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アベノミクス3年目の曲がり角(Wedge)
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/130.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 11 月 29 日 09:52:00: igsppGRN/E9PQ
 

アベノミクス3年目の曲がり角
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151129-00010000-wedge-pol
Wedge 11月29日(日)9時10分配信


 株価の決定要因としてもっとも重要なものは企業業績である。「アベノミクス相場」が始まったときに8000円台だった日経平均が2万円を超える水準にまで上昇したのは、安倍晋三首相が打ち出した「アベノミクス」がうまくいったからではなく、企業業績が大幅に改善したからである。では、「アベノミクス」は株高にまったく寄与していないのだろうか。無論、そんなことはない。企業業績に大幅改善をもたらした円安は、アベノミクス3本の矢の一つ目である日銀の「量的質的金融緩和」に負うところが大きい。

 ところが、その日銀の「量的質的金融緩和」、いわゆる異次元緩和もここにきて手詰まり感が濃厚になっている。従来から国債の大量買い入れによる量的緩和の限界を指摘する声はあった。しかし、ここで筆者が問題視するのは、そうした政策の技術的な限界ではなく、日銀の意識の変化である。端的に言って、デフレ脱却を志向する気概が後退しているように見受けられる。仮にそうであるとすれば、「デフレを脱却し強い日本経済を取り戻す」というアベノミクスの根本的な旗印が大きく揺らぐことになりかねない。

 日銀は10月18-19日に開いた金融政策決定会合で現状維持の方針を決めた。そのこと自体は市場の予想通りでサプライズはない。しかし、金融政策決定会合後の記者会見で黒田東彦総裁が示した景気や物価に対する見通しはあまりにも楽観的だった。黒田総裁は「個人消費や輸出などの需要はかなり増加している」と述べ、景気の回復傾向が続いているとの強気の見方を示した。物価についても2%の目標に向けて高まっていくとの見解を改めて強調した。

 内閣府が16日に発表した7〜9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比年率0.8%減と2四半期連続のマイナス成長だったが、黒田総裁は「7〜9月期のマイナス成長の大きな原因は在庫投資。内需と輸出を加えた最終需要はかなり増加している」と日本経済は緩やかな回復にあるとの見方を変えなかった。

 確かに黒田総裁の指摘通り、7〜9月期のマイナス成長の大きな原因は在庫投資の減少であり、在庫減というのはそれだけ在庫調整が進んだとポジティブな解釈も成り立つ。GDP成長率の数字ほど景気の実態は悪くないという意見にも一理あるかもしれない。実はこのパターン、昨年とまったく同じである。昨年のGDPは、消費増税の影響で大きな落ち込みとなった4〜6月期に続いて、7〜9月期はさらに1.6%減と、予想外の2期連続マイナスを記録した。エコノミストの予想とプラス・マイナスの符号の向きまでも違う結果となり「GDPショック」という言葉がメディアに踊った。

 その主因が在庫と設備投資の取り扱いの難しさだった。だから景気の実態というものは、所詮GDP成長率の数字だけみていては判断ができないものである。しかし、そのように日本の景気が良いのか悪いか、はっきりしないということは、「経済状況が良好である」と誰もが胸を張って言えないことは間違いない。つまり、「決して景気は良くない」ということではないか。

■止まらない製造業の海外シフト

 実際のところ、設備投資も動いていないし、賃金上昇も鈍いままだ。設備投資が伸びない理由はいくつか考えられるが、日本企業が海外生産体制のシフトを進めているという構造的な要因が大きな背景としてあるだろう。今年の春、内閣府が発表した企業行動に関するアンケート調査によれば、13年度に22.3%だった製造業での海外生産比率は、14年度は22.9%に、19年度は26.2%とさらに高まると見通している。円安が進んでいるにもかかわらず、一向に海外生産比率の上昇に歯止めがかからない。企業が海外生産比率を高める理由は為替レートだけでなく、海外のほうが、需要拡大が見込めるからである。

 しかし、そういう事情を割り引いても企業が設備投資を想定以上に手控えているのも事実だ。日銀企業短期経済観測調査(短観)では、4〜9月に設備投資は8%強増える計画だったが実際は2%弱にとどまった。中国をはじめとする新興国経済の低迷や8-9月に起きたグローバル金融市場の急変などが企業マインドを冷え込ませた可能性がある。企業は計画していた投資を先送りしている。黒田総裁もこの点は認めた。

 一方、企業の内部留保は300兆円を超え、手元資金も過去最高に積み上がっている。リーマンショック以降、設備投資をしてこなかった影響で企業の設備ビンテージは延びており潜在的な投資需要はあるはずだが、企業はひたすらおカネをため込む一方だ。おカネを握ったまま使わないというのはデフレの象徴である。

 どうしたら企業はためこんだおカネを投資に使うだろうか。それには企業がインフレ期待を強く確信することである。ところが、前回の日銀短観発表の翌日に公表された「企業の物価見通し」では、物価や販売価格の伸びが鈍化するとの見通しが鮮明になった。企業の物価見通しの調査は、短観の一環として日銀が昨年の3月調査から始めた。約1万の調査企業に対し、1%刻みで自社の販売価格と物価について1年後、3年後、5年後の見通しを聞き取っている。この調査結果は、企業が抱く予想インフレ率を把握する数字として日銀が重視しているものである。 

 9月調査では、物価見通しは全規模全産業で1年後が前回の6月調査から0.2ポイント低下の1.2%上昇に、3年後は0.1ポイント低下の1.4%上昇に、5年後は0.1ポイント低下の1.5%上昇にいずれも下方修正となった。3つの期間全てで下方修正となったのは調査開始以来、初めてだ。これに加えて、市場が織り込んでいる予想インフレ率であるBEI(ブレークイーブンインフレ率:物価連動国債と普通の国債の利回りの差)も急低下している。企業のインフレ期待も市場のインフレ期待も下がっているのだ。

 企業や市場のインフレ期待が下がっていることは日銀も認め、金融政策決定会合の発表文にも「予想物価上昇率には、このところ弱めの指標もみられている」との記載が盛り込まれた。しかし、その発表文も、そして黒田総裁も、食料品などの値上げの動きを理由に「長い目でみれば(物価予測が)上昇しているとみられる」と、あくまで態度を変えていないのである。

■ECBドラギ総裁とは対照的な黒田総裁

 これほど頑として動く気配を見せない日銀と黒田総裁は、積極的に追加緩和を示唆するECBドラギ総裁と非常に対照的に映る。

 ECBはすでに政策としてマイナス金利導入に踏み出しているが、これを12月の理事会ではさらに拡大させる用意があることをにおわしている。一方、日銀は日本でも広がりつつあったマイナス金利を抑制する方向に動いている。先日、日銀は国債買い入れオペ(公開市場操作)で連日の減額に動き、中短期債需給の逼迫感が後退するとの観測が広がった。マイナス金利が拡大し長期債の利回りも低下するとみていた市場参加者は、はしごを外された格好となった。この点だけを見れば、ECBとの対比において日銀が金融緩和に「いかに積極的でないか」という好例だろう。

 日銀の金融政策決定会合(18-19日)のちょうど1週間前、日銀の原田泰・政策委員会審議委員が栃木県金融経済懇談会でスピーチを行っている。そこで原田審議委員はこう述べた。

 「日本銀行が当面の目標としています消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、9月にはマイナス0.1%となり、物価は上がっていないように見えます。しかし、それは世界的な原油価格下落によって、エネルギー価格が低下したことによるもので、エネルギーと生鮮を除いた物価を見ますと、着実に上昇しています。エネルギー価格は、いつまでも下落を続ける訳ではありませんので、やがてこの効果が剥落しますと、エネルギーを除かない物価も上昇していくはずです」

 これが日銀が追加緩和に積極的でない理由である。確かに、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数の上昇率は9月に前年同月比1.2%となり、8月の1.1%から拡大。2013年の異次元緩和導入後の最大の伸び率となった。しかし、これは「日銀版コア」ともいうべき指標だ。総務省が発表するオフィシャルな統計としては、1.エネルギーを含む総合指数、2.その「総合」から天候に左右されて変動の大きい「生鮮食品」を除く総合指数(いわゆる日本の「コア」指数)、3.米国等外国で一般的な、「総合」から「食料(酒類を除く)及びエネルギー」を除く総合指数(いわゆる「米国型コア」または「コアコア」)である。

■日銀にとって都合のよい指数を選ぶ意図

 総合指数の前年比上昇率はついに0%になってしまった。「生鮮食品」を除く総合指数(日本の「コア」指数)に至っては8月にマイナスに転じ、9月も水面下のまま。言うまでもなく原油等エネルギー価格下落の影響だ。だから、日銀としてはエネルギーを除く「米国型コア」=「コアコア」を使いたいところだが、そうすると今度は円安で輸入物価上昇を反映して値上がりしている食品類も除かれてしまうため都合が悪い。そこで「生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数」という日銀に都合のよい指数を持ち出してきたわけである。

 繰り返しになるが、「生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数」という指標は日銀が勝手に参照している指標であり、オフィシャルな指標はあくまで「生鮮食品」を除く総合指数、すなわち「コア」指数である。日銀のインフレ・ターゲットもこの指標をベースとしている。ところが先日、日銀は驚くべき発表を行った。

 日銀は消費者物価指数(CPI)に関連した新たな物価指数の公表を、10月分から始める方針を明らかにした。総務省によるCPIの発表日、本日27日午後2時ごろに「生鮮食品とエネルギーを除く指数」、「上昇品目数と下落品目数の比率」、価格変動の大きい上下10%の品目を除いて算出する「苅込平均値」の3つの指数を発表する。もともと日銀はこれらの3つ(生鮮とエネルギーを除く指数、上昇・下落品目の比率、苅込平均値)を毎月の金融経済月報で発表しているから、正確には発表のタイミングを早めるだけなのだが、何もよりによって総務省がCPIを発表する日にわざわざ「ぶつける」かのようなタイミングで発表することはなかろう。そこに日銀の意図が透けて見える。言わずもがな、原油の影響を除けば物価上昇の基調はしっかりしている、とアピールせんがためである。ここまでするからには、よほど追加緩和をしたくない、というメッセージにも受け取れる。

 日銀がインフレ・ターゲットの達成をそれほど急いでいない理由は政治的な配慮だろう。来年の参院選を意識して安倍政権はポピュリズムを強めている。象徴的なものは消費税の軽減税率の議論。学者等専門家がこぞって反対するなか、一見「低所得者=弱者にやさしい」ように見える軽減税率の導入に突き進んでいる。庶民が物価にナーバスになるなか、(追加緩和によって)「これ以上の円安は望ましくない」という雰囲気が永田町から伝わり、日銀の腰を重くしているのではないか。それが日銀のこの変節の背景だろう。

 日銀の異次元緩和は壮大な経済実験と揶揄される。反リフレ派は、量的緩和を行えばインフレになるという「理論」も、インフレになったという「実績」もないと批判する。確かに、米国は量的緩和を第一弾(QE1)から第三弾(QE3)まで行ったが、一向にインフレ率が高まらないうちに利上げへと舵を切りつつある。そうした批判に対するリフレ派の主張は「金利を引き下げ、期待インフレ率を引き上げて実質金利を低下させるのがミソ」というものである。

 では、果たして現在の日銀の姿勢は、そのようなリフレ政策の根幹をなす効果を追求していると言えるだろうか? マイナス金利拡大の抑制に動いているのは金利低下をこれ以上進めないということだ。一方、企業や市場の期待インフレ率が低下していることを認めながらも、「長い目でみれば上昇している」などと意味不明な釈明をする。挙句の果てには、期待インフレ率は脇に置いて、実際の物価は上昇していると主張する。しかも日銀に都合の良い指数を自前で公表してまでだ。これでは、ただでさえ根拠薄弱なリフレ政策の肝である「期待に働きかける」ことさえ放棄しているように見受けられる。

 アベノミクス新3本の矢に対する投資家の評判は散々である。従来の3本の矢はまだ効果があった。特に第一の矢である金融緩和によって株高・円安というポートフォリオ・リバランスの効果が見られたのは事実である。日銀の強いコミットメントによって「期待に働きかける」ことが奏功したからだ。ところが上述の通り、現在の日銀の姿勢からはその肝心のコミットメントが薄らいでいるように思われる。唯一機能していた矢が、遂に折れようとするなか、「アベノミクス相場」は3年目の曲がり角に差し掛かっている。

広木隆 (マネックス証券チーフ・ストラテジスト)

 

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コメント
 
1. 2015年11月29日 10:18:41 : LY52bYZiZQ
Domestic | 2015年 11月 29日 08:30 JST 関連トピックス: トップニュース

法人税引き下げ、16年度に29%台後半へ調整=政府・与党筋

http://s2.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20151128&t=2&i=1098375885&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPEBAR0EC
 11月28日、政府は、法人税の実効税率について、来年4月から20%台に引き下げる方向で調整に入った。現在の32.11%を29%台後半とする案が浮上している。政府・与党筋が明らかにした。写真は11日撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai )
⁅東京 28日 ロイター⁆ - 政府は、法人税の実効税率について、来年4月から20%台に引き下げる方向で調整に入った。現在の32.11%を29%台後半とする案が浮上している。税率の引き下げを1年前倒しし、企業の設備投資や賃上げを促す。政府・与党筋が28日、明らかにした。

政府、与党は昨年末の時点で「今後数年で20%台まで引き下げる」との目標を掲げ、15年度から32.11%に、16年度からは31.33%まで引き下げる方針を決定。「20%台」への引き下げは17年度に実行に移す予定だった。

ただ、企業の設備投資や賃上げを後押しするには、税率引き下げの前倒しが必要と判断。16年度に予定していた実効税率の引き下げ幅を上乗せし、来年4月から29%台後半とする方向で、関係省庁が調整を始めたもようだ。

税率の引き下げで必要となる代替財源は、赤字企業も対象となる外形標準課税の税収を当初予定よりも引き上げることなどを軸に検討する。経済界にはかえって負担増になりかねないと懸念する声があり、結論を得るまでの曲折も予想される。

http://jp.reuters.com/article/2015/11/28/corptax-idJPKBN0TH0RG20151128


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