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日銀のロジックを優先することは、日本経済の命取りになりかねない?(撮影 尾形文繁)
「金融緩和」の現実は、「引き締め」だった マイナス金利が警告する黒田緩和の反作用
http://toyokeizai.net/articles/-/93626
2015年11月27日 徳勝 礼子 :BNPパリバ証券投資調査部レラティブ・バリュー・アナリスト 東洋経済
金融機関同士の取引で発生した円のマイナス金利が、いまや短期国債市場にも波及している。その原因は空前の金融緩和と、それと一体となった財政拡張だ。財政赤字拡大は金利上昇につながるという通説とは逆に、それがマイナス金利を引き起こしているという『マイナス金利』の著者が、「日銀はエビデンス(実証データ)を重視せよ」と訴える。
■「いずれ追加緩和へ」というのが大方の予想だが
円のマイナス金利は、市場が財政リスクを懸念しているからこそ現実化した。金融市場からの警告を読み解いた異色の日本経済。
2015年10月に2回開かれた日銀の金融政策決定会合においては、追加緩和はなされなかった。
しかし、2%のインフレ目標が達成できそうにないという理由から、いつかは追加緩和をやらざるをえないとみている市場関係者は少なからずいる。
もっとも、市場関係者自身がそう考えているというより、金融政策担当者がそう考えているだろうと市場関係者が推測している、というのが正しいかもしれない。
しかし、日銀のロジックを優先することは、エビデンスを無視することに等しく、日本経済の命取りになりかねないのだ。
■金融もロジックよりエビデンスを重視すべき
2013年、政府・日銀はデフレという病気を治療するために、金融緩和という薬を使い始めた。その背景には「デフレには金融緩和が効く」というロジック(論理的思考)がある。
今日、医療はロジックよりエビデンスが重視される傾向にある。昔は「Aという病気にはBという薬が効く」というロジックがありさえすれば、Bという薬が処方されていた。
それに対して今は、Aという病気にBという薬が効いたかどうかの統計学的な実証研究の結果(エビデンス)を見たうえでBを処方する、という考え方が重視される。
日銀の処方箋が適切だったかどうか、そのエビデンスを見てみよう。金融緩和は、ロジックとしては景気を刺激することになっている。しかし、2008年のリーマン・ショック以来続いてきた金融緩和、そしてその度合いを2年で2倍へと強め、今も強め続けている2013年以降の量的・質的金融緩和は、エビデンスの面からは「景気を刺激してきた」、あるいは「インフレ期待を高めてきた」とは言えないのではないだろうか。
「期待インフレ率を高めれば成長率が高まる」というロジックの代わりに、エビデンスとして見えてくるのは、@マイナス金利とA当初目論まれていた2%の実質経済成長率を下回る、ほぼ0%の成長率だ。
円のマイナス金利は金融機関同士の相対取引の中で発生しているが、その現象が短期国債市場へと波及してきている。3カ月短期国債は2014年終盤以降、慢性的にマイナス0.1〜0%で取引されており、2015年11月には、1年国債が一時的にマイナス0.15%をつける局面もあった。
■円金利のマイナス化=ドル金利の上昇
そこからわかることは、量的緩和によって増加した円の流動性が、円金利のマイナス化、裏を返せばドル金利の上昇という形で、引き締め的に作用しているということだ。
円のマイナス金利はどうやって発生するのか。邦銀はドル資金を調達するときに、海外金融機関との間で円とドルを貸し合うという形をしばしば選択する。
金融緩和で市場に円があり余っている状態では、円金利が大安売りされてしまう。大安売り、すなわち金利の値引きが高じて、円金利はマイナスになってしまったのである。
ドル資金が必要な邦銀や海外事業をしている企業にとって、円金利の値下がりはドルの調達コストの上昇と同じことだ。それはこのような日本企業にとって、実質利上げである。日本企業は、金融緩和政策のおかげで、実質的な金融引き締めに見舞われているのである。
その実質利上げは、米国FRBが今後、利上げを行うかどうかに関係なく、日本企業にすでに降りかかっている。
■「ロジックは正しかった」では済まされない
社会経済現象、特に金融政策を含むマクロ経済政策については、統計学的アプローチが難しい。
いちばんの理由はサンプル(標本)数が足りないことだ。G7のうち3カ国は通貨がユーロであるため、G7内の通貨は5つしかない。統計学には「自由度」というサンプル数を表す概念があるが、自由度が5しかないと、統計学的な分析がかなり厳しいことも事実だ。
また、マクロ政策の効果を把握するには時間もかかり、各国固有の背景や制度が異なるという事情もある。
そうした困難さをいいことに、マクロ経済政策ではエビデンスよりもロジックがいつまでも幅を利かせてしまっているのだ。
しかし、ロジックに疑問を呈するようなエビデンスが出ているのに、金融政策を方向転換する兆しは見えない。
金融市場で働くトレーダーやディーラーの多くは、統計学という認識はなくとも、統計学的アプローチを自然にとっている。
ロジックを考えてある取引を行って、そのとおりに市場が動かず損失を出してしまったら、「ロジックは正しかった」では許されない。出してしまった損失は戻らなくとも、ストラテジーを練り直さなければ、新しい取引をさせてもらえない。そのストラテジーは、起こったことを正面から受け入れ、エビデンスを土台にして作り上げられる。
もちろん自由度に限りがある金融政策を、教科書的な統計学的アプローチで考えるのは不可能だ。しかし、エビデンスに沿った新しいロジックを見出すことで、足りない自由度を補うことはできるだろう。マイナス金利の発生は、そうした転換の必要を警告しているのだ。
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