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原油安いつまで 対立激化する産油国
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151203-00010002-wedge-m_est
Wedge 12月3日(木)12時11分配信
米国シェール革命に端を発する原油安により、産油国の苦しみが続いている。生産量維持によってシェアは確保しているものの、財政は悪化の一途を辿る。減産をして価格を上げれば、シェールの火が再び灯る。産油国は出口の見えないジレンマに陥っている─。
10月上旬、OPEC(石油輸出国機構)の盟主・サウジアラビアで政府部局に対して、倹約令が出された。自動車や家具の購入を止め、新たな不動産の賃貸に合意することを差し止め、当局者に売上金の集金を加速させる通達である。サウジの倹約令は異例中の異例である。
非OPECではあるが、世界最大の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金も資産の切り売りを計画する。ノルウェーの資産の元手はオイルマネーであり、原油安が富裕国の財政にも影響し始めた。こうしたなかでOPEC総会が12月4日に迫っている。
OPECは市場シェア重視の立場を崩さず、生産枠を大きく上回る水準で生産を続けているが、この生産方針に関して、明らかにOPEC内で分裂がある。サウジを中心とする市場シェア重視の立場のグループは、UAE、クウェート、カタールなど豊富な対外資産を保有する国々である。
一方、減産により価格を引き上げたいグループは、ベネズエラ、イラン、アルジェリア、アンゴラ、リビアなど財政に余裕がない諸国からなる。
財政均衡油価が160ドル/バレルといわれるベネズエラはデフォルト(債務不履行)の危機に直面する。国内での深刻な不況や60%を超えるインフレを背景に、今年8月には国民の暴動も起きている。
財政に余裕のない政府は打つ手がない状況だ。IMF(国際通貨基金)は、アルジェリア、リビアが現在の歳出を続ければ、5年以内に政府準備金が底をつく可能性があるとした。これらの国々の間で「論争が始まれば、OPECは終わってしまう可能性がある」と警告するウォッチャーがいるほどOPECは困難な状況に陥っている。
OPECでは豊かな国、特にサウジの発言権が強いため、この12月の総会でサウジの主導するシェア重視・過剰生産戦略が覆ることはないだろうが、長期的にこの戦略を維持できる蓋然性は低いと筆者は見ている。
■サウジとシェールのチキンレース
サウジはかねてよりOPEC単独での減産には反対の立場をとり、価格安定化には「非OPEC主要生産国の協調減産が必要」(今年4月、ヌアイミ石油相の発言)としている。
10月には、ロシアも参加して、OPECと非OPECの8カ国がウィーンに集合し、協議の場がもたれたが、協調減産の提言には至らなかった。「今後5年間、原油価格70〜80ドル/バレルに安定化させるには、サウジは200万バレル/日の減産を要す」「サウジは政策を変更する可能性が高い。政策の変更はリーダーシップの変更も意味する」(ニック・バトラー英キングスカレッジ客員教授)。
油価の低迷が長引くなかで、サウジの方針転換に関する意見も聞かれるようになってきたのは、意外に米国のシェール革命がしぶといからだ。IMFも10月、シェールオイルの生産が底堅いことが明白であり、早期にサウジはシェア維持の方針を放棄するかもしれないとした。
OPECは10月12日に発表した石油市場報告で、来年は米国の石油生産量が微量ながら2008年以来8年ぶりに減少すると予想した。
シェールオイル生産業者は、原油安のなかで効率化を進めコストを削減し何とか凌いできたが、原油価格の崩壊はシェール革命を停止させ、シェール業界は成長から生存競争へのシフトを余儀なくされた。彼らの負債総額は2000億ドルともいわれ、借金の借り換えが困難な状況で、今後企業の統廃合が進むとみられている。
果たしてOPECは高コストのシェールとの価格戦争に勝利したのであろうか。ノースダコタやテキサスでのシェールオイル生産の底堅さ(レジリエンス)をみれば、OPECの勝利は限定的といわざるを得ないだろう。
シェール生産業者は油価が反転するまで、油井の完成を遅らせており、価格が戻れば、再びシェールオイルの生産が拡大する。
産油国への逆風は他にもある。10月19日に中国の今年7〜9月期のGDPが発表になったが、実質成長率が6年半ぶりに7%を下回った。
世界第2位の原油消費国である中国での需要減が連想され、原油先物への重石となった。中国への大口の原油供給国であるロシアやサウジなどは、中国の輸入削減が直撃する。また、連邦準備理事会(FRB)による今年末もしくは来年に予定される利上げの決定は、リスク資産からの資金流出をもたらし、商品先物のひとつ原油先物市場では価格抑制に作用する可能性が高い。
■原油安が続くかどうかは産油国の財政次第
原油安により石油輸出収入が15年は前年比半減しており、サウジをはじめほとんどの中東諸国が財政赤字に陥っている。IMFは20年までに、中東諸国の財政赤字は1兆ドルに達すると想定する。
サウジは今年、07年以来8年ぶりに国債を発行した。国債発行額は7月以降10月までで200億ドルにのぼる
サウジの政府債務は対GDP比で世界最小といわれるが、今後は、累積する赤字への対応のため、国債発行が増大する。IMFは対GDPの負債比率は現在の2%以下から、20年には33%に上昇する可能性があるとし、その場合、政府債務は2000億ドルを超える。
国債発行とともに、サウジはサウジ通貨庁(中銀)が保有する対外資産の取り崩しにより、歳入不足を補っている。対外資産は14年9月の7460億ドルをピークに、今年8月には6590億ドルへと急激な減少をみせている。
今年1月には、サルマーン国王就任時にボーナス約300億ドルが公務員及び年金受給者などに対して支給された。さらに、イエメンでの空爆にかかわる軍事費やIS、国内テロ対策などの支出が拡大しており、財政事情は苦しい。
湾岸諸国は、電気、水道、燃料油などに関して、膨大な補助金を支払っている。そのなかで、今年7月に注目を集めたのが、UAEにおける燃料油の補助金廃止である。
サウジも国内のエネルギー価格引き上げを検討しており、これまでは国民の反感を恐れて実施が難しいとされていたが、いよいよ手を付けざるを得なくなってきた。
また、UAEでは付加価値税(VAT)及び法人税の導入が検討されており、すでに連邦の税制のための法案の作成を完了している。さらに、サウジでは歳出削減に関し複数のアドバイザーを選任し、インフラ整備等を含む資本支出計画の見直しが始まっている。
ロシアでは、原油安と経済制裁が響き、財政事情が悪化し、国民のプーチン政権への不満が高まっている。15年のGDP成長率は3・8%のマイナス成長に陥る見込みだ。
シリアへの軍事介入は地政学リスクを煽り、原油を高価格に誘導したい意図があるともいわれる。サウジは新たにポーランドへの原油販売を開始したが、熾烈な競争でロシア産原油が値下がりしたのも打撃となった。
サウジは財政事情が深刻化するなかで、国内では、テロが頻発し、IS対策に追われ、シリアに向かう若者が増え、イエメンでの空爆も長引くなど、厳しい情勢に直面しており、SNSでも体制批判の声が流れるようになった。
■目前に迫る制裁解除 高まるイランの影響力
Towers Watsonによる最新の給与調査では、サウジは16年の賃上げが5.5%と想定されている。体制批判を抑えるためには賃上げは続けざるを得ない状況にある。
サウジが苦しむ一方、核交渉に合意したイランは、制裁解除を目前にし、海外からの投資が増加すると期待が 高まっている。中東地域におけるイランの影響力が相対的に高まり、サウジに代わって盟主に躍り出るといった見方もでてきている。これはサウジにとって最も許容できないシナリオだ。
サウジをはじめとするOPECはシェール生産者との戦いには一定の勝利を収めたが、国内では厳しい財政事情に直面し、正念場に立たされている。戦略が反転するタイミングを世界が注視している。
永田安彦 (日本エネルギー経済研究所 中東研究センター副センター長)
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