだろう」と述べた。 http://jp.reuters.com/article/2015/12/04/europe-markets-draghi-idJPKBN0TN03R20151204?sp=true ECB、預金金利引き下げ・QE延長決定:識者はこうみる
[フランクフルト 4日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は3日開催した理事会で、中銀預金金利を引き下げるとともに、資産買い入れプログラムの6カ月延長を決めた。だがより大胆な追加緩和を期待していた金融市場では失望が広がり、ユーロは急上昇した。 市場関係者のコメントは以下の通り。 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFX/EMストラテジスト 棚瀬順哉氏> 為替市場では、欧州中央銀行(ECB)理事会に先立って、積極的な追加緩和に対する予想が盛り上がり過ぎていた。 追加緩和の規模は、6カ月間の資産買入れの延長により合計3600億ユーロと決して小さくはない。 しかし、中銀預金金利の20ベーシスポイントの引き下げまで期待していた市場には評価されず、積み上がっていたユーロのショート・ポジションが一気に巻き戻された格好だ。 ユーロ高の背景ではドル安が進行し、ユーロの寄与度が高いドル指数.DXYは昨年7月以降1日の下落幅としては最大の下げとなった。 ただ、ドルの名目実効レートは、昨日は1カ月ぶりの水準に低下したとはいえ、過去4年間のドル高を背景に、依然高い水準にある。 過去の事例では、米利上げを契機にドルがピークアウトする傾向がみられ、前日のユーロ高/ドル安が、ドル高の基調転換を示唆しているとみることもできる。 きょうは11月の米雇用統計が発表されるが、非農業部門雇用者数と平均賃金が弱い結果となっても、12月利上げの見通しを大きく後退させるには至らないだろう。 <三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏> 欧州中央銀行(ECB)理事会の結果発表を受け、ユーロ/ドル、ユーロ/円が急上昇した。期待値が高かった分、失望があったのは間違いないが、積み上がっていたユーロショートのポジションを閉じた動きも大きかったと思う。今回のユーロの買い戻しは「セル・ザ・ルーマー、バイ・ザ・ファクト(噂で売って、事実で買い戻す)」だろう。 そもそも今の段階で市場の期待にフルで応えられるのは難しいと思っていた。ドラギ総裁の発言が市場の期待を高めてきただけに、ここから先、今までのように受け止められなくなる可能性もある。 足元はユーロ高に振れているが、ショックが落ち着けば、ユーロは1.07─1.08ドルの水準に戻してくると思う。 <三菱UFJ国際投信 チーフストラテジスト 石金淳氏> ECB(欧州中央銀行)の緩和の内容は市場の期待に届かなかった。欧米株は大きく下げたが、10月以降の戻り相場のなかで利食い売りが出るタイミングでもあったのも確か。当面の金融政策の好材料が出尽くしたという面もある。独債利回りは上昇したが、0.7%台でとどまれば、レンジ範囲内の動きととらえることもできる。 一方、米国の実体経済は絶好調というわけではないが、それほど悪くもない。米利上げは緩やかなペースとなるといわれている。利上げに対して市場は気にはとめてはいるが、大きな心配というところまでは至っていない。 長いタームではドル高が進むと思うが、ゆっくりとしたものとなるだろう。日本株への見方は特に大きくは変えておらず、調整も一時的となるとみている。だが、これまでのスピードで上昇するのは無理がある。日経平均は1万9400円台にある200日移動平均線を試す形になるとみているが、この辺りがサポートラインになるのではないか。年末には2万円近くまで戻してもおかしくはない。 <みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト上野泰也氏> 欧州中央銀行(ECB)が決定した追加緩和では、打ち止め感を回避して、先行きの緩和期待を残した。具体的な内容は予想した通りだが、緩和内容への過大な期待感が事前に強まっていたため、失望から株安・債券安・ユーロ高が進んだ。 ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)をみると、基調を示すことが多いサービスは、前年比プラス1%前後で底堅く推移している。原油安によるHICPの下落圧力に過剰に反応している側面がある。今後、HICPに下落圧力がかかるようだと、市場の緩和期待が再び高まる可能性がある。 現在の金融市場は、中央銀行から過剰なマネーが供給され、「カネ余り相場」が続いている。ECBによる今回の追加緩和は、「中央銀行が蛇口を開いてバスタブに水を大量に注ぎ込み続ける時間帯」がさらに長期化する流れを固めたイベントとみている。 前日の海外市場で、株価が大きく下落したが、緩和マネーに支えられて下値で買いが入るだろう。機関投資家の運用難が長く続く中で、悲観論が行き過ぎた場面でリスク性資産の押し目買いに動き、楽観論が広がる中で利益確定売りに動くといった運用手法も、一考に値するだろう。 円債市場は、海外債券安の流れを受けて、ある程度売られるかもしれないが、株価下落が予想されることに加えて、日銀の大規模買い入れといった需給面に支えられて、底堅く推移するのではないか。 http://jp.reuters.com/article/2015/12/04/ecb-qe-idJPKBN0TN04F20151204?sp=true
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