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消費支出2カ月連続減…アベノミクスが低下させた生活水準(日刊ゲンダイ) :政治板リンク
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/173.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 11 月 30 日 17:29:00: igsppGRN/E9PQ
 

消費支出2カ月連続減…アベノミクスが低下させた生活水準(日刊ゲンダイ)

http://www.asyura2.com/15/senkyo197/msg/370.html

 

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1. 2015年11月30日 17:50:44 : LY52bYZiZQ : i3tnm&WgHAM
2015年11月30日(月)
安倍政権内に「内部留保活用」論

矛盾露呈 アベノミクス

法人減税・賃下げ進めたのは誰

 安倍政権内で、企業の内部留保を活用した「賃上げ」論が高まっています。安倍晋三首相は、官民対話で経済界代表に賃上げを要請。菅義偉官房長官も記者会見で、「経済界がマインドを変えて、投資拡大や賃金の引き上げに積極的に取り組んでいくことが極めて重要だ」(20日)と企業側をけん制しました。

 しかし、大企業に法人税減税をばらまく一方で、労働者派遣法大改悪など「賃下げ」政策を強行して、景気を冷え込ませてきたのは他ならぬ安倍政権自身です。こうした経済政策を見直すことなく、内部留保を膨らませる大企業を“批判”するのはきわめて矛盾した態度です。

 大企業は、「アベノミクス」のもとで空前の収益をあげ、内部留保は過去最高の299・5兆円まで膨らみましたが、非正規雇用は2000万人へと増加し、実質賃金は低迷したまま。その結果、個人消費が伸び悩み、2015年7〜9月期の実質GDP(国内総生産)は前期比0・2%減と2四半期連続のマイナスとなったのです。“大企業が潤えば国民も豊かになる”というアベノミクスの破たんです。

 こうした事態を受け、野党幹部からも「大きな内部留保をいかに活用して、日本経済の成長につなげるかということはきわめて大事」(民主党の岡田克也代表、26日)、「法人減税をやるならば、(内部)留保金課税とセットでやるべき」(維新の党の松野頼久代表、26日)との声が上がっています。

 日本共産党の志位和夫委員長は26日の記者会見で、「私たちも大企業の内部留保を活用して賃上げをと、ずっといってきた。そういう方向が無視できなくなってきている」と指摘。安倍政権が進める経済政策を切り替え、働く人の雇用を守るルールづくり、最低賃金の大幅引き上げなどを通じて、内部留保を勤労者の暮らしに回していく必要性をあらためて強調しました。

 (佐藤高志)

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-11-30/2015113002_02_1.html


2. 2015年12月01日 16:17:03 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
“アベノミクス”はバブル崩壊直後、20年以上前に行うべき政策だった
デビッド・モス教授に聞く(1)
ハーバードの知性に学ぶ「日本論」 佐藤智恵
【第22回】 2015年12月1日 佐藤智恵 [作家/コンサルタント]

ハーバードビジネススクールを代表する人気教授、デビッド・モス教授。多くの学生や卒業生がその授業を絶賛する。日本の金融史、金融政策についても研究を続けており、昨年までMBAプログラムの必修科目でアベノミクスの事例を教えていた。

モス教授はアベノミクスに対してどのような評価をしているのか。学生は日本の金融政策から何を学んでいるのか。野村マネジメント・スクールのエグゼクティブ講座のため来日したモス教授に伺った。(聞き手/佐藤智恵 インタビューは2015年7月26日)

なぜハーバードの学生が
日本の金融政策を学ぶのか


デビッド・モス David Moss
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営管理(特に金融史、政策史)。同校のBGIE(ビジネス・政府・国際経済)部門に所属。MBAプログラムでは選択科目「近代的金融システムの形成」、「アメリカ民主主義の歴史」、ハーバード大学の学部生プログラムでは「アメリカ民主主義の歴史」を教えている。アメリカ国内はもとより世界各国のエグゼクティブ講座でも教鞭をとる。日本では野村マネジメント・スクールの教授も務めている。ハーバードビジネススクールを代表する人気教授であり、学生が選ぶ「最高の教授賞」を過去8回受賞。近編著に“Preventing Regulatory Capture: Special Interest Influence and How to Limit It”(ダニエル・カーペンター編、デビッド・モス編、Cambridge University Press, 2013)。
佐藤 BGIE(ビジネス・政府・国際経済)という授業で、日本のアベノミクスについても議論すると伺いました。昨年までモス教授もこの授業を教えられていたとのことですが、なぜ現在の日本の金融政策について学ぶ必要があると思いますか。

モス 1990年代前半のバブル崩壊から現在に至るまでの日本経済の推移と政府の政策を見てみましょう。この事例から学べるのは、「有事の際には、いかに早く政府が対応するかが決め手となる」ということです。

 現在、安倍首相は、大胆な金融政策を推進しようとしています。日本経済における安倍首相の功績は大きいと思いますし、安倍政権の政策そのものも正しいと私は評価しています。ただ、とても残念なのは、こうした金融政策が、バブル崩壊後、20年以上もたってから実行されていることです。本当はバブル崩壊直後に行うべき政策であった、と思います。金融危機対策は発生から数週間、数ヵ月間が勝負。このスピードがその後の経済回復に大きく影響してきます。

 たとえば心臓発作や脳梗塞を起こした人がいたとします。1時間以内に適切な薬を飲めるかどうかで、その後の運命が決まります。何日も経ってから薬を飲んだところで時すでに遅し、です。同じことが金融政策にも言えます。国の経済が発作を起こした際に必要なのは、とにかく早く緊急治療を行うことです。


ベン・バーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長の回想録『行動する勇気』。米国内でも賛否両論ある、金融危機勃発以降の「行動する勇気」でもって大胆な金融緩和策を実行し続けた”武勇伝”がまとめられている
佐藤 2008年のリーマンショック後、アメリカ経済は一時大きく落ち込みましたが、現在は成長しつづけています。一方、日本経済は全体的に停滞したままです。

モス 当時のベン・バーナンキFRB議長は、バブル崩壊後の日本の金融政策から多くを学んだと思います。バーナンキ議長は、「日本政府による市場介入は、場当たり的で、スピードが遅すぎた」と考えたのです。危機的な状況がおこったら、すぐに行動する、すぐに決断する、というのが必須だ、ということを日本の事例が教えてくれたのです。

 安倍政権の金融政策については、政府による大胆な金融政策が今でも有効に働くかどうかを見守っていきたいと思います。1990年代の間違った金融政策が、長きにわたる経済停滞を招いてしまいました。安倍政権は負の遺産の中で、難しい舵取りを迫られています。大胆な金融政策は遅すぎたかもしれません。しかし、私は「それでもやってみる価値は十分にある」と思っています。

なぜビジネスリーダーは
歴史を学ぶべきなのか

佐藤 ハーバード大学でMBAプログラムの学生と学部生向けに、新たに歴史の授業を開講した、と伺いました。なぜ今、ビジネスリーダーは歴史から学ぶことが大切だと思いますか。

モス まず1つめは過去の出来事を知れば、自分たちが生きている時代を違った視点から見ることができるということです。人間も社会も、過去の積み重ねがあって、今があります。つまり現代を理解する上で、その成り立ちを知ることは重要なのです。


「トップのための経営戦略講座」(野村マネジメント・スクール)で教鞭をとるデビッド・モス教授
(c)野村マネジメント・スクール
 2つめは、歴史は「ビジネスリーダーが正しい判断を下すための良き練習材料」となることです。

 ある意味、歴史を学ぶことは、野球のバッティングを練習するのに似ています。バッターは毎回、試合でヒットを打てるわけではありません。それを知っているからこそ、バッターは試合前も、バッターボックスに立つ寸前も、ひたすらバットを振る練習をするわけです。


“Preventing Regulatory Capture: Special Interest Influence and How to Limit It”(ダニエル・カーペンター編、デビッド・モス編、Cambridge University Press, 2013). 『規制の虜』についての豊富な事例や『規制の虜』に陥らないための防止策を提言している
 同じように過去の事例を数多く学べば、その分、リーダーとして決断する訓練をすることができます。どのような歴史的背景が大きな決断につながったのか。なぜそのような決断を下したのか。リーダーの立場から考えることができます。つまり学生にとってはとてもよい予行演習となるのです。

 たとえば、1人の人間が生涯で大きな金融危機を経験するのは、せいぜい1〜2回でしょう。しかし、過去の金融危機を見てみれば、どのように危機から立ち直ったのか、どんな政策上の決断が最も効果的だったか、を学ぶことができます。歴史から学んだ知識は、将来危機が起こったときの備えとなるのです。


さとう・ちえ
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院卒業(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタント として独立。2004年よりコロンビア大学経営大学院の入学面接官。近年はテレビ番組のコメンテーターも務めている。主な著書に『世界最高MBAの授業』(東洋経済新報社)、『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードはなぜ仕事術を教えないのか』(日経BP社)。
佐藤智恵オフィシャルサイト
佐藤 歴史を学ぶというのは野球の練習をするのと同じ、というのは面白いたとえですね。バッティング練習と同じように、リーダーも決断を下す練習をしておくことが大切だということですね。

モス それだけではありません。歴史は良きガイドにもなります。「今後、どんな出来事が起こる可能性があるのか」と将来を予測するのにも役に立つのです。

 たとえば、リーマンショックが起こる2年前の2006年ごろのことです。私は、エコノミストたちとのミーティングで、「今後金融危機が起こった場合にどうすべきか、対策を考えておいたほうがいいですよ」と繰り返し助言していました。歴史的に見れば、将来、危機が起こってもおかしくないと思ったからです。ところがエコノミストたちは本気にせず、笑いながら「モス教授、あなたは歴史にこだわりすぎだ!」と言うばかりでした。彼らは「金融危機なんか起こるはずがない」と思っていたのです。実際、アメリカは長い間、金融危機を経験していませんでしたから、そう考えるのも無理がないことでした。

 しかし、長い歴史を振り返ってみれば、アメリカでは金融危機が繰り返し起こっていることが分かります。数十年間に1回起こる可能性があるのであれば、今後も起こりうる、と考えて、前もって備えておいたほうがよいのです。

>>続編『江戸時代、日本は金融立国だった!再評価される世界初の先物市場“堂島米市場”』は12月2日(水)公開予定です。
http://diamond.jp/articles/-/82259


3. 2015年12月01日 16:20:11 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
テロリズムとディスインフレ形骸化する中銀の「インフレ・ターゲット」

2015年12月1日(火)倉都 康行


 フランスにとって「魔の13日の金曜日」となった先月パリでの同時多発テロを受けて、資本市場には2001年を連想した警戒感が漂い、その翌週明けの東京市場は株安・ドル安・債券高で始まり、上海株も下落した。だが欧米市場は徐々に落ち着きを取り戻し、リスクオフのムードは予想以上に短時間で消失することになった。痛ましい事件が人々に与える心の傷はなかなか癒えないが、資本市場の心理転換は無情なほど早いものである。

上向いてきたフランス経済冷却化も

 2001年9月11日に世界に衝撃をもたらしたテロ事件の際には、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQが早々に株式市場の閉鎖を決定し、その日から金曜までの4日間は取引停止状態となった。当時の為替市場ではドル円が122円台から118円台まで急落、金融機関が一斉にドル調達に走ったことから短期金利が約2%も急上昇した。国債決済への不安感から債券市場では流動性が大きく低下し、ニューヨーク市場は事実上の麻痺状態に陥ったのである。

 だが今回は、市場機能に対する信頼感が損なわれることはなかった。2001年はドルの総本山であるニューヨークが狙われたことで市場不安が増幅されたのに対し、今回はパリが攻撃対象になったことでユーロは下落しているが、金融システムに対する目立った懸念はない。

 無差別テロは確かに個人レベルでの恐怖感を増長するが、経済全体を構造的に委縮させるかどうかは、その攻撃対象に拠る。電気やガス、水道などの社会インフラや金融システム或いは大規模な工場施設の破壊といった行為でなければ、テロリストが狙う西欧社会への攻撃は、それほどの経済効果はないのだ。急速に回復を見せた先進国の株式市場の認識は、そんなところであろう。

 とはいえ、欧州を代表する都市がテロ攻撃にあったことの影響は小さくないかもしれない。ECBのコンスタンシオ副総裁は「投資家の欧州への信頼を損ねる可能性がある」と指摘、プラート理事も家計や企業の心理が冷え込んで景況感が悪化する恐れがある、と警戒感を示している。

 欧州は、ギリシア財政、難民受け容れ、ポルトガル政局といった難問続きの状況にある。景気回復の足取りが進まない中で、中国経済減速という逆風にも直面している。その中で起きたパリ同時多発テロは、7-9月期にGDPが前期比0.3%増と折角上向いてきたフランスの経済を再び冷却化させる可能性がある。季節柄、クリスマス商戦に影響が出ることは避けられないだろう。米国も2001年には、ITバブル崩壊の後遺症があったにせよ、一時的な景気後退に陥ったことが思い出される。

 報復姿勢を前面に押し出すオランド大統領は「これは戦争である」として対シリアの空爆強化を宣言している。2012年の就任以来、殆ど見せ場のなかった同大統領にとっては支持率回復の絶好の機会でもあろうが、欧州内ではテロ再発への懸念が高まる一方であり、フランス以外に消費や投資の意欲低下が波及することも想定される。

 ロシアや英米との共同歩調による対IS空爆強化は、ISの支配する石油開発施設の破壊を通じてその資金源を断つ効果がある、と評価する向きもあるが、一方では空爆に拠る武装勢力の根絶には限界があり、窮鼠猫を噛むが如く、ISがイラクなどの同施設への報復攻撃に出るリスクもないとは言えまい。フランス国内の原発や英米の金融インフラがターゲットになる可能性すらある。オランド大統領が、同じように強硬姿勢に出た2001年のブッシュ大統領の二の舞を演じないとも限らない。

 テロ事件が実体経済に与える影響の経路は様々だ。消費心理低下は商業取引を減少させ、企業の出張が減り観光客が減ればホテルなどは苦戦する。企業の投資意欲が減退すれば、鉱工業生産や資本財受注は減少しよう。そして難民対策やテロ対策で国境警備が強化されれば、運送に支障が生じてグローバルなサプライ・チェーンの配送コストも上昇する。

 中東やトルコでは既に輸送コストが上昇しているが、先月のパリの事件で欧州でもその傾向が強まってきた。ドイツ企業の輸送コストは既に10%程度上昇した、との試算も出ている。欧州大陸では、難民問題を契機にハンガリーはセルビアとクロアチアの国境を封鎖し、スロベニアも国境の防御壁構築に着手しているが、テロ事件を背景として欧州諸国の国境は益々越えにくいハードルになるかもしれない。

市場の視線は利上げのペースに

 こうした欧州経済への懸念は、中国をはじめとする新興国経済の不調や2期連続のマイナス成長に陥った日本経済への失望感とともに、来年の世界経済における不安要因に挙げられることになりそうだが、FRBは「米国経済だけは例外」とばかりに利上げに邁進する姿勢を崩していない。

 12月FOMCで利上げする方向はもはや既定路線であり、市場の視線は既に2016年の利上げペースに注がれている。FRBの主流派は、来年3月、6月、9月、12月と段階的に25BPの利上げを行うことをメイン・シナリオに置いている。

 だが経済は気まぐれな生き物であり、予定調和とは無縁の存在だ。雇用や物価の動向、また中国など世界経済動向次第では、利上げペースが鈍化することも加速されることも有り得るだろう。そして、リスク・シナリオが後者であることは論をまたない。

 来年のFOMCで投票権を持つ地区連銀のメンバーにも、クリーブランド連銀のメスター総裁、セントルイス連銀のブラート総裁、カンザスシティ連銀のジョージ総裁とタカ派の面々が名を連ねる。唯一のハト派はボストン連銀のローゼングレン総裁だ。

 そのローゼングレン総裁ですら、先月には「米国が利上げ時期に近付いている」と認めた上で、商業用不動産市場とシンジケート・ローン(銀行の協調融資)の動向次第では利上げを加速する必要が出てくるかもしれない、と懸念を示している。

 米国不動産市場では住宅市況の堅調さが目立っているが、商業用不動産市場もまた長引くゼロ金利政策に支えられて活況が続いている。バブルというほどではないが、グリーン・ストリート・アドバイザーズが公表している価格指数は年初来8%上昇しており、昨年と同様に年間10%前後の上昇率を記録するのはほぼ確実だ。機関投資家のCMBS(商業用不動産担保証券)への投資意欲にもやや過熱感が出ている、という。大型M&Aに伴う銀行融資姿勢の甘さも目立ってきた。

 イエレン議長らは繰り返し「緩慢なペースでの利上げ」という表現を使い、市場の懸念を抑え込もうとしているが、11月の雇用統計のような「想定外の数字」が出てくるごとに、投資家は間違いなく不安に苛まれる。短期金融市場における来年の利上げ頻度予想はせいぜい2回程度に過ぎないが、ゴールドマン・サックスは来年の経済見通しの中で「金利上昇ペースは市場予想以上に速まる可能性がある」と警告している。

 一方で、ここ1年間迷走を続けたFRBのコミュニケーション失敗の代償も小さくない。それが、別のリスクを生むことも想定しておきたい。やや能天気な株式市場と違って、神経質な債券市場はいまやFRBだけでなく世界の中央銀行に不信感を抱いている。その根底にあるのが「物価目標はどこへ行ってしまったのか」という基本的な疑念である。

目立つ各国中央銀行の迷走

 金融危機の直後、FRBを筆頭とする主要国中央銀行の積極的な対応で大恐慌の再来を回避したことは高く評価されている。だがここ数年間は、FRBに限らず中央銀行の迷走が目立つ場面がしばしば見られる。

 先行きを見据えた金融政策の施行を目指して各国中銀が高々と謳い上げた「フォワード・ルッキング」なるお題目はいまや誰も口にしなくなり、バブルを抑え込むための「マクロ・プルーデンス」は信頼性を欠き始め、金融政策の要に据えられた「インフレ・ターゲット」さえも、とうとうその役割が怪しくなってきた。

 バーナンキ前FRB議長が2012年に悲願のインフレ目標を導入したことで、日本でも「追随すべき」との動きが高まって、これに抵抗する白川前総裁を安倍政権が追い詰め、黒田日銀が誕生したことは記憶に新しい。

 だが昨今の経済事情を見れば、その時点はまさにインフレを懸念する時代が終わりを告げ、世界的なディスインフレ時代へと転換する変曲点にあったようにも思える。いま、先進国のどの中銀も、インフレ目標達成に成功していない。

 現代の中銀は、インフレなき時代にインフレを目標とした間違った戦いで敗北しつつある、と元モルガン・スタンレーのステファン・ローチ氏は指摘し「まるで日本軍が攻めてくる方向を読み切れずに兵力を無駄にして敗戦した1942年のシンガポールにおける英国軍のようだ」と述べている。

強まるディスインフレの風

 前述したように利上げペースの加速が懸念される米国だが、ややチグハグなことに、ディスインフレの風が強まる傾向が出てきた。10月の小売売上高は前月比0.1%増と市場予想を大きく下回る結果となり、9月も横ばいへと下方修正されている。企業決算ではノルドストームやメーシーズなど小売大手の業績が低調で、年末商戦に警戒感も出始めた。ガソリン安による恩恵は、昨今の家賃上昇で吹き飛んでしまったようにも見える。

 物価動向自体にも、やや変化が起きている。10月の卸売物価指数は前月比0.4%低下し、9月の0.5%低下に続いて2カ月連続でのマイナスとなっている。エネルギー価格は横ばいだったが、食品が0.8%低下と大幅な値下がりを示しており、エネルギー・食品を除くコア指数でも0.3%低下した。卸売物価指数の弱さはタイムラグを伴って、過去2年間にわたって横ばいを続けるコアPCEデフレータを押し下げてしまう可能性がある。利上げ継続ムードに伴うドル高が生む物価下押し圧力も変わらない。

 FRBは、雇用改善による賃金上昇がいずれ物価に反映されてくる、と見ているが、賃金は物価の先行指標であるという常識にチャレンジするような報告が出てきた。サンフランシスコ連銀のエコノミストであるライス・ビダー氏は、1980年以降のデータ分析から「現在の賃金情報には他の情報よりも優れた物価への予見力があるとは言えない」と指摘している。フィリップス曲線として知られている失業率と物価の相関が崩れてしまったことも、多くのエコノミストが指摘している通りだ。

 蜃気楼のように遠ざかるインフレ目標を御旗に掲げたまま兵力を注ぎ込む戦略は、利上げに向かうFRBですら成功したとは言い難い。まして、巨額の量的緩和を以てしてもインフレ率がゼロ近辺に張り付く日本やユーロ圏の金融政策に、逆転の大ホームランを望むのも酷なものであろう。だが日本では、株式市場を中心に追加緩和への思惑は根強く残っており、その淡い期待は来年にも持ち越されることになりそうだ。

 黒田総裁は、量的緩和の効果は上がっているとの強気の姿勢を崩さず、市場に燻る追加緩和の観測を否定するのに躍起となっている。だが物価目標達成見通しは再びずれ込むことになり、もはや日銀の物価目標は形骸化していると批判されても仕方がない。世界経済への不安が募る中で、来年の春闘で企業が賃上げを容認するシナリオも描きにくい。

量的緩和に疑念を呈するエコノミストが増殖

 株式市場と違って、政府や経済界からは黒田総裁に何かを望む声は殆ど出てこない。「悪い円安」を加速させかねない追加緩和に官邸はいまや否定的ですらある。日銀は自身の主張を正当化すべく新しい物価指数を開発中と報じられているが、海外では「変節したクルーグマン教授」をはじめとして、量的緩和の効果に疑念を呈するエコノミストは増殖中である。

 市場の一部には、総裁が豹変する「黒田ショック」のリスクを意識する人もいるようだが、仮に日銀内に物価目標から後退するような動きが生じるようなことがあれば、ドル円は一気に100円に向かって急落し、長期金利は急騰、株価も暴落するだろう。

 それが解っているからこそ、日銀は物価目標を手放す訳にはいかない。黒田総裁も任期中は2%という呪文を唱え続け、残された2年数カ月の任期中に恐らくあと1回あるかないかの追加緩和のタイミングを計ることに、全神経を集中することになるのだろう。

 インフレ・ターゲットに関しては、FRBも表面上は「物価はいつか上昇する」という建前を崩しておらず、2%目標を捨ててはいない。ECBも英中銀も基本姿勢は同じである。だが、仮にFRBの金融政策姿勢に市場が多少でも変化を感じ始めれば、それが米国外に飛び火するリスクはある。

 FRBは12月の利上げの理由を「雇用の改善で賃金・物価が上昇する確信を得た」と説明することが出来るだろうが、来年以降の利上げには数値的な裏付けが必要だ。それがないままの利上げ継続は、市場のインフレ・ターゲットへの不信感を一層強めることになる。

 確かに原油市場の影響はいずれ消失し、インフレ率は上昇気配を示すかもしれないが、賃金が上昇せず生産や消費に勢いが戻らなければ、物価上昇には全く意味がない。因みにゴールドマンやバークレーズなどは、来年以降原油価格が一段と下落するシナリオを描いている。

 来年の世界経済がディスインフレを伴う低成長という軌道を辿ることになれば、FRBの利上げシナリオも崩れて金融市場が予想するように利上げ回数も限定的となり、世界の株式市場も救われるかもしれない。

 だが仮に、イエレン議長らが見切り発車的な継続利上げを通じて厳格な物価目標からの離脱を模索し始めるのであれば、中銀の福音書とも言えるインフレ・ターゲットの路線修正に怯える資本市場が、多大な影響を受けない筈はない。

このコラムについて
倉都康行の世界金融時評

日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/230160/112500007/?ST=print


4. 2015年12月01日 16:21:37 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk
日銀ホームページの英訳がちょっと謎なワケ

2015年12月1日(火)上野 泰也


(写真:Natsuki Sakai/アフロ)
 リフレ派の官庁エコノミスト出身である原田泰日銀審議委員が11月11日に栃木県金融経済懇談会で披露した挨拶(講演)と記者会見に関するマスコミ各社の報道をざっとさらってみた。雇用が悪化して物価を基調的に上昇させるメカニズムが危うくなればちゅうちょなく追加緩和を行う必要があるとした部分や、現在の段階では追加緩和は必要ではないとした発言、追加緩和の手段はいくらでもあるという主張を前面に出した報道が多かった。

 だが、報道などを通じて世の中の注目をもっと集めてもよかったと筆者が考えるのは、原田委員が講演の中で、「『量的・質的金融緩和』で国債を発行しやすくなり、財政規律が弛緩する」という批判に対し強く反論した部分に見いだされる、以下の発言である。

「しかし、金融政策の目的は、デフレマインドを払拭し、2%物価目標を達成し、それを通じて実体経済を改善、安定化することです」

「そもそも、金融政策で財政規律が弛緩するなら、増税しても同じです。国債を発行しやすくなれば使ってしまうというのなら、私は、増税して収入が増えれば使ってしまうだろうと思います。財政は、政府と議会が責任を持って規律を維持するべきもので、金融政策とは関係がありません」

 この発言にマスコミ各社がニュースバリューをあまり見いださなかった理由を筆者なりに推測すると、以下の3つになる。

事実上は日銀による財政ファイナンス

@「政策の目的があくまで2%の物価目標達成にあるのだから日銀による大規模な国債買い入れは財政ファイナンスではない」という主張は、黒田東彦総裁が常々口にしている話でもあるので、新味が乏しい(ちなみに、債券市場のプロの間では、日銀は事実上財政ファイナンスに手を出しているという見方が大勢である)。

A「量的・質的金融緩和」は事実上アベノミクスの一環として展開されているので、日銀内から政府への強い批判やけん制はもともと出てきようがない(現状追認的なコメントが日銀から出てくるのは当たり前)。

B財政規律は金融政策とは無関係だという原田審議委員による今回の踏み込んだ発言は、就任直前の発言(たとえば朝日新聞デジタルのインタビュー記事など)とほぼ同じなので、改めて報じる必要性が乏しい。

 だが、日銀による大規模な長期国債買い入れは、実態として、財政ファイナンス(中央銀行による国の財政の資金繰り支援)に相当近い状況を日本で作り上げている。そして、ある事柄の適否は、行為者が何を意図しているのか(=当事者の主張)だけでなく、現実に何が起きているのか、何が将来起きる可能性があるのかについても十分に考慮した上で判断していく必要があるというのが、昔から変わらぬ筆者の考えである。

 では、日銀の他の政策委員会メンバーはどのような主張をこれまで展開してきているのだろうか。黒田総裁は「量的・質的金融緩和」を導入して間もない2013年4月12日の講演で、次のように述べていた。考え方の基本線は原田審議委員と同じである。

「さて、『量的・質的金融緩和』のもとで、日本銀行が大規模な国債買い入れを行うとなると、どうしても、『日本銀行が財政赤字の穴埋めをするのではないか』という心配を呼び起こします。現状、国債市場は安定していますが、日本銀行による多額の国債買い入れが、内外の投資家から、ひとたび『財政ファイナンス』と受け取られれば、国債市場は不安定化し、長期金利が実態から乖離して上昇する可能性があります。これは、金融政策の効果を減殺するだけでなく、金融システムや経済全体に悪影響を及ぼしかねません」

「もちろん、『量的・質的金融緩和』による長期国債の買い入れは、金融政策上の目的で日本銀行自身の判断で行うものであり、財政ファイナンスではありません。また、日本銀行による国債買入れが増加する中、それが、財政ファイナンスではないかといった議論をそもそも惹起しないためにも、政府が、今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を着実に進めていくことは極めて重要です」

 これに対し、金融政策と財政規律の関係について警戒的なトーンで言及した最近の事例としては、佐藤健裕審議委員が6月10日に山梨県金融経済懇談会で行った挨拶(講演)の中の、以下の発言がある。

「日本銀行の巨額の国債買い入れは金融政策目的で行っており、財政ファイナンス目的ではない。もっとも、こうした説明が説得力を持つには、政府の財政健全化努力が重要である。また、巨額の国債買い入れの継続は、我々はこれを金融政策目的としているとはいえ、長く続けると極端な低金利状態が財政計画等にビルトインされ、財政規律に影響する可能性がある。市場が一旦財政規律の疑念を持てば、長期金利のコントロールは日本銀行といえども困難となろう」

誰も監視しない財政規律

 佐藤審議委員の「我々はこれを金融政策目的としているとはいえ、長く続けると極端な低金利状態が財政計画等にビルトインされ、財政規律に影響する可能性がある」という発言は、原田審議委員による「財政は、政府と議会が責任を持って規律を維持するべきもので、金融政策とは関係がありません」という発言と見解を異にしている。

 ここで1つ、財政規律の問題を見ていく上で重要だと筆者が考えていることを改めて説明しておきたい。それは、財政規律が緩むことがないよう厳しい監視の目を向け続ける政治的な強い力を有する主体が、日本には見当たらないという事実である。例え外形的にも間違いなくマネタイゼーションに当たる日銀の国債(直接)引き受けや、それに準じる債券市場をワンタッチスルーするだけの大規模な国債買い入れがエンドレスに実行されたとしても、だ。

 米国では、「小さな政府」を標榜している共和党が上下両院で現在、過半数を有している。しかも、「ティーパーティー(茶会)」「リバタリアン」といった、財政緊縮をより強硬な姿勢で目指す政治勢力が存在しており、共和党の一部政治家の支援に回っている。

 ユーロ圏では、圏内で最も経済規模が大きい国であるドイツの財政均衡志向の強さ(要するに財政赤字嫌い)が、ユーロ圏全体の財政規律において一種のアンカーになっている。IMF(国際通貨基金)のデータベースで日本・米国・ユーロ圏の財政状況をフローとストックの両面で比較すると、ユーロ圏は全体としては突出した「優等生」なのだが、それでもなお財政健全化に向けた歩みを続けるよう、周縁国を含む通貨統合参加国に強いている。

欧米よりリスクが高い日本

 オープンエンド方式による日銀の「量的・質的金融緩和」がこのまま長期化することによって財政規律が緩むリスクは、米国やユーロ圏の場合よりも、はるかに大きい。

 最後に、日銀の英文版ホームページに掲載された内容に関する問題を取り上げたい。上記で筆者が問題視した原田委員の発言は、英訳では下記の通り、違った意味で解釈されやすい訳文になって掲載されている。

【和文】
「財政は、政府と議会が責任を持って規律を維持するべきもので、金融政策とは関係がありません」
 ↓
【英訳】
“The government and the parliament are responsible for maintaining fiscal discipline, and monetary policy should be independent.”

 この英訳では、中央銀行は政府・議会から独立した存在であるべきだと書かれており、政治からの金融政策(中央銀行)の独立性という、全く別の常識的なことを主張したかのようになっている。ちなみに、ロイターの英文記事の速報見出しでは以下のように、素直に訳されていた。

“BOJ’S HARADA : GOVT AND PARLIAMENT ARE RESPONSIBLE FOR MAINTAINING FISCAL DISCIPLINE, WHICH HAS NO DIRECT RELATIONSHIP WITH MONETARY POLICY”

日本語にないニュアンスを副詞で加筆

 英訳が妥当になされているかどうか、疑い出したらきりがないのだが、黒田総裁が11月6日に内外情勢調査会で実施した講演の最後の部分、今後の金融政策運営方針について述べた部分でも、英訳の方が、2%の物価目標の達成に向けた日銀の強い姿勢をアピールする表現になっていた。日本語にはない副詞が2つ、「明確に(definitely)」と「断固として(decisively)」)が英訳では添えられている。

 後で知ったのだが、ダウジョーンズ通信が当日のマーケット参加者向けの情報短信で、迅速にこの点を指摘していた。

【和文】
「日本銀行は、そのための役割を果たします」
 ↓
【英訳】
“The Bank of Japan will definitely and decisively play its role to make this happen.”

 日銀は10月30日の金融政策決定会合で、展望リポートのシナリオを明確に下方修正し、そこからの下振れリスクを明示したにもかかわらず、フォワードルッキングな(先行きを見据えた)政策調整としての追加緩和を見送った。

意図的な工夫に疑念

 政策のロジックには首尾一貫性がなく、海外メディアの一部からも日銀の信認(クレディビリティー)や2%物価目標の形骸化を取り沙汰する声が出ている。今は海外向けの情報発信で、日銀がかなり神経質にならざるを得ない局面だろう。

 そうした中で、日銀ホームページ掲載の情報に上記のような和文と英訳の違いがあるということになると、たとえそれが実際には翻訳者の裁量の範囲内にすぎない(日銀執行部の手が入ったものではない)場合であっても、筆者のような日銀ウォッチャーは、海外への情報発信で意図的な「工夫」が行われたのではないかという疑念を抱きがちとなる。

このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー

景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/112700022/


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