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役員責任調査委員会の調査報告書公表についてのお知らせ(「東芝 HP」より)
東芝の第三者委、意図的に巨額減損を見過ごした疑い 1兆円毀損させた経営陣を無罪放免
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151127-00010002-bjournal-soci
Business Journal 11月27日(金)22時31分配信
11月19日付日経ビジネスオンライン記事『スクープ 東芝、室町社長にも送られた謀議メール』は次のように報じている。
「東芝が2006年に買収した米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で巨額の減損が発生していたことを(前に)報じた。子会社単体では2年連続で赤字に陥っていたが、本誌(日経ビジネス)が指摘するまで東芝は事実を開示していなかった」
WHに関連して減損処理が不適切だったという先駆けスクープがあったという。だが、同記事の真骨頂は、副題となっている「巨額減損問題、第三者委の調査は“出来レース”だった」のほうである。米国子会社のWHで1200億円もの損失が発生していたのだが、それをWH単体での減損処理として東芝では本社との連結決算に反映させなかった。
その措置について同記事は、「東芝の法務部門トップが謀議の内容を現社長の室町正志や前社長の田中久雄らに伝えていた」とし、さらに「東芝の不正会計問題を調査した第三者委員会が、米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の減損問題を知りながら、東芝と『謀議』の上で調査対象から外していた」と報じている。
つまり、かくも多額な減損について、現社長を含む経営陣や不正を追及すべき第三者委員会までが、不適切な処理について承知していたというのである。
●証券取引等監視委員会も手ぬるい
11月18日、証券取引等監視委員会が東芝の利益水増しに対して70億円強の課徴金を課すよう金融庁に勧告する、と一斉に報じられた。これまでの課徴金額は08年にIHIに科された15億9000万円が最高だったので高額だと報じた向きもあるが、東芝の利益水増しによる決算の下方修正額である2248億円に対しては、まったくバランスを欠く。
ある金融庁幹部が「企業の利益を毀損させる課徴金を引き上げれば、株価下落で直接被害を受けている株主がさらに痛手をこうむる」(11月18日付毎日新聞より)という見解を述べたというが、私はこれまでに引き起こされた株主損害を考え、もっと厳正な処置が必要だと考える。
今回の粉飾事件で、世界の株主はどれだけ損害を受けたか。試算のひとつの方法として、株価の推移で考えてみよう。
粉飾が報道され問題となったのが今年5月8日だった。5月1日の東芝の株価は482.50円が終値だった。11月18日は287.60円であり、この日の時価総額は1.22兆円とされる。株価から逆算すると5月1日には2.02兆円の時価総額があり、その日から0.8兆円が失われた。「他の要素もある」という論もあろうが、私は大きなものとしては粉飾決算だと考える。
さて、兆円規模に上る経済毀損額に対して70億円だけの課徴金? それは一体、どれほどの懲罰的な意味を持つというのか。
また、東芝は11月7日に田中久雄前社長ら歴代社長3人を含む旧経営陣5人を相手取り、計3億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。しかし、本来は現旧役員28人に対し総額10億円の損害賠償を求める訴訟を起こすように、ある個人株主が東芝に求めたという経緯がある。
東芝によるこの提訴により、その個人株主が現経営陣を含んだ訴訟を起こすことを防ぐこととなった。また、「5人に対して3億円」というのも大企業の元役員に対してはまことに少額で、前述した「兆という資産価値の滅失」に対して甚だバランスが取れないものだ。
●ムラ社会のかばい合い
前出日経ビジネス記事で紹介した記事によれば、室町正志現社長もWH減損案件にかかわったことからも、一連の「不適正経理処理」への関与も取りざたされる状況となった。その可能性を勘案すると、「同じ穴の貉(むじな)をかばった」とまではいわないが、経営責任を共有していた同志・先輩に武士の情けをかけてしまったとみられても仕方がないのではないか。
今回の事件を「プレイヤーズ・セオリー」で見ると、主要登場プレイヤーは次の通りだ。
・3人の直近歴代社長
・現経営者
・監査法人
・第三者調査委員会
・証券取引等監視委員会(及び監督官庁である金融庁)
今回の事件で私が思うのは、粉飾が引き起こした巨額の経済的毀損、つまり「罪」に対して課せられるべき「罰」がとても矮小なものとなろうとしていることだ。この5者が互いに相手の立場や生き残りを慮り、裏でなあなあのコミュニケーションを取るか、「阿吽(あうん)の呼吸」で叩き潰さない程度の甘い処罰での落としどころを見いだそうとしている。同じ会社やつながりのある組織同士での、「知り合いは助け合い、かばい合う」というムラ型文化の麗しい発露と観察することができる。
しかし、「そんなことは許されない」と私は考える。
アメリカでは01年に倒産したエネルギー会社エンロンが、倒産前に不正経理により株主に損害を与えたとして、8人の経営責任者が刑務所に入った。東芝の前経営者たちに責任があったとすれば、「5人で最大3億円」などという事態で収束させようとするのは犯罪的といえるのではないか。
また、エンロン社の粉飾決算を見抜けなかった当時世界5大会計事務所のひとつだったアーサー・アンダーセンは解散に追い込まれている。東芝の監査法人は新日本有限責任監査法人であるが、同法人は例のオリンパス事件の時の監査もやっていた。今回の東芝事件で金融庁は同法人に対して業務中止命令を検討した、とされたが結局これもムラ社会の論理だろうか、厳しい措置はとられていない。
監査法人にとって顧客である法人と、その法人の株主の損害被害は同列には論じられないのだろうが、社会的意義という観点から考えれば、新日本監査法人にはアーサー・アンダーセンと同様解散してもらったほうがいい。ぜひ退場してもらいたい。
幸いというか、東芝に対しては個人株主約70人が約4億円の損害賠償を求める集団訴訟を起こす意思を固めたという(11月13日ロイターより)。これが契機となり、前経営者あるいは現経営者、そして法人としての東芝への責任追及が広がることを願う。それが社会正義ということになる。
文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント
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