★阿修羅♪ > 経世済民103 > 128.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
世界を制した「ばね」会社の破天荒な経営戦略〜ニッポンの中小企業の「底力」をみよ 大企業の軍門に下ってたまるか!
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/128.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 11 月 29 日 08:52:11: igsppGRN/E9PQ
 

             〔photo〕東海バネ工業のHPより


世界を制した「ばね」会社の破天荒な経営戦略〜ニッポンの中小企業の「底力」をみよ 大企業の軍門に下ってたまるか!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46535
2015年11月28日(土) 黒崎誠 現代ビジネス


大企業から厳しい値引き要求を突きつけられたら、泣く泣く応じるしかない。それに耐えられない中小企業は、転業や「退場」を余儀なくされる――それが日本の産業界の「常識」だ。

ところが、大企業の軍門に下るどころか、敢然と立ち向かっている中小企業が、大阪市にあった。東海バネ工業。小惑星探査機「はやぶさ2」や「東京スカイツリー」、「しんかい6500」に特別仕様のバネを供給している会社である。

「値引きしてまで売らない」「わが社の言い値で買ってもらう」。大きな自信の背景には、「ばね職人」を自負するベテラン社員たちの高い技術と、1個1個の手づくりへのこだわり、そして一人一人の従業員を大切にする社風があった。

■大量注文にはいっさい応じない

東海バネ工業は、社名の通り「ばね」のメーカーだ。ばねをつくる会社は、兼業を含めると国内だけでも3000社以上ある。競争が激しく、どの企業も少しでも多くの注文を確保しようとしのぎを削っている。

だが、大阪市福島区に本社を置く東海バネは、他のばね会社とは異なり、大量生産の注文には応じない。「1000個、2000個の注文はもとより、100個、200個といった注文があった場合でも、わが社は大量生産しませんので他社にお願いしてください」と断る。

大量生産時代を迎えた現在もなお、職人芸による1個、1個の手づくりにこだわり続け、特注品の手づくりばねのオンリーワン企業となった。この経営方針を変えることは考えていない。数多くある日本の企業の中でも「世界一変わった会社」だ。

ばねは、家具の一部やヘルスメーターなどのように、わたしたちの日常生活を陰に日向に支える品物の一つだ。

日常的に使われるばねの多くは、縮ませると反発する力を利用した「コイルばね」と呼ばれるものや、引っ張られると荷物を支える「引張コイルばね」等だ。

しかし、小さなスペースで大きな力を発揮する「皿ばね」、トラックや鉄道車両に使用される「大型ばね」や、電子機器の内部に組み込まれる「板ばね」、小さな容積で大きなエネルギーを吸収する「輪ばね」、ダムや水門の安全装置に活躍する「ゲートロボ」、四角い断面の材料でつくりばねの力が強力になった「角ばね」といったように、東海バネは用途に応じて実に多様なばねをつくっている。

■日常生活から「はやぶさ」「スカイツリー」まで

2003年5月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」は、10年6月、日本に帰還を果たし、小惑星「イトカワ」で採取したサンプルの入ったカプセルは無事回収された。はやぶさの成功は、日本の宇宙関連技術の高さを示し、世界から高い評価を受けた。

はやぶさにはイトカワの物質をサンプル採取する装置(サンプラー)をはじめ、数多くのばねが使われている。このばねを一手に引き受けたのが、東海バネだった。もちろん「はやぶさ2」でも使われた。

国際宇宙ステーションが必要とする食料や実験、研究などに必要な物資を運ぶため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「こうのとり」を開発した。この「こうのとり」を宇宙に打ち上げる役割を果たすのがH-UBロケットなのだが、その第一段エンジンには東海バネの皿ばねが使われている。大気圏での飛行中は高熱に晒されるため、これに耐えるものでなければならないが、その条件をクリアした。

また、空気の影響がなくなる高度に達すると、ロケットから「こうのとり」を守るためのカバーである衛星フェアリングが分離投棄されるが、その際、コイルばねによって衛星フェアリングは二つに分かれ、その中から「こうのとり」が飛び出す。この二つに開くばねをつくったのも東海バネだ。

「こうのとり」に使われているばねは、宇宙空間におけるマイナス200度前後の極低温でもばねとしての弾力性を発揮して「こうのとり」を宇宙空間に飛び立たせなければ、宇宙計画そのものが失敗しかねない。

要求された仕様は従来のばねの常識を破るようなものが多く、関係者もこれほど厳しい条件下で機能するばねを果たして国産の技術でつくれるのか、強い懸念を抱いたという。しかし東海バネは、宇宙空間でも能力を発揮できる特殊な材料でばねをつくり、その信頼に見事に応えた。

東京スカイツリーは高さ634メートルを誇る、世界一高い自立式電波塔だ。一般の観光客がのぼることのできる高さ450メートルの展望台の上には、高さ約140メートルの放送用のアンテナ設備を取り付ける「ゲイン塔」と呼ばれる細長い建造物がそびえ立っている。

スカイツリーは過去の例から起こりえないような風速にも耐えられるよう設計されているが、むしろ問題なのは日常的な風。地上では問題にならない風速10〜15メートルの風でも600メートルの上空では「渦励振」と呼ばれる共振現象を引き起こし、大きな事故につながりかねない。現に海外では、渦励振による大きな事故の例もあるという。

この揺れを防止するため、最上部には、「TMD」と呼ばれる振動を制御する装置が設置されている。その制振装置に取り付けられているのが、東海バネの「金具付ばね」だ。

風の向きによってゲイン塔は引っ張られることもあれば、逆に押し戻されることもあるが、どんな揺れにも対応できる。このばねの重さは、800キロと1トン近い。東海バネは、これまで超高層ビルなどに使われる大型ばねに実績を持っていたことが評価され、受注につながった。

また、エネルギー生産の現場では火力、原子力などの発電機のタービンを守り、安定した電力を供給する部材として使われる、数百度の高温にも耐えうるばねもつくっている。やはり高熱となる鉄鋼生産の現場でも、このばねは使われる。

さらに、「しんかい6500」(有人潜水調査船)、明石海峡大橋の基礎資材といった一般には目に留まらないものの、生活に欠かすことのできない分野でも東海バネは活躍し、国民生活から先端技術までを支えている。

■受注平均ロットが5個でも儲かる理由

多くの分野で使われるばねをつくる同社であるが、先述した通り、100個、200個程度の量産品でも受注を断る。逆に10年前に製造した1本のばねが古くなったので取り替えたいという注文には応じる。

1本、1本の手づくりを基本とし、受注平均ロットはたったの5個。業界の常識から見れば、とても経営が成り立つとは思えない受注ロットだろう。

しかし、2014年度の売り上げは約19億円。粗利益は約50パーセント、営業利益12パーセントの超優良企業。その秘密は「わが社の言い値で買ってもらうため」(渡辺良機社長)という。

東海バネの主要な取引先は、大手の鉄鋼、電気、造船といった有力企業。対する東海バネは、典型的な中小企業。産業界の常識であれば、中小企業は大手企業に厳しい値引き要求を突きつけられて泣く泣く要請に応じざるを得ない。

これに耐えられない中小企業は転廃業に追い込まれる。大手企業の値引き要求がどれほど熾烈なのかは、日本の中小製造業が、この15年で30パーセント以上も減っていることを見ても明らかだろう。

多くの中小企業にしてみれば信じられないような話だが、本当であることは営業成績が示している。大手が大量に購入するといっても断り、正当な利益の見込める価格でしか注文に応じない姿勢を一度も崩さない。これを支えているのは、他のばね会社には絶対にマネのできない高品質の特注品に特化していることだ。

ばねには経済産業省の定めたJIS規格が適用されるが、同社は独自の社内規格を設定し3倍以上の精度のばねを基本としている。ドアのばねが壊れてこのままではドアごと取り替えなければならない、といった個人の1個にも手抜きをせず注文に応じる。だが、大半は大手企業や研究所、大学などからの特注品。このため1個の単価が、数万円、数十万円と極めて高価格。高い利益率の秘密はここにもある。

その一方、納期は絶対に守り、完納率は99.9パーセントと完璧に近い。同社がコンピュータを導入したのは、多くの企業がまだ導入していない約40年前から。コンピュータによって顧客管理を行えば、すべての顧客の注文の日時、製品、価格等が管理できると社長の良機が直感したことが始まりだった。

今ではパソコンで管理し、一度でも取引のあった顧客であれば企業だけでなく個人でもどのようなばねを納品したかが、年月日まで即座に分かる。この情報は営業から製造現場まで共有しているからその場ですぐに対応できる。

でき上がるまでの日数や製造現場の状況を判断して注文に応じることが、完璧に近い納期となり、これが顧客の信頼へとつながっている。

■在庫はムダではなく財産である

同社の最大の武器は、この道一筋の匠の技を持つ職人芸にある。

同社が得意とする手づくりばねは、材料を切断するところから始まる。サイズ、数量は顧客ごとに異なるから必要な時に必要なだけ材料をそろえておくことが重要と、在庫をできるだけ多く持つ。特殊な材料になると1年以上もストックする。

これは在庫はムダなものでなく財産、との経営方針に基づいている。在庫はゼロが理想、というトヨタのかんばん方式が多くの企業で採用される中で逆の発想ともいえよう。

次の成形加熱は、切断された鋼材を900度前後にまで加熱する工程。どの程度まで加熱して取り出すかは、真っ赤に焼けている材料の色等を見て決めるが、その日の天気、気温、湿度などによって微妙に変化する。ベテラン社員のカンと経験が、ここで発揮される。

巻き取りの工程では、職人芸のノウハウが詰め込まれた世界に一つしかないロボットが活躍する。ここでもばね職人を自負するベテラン社員が操ることで高精度のばねになるという。

ピッチ調整は、ばねの形状や特性を決定づける極めて重要な工程で、社員の目と腕だけでミリ単位の調整を行う。まさに腕の見せどころだ。機械内部で使われることの多いばねは、直角や平行であることが求められ─―これを直角度、平行度と呼ぶが─―高い精度が求められる。やはりここでもベテラン社員が、高速回転する機械で丹念に仕上げる。

以上を含むさまざまな工程を経て、ばねはでき上がるわけだが、最後の完成検査でも「わずかなミスも見逃すまい」との気概にあふれた検査員たちが外観、寸法、重量、非破壊といったいくつもの検査で厳しくチェックする。

この検査は、東海バネが独自に定めた厳しい検査基準で行われ、ここで合格した製品だけが最終工程である錆び防止に回され、完成・出荷となる。こうした職人芸の社員たちによる手づくりこそが、会社を支えているゆえ、海外に生産拠点を移すことはまったく考えていない。

会社独自の匠の技の試験があり、これに合格すると匠の職人と認定される。試験は国家資格である「金属ばね製造技能士」よりはるかに難しいという。匠にはレベル1から4までのクラスがあり、上昇するに従って報酬も上がっていく給与体系となっている。年齢、経歴などに関係なく誰でも試験を受けられるため、若い社員や途中入社組が上位に入ることも決して珍しくない。

手づくりを続けることと職人芸を100年後にも継承するため、豊岡工場(兵庫・豊岡市神美台)のなかに啓匠館という名称の建物を建てた。ここでは6人の匠の技を持つ社員がすぐれたばねをつくるため黙々と働いている。啓匠館で働くことは社員の目標にもなっており、配属を命じられた社員がうれし泣きに泣いたというエピソードさえある。

■値引きしてまで売らない

今でこそ世界各国からも多くの注文を受けるオンリーワンの企業だが、良機が社長に就任した時点では、典型的な町工場のばね会社であった。

創業者は、岐阜の寒村出身の南谷三男。若いときにばね屋に丁稚奉公にだされ、その後独立した。基盤も信用もない新しい会社では大手ユーザーを摑むのは難しいと、他の会社が嫌がる手間のかかるばねや個数の少ないばねに特化した。

南谷には3人の子供がいたが、いずれも女性だった。3人とも跡を継ぐ気持ちはなく、その夫たちも社長就任を断っていた。良機は、南谷の次女の夫の弟。南谷から社長になるよう懇願され、3年以上も断り続けたが、根負けして引き受けた。

「会社は黒字で、取引先は大手の安心できる企業ばかり」との甘い言葉が、実はほとんどデタラメだったということは、会社に移って初めて知った。

確かに赤字ではないが、利益はほとんど上がらない。取引先の大手は、好き勝手に無理難題や注文を突き付けてくる。現場で仕事を覚えると、配属された生産現場ではベテラン工員の陰湿ないじめを受け、半年で円形脱毛症になった。

それでも頑張る良機の仕事ぶりを見ていたベテラン社員が、数ヵ月後から敬語を使うようになった。会社を辞めることばかり考えていたが、業界のヨーロッパ研修で「値引きしてまで売らない」との言葉に目から鱗が落ちる。帰国すると直ちに実行に移した。

顧客から相手にされず、社内でも反対論が強かった。若手社員を中心とするプロジェクトチームで頑張り通して徐々に実現させていき、実施率を100パーセントに引き上げた。

ヨーロッパの現場で働く社員の給与が高いのは辛い仕事だから、と聞いたことにならい、給与を引き上げた。東海バネの給与は、業界では群を抜いてトップ。家庭の事情で辞める社員はいても「会社が嫌」と言って辞める社員はゼロ。実質的な首切りのリストラなども創業以来まったくなし。

子供が生まれると第1子で10万円、第2子なら20万円、第4子にはなんと100万円の祝い金がでる。社員の家族の中には、買い物帰りに会社によってお茶を飲んでいく者もいる。社員を大切にすることでもナンバーワンであろう。

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2015年11月29日 09:38:17 : qsLOwjDFRc
直販で中抜きするから工場の単価倍でも客が払う価格は同じで競争力があるのか


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民103掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民103掲示板  
次へ