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揺れるアジア金融
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/184.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 12 月 01 日 04:56:23: Mo7ApAlflbQ6s
 


※日経新聞連載


[時事解析]揺れるアジア金融

(1)企業財務に懸念 債務依存が重荷に

 アジア地域の金融を取り巻く環境に懸念が強まっている。中国経済減速や米金融引き締め観測で、成長を支えた債務依存構造が揺れている。

 1997年の通貨危機が終わるとアジアは高成長を続けた。タイなどが工業化に成功し、国際サプライチェーン(供給網)の一角を占め、世界の成長センターになった。

 企業が積極的に資金を借り入れ、設備投資を増やした。香港、シンガポール、韓国、マレーシアで民間債務(融資と社債の合計)が国内総生産(GDP)の100%を超えるなど、日本より債務依存が高い。中国を除くアジア新興国の銀行借り入れはGDPの110%と、アジア危機時(100%)を上回っている。

 ところが2010年以降、競争激化と人件費上昇が響き、自己資本利益率(ROE)が低下。ここにきて原油安・商品安の影響を受ける1次産品関連企業や対中輸出企業も苦しくなりつつある。米ゴールドマン・サックスのティモシー・モー氏は「アジア市場の成長期待は弱まっている」と指摘する。

 金融面では米引き締め観測を背景に、負債が膨らんだ企業はドル資金の流出に伴う金利上昇圧力にさらされている。最近では、市場調達が増えていた信用力の低い企業の社債価格も大幅低下している。

 通貨危機の教訓から政府は借り入れを抑制しており、政府債務比率はシンガポールを除くとGDPのほぼ6割以内と国の財政は健全だ。しかし、経常黒字を支えてきた企業セクターの変調が経済全体に暗い影を落としている。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞11月23日朝刊P.19]

(2)膨らむ家計債務 不良債権予備軍に

 家計の所得はアジアの成長とともに増えたが、より豊かな生活の追求で債務も膨らんでいる。

 家計債務の国内総生産(GDP)比率はシンガポール、香港、韓国、台湾、マレーシア、タイで日本よりも高い。特に、韓国は同比率が84%と主要新興国で最も高い。

 家計債務増加の一因となっているのが住宅ローンだ。個人所得の増加とともに住宅支出も増え、マレーシアでは住宅ローンは2008年の金融危機前の約2倍になった。

 シンガポールや香港では債務の多くが不動産担保を設定しているが、シンガポールでは不動産価格が下がり始めている。韓国やマレーシアでは無担保融資も多い。

 家計債務に関連して注目されているのが国内銀行の不良債権の動向だ。タイ、インド、インドネシアなどで銀行の不良債権比率が上昇傾向にある。とりわけ消費者金融関連と中小企業向けで上昇が著しい。

 またインドやタイでは不良債権に分類されない要注意先債権が少なくない。景気が悪化すれば回収に問題が出かねない不良債権予備軍だ。タイの大手銀では不良債権比率は約3%だが、要注意先を加えた比率は約6%になる。

 通貨危機で金融不安が起きたこともあり、多くの国は銀行に自己資本を厚めに積ませている。すぐに銀行破綻が相次ぐ状況にはないが、銀行の融資余力が低下する公算が大きい。

 米JPモルガンのジョシュ・クラクセック氏は「債務環境は1997年の通貨危機前と似た不安定な状況にある」と警鐘を鳴らしている。
(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞11月24日朝刊P.11]

(3)通貨切り下げ競争の懸念 迫られる構造改革

 アジアで通貨切り下げ競争が懸念されている。

 きっかけは、日銀の量的・質的金融緩和とそれに伴う円安だ。中国は8月、人民元の変動幅を拡大し、事実上、元を切り下げた。インドは9月末に、政策金利を市場予想を上回る0.5%も引き下げた。

 各国とも金融緩和は国内景気刺激が目的としている。ただ利下げは結果的に通貨安に作用しやすく、それによって輸出ドライブをかけたい思惑も透けてみえる。

 1997年の危機後各国が通貨安政策をとるなか、中国が元切り下げを回避し、危機は終息した。しかし今回は中国がアンカーになるか不透明だ。

 スイス金融大手UBSのダーク・エッフェンベルガー氏は「アジアが通貨切り下げ競争に入るリスクが強まった。今後元がさらに下がり、ほかのアジア通貨は平均6%程度下がる」と予測する。

 副作用は小さくない。通貨安を狙った金融緩和は国内バブルを生んだり、借金依存を強めたりする恐れがある。各国が通貨安に走れば、国際金融が混乱しかねない。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は19日、「通貨の競争的切り下げを回避し、あらゆる形の保護主義に対抗する」ことを確認。米財務省は10月の為替報告書で韓国に「ウォン高防止のための為替介入を続けるべきではない」と警告した。

 アジアは多くの国が輸出依存で成長を図っているが、パイの争奪戦に限界があるのは明らかだ。持続的な成長を続けるには、各国が内需中心の経済構造への転換に真剣に取り組む必要がある。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞11月25日朝刊P.32]


(4) デフレリスク台頭 高齢化も不安材料

 2015年はシンガポール、台湾、タイで消費者物価上昇率がマイナスとなる公算が大きい。日本以外のアジアで物価下落が起きるのは珍しい。

 中国経済減速の影響で輸出需要が低迷し、対中依存度が高い韓国、台湾などでデフレ圧力が強まっている。また原油・商品価格の下落は1次産品輸出が多いインドネシア、マレーシア、タイなどの経済を直撃した。

 すでに卸売物価は台湾、シンガポール、フィリピンなどで前年比5%以上下がっている。それを反映した製品輸出でデフレ圧力がアジア全体に広がりつつある。

 高成長期に顕著だった賃金上昇圧力も、成長減速とともに鈍ってきた。「弱い雇用・賃金の伸びが消費を抑えている」(英HSBCのジョセフ・インカルカテッラ氏)ため、需要は高まりにくい。

 構造的な問題も影を落とす。アジアではインドなど一部を除き急速に高齢化が進む。現在、シンガポール、マカオ、台湾、香港、韓国の出生率が日本より低く、50年の65歳以上人口の比率は台湾、香港、韓国が日本とほぼ同じ約35%、タイでも30%に達する見通しだ。

 しかもアジアでは年金など社会保障制度の整備が必ずしも十分でない。社会保障制度の改善と高齢化対応が同時に到来するため、財政負担が急激に増す。

 英調査会社オックスフォード・エコノミクスのアダム・スレーター氏は「さらなる外的ショックが加わればデフレリスクは飛躍的に高まる」と警告している。債務が膨張したアジアにとって、債務負担が増えるデフレは危機に直結しかねない。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞11月26日朝刊P.29]

(5)邦銀の存在感増す 欧米勢とは対照的

 2008年の金融危機以降、アジアの時代といわれたが、欧米銀行は関与に比較的慎重だった。

 15年6月末までの5年間の中国を除くアジア新興国向け融資をみると、英国、ドイツの銀行は残高を減らした。フランスは2%増、米国は12%増にとどまっている。

 一方、邦銀は融資残高を2倍以上に伸ばした。新規融資は対象の工場などを視察、審査するのに手間暇がかかる。にもかかわらず、邦銀はアジア拠点で2ケタ増を続けた。金融庁がメガバンクの海外での地位向上を働きかけたことも大きい。

 だがアジアの成長減速で、信用コストの増加は避けられない見通しだ。原油安の影響でアジアで手掛けたエネルギー関連のプロジェクトファイナンス(事業融資)の不良化も懸念されている。

 アジア向けリスク管理債権の動向をみると額は比較的小さいが、9月までの半年で三菱UFJフィナンシャル・グループで23%、みずほフィナンシャルグループで67%増えた。三井住友フィナンシャルグループは出資するインドネシア銀行株で550億円の減損処理を実施。同社の宮田孝一社長はアジア向け融資について「案件ごとに取捨選択する。大幅増のイメージは全く持っていない」という。

 邦銀は1995年以降アジア向け融資で貸しはがしをして97年のアジア危機の一因をつくった。欧州銀がアジア向け融資を見直す中で、存在感の高まった邦銀が再び融資回収姿勢を強めれば、危機が再燃するリスクが強まる。邦銀のアジアとの向き合い方が問われる。

(経済解説部 太田康夫)

=この項おわり

[日経新聞11月27日朝刊P.27]

 

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コメント
 
1. 2015年12月01日 22:37:03 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
英中銀:リスクは先進国・地域から新興市場にシフト
2015/12/01 19:53 JST
    (ブルームバーグ):イングランド銀行(英中央銀行)は景気下降局面に備えるための資本の積み増しを来年3月にも銀行に求める方針だ。
中銀の金融行政委員会(FPC)は「カウンターシクリカル(景気変動抑制的)」資本バッファーを段階的に1%まで引き上げることを求める意向。英経済が危機時の落ち込みから回復したことに加え、金融安定へのリスクが再浮上したことが理由。カウンターシクリカルバッファーが満たされれば特定のリスクに対して当局が銀行に割り当てを求める資本が減るため、その部分を利用できるようになる。
カーニー総裁は1日の記者会見で、「金融環境が危機後の段階を脱したことから、FPCはカウンターシクリカルバッファーの適切な設定について積極的に検討することができる」と説明。「現在の国内の展開では総合的なリスクを高く見積もることが妥当だ」と指摘した。
総裁は安定へのリスクが高まっている兆候として商業用不動産や賃貸を目的で購入される不動産市場の力強さ、家計の負債水準の高さ、経常収支の赤字を挙げた。与信は緩やかにだが拡大しているとも指摘した。
中銀は銀行ストレステスト(健全性審査)の結果とともに金融安定報告を発表し、資本に関するFPCの考えを示した。
カウンターシクリカルバッファーは銀行が好況時に融資を増やして景気拡大をあおり、バブル破裂時には急減させて景気悪化を増幅させる傾向に対処するためのもので、FPCは1日このバッファー比率をゼロのままとしたが、次回の四半期会合で「入念に」見直す。
「FPCはこのバッファー比率の適切な設定を3月に入念に見直す」とカーニー総裁が述べた。
原題:Bank of England Sees Countercyclical Buffer Rising on Risk (2)(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン John Glover johnglover@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Patrick Henry phenry8@bloomberg.net Richard Partington
更新日時: 2015/12/01 19:53 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NYO53U6JIJUO01.html


 


豪中銀、政策金利を予想通り据え置き 7カ月連続

[シドニー 1日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は1日、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを2.0%に据え置くことを決定した。据え置きは7カ月連続。

ただ、インフレ率は低水準となっているため、向こう数カ月の経済回復がさえない内容となれば追加利下げの余地はあるとの見方も再び示した。

豪中銀のスティーブンス総裁は声明で、「理事会は今回の会合で、経済状況の改善見通しがここ数カ月で若干強まっており、政策金利を据え置くことが適切と再び判断した」と指摘した。

ロイターのアナリスト調査では、22人全員が金利据え置きを予想していた。市場も利下げはほぼないと予想し、豪ドルへの影響も限定的となっていた。

インターバンク先物市場では、引き続き来年の追加緩和の確率が約50%織り込まれている。次回の理事会は2016年2月に予定されている。
http://jp.reuters.com/article/2015/12/01/rba-a-idJPKBN0TK39K20151201



豪中銀の声明全文
[シドニー 1日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)が1日、政策理事会後に発表した声明は以下の通り。

政策理事会はきょうの会合で政策金利のオフィシャルキャッシュレートを2.00%に据え置くことを決定した。

世界経済は、アジアの状況がいくらか弱まったものの、米国の成長と欧州の回復が続く中、緩やかなペースで拡大している。主要コモディティ(商品)価格は1年前よりも大幅に値下がりしており、オーストラリアも含めて供給の拡大を反映している。オーストラリアの交易条件は悪化している。

米連邦準備理事会(FRB)は今後、政策金利を引き上げ始めると見込まれているが、その他主要中央銀行の一部は緩和策を継続している。金融市場のボラティリティーはさしあたり幾分低下した。一部の新興国に対する信用コストは依然として1年前よりも高い状態にあるが、全般的に世界の金融状況は引き続き非常に緩和的だ。

オーストラリアでは、鉱業セクターの設備投資が大幅に減る中でも経済の緩やかな成長が続いていることが入手可能な情報で示されている。国内総生産(GDP)の伸びはここしばらく長期平均を若干下回る一方、企業調査では鉱業以外のセクターの状況が過去1年で徐々に改善していることが示されている。これは、より強い雇用の伸びと安定的な失業率を伴っている。

インフレは低水準で、今後もそれが続く見通し。豪経済は、当分はある程度の余剰生産能力を抱えることになるだろう。インフレは、今後1─2年は引き続き目標と一致した水準にとどまるとみられる。

このような状況において、金融政策は緩和的でなければならない。低金利は借り入れと消費を支援している。住宅向け融資金利の最近の変更で支援の度合いが若干弱まったが、全般的な状況は依然として極めて緩和的だ。ここ数カ月、信用の伸びは加速しており、仲介機関から企業向けに提供される信用も上向いている。住宅市場向け貸し出しの伸びは弱まった。住宅市場から発生する可能性のあるリスクを抑制する上で、規制措置が一助となっている。

ここ数カ月でシドニーとメルボルンでは住宅価格の上昇ペースが穏やかになっており、他の多くの都市でも引き続きほぼ落ち着いている。その他の資産市場では、商業用不動産価格が長期金利の低下に支援されている一方、株価は世界市場の動向に伴い変動した。主要コモディティ価格の大幅な下落に伴い、豪ドル相場は調整している。

理事会は今回の会合で、経済状況の改善見通しがここ数カ月で若干強まっており、政策金利を据え置くことが適切と判断した。理事らは、需要を支援するために適切であれば、インフレ見通しは一段の政策緩和の可能性を示している可能性があるとみている。理事会は、引き続き見通しを評価し、現在の政策スタンスが持続可能な成長と目標に沿ったインフレ率を達成するために最も効果的かどうか、判断することになる。
http://jp.reuters.com/article/2015/12/01/rba-idJPKBN0TK39520151201


2. 2015年12月01日 22:41:19 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
ルイ・ドレフュスのヘッジファンドがシンガポール事務所閉鎖−関係者
2015/12/01 19:48 JST
    (ブルームバーグ):フランスの穀物メジャー、ルイ・ドレフュス・ホールディング傘下のヘッジファンド、エデシア・アセット・マネジメントは、シンガポールオフィスを閉鎖する。欧州での商品取引に集中するためだと、事情に詳しい関係者3人が明らかにした。
関係者2人が匿名を条件に述べたところによると、このオフィス閉鎖により全体で約40人体制のエデシアで4つのポストがなくなる。関係者によれば、エデシアの現在の運用資産は約19億ドル(約2340億円)で、2012年のピーク時の約24億ドルから減少。
相場下落で商品ヘッジファンドが苦戦していることがあらためて浮き彫りになった。
原題:Louis Dreyfus Hedge Fund Edesia Said to Close Singapore Office(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ジュネーブ Andy Hoffman ahoffman31@bloomberg.net;上海 Alfred Cang acang@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: James Herron jherron9@bloomberg.net Javier Blas
更新日時: 2015/12/01 19:48 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NYOBRJ6JIJUW01.html

インド株(終了):中小型株が上昇−中銀が緩和拡大の可能性を示唆
2015/12/01 22:07 JST
    (ブルームバーグ):1日のインド株式相場は中小型株が5週間ぶり高値を付けた。インド準備銀行(中央銀行)はこの日の政策決定会合で政策金利を据え置いたものの、金融緩和拡大の可能性をほのめかしたことが背景にある。
ジンダル・スチール・アンド・パワーは約5か月ぶり、JSWスチールは10週間ぶりの高値にそれぞれ上昇。農薬メーカーのUPLは3週間ぶりの上げ幅を記録し、電力会社のネイベリ・リグナイトとトレント・パワーも大きく買われた。時価総額でインド最大の金融サービス会社バジャジ・フィンサーブは約3カ月ぶりの高値となった。
中小型株の株価指数は0.6%上昇し、10月20日以来の高値で終了。指標のS&P・BSEセンセックスは0.1%高の26169.41で引けた。これは3週間ぶりの高値。
インド中銀は1日、政策金利を据え置いた。ブルームバーグのエコノミスト調査で47人全員が予想していた通りとなった。ラジャン総裁は「可能であれば準備銀は追加緩和余地を利用する だろう。一方、2017年3月までにインフレ率を5%に抑えるディスインフレ軌道にインド経済を導き続ける」と述べた。
原題:Indian Mid-Cap Stocks Beat Sensex as RBI Signals Further Easing(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ムンバイ Rajhkumar K Shaaw rshaaw@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Richard Frost rfrost4@bloomberg.net Manish Modi
更新日時: 2015/12/01 22:07 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NYOFLA6S972I01.html


3. 2015年12月01日 22:50:38 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
主要中銀の政策、数十年前に回帰=ウニクレディト
By PAUL VIGNA
2015 年 12 月 1 日 15:48 JST

 世界の主要中央銀行は数十年前に行っていたような政策に回帰している。こうした政策変更は何の発表もなく実施され、しかも中銀間で足並みがそろっていないため、いったい何が起きているのか誰もが困惑している。その上、金融政策が近いうちに21世紀に向かう兆しは全く見えない。ウニクレディトのグローバル・チーフエコノミスト、エリック・ニールセン氏はそう主張する。

 ニールセン氏は11月29日付のリポートで、「多くの重要な問題について、世界は30〜40年前に戻ってしまったような感じだ。どのように再び未来へ向かうことができるのか。そもそも未来へ向かえるのだろうか」と指摘した。

 同氏の調査によると、中銀の政策は数十年前の政策に一段と似通ってきているが、中銀どうしが相場変動を抑えるために協調することはなく、先行きについても不透明感が広がっている。

 今週3日に政策理事会を開く欧州中央銀行(ECB)、そして15・16日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する連邦準備制度理事会(FRB)はどちらも、表向きは変動為替相場制を敷いていると言いつつも、実際には相場を一定の範囲内に制限する「管理変動相場」に移行してしまった。しかも、これを政策目標として明言していないため、混乱の中で次々に問題が生じている。同氏は「為替政策については、管理変動相場に戻ったものの、依然として何の公式発表もなく中銀どうしの協調もないため、まだ中ぶらりんの状態だ」と言う。

 金融危機以降、財政政策が失敗に終わる中、中銀はありとあらゆる金融政策手段の動員に加え、量的緩和(QE)やイールドカーブ(利回り曲線)の平たん化を進め、「景気浮揚手段としてはっきりと為替レート」に焦点を当てるなどしてきた。こうした中銀政策は通貨戦争を引き起こし、ブラジルなど通貨高に見舞われた新興国は大きな打撃を受けている。経済成長を加速させるどころか妨害しているに等しい。以下はニールセン氏のリポートからの抜粋だ。

 「中国人民銀行(中央銀行)を除く世界の中央銀行の多くは、外国為替に対する姿勢を変え、変動相場制が導入される前の時代に回帰した。だが、新たな体制を明確にせず、政策協調も行わない限り、相場変動や投機、不確実性が増す中で状況は不安定だ。これは良くない。実際、(いまの)為替制度は過度の相場変動を促し、経済成長を妨げている」

 FRB、ECB、英中銀イングランド銀行などの主要中銀はいずれも、見たところ自国通貨の押し下げに努めていることを公言してはばからない、とニールセン氏は言う。同氏によれば、ECBはユーロを10月までは1.10〜1.15ドルに収めようとしていたようだが、その後不安になり1.05〜1.10ドルを目指し始めた。「10月の声明とそれ以降の声明を調べると、この2カ月でユーロ相場を細かく管理しようとしている印象を拭い切れない」という。

 変動相場制の時代が終わるのはそれほど悪いことではないかもしれない。過去に実施された他のさまざまな為替制度の下でも、相場は大きく動き、乱高下した。ニールセン氏は「ここ20〜30年の変動相場制が終了するのは構わないだろうが、この新しい世界がどのような「体制」なのかを知る必要がある。主要中銀が協調することが最も重要だが、そうした兆しはない」と述べた。

 同氏はさらに、必要なのは新たな「体制」を提示することだけではないと指摘する。最終的には、こうした政策が歴史書の世界ではなく現在の実世界で機能しなければならない。「これをさらに前進させるべきだ。金融・為替政策を各国間で協調するだけでなく、財政政策もある程度歩調を合わせる必要がある。商取引や金融、人々の行き来など、実際の世界は一段とグローバル化が進んでいる。各国がばらばらに政策を行うのではなく、実生活に合うよう国際的な政策協調に向かう必要がある」と言う。

 これは悪い考えではないが、あまりに遠い世界のことで、タイムマシーンに乗らない限り目にすることができないような気がする。


 


英中銀、自己資本要件緩和へ−健全性審査は全行合格

By MAX COLCHESTER, JASON DOUGLAS AND MARGOT PATRICK
2015 年 12 月 1 日 18:31 JST

 【ロンドン】英イングランド銀行(中央銀行)は1日、自己資本規制の要件を緩和する方針を示した。数年前に銀行部門の安全性向上目的で導入した金融危機後の措置を見直す。

 イングランド銀は、リスク加重資産の普通株式等ティア1比率を2019年までに11%とするよう求め、今後数年についてこれを引き上げる意向はないことを明らかにした。ただ、この目標は大半の銀行がすでに達成している。

 イングランド銀は併せて英大手銀に対して行った最新のストレステスト(健全性審査)の結果を発表した。ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)とスタンダード・チャータード(スタンチャート)はバランスシート審査の数項目で不合格となったものの、中銀は自己資本増強を命じなかった。

 イングランド銀が態度を軟化させている背景には、破綻銀行の処理をより安全に行う環境が整いつつあるうえ、銀行が保有する債務の一部を危機時に償却できるようになったことなどがある。中銀は報告書で、数年に及ぶ規制改革により、「基準策定作業は完了に近づいている」と述べた。中銀関係者は現在、「銀行システム全体としての自己資本引き上げをさらに求めることはしない」としている。

 イングランド銀は引き続き、「カウンターシクリカル(景気循環の影響を抑える)資本バッファー(CCB)」と呼ぶ新たな手段を使い、好不況に合わせ自己資本要件を微調整することができる。このバッファーは現時点でゼロに設定されているが、中銀関係者は来年3月に引き上げの検討を行うことを示唆した。

 

 


インド中銀、政策金利を6.75%に据え置き

インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁(11月6日) PHOTO: ANINDITO MUKHERJEE/REUTERS
By GABRIELE PARUSSINI
2015 年 12 月 1 日 15:36 JST
 【ムンバイ】インド準備銀行(中央銀行)は1日、主要政策金利を4年ぶりの低水準に据え置いた。中銀は1月以降、経済成長てこ入れのために4回利下げしている。

 準備銀行のラジャン総裁は就任以来14回目となる政策会合で、インフレ加速を理由に主要政策金利であるレポ金利を6.75%に据え置いた。

 ウォール・ストリート・ジャーナルがエコノミスト11人を対象に実施した調査では、全員が現状維持を予想していた。また、インフレが抑えられていることと、米国で利上げが行われても新興国にさほど大きな混乱が起きないことが確認できるまでラジャン総裁は政策変更しない、との見方でも一致した。

 インド経済が相反する兆候を見せる中、準備銀行はジレンマに陥っている。


 インドの7-9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比7.4%増加し、世界の大国の中で最高水準の成長率を記録した。だがその一方で、投資関連統計の弱さや農業とサービス部門の業況がまちまちであることを考慮すると、依然として低金利によるプラス効果が期待できそうだ。

 ラジャン総裁は1日、国内外の需要の弱さを背景に投資が抑えられているため、中銀は対応策として前倒しで政策を実施してきたと述べた。だが準備銀行は今回、物価上昇を踏まえて様子見姿勢に転じた。

 総裁は声明で、「インフレ率が予想通り上向いている。12月までさらに上昇し、その後は横ばいに推移する見通しだ」とした上で、「インフレ率が2カ月連続で上昇しているため、警戒が必要だ」と述べた。


 

インド中銀:政策金利6.75%に据え置き−インフレ動向を注視
2015/12/01 16:09 JST 
  (ブルームバーグ):インド準備銀行(中央銀行)は1日、政策金利を6.75%に据え置いた。同中銀は今年に入り4回にわたって利下げを実施したが、現在はインフレ圧力を高めつつある食品価格の上昇に対応する必要が出ている。
ラジャン総裁率いる準備銀は声明で、政策金利のレポ金利 を6.75%に据え置いたと発表。ブルームバーグのエコノミスト調査では47人全員が据え置きを予想していた。
ラジャン総裁は、「可能であれば準備銀は追加緩和余地を利用するだろう。一方、2017年3月までにインフレ率を5%に抑えるディスインフレ軌道にインド経済を導き続ける」と述べた。
同総裁は商品相場の下落を受けて利下げを実施してきたが、インフレ圧力を高めつつある食品価格の上昇に対応しなければならなくなっている。今月の実施が予想される米利上げで資本流出が起きる恐れもある。
アナンド・ラティ・フィナンシャル・サービシズのムンバイ在勤エコノミスト、スジャン・ハジュラ氏は「インド準備銀が動く前に見極めるであろうイベントが3つある」と指摘。「米金融当局の政策スタンス、財政の動向、そして賃金動向によるインフレへの影響だ。まだ結果が出ておらず、準備銀が今後2、3カ月で行動するとは予想していない」とコメントした。
原題:Rajan Holds India Interest Rate With Eye on Inflation Target (2)(抜粋)
(第3段落以降を追加し更新します)
記事に関する記者への問い合わせ先:ムンバイ Sandrine Rastello srastello@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Daniel Ten Kate dtenkate@bloomberg.net Jeanette Rodrigues, Sam Nagarajan
更新日時: 2015/12/01 16:09 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NYNZSQ6S972801.html


4. 2015年12月01日 23:13:42 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk

アジア経済、消費の好調と輸出の不振が綱引き
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韓国ソウル江南区のショッピング街 PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By
GREGOR STUART HUNTER
2015 年 12 月 1 日 13:21 JST
 アジア諸国の消費者は再び財布のひもを緩め始めたが、各国の中央銀行は、それで景気回復が容易になるとは思っていないようだ。
 韓国や台湾、日本、中国の輸出は低迷しており、成長を実現できるかどうかは国内消費者の手に委ねられている。一方で、借り入れが高水準となっており、各国中央銀行は資産バブルを懸念して金融緩和には二の足を踏み、取れるオプションは限られている。
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韓国の小売売上高の前年同月比 PHOTO: THE WALL STREET JOURNAL
 その好例が韓国だ。10月の小売売上高は前年同月比8.3%の増加と、2010年以来の大幅増加となり、同月の消費者信頼感は1年強ぶりの高い水準に達した。消費支出の増加が輸出の不振を相殺し、今年第3四半期の成長率は5年ぶりの高水準となった。日本の10月の小売売上高は1.8%増、台湾は0.6%増、中国は11%の増加だった。

 だが輸出や製造業の統計は芳しくなく、成長はまだら模様だ。マークイットの購買担当者景況指数(PMI)は日本を除き、最近低下している。韓国銀行(中央銀行)は6月に政策金利を1.5%に引き下げ、過去最低にした。
 エコノミストの間では、さらなる利下げを求める声もあるが、中銀は債務が高水準なことを指摘し、利下げを見送ってきた。今年第3四半期の家計債務残高は前年同期比10.4%増と、2008年以来の大幅増加を記録した。増加分の大半は住宅ローンだった。
 利下げには限界もみえる。台湾は9月に09年以来の利下げを実施したが、今年第3四半期の域内総生産(GDP)は減少し2四半期連続のマイナス成長に見舞われ、リセッション(景気後退)に陥った。
 米国の利上げ見通しを受けて、韓国ウォンや円は対ドルで下落しているが、輸出量の増加にはつながっていない。
 韓国の電子機器輸出企業は、中国の需要減退や小米科技(シャオミ)などのライバル登場で打撃を被っている。
 多くのエコノミストや投資家は、米国の年末商戦の序盤の動向から、米国向けの輸出が年末にかけて盛り上がるかどうかを占おうとしている。これまでのデータでは、ブラックフライデー(感謝祭翌日の小売業者がすべて黒字になると言われる金曜日)の実店舗売り上げは前年を下回ったが、サイバーマンデー(ネット通販が盛り上がる感謝祭明けの月曜日)のネット販売は上回った。
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FRBの緊急融資、制限導入でも裁量残る
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ワシントンのFRB本部 PHOTO: KEVIN LAMARQUE/REUTERS
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JOHN CARNEY
2015 年 12 月 1 日 13:20 JST
 米連邦準備制度理事会(FRB)は11月30日、緊急融資の権限について、柔軟性を確保しつつ法定の制限を受け入れるという難しい仕事をこなした。
 結果として、市中銀行は危機の際、FRBの救済に頼れるようになる公算が大きい。また、FRBが承認した新規則は、緊急融資制度の新設を加速させる可能性が高いが、そのつけは銀行に回るかもしれない。
 米金融規制改革法(ドッド・フランク法)は、FRBの緊急融資権限に二つの方法で制限を課すことを目指している。まず、特定の企業、つまり経営不振の特定企業数社を対象とした融資制度を禁じ、救済資金は「幅広い」供給に限定するよう求めている。これにより、保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の救済や、金融大手JPモルガン・チェースへのベアー・スターンズ売却に関連してFRBが実施した的を絞った融資は認められなくなる。
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FRBは危機時に導入した緊急融資制度を通じて総額9300億ドル超の資金を貸し出した
 次に、同法は支払い不能な企業への融資を禁止した。ただ、破綻している、もしくは清算手続き中の企業は別として、支払い不能の定義はおおむねFRBに委ねられた。
 このような制限を導入するFRBの最終規則では、多くの裁量が守られている。「幅広い」融資制度とは、少なくとも5社が制度の対象でなければならないという意味と解説している。金融危機の際に導入された融資制度のほぼ全ては、新規則の下でも適格とされる公算が大きい。総計すると、危機時にはこれらの制度を通じて9300億ドル(約114兆5000億円)以上の資金が貸し出された。
 新規則では、「支払い不能」の定義にも裁量の余地が与えられている。FRBは、一般的に期限通り債務を返済していない、もしくはすでに支払い不能と確定した企業への融資が認められない。だがいずれの場合も、そうした企業はすでに破綻し、清算が行われている可能性が高い。そのため、FRBの選択肢が大幅に狭められることはないだろう。
 実際、新規則は金融安定の維持を担当する規制当局に対し、従来の想定より早期に融資制度を創設するよう促す可能性が高い。この制度も幅広いものになるだろう。つまり、新規則は緊急融資を制限するどころか、拡大につながる可能性がある。
 これは銀行関係者にとって聞こえがいいかもしれない。だが、FRBが救済をめぐる議会の批判にこうして対処せざるを得なかったという事実は、今後の救済資金に法外な金額がかかることを意味する公算が大きい。そしてそのコストは銀行が負担しなければならないだろう。
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米製造業の低調、利上げへの影響は
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米国の製造業の低調は利上げに影響するのだろうか PHOTO: CHRIS GOODNEY/BLOOMBERG NEWS
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STEVEN RUSSOLILLO
2015 年 12 月 1 日 15:22 JST
 米経済全体が強さを増し、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに備えているとみられる中、製造業はこれと逆方向へ動いている。ドル高と低調な海外需要によって、製品生産への需要が低下しているためだ。エネルギー価格の下落も資本設備の売り上げを下押ししている。
 この傾向が12月の連邦公開市場委員会(FOMC)の決定を左右することはないだろうが、2016年の利上げペースには影響する可能性はある。製造業の停滞はこれまで、経済全体の悪い予兆となってきたからだ。
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ISM製造業景況指数の推移 THE WALL STREET JOURNAL
 米製造業の苦戦は、1日発表のサプライ管理協会(ISM)の11月製造業景況指数でも明らかになりそうだ。
 ウォール・ストリート・ジャーナルが実施したエコノミスト調査によると、11月の同指数は50.5となり、前月の50.1からわずかに上昇すると予想されている。10月の実績は2013年5月来の低さで、製造業の拡大と縮小の分岐点である50.0をかろうじて上回る水準だった。同指数は、過去10カ月中7カ月で低下傾向が続いている。
 すでに、いくつかの地域調査ではまだら模様の状況が明らかになっている。その一つ、30日発表のシカゴ製造業景況指数(PMI)は期待外れな結果だった。10月の指数は48.7で、今年に入り50を下回るのは6回目となった。
 確かに、製造業はかつてほど米国経済にとって重要ではなくなっている。しかし、経済全体の先行指標としての正確性はこれまで際立っている。戦後11回のリセッション(景気後退)では、その数カ月前の期間にISM製造業景況指数が必ず下降軌道に入っていた。いずれの場合も、同指数が50を下回ったのだ。
 米国がすぐにリセッション入りするという予想はほとんど見られない。しかし、調査会社ストラテガス・リサーチ・パートナーズのエコノミストらは11月30日、同社が調査している14の経済指標で唯一、経済の足かせとなっている部門として製造業を挙げている。
 製造業の不調が長引くほど、将来の利上げペースは慎重なものとなる可能性が高くなる。CMEグループによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は12月の利上げを78%織り込んでいる。市場は現在、16年11月までに0.25%の利上げが3回あると予想している。
 米国製造業の足どりがしっかりしない場合、この予想は楽観的過ぎるものとなる可能性がある。


ユーロ圏経済、通貨安は万能薬でない
ECBのドラギ総裁 ENLARGE
ECBのドラギ総裁 PHOTO: ZUMA PRESS
By RICHARD BARLEY
2015 年 12 月 1 日 13:38 JST

 欧州にとって、2015年は始まりと同じように終わろうとしている。ドラギ総裁率いる欧州中央銀行(ECB)の政策に強い期待が集まっているという点においてだ。だが、ECBの政策が一段と非伝統的な領域に入るにつれ、政策当局の検討事項は複雑さを増している。

 純粋に経済的観点からすると、ECBが追加緩和に取り組むことの緊急性は分かりにくい。ユーロ圏の経済成長は世界的な停滞をよそに持ちこたえている。コアインフレは緩やかながら上昇し、先行指標は改善が続くことを示唆している。そして債券購入の拡大や金利の引き下げが経済の根本に大きく影響するかは定かでさえない。

 しかし、ECBの行動に対する市場の期待は高く、ドラギ総裁がここ最近ハト派的な見解を示す以前でさえ高まっていた。これはECBが直面している本当の闘いを反映している。つまり、インフレ率を目標の2%に「近いが下回る」水準に回復させる能力についての認識に関連するものだ。

 原因の一つは、ECBのこれまでの政策行動にある。低インフレへの対応は遅すぎたと批判されている。だが、よりよい成長の条件を整える上で、政府など他の政策当局が行動していないことにも原因はある。これはインフレ期待の圧迫につながる。そのため、ECBは例えば英イングランド銀行(中央銀行)なら直面しないような試練を抱える羽目になる。英国とユーロ圏の総合インフレ率は同じように低いにも関わらずだ。

 追加緩和にリスクがないわけではない。市場により大きく影響するのは、現在マイナス0.2%の預金金利をさらに引き下げ、まだ引き下げ余地はあると示唆する場合だろう。そうすればユーロ相場はさらに押し下げられるはずだ。ECBは現在、インフレ期待に影響を与える上でユーロ相場を主な経路としている。そして他の条件が同じであれば、ユーロ安は輸入物価を押し上げるなどして将来的なインフレ上昇につながるはずだ。しかし、金利がマイナスの領域へ深く入れば入るほど、プラスの名目金利の下で設計された金融システムに予期せぬ影響が及ぶリスクは高まる。

 債券購入の期間延長は効果が微妙かもしれない。一つには、市場はそれによりECBの債券購入に対する姿勢を疑わなくなるだろう。だが一部のアナリストが指摘するように、買い入れを無期限とすることにも危険が伴う。量的緩和(QE)からの出口戦略をより複雑にするためだ。

 債券購入を比較的大幅に増額することも、市場のゆがみを増幅させるリスクがある。買い入れ対象の債券が不足するとの懸念が再び高まり、ひいてはECBのQE実行力が不安視されるためだ。例えば、買い入れ対象を社債にまで広げることは、ECBが引き受けることになる信用リスクを考慮すると行き過ぎた措置のように思われる。

 いずれにせよ、ECBに焦点を合わせるのは見当違いかもしれない。ユーロ圏に対する市場の期待を高める上では、規制措置や政府の行動の方が強力な要素になるかもしれない。それなしには、ECBがいくら金融状況を緩和しようとも、ユーロ圏経済はそれを生かせない可能性がある。ECBの追加緩和は政治家や規制当局が行動するまでの時間稼ぎになるかもしれないが、行動を促す圧力の減退にもつながる。

 ドラギ総裁が今週示す行動と発言について、即座の反応はユーロ相場に表れるだろう。しかし、ユーロ圏の経済問題の解決策として、通貨安は万能薬ではない。

 
豪中銀、政策金利を2%に据え置き
オーストラリア準備銀行のスティーブンス総裁(4月) PHOTO: BRENDON THORNE/BLOOMBERG NEWS
By JAMES GLYNN
2015 年 12 月 1 日 13:07 JST

 【シドニー】オーストラリア準備銀行(中央銀行)は1日の政策理事会で政策金利(キャッシュレート)を過去最低の2.0%に据え置いた。クリスマス休暇にかけて冷静な対応を取るとの公約通り、低迷する景気の下支えを狙った追加利下げを見送った。

 準備銀行のスティーブンス総裁が先週のエコノミスト会合で、足元の強弱まちまちな指標ではなく、2月の次回政策理事会にかけて発表される経済指標に注目すべきだと発言していたことから、1日の据え置き判断は広く予想されていた。

 スティーブンス総裁は政策声明で、「理事会は、この数カ月間に経済状況の改善に対する見通しが少し固まり、キャッシュレートを据え置くことが適切だと再び判断した」とし、「理事会は今後も見通しの評価を続けていく」と述べた。

GPIF、為替ヘッジ開始=関係筋

By ELEANOR WARNOCK
2015 年 12 月 1 日 12:19 JST

 【東京】約135兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、運用資産のうち小額について為替変動に対するヘッジを開始した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 関係者によると、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和観測を背景にユーロの見通しが軟調となる中、GPIFは「短期的な」ユーロの変動に対するヘッジを開始した。

 GPIFはこれまで、約50兆円の外貨建て資産をヘッジなしで運用してきた。GPIFの広報担当者は、現時点で為替ヘッジを行っているかどうかについてコメントを控えたものの、必要に応じて為替ヘッジを行う用意はあると話した。

 今回の決定により、GPIFが他の市場参加者に対する選別的な情報公開や巨額資産の運用に伴うリスクの新たな管理手段の採用でより洗練されたことがうかがわれる。GPIFはかつて、市場への影響を懸念してこうした手段の採用には慎重だった。

 事情に詳しい関係者の1人は、GPIFは「静かに」ヘッジを行い、市場から注目されない戦略をとっていると述べた。

 世界的な金融市場の不安定化を受け、一部の機関投資家はこのところヘッジ戦略の採用に傾いている。ノルウェーの政府系ファンド(SWF)である政府年金基金は今年に入り、保有株式の為替リスクに対するヘッジを開始した。為替市場のボラティリティー(変動率)が高まったためだという。また、米国でもドル高を反映し、この1年間にヘッジ戦略を採用する年金基金が増えている。

 GPIFが11月30日発表した7-9月期の運用実績は7兆8899億円の赤字となり、期間収益率はマイナス5.59%と、2008年以降で最悪の成績となった。円相場が上昇したことで損失が膨らんだ。

 世界の大規模な年金基金やSWFの一部は為替ヘッジを行っていない。運用担当者の多くは、投資期間が長いため為替変動の影響はいずれ低下していくと考えている。

 公的年金制度の財政運営方式は、おおむね100年の間で給付と負担の均衡が図られることになっている。その財源である年金積立金の運用でGPIFは十分な収益を上げることが求められている。

 ヘッジ戦略を採用することで、GPIFは四半期ごとの運用成績が大きく変動するのを防ぐことができる可能性がある。ヘッジファンドなどの投資家にとって、GPIFの売買が外為市場に及ぼす影響を分析しづらくなるという影響もある。

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