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「札割れ」と「量的緩和縮小」が焦点に 2016・17年の金融政策
http://diamond.jp/articles/-/82550
2015年12月2日 森田京平・バークレイズ証券 チーフエコノミスト ダイヤモンド・オンライン
2016年以降を展望した時、日銀の金融政策については大きく見方を変える必要がある。
いよいよ2015年も終わろうとしている。2016年を展望した時、これまでと大きく見方を変える必要があるとすれば、それは日銀の金融政策であろう。日銀自身、「CPI前年比2%」という目標の早期実現のためなら躊躇せず追加緩和するという姿勢を事実上、後退させている。
以下では、足下の景気動向を簡単に確認し、2016年以降の金融政策の焦点を見ておこう。筆者は、2016年は「札割れ」、2017年以降は早ければ「テイパリング」(量的緩和の縮小)が焦点になると考えている。
■個人消費は底堅いが実質賃金伸び悩みで反発力を欠く
足下にかけて発表されたデータを踏まえると、個人消費には一定の底堅さが見られるが、景気循環を規定する力が強い設備投資には下向きのリスクが残っている。
個人消費を包括的かつタイムリーに描写する統計が限られる中では、依然、発表までに時間を要する内閣府『消費総合指数』に頼らざるを得ない。実質個人消費を表す同指数は直近9月に前月比−0.1%と下がったが、均して見れば底堅さがある(図表1参照)。
ただし9月までの個人消費は実勢よりも強めだった可能性はある。特に、(1)プレミアム付商品券が9月末までに9割ほど販売された、(2)9月後半の大型連休(シルバーウィーク)の日並びがよかった、などでサポートされた部分もあるはずだ。
一方、実質賃金(こちらは1人当たり)が伸び悩んでいるのも事実。消費の底堅さは確認できるが、上向きの反発力は弱いといわざるを得ない。
注:「実質個人消費」は内閣府『消費総合指数』に基づく。
出所:厚生労働省『毎月勤労統計』、内閣府『消費総合指数』よりバークレイズ証券作成
■設備投資は今後も伸び悩むリスク 日銀短観での判断には慎重さが必要
ただし景気循環を捉える上では、個人消費などの家計活動よりも、輸出や設備投資などの企業活動が注目される。ここでは設備投資の先行指標である機械受注を見ておこう。
直近9月分機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+7.5%と上向いたが、3ヵ月連続で減少した後の小幅反発であり、水準は低い(図表2参照)。加えて、機械受注と比べてカバーする品目は少ないが速報性に優れる工作機械受注も、10月に内需が前月比−0.1%(季節調整は当社)と4ヵ月連続で減少している。
しかも困った(?)ことに、機械受注はGDPベースの設備投資(名目)との相関が高い(図表3参照)。GDPベースの設備投資が伸び悩むリスクが見て取れる。
出所:内閣府『機械受注』、日本工作機械工業会『工作機械受注』よりバークレイズ証券作成
出所:内閣府『国民経済計算』、同『機械受注』よりバークレイズ証券作成
一方、日銀は短観の設備投資計画の強さを背景として、設備投資を「緩やかな増加基調にある」と判断している。しかし短観の設備投資計画については、文字通りに捉えることには慎重でありたい。
一つの要因が稼働率(ハードデータ)と製造業生産・営業用設備判断DI(ソフトデータ)の乖離である(図表4参照)。2014年頃から、製造業が抱える設備の余剰感は確かに下がっている。その場合、本来、設備の稼働率は上がっているはずである。ところが稼働率はむしろ下がっている。稼働率が下がる中、製造業設備の余剰感が本当に下がっているか慎重な判断を要する。
出所:経済産業省『鉱工業指数』、日本銀行『短期経済観測調査(日銀短観)』よりバークレイズ証券作成
ソフトデータは景気の予測において有用であることは言うまでもないが、最終的な景気の強弱はハードデータで確認される。そのハードデータがソフトデータの発するメッセージをサポートしていない。上述した機械受注(ハードデータ)の弱さは、短観が示唆する製造業設備の不足感(ソフトデータ)に疑問を投げかける。日銀短観の情報のみで設備投資の先行きを展望することには慎重でありたい。
■「追加緩和できるか」という深刻な問題 札割れ多発がもたらすリスク
慎重な景気判断が求められる中でも、安易に追加緩和を主張することはできなくなってきている。
追加緩和の有無の判断を難しくしているのは、「追加緩和できるか」というシンプルだが深刻な問題である。この観点からは、追加緩和による札割れの多発リスク、ひいてはQQEが「意図せざるテイパリング」に追い込まれて「オープンエンド」ではいられなくなるリスクが2016年後半に向けて強く意識される。
確かに札割れは、それ自体が長期金利を抑える要因になりうるという点では、政策運営上、直ちに日銀が対処するべき課題ではないかもしれない。一方で札割れは、現行QQEの制度設計の一つである「オープンエンド」という点に疑念を生じさせる可能性もある。オープンエンドという側面が弱まれば、皮肉にも、期待に働きかける経路がかえって弱くなるリスクがある。こうした中、追加緩和は当面ないであろう。
■2%目標の実現がなくとも政府は「デフレ脱却宣言」
安倍首相の自民党総裁としての任期は2018年9月であり、現行の自民党党則を所与とする限り、延長はできない。したがって、どんなに遅くとも、2018年9月までにはアベノミクスの成果の象徴として「デフレ脱却宣言」がなされるはずだ。仮に「CPI前年比2%」が実現していなくても、政府が「デフレ脱却宣言」をすることは十分ありうる。
しかも「デフレ脱却宣言」がなされれば、何が何でも物価を押し上げるという金融政策は政治的に是認されないであろう。日銀法第4条は金融政策が政府の政策の基本方針と整合的であることを求めている。そのため、デフレ脱却宣言が出れば、「CPI前年比2%」を金科玉条のごとく掲げた金融政策運営は影を潜めるであろう。つまりテイパリングの引き金は「CPI前年比2%」ではなく、政府による「デフレ脱却宣言」だ。
■2016年には「札割れ」リスクが顕在化 さらに2017年は「テイパリング」が課題に
こうした中、中長期的な金融政策の焦点は以下のように整理される。
まず2016年の課題は「札割れ」である。同年後半にも国債買い入れオペの札割れリスクが顕現化しよう。
先述の通り、札割れは政策運営上、直ちに日銀が対処すべき課題ではないかもしれないが、現行QQEの制度設計の一つである「オープンエンド」という点に疑念をもたらすきっかけになりうる。オープンエンドという側面が弱まれば、期待に働きかける経路が弱くなるリスクがある。
2017年以降の課題は「テイパリング」である。上述したように、テイパリングの引き金となりうるのは政府によるデフレ脱却宣言である。安倍首相の自民党総裁としての任期(2018年9月)を踏まえると、どんなに遅くてもそれまでに政治的誘因からデフレ脱却宣言がなされるはずである。
同宣言がなされれば、「CPI前年比2%」とは独立して、テイパリングが視野に入る。一方「CPI前年比%%」は主要中央銀行間でナッシュ均衡(誰もそこから離脱する誘因をもたない状態)となっているため、その後も「象徴」として維持されよう。
いずれにせよ、CPI前年比2%の実現ではなくデフレ脱却宣言がテイパリングの引き金となるであろう。早ければ2017年末ごろにもそうした事態が想定される。
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