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GPIF「損失8兆円」で怒りを向けるべきは誰か?(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/218.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 12 月 02 日 08:58:05: igsppGRN/E9PQ
 

            7〜9月期のGPIF運用実績は約8兆円の損失。怒りや不安を覚える人もいるだろうが…


GPIF「損失8兆円」で怒りを向けるべきは誰か?
http://diamond.jp/articles/-/82547
2015年12月2日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] ダイヤモンド・オンライン


■チャイナショックで7〜9月期に大損失 だが運用評価としては「褒める」べき

 公的年金の積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、7〜9月期の運用実績を発表した。この時期は、中国の景気減速懸念が表面化した通称「チャイナショック」で内外の株価が大幅に下落した時期だったので、どのくらいの損失額になっているかが発表前から注目されていた。

 発表された損失額は7兆8899億円、収益率では−5.59%であった。9月末の運用資産額は135兆1087億円だ。

 絶対額として大きな損失なので、「GPIFは何をやっているのだ」と怒る方、あるいは心配になる方がいらっしゃるかもしれないが、少なくともGPIFの運用部隊に対して「怒る」のは正しくない。

 GPIFは昨年の10月に新しい「基本ポートフォリオ」を定めた。この基本ポートフォリオの内訳は、「国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%」である。

 7〜9月期のそれぞれの資産の収益率は、国内債券が0.62%、国内株式は−12.78%、外国債券は−0.91%、外国株式は11.01%(それぞれGPIFが事前に「ベンチマーク」として定めた指標による)なので、基本ポーフォリオ通りであったならば、加重平均した収益率は−5.87%となる。

 この期間の現実の収益率は−5.59%だから、この間GPIFの運用部隊は、0.28%ほど基本ポートフォリオによる「複合ベンチマーク」を上回っている。常識的な運用評価としては、「よくやった」とされなければならない。期首の運用資産額約141兆1000億円と掛け算すると、4000億円近く損失を少なく済ませたことになる。

 この間のGPIFの運用は、「勝ち・負け」で言うなら、「勝ち」なのだ。運用の仕事ぶりに関しては「褒める」のがフェアだ。

 主な勝因は、内外の株式を「アンダーウェイト」していたことだ。GPIFは6月末時点で国内株式を23.39%、外国株式を22.32%と、標準とされる25%よりも少なく持っており、運用期間中にもあまり大きくは買い増ししなかった。

 なお、この期間の内外株価の大幅な下落の影響で、9月末時点での国内株式と外国株式の構成比率はそれぞれ21.35%、21.64%に6月末よりも減少している。運用の行動としては、この期間中に国内株式も外国株式も買い増ししているはずだが、株価の下落がこれを上回って比率が減少した。

 その後、現時点までに、株価がかなり戻っているので、この比率は上昇していると思われるが、基本ポートフォリオの「25%」までは、内外株式両方ともまだ少し余裕があるはずだ。

 ただし、念のため付け加えると、GPIF並みの巨額資産の運用で、四半期単位でリスク資産をオーバーウェイトしたりアンダーウェイとしたりを行って超過リターンを取りに行くことは現実的ではない。基本ポートフォリオに近い配分でポートフォリオを持って、小幅な調節と、中身の運用の改善を目指すのが普通だ。基本ポートフォリオ変更に伴う「移行期間」が終わったら、各資産に設定された「巨大な」許容乖離幅は、もっと小さなものにしていいのではないだろうか。

■「長期運用だから」と言うが短期の結果でも「損は損」

 GPIFは情報公開を進めようとしており、動画サービスのYouTube内にGPIF専門のチャンネルである「GPIF channel」を作り、7〜9月期の実績を発表する記者会見を公開した。ご興味のある読者は、是非ご覧になってみてほしい。

 かつて運用会社に勤めていた筆者としては、「年金運用は、短期的な損益ではなく長期的な損益で見るべきだ」といった、運用会社の言い訳として聞き慣れた台詞を、日頃は言い訳を聞く立場にあるGPIFが熱心に言っているのが面白い。

 長期的に収益を獲得することを目的に運用している資金だし、資金サイズ的に身軽に動くことができる運用条件ではないので、短期の損益で良し悪しを評価されてはたまらないという意識があるのだろう。

 ただし、短期的な損であっても、「損は損」であり、その後に必ずそれが取り戻せるという保証はないのであって、「長期、長期…」と言い募るのは、不適切だ。

 四半期報告の説明としては、複合ベンチマークに対する勝ち負けとその要因を、その期間の仕事の良し悪しの評価として、第一に述べるべきだった。本当はGPIF自身の口から「この四半期は約8兆円の損失になっていますが、運用としては上手くいっていると評価されるべき結果です」と言い切ってほしかった。

■市場運用開始時からの累積で「安定的な収益」を強調するのは不適切

 説明者は、「市場運用」を始めた2001年からの累積収益の推移を表すグラフを見せて、かなり安定的に年率にして2.79%になる収益を稼いできたと強調していたが、このグラフの見せ方はやや不適切だ。

 なぜなら、期間中、現在のハイリスクな運用方針になったのは、昨年の10月末のことだからだ。それ以前の低リスクな運用方針(「基本ポートフォリオ」が)だった時期の累積収益額の変動度を見ると、まるで今後も「安定的に」収益を稼ぐことが期待できるかのように見えてしまう。

 市場運用開始の時期からの累積収益を見せる点に関しては、現在のGPIFについて説明しているというよりは、過去の厚労省の方針を事後的に正当化したがっているようなニュアンスを感じた。

 なお、YouTube動画では、「長期運用」以外に、GPIFがハイイールド債に投資することに対する説明が行われていた。

 これは、一部の週刊誌などが「ジャンクボンドへの危険な投資だ」と危機感を煽るような記事を載せたことに対して、反応したものではないかと推測される。

 この説明は、おおむね納得できるものだった。

 ハイイールド債は、信用リスク(デフォルトを起こすリスク)がある分、利回りの高い債券への投資だが、巨額の資金があって大規模な分散投資が可能なGPIFにとって、むしろ適切な運用資産だ。

 個人的には、国内企業の大株主となることで利益相反の心配がある国内株式への投資よりも、筋のいい運用であるようにも思える。

■こんなにハイリスクが必要なのか?問題は運用目標と基本ポートフォリオ

 話が前後するが、GPIFがYouTubeで説明した長期のパフォーマンスは、基本方針が現在のハイリスク運用に変更される前までの期間を採るとしても、特に公的年金の運用として意識される賃金上昇率と比較すると結果的に「まずまず」のリターンを獲得してきた。

 デフレから脱却した後の、賃金上昇率のハードルが上がる経済環境に対応するとしても、四半期で約8兆円も損が出るようなハイリスクなポートフォリオが必要なのだろうか。

 本連載では、「名目賃金プラス1.7%の確保を目指せ」という、リスクを見ずにいきなりリターンを求める厚労大臣の運用目標の与え方が、運用の考え方として不適当だと何度か指摘してきたが、この問題に加えて、「この運用目標なら、もう少しローリスクな運用方針でも達成できるのではないか」という検討も必要であるように思われる。

「国内株式25%、外国株式25%、外国債券15%…」は、アベノミクスを盛り上げたいという首相官邸に、「指示された」と言わないまでも、その期待を忖度して、リスク資産を「盛り」過ぎたような感じがする。

 金融資産の他に自分の稼ぎもあれば不動産もあるといった、元気でお金持ちのビジネスパーソンの金融資産の運用方針であれば、GPIFの基本ポートフォリオくらいの比率でリスクを取ってもいいと思うが、多くの国民は、公的年金の運用でここまで大きなリスクを取ることを望んでいないのではないだろうか。

 目標の与え方と共に、基本ポートフォリオの作り方も検討の対象にすべきだろう。

「四半期で8兆円の損」が出ることの適否については、GPIFの運用部隊ではなく、まず、厚労大臣及び、基本ポートフォリオを作った運用委員会に見解を求めるべきだろう。


 

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コメント
 
1. 2015年12月02日 09:06:03 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
イエレンFRB議長は賃上げを重視 正常化する米国金融政策と日本への影響 国によって異なる中央銀行の業務目的
【第24回】 2015年12月2日 宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]


 米国の中央銀行であるFRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)が、2015年12月15日〜16日のFOMC(連邦公開市場委員会:Federal Open Market Committee) において、10年振りの利上げを実施する可能性が高まっています。さらに金融市場では、すでにその先の利上げの計画をも織り込み(予想し)つつあります。

 米国は2008年9月に発生した世界金融危機「リーマンショック」の緊急時対応として、2008年11月から量的金融緩和を続け、2015年11月まで7年間継続しました。この量的金融緩和は米国株式を7年間にわたって上昇させ続けたエンジンとなりました。しかし、FRBは2015年11月に量的金融緩和を終了し、徐々に資金量を減らしています。次は、金利の引き上げ(利上げ)という流れとなるわけです。

 世界に数ある中央銀行の業務目的は同じ、と考えている方が多いかもしれませんが、実は、各国の中央銀行ごとにその目的は異なります。各国の中央銀行法を見るとそのことがよくわかります。たとえば、ECB(欧州中央銀行:European Central Bank)は、ある意味一番“中央銀行らしい”中央銀行であり、「物価」の安定のみを目標としています。それに対し、FRBは「物価」の安定と「雇用」の最大化(景気対策)の2つを目標としているめずらしい中央銀行です。

 ちなみに日本銀行の場合は、物価の安定のほかに、政府の経済政策に整合性のあるもの、と半歩だけ踏み込んだ形になっています。具体的には、日本銀行法には政府との関係として、第四条に「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」となっています。つまり「政府が景気刺激策をとっているときに、引き締めは行うな」ということで、ある程度、方向性を合わせなければなりません。

雇用の最大化がFRBの目標

 経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)には、景気指標として失業率が入るのが一般的です。また、世界各国の経済当局には「強い思い」というものがあることが多いのです。米国の政策担当者の強い思いには、米国における最大の金融危機であった「大恐慌」を起こさない、というトラウマに近いものがあります。そのため中央銀行ですら、景気対策、とくに雇用の最大化に注力しています。このような中央銀行は世界に類を見ません。

 FRBのトップである議長の人選にもそうした考えが表れています。現在のFRB議長は、経済学者(博士)のジャネット・イエレン女史(69歳)ですが、彼女の専門は「労働経済学」です。筆者は彼女の博士論文を読みましたが、そのテーマは「賃金上昇が企業経営、そして経済に与える影響」でした。

 ちなみに副議長は、こちらも経済学者(博士)のスタンレー・フィッシャー(72歳) で、彼はまさにマクロ経済学と金融市場の専門家(大御所)で、前職はイスラエル中央銀行総裁です。彼は、イスラエルで利上げと利下げと両サイド機動的に対処したという数少ない中央銀行総裁でした(就任期間中は金融緩和か引き締めかのどちらかのことか多い) 。フィッシャー先生が、ドーンブッシュ先生と書いた『マクロ経済学入門』は、筆者が大学生のころの教科書として懐かしく思い出されます。

金融政策“正常化”に向けた利上げ判断のカギ

 FRBがすでに量的金融緩和を止め、12月に利上げをすること。この過程をFRBでは「正常化」と呼んでいます。つまりFRBは、ゼロ金利、そしてその先の量的金融緩和を「異常」と考えているのでしょう。

 そもそも金融緩和、それも量的金融緩和とは短期的な政策であり、金融市場を安定化させる役割がありました。それは痛み止めのような役割であり、金融市場の商品の価格を上昇させます。そのため、バブル崩壊のような状況には一時的に効き目がありました。

 しかも、中央銀行は「フォワードガイダンス(Forward Guidance)」と称して、長期に渡る政策、つまり金融緩和の継続を約束しました。これは、非常時の対応とすれば、一定の役割を果たしたといえます。しかし筆者は、最近逆の、マイナスの効果が出てきているように考えています。つまり、非常時から脱却しつつある状態では、金融緩和の継続は金融市場においてリスク感覚を麻痺させることになり、金融市場の参加者の中には、逆にリスクを過度に取り始める者が増えてきます。結果的に、市場全体としてみれば「フォワードガイダンス」が導入される前以上にリスクが蓄積されることになっているのではないでしょうか。これは危険なことであると考えます。

 また、痛み止めを飲んでいるときには、本当に悪い患部は放置してしまい、余計に悪化させる。つまり、金融緩和を行っているときには、経済の改革を止めてしまう特徴があります。金融政策はあくまでも“短期”の経済政策なのです。

 今回の利上げの判断をするにあたっては、失業率に関しては、雇用増加数などの雇用の面を見ると問題はなさそうです。物価に関しては、イエレンが注目しているのは「賃金上昇率」です。これは、彼女自身の理論に基づいています。賃金が上がれば景気は良くなり、物価も上昇すると考えているのです(この考え方は「新アベノミクス」において安倍政権も取入れていると考えています)。つまり、この賃金上昇率がカギとなっており、これをクリアできれば、利上げを実施できることになるのでしょう。

 米商務省の雇用統計によると、10月の賃金上昇率は前年同月比2.5%と、2009年以来の上げ幅となっており、イエレンの目標圏に達していると筆者は考えています。以前、中央銀行の役割が固まってきた時と比べると、当時は先進国でもインフレとの闘いが中心でしたが、最近は経済の成熟化により、先進国はインフレになりにくい構造になってきています。それは当初、予想していた目的(インフレ抑制)とは逆のものになっているのです。一方、経済の構造がシンプルで成長性の高い新興国では、現在でも高インフレと戦っています。

米利上げで日本株は上がり円安ドル高加速へ

 利上げの問題点としては、もちろん米国内の金融市場や景気に対してネガティブな影響をもたらすこともありますが、そこは米国内のことでもあり十分な経済分析が行われて判断するので、何とかこなしていくものと思われます。逆にその自信がないときには、FRBは利上げを行わないでしょう。

 本来、FRBはその成り立ちからいっても米国経済のみを考えていてもいいはずです。しかし、歴史を振り返ると過去の米国の利上げの影響は極めて大きく、特に新興国から資金が米国に流出(逆流)することになり、経済危機を引き起こしたことが多くありました。たとえば、アジア通貨危機、南米危機なども同じ構図で、米国の利上げを要因として発生しました。

 今回は、議長をはじめ要人の「利上げ」についての発言が非常に多く、経済危機を引き起こさないように、またそれが米国経済に悪影響を与えないように、非常に配慮しているように見えます。さらに、国内と海外の双方に向けて予告しているような観すらあります。つまり、新興国に対して、十分準備をしておきなさいよ、と言っているのです。

 最近のFRBの声明文では、中国など海外市場に対する懸念部分が削除されていますが、当然、念頭には置いているはずです。

 今回の米国の日本経済に与える影響を考えてみましょう。まず、株価ですが、利上げ自体は、すでに米国の株式市場には織り込まれており、しかも、市場は利上げよりも米国の景気回復の強さを重視しています。米国株は利上げ後、いったん売られるでしょうが、強い地合いも戻るでしょう。米国株の強い地合いに惹かれることになろう。日本株も、基本的には同じ地合いになるものと思われます。 

 一方、ドル円為替市場は、今回の利上げは利上げ局面の始まりであり、さらに継続するであろう利上げにより、金利差に注目が集まり、中期的にドル高円安に向かうことになる可能性が高いと思います。

 したがって、日本経済に対する影響は、大きな心配には及ばないと考えられます。市場はすでに、これらのことを織り込んでいるともいえますが。

※「宿輪ゼミ」は2015年9月に、会員が“1万人”を超えました。
※ 本連載は「宿輪ゼミ」を開催する第1・第3水曜日に合わせて、リリースされています。連載は自身の研究に基づく個人的なものであり、所属する組織とは全く関係ありません。


【著者紹介】
しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、来年の4月で10年目、まもなく200回開催、9月に会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)などがある。
Facebook宿輪ゼミ:https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/
公式サイト:http://www.shukuwa.jp/
連絡先:info@shukuwa.jp
http://diamond.jp/articles/-/82588


2. 2015年12月02日 09:11:00 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
海外運用や株式ウェイトの上昇は、一見、円ベースで見ればハイリスクだが、仮に、さらに円安が加速するのであれば、
インフレと国債下落リスクに重点を置いた妥当な判断となる。
いずれにせよ今後の規制・税制などの改革と国内景気次第で長期的な評価は決まる。

3. 2015年12月02日 11:42:37 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE

年金機構へのサイバー攻撃はまだ「序章」

米シマンテックのマイク・ブラウンCEOに聞く

2015年12月2日(水)小笠原 啓

 125万件の個人情報が流出した、日本年金機構へのサイバー攻撃は序章に過ぎない――。セキュリティソフト大手、米シマンテックのマイク・ブラウンCEOは日本企業の経営者に警鐘を鳴らす。マイナンバーの導入や東京五輪などで、日本を標的にした攻撃はますます増えると予測する。攻撃者の動機や最新の手口などを聞いた。
(聞き手は小笠原 啓)

マイク・ブラウン氏
米シマンテック社長兼CEO(最高経営責任者)
2014年9月より現職。2005年に米ベリタスソフトウェアとの合併でシマンテックの取締役として加わった。米スタンフォード大学経営大学院修士。(写真=新関 雅士)
日本年金機構の情報流出など、国内でのサイバー攻撃被害が目立ちます。

ブラウン:攻撃の数は間違いなく増えています。サイバー攻撃については日本語の壁はありません。今では日本と海外の区別なく、コンピュータウイルスは蔓延しています。全世界では年間8000万〜9000万件のサイバー攻撃があります。かつては米国に集中していましたが、日本もかなり狙われるようになってきました。

 日本年金機構への攻撃以降もサイバー攻撃は減っていません。むしろさらに増えるでしょう。来年、マイナンバー制度が導入されると、それをターゲットにした攻撃が登場すると予想しています。

「ゼロデイ」攻撃が記録的な数に

攻撃の手口は変わってきたのでしょうか。

ブラウン:非常に洗練され高度になってきました。

 (人間の心の隙やミスにつけ込む)ソーシャルエンジニアリングを駆使してメールを偽装。同僚や友人から届いたように見せて開封させ、マルウエア(悪意のあるソフトウエア)に感染させる「標的型攻撃」は、全世界的に流行しています。

 標的型攻撃により社内ネットワークに侵入した後で、複数のファイルを送り込み、攻撃対象の内部でマルウエアを組み立てるケースもあります。

 ウェブサイトにユーザーを引き寄せて、マルウエアを仕込んだファイルをダウンロードさせる「水飲み場攻撃」の手口も高度化しています。

 未知のソフトウエア脆弱性を狙った「ゼロデイ」攻撃も記録的な数になっています。攻撃した事実を検知する前に、情報を盗み取られることすらあります。

サイバー攻撃の4分の3は金銭目的

攻撃者は何を狙っているのでしょうか。

ブラウン:1990年代は、目立って有名になりたいというのがウイルス作成者の動機の一つでしたが、今は違います。

 攻撃を詳細に分析すると、4分の3が金銭目当て。つまり「グリード(貪欲さ)」です。重要な情報がデジタル化されて、様々な場所に格納されるようになりました。銀行口座やクレジットカードの情報は、盗み出せばブラックマーケットで高く売れます。

 攻撃の10%は、政治的・社会的な主張を伴う「ハクティビズム」です。大義名分を持ち、ビジネスの邪魔をすることで意思表明したいというタイプですね。気候変動に注目してほしい人が、石油会社のウェブサイトを攻撃するといった例があります。

 残りの15%は、サイバー空間におけるスパイ活動。ソフトのソースコードや会社の重要機密を盗み出そうとするものです

センサーや自動車など、様々な端末がインターネットにつながるようになりました。IoTが急速に進展する中で、セキュリティ対策はできているのでしょうか。

ブラウン:インターネットにつながる多種多様な端末は「コネクテッドデバイス」と呼ばれています。IoTの分野ではそうしたデバイスを認証し、端末ごとに保護することがますます重要になるでしょう。

 私はこれをビジネスの機会だと捉えています。IoTの世界でどんな攻撃が起きていて、どんなデバイスが狙われているのかを分析すれば、新たなサービス提供につながるからです。

 シマンテックは10億個のコネクテッドデバイスに対応し、既に1億7500万の端末を保護しています。150カ国の工場で5700万個のセンサーを保護しています。企業と消費者、モバイルを合わせた電子メールの30%をスキャンし、250億のファイルがウイルス感染していないかをチェックしています。こうした情報を総合的に分析すれば、脅威を理解できると考えています。

パソコンにおけるWindowsのような、圧倒的なシェアを占めるOSがIoTにはありません。

ブラウン:Windowsのような共通の攻撃対象がないので、金銭目的の攻撃者はターゲットにしづらいでしょうね。一つの攻撃手法を様々な相手に使えた方が効率的ですから。IoTでは攻撃対象が分断されるので、多様なバリエーションを考える必要があります。

 逆に、守るのも難しくなります。とりわけ、社会インフラをどう防御するかが重要な課題になります。配電網や水道、交通機関などをどう守るか、戦略を立て直すべきだと思います。

日本はこれまで以上に狙われる

日本の経営者はセキュリティについて何を考えるべきでしょうか。

ブラウン:デジタル情報の価値は年々高まっています。攻撃によって漏洩したらどんな問題が生じるか、真剣に考えるべきでしょう。

 サイバー攻撃の範囲が広がり、新しい技術が投入されています。攻撃者はクラウド技術やモバイル端末を駆使し、これまでより高度かつ持続的に攻撃してきます。

 全世界では、情報漏洩がもたらす被害額の10%しかセキュリティ対策に投じられていません。企業はもっとセキュリティ対策を強化し、デジタル情報を保護すべきだと考えます。

 世界経済がソフトウエアに依存する度合いはどんどん高まっています。そして、ソフトには脆弱性がつきものです。そういう認識を、企業は高める必要があるでしょう。今後は、セキュリティ人材の教育や監視サービスの需要が高まると考えています。

 日本を狙ったサイバー攻撃は年々増え、質も大きく変容しています。年金機構への攻撃で終わりではありません。マイナンバーが始まり、2020年には東京五輪も控えている。これまで以上に、日本はサイバー攻撃の対象になるでしょう。

このコラムについて
キーパーソンに聞く

日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/112700092/?ST=print


 

河野国家公安委員長:「イスラム国」のサイバーテロ警戒、対策強化へ
2015/12/02 10:33 JST

    (ブルームバーグ):河野太郎国家公安委員長はパリで発生した同時多発テロを受け、過激派組織「イスラム国」(IS)が日本でも公共交通機関やエネルギー関連施設などの重要インフラを狙ったサイバー攻撃を行う可能性を指摘、来年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年の東京五輪開催に向けた対策強化を進める考えを明らかにした。
河野氏は1日、ブルームバーグのインタビューで、「ISはインターネットを使った広報やリクルーティングを非常にうまくやっており、相当な能力のある人がいる。そう遠くない将来にサイバーの世界で重要インフラに攻撃を仕掛けるようなところへ行く」と述べ、「テロリストより2歩、3歩先へ行くことが大事だ」との認識を示した。
テロ対策に関連した各国との連携について河野氏は、「CIAやMI6の関係者と話をし、来年のサミットやオリンピックに向けたサポートをお願いしているところだ」と述べ、米中央情報局や英国の情報機関にも協力を要請していることを明らかにした。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net;東京 Isabel Reynolds ireynolds1@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 谷合謙三, 広川高史
更新日時: 2015/12/02 10:33 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NYPHQ56JTSE901.html



4. 2015年12月02日 17:11:15 : uqeHFKdlhI : fgsK7oNpLwo
安倍政権は僅か3ヶ月で5.7兆円もの年金積み金を禿げたかに献上した。

@株投資が以前の12%なら    −2兆2224億円
A安倍政権が50%に上げた結果  −7兆9706億円
安倍政権の失政による損失A−@ −5.7兆円の損失

http://d.hatena.ne.jp/skymouse/20151201/1448952970

金融緩和を見越してGDP低下でも株高
巷は、爆働きで児童の貧困増殖、若者は、結婚出来ず出生率は底を這う。

金融緩和で民衆に回るべきパイの分け前を横取りするな!


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