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ピケティ絶賛!格差解消の切り札はこれだ 平等な社会に向けた現実的なビジョン(東洋経済)
http://www.asyura2.com/15/hasan102/msg/890.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 11 月 27 日 17:50:35: igsppGRN/E9PQ
 

ピケティが絶賛する、格差解消の切り札とは……?(撮影: 尾形文繁)


ピケティ絶賛!格差解消の切り札はこれだ 平等な社会に向けた現実的なビジョン
http://toyokeizai.net/articles/-/93619
2015年11月27日 トマ・ピケティ :パリ経済学校経済学教授 東洋経済


『21世紀の資本』が世界的なベストセラーとなり、著者ピケティが来日してから約1年。ピケティの師であるアンソニー・アトキンソン氏の著書『21世紀の不平等』が12月11日に刊行される。ピケティ氏が格差解消の手段として世界的な資本税を挙げたのに対し、アトキンソン氏はもっと多面的で実現可能性の高い15の方法を提案しているのが特徴だ。


今回刊行される日本語版では、ピケティ氏による序文「平等な社会に向けた現実的なビジョン」が掲載されている。東洋経済オンラインではその序文を全文掲載する。


■経済学が社会道徳科学であることを実証



『21世紀の不平等』。アメリカで5万部売れており、世界16カ国で刊行。著者アトキンソンによる不平等研究の集大成でもある。


アンソニー・アトキンソンは、経済学者のなかでも独特の位置を占める。過去半世紀にわたり、アトキンソンは主流トレンドに刃向かって、不平等の問題を自分の研究の中心に据えつつ、経済学がまず何よりも社会道徳科学なのだということを実証してみせた。その新著『21世紀の不平等』――これまでの著書よりも個人的で、行動計画に完全に専念した本だ――において彼は新しいラディカルな改革主義の大胆な概略を述べている。


アトキンソンの改革主義には、進歩的なイギリスの社会改革者ウィリアム・ベヴァリッジを思わせるものがある。読者は、彼のアイデア提示の方法を楽しんでほしい。この伝説的なまでに慎重なイギリスの学者は、本書ではもっと人間的な側面をあらわにして、論争に身を投じ、具体的で革新的で説得力ある提案の一覧を提示する。それは別のやり方がまだ存在すること、社会進歩と平等への戦いが正当性を回復せねばならないこと、それもいま、ここでそうすべきだということを示す。彼は累進課税への復帰を財源とする、ユニバーサルな家族手当を提案する――これらをあわせると、イギリスの不平等と貧困をアメリカの水準からヨーロッパの水準まで引き下げるはずだ。


また彼は、失業者のための最低賃金での公共的な就職保証を訴え、革新的な国民貯蓄システムで、預金者に収益保証をつけることで、資産所有へのアクセス民主化を支持する。18歳になった時点で資本給付という形で万人に相続財産が与えられ、その財源はもっと強固な相続税だ。イギリスの人頭税――地方政府の一律税率の税――は廃止し、サッチャリズムを実質的に破棄しようと言う。その効果は実にすがすがしい。ウィットに富んで、エレガントで深遠なこの本を是非読んでほしい。それは政治経済学とイギリスの進歩主義が提供してくれるものの最良のブレンドとなっている。


本書とその提案を完全に享受するには、それをアトキンソンのキャリアというもっと広い流れに置くべきだろう。というのもアトキンソンは主に、徹底して慎重で厳密な学者としての成果を生み出してきた人物だからだ。1966年から2015年にかけて、アトキンソンは書籍を50冊前後と、学術論文350本以上を発表している。これは富の分配と貧困をめぐる国際研究という広い分野に深い変革をもたらした。1970年代以降も、重要な理論的論文を書き、特に最適税制理論に関するものが多い。こうした貢献だけでも、ノーベル賞数個分の価値がある。


■学生や研究者にとってお手本のような存在



アンソニー・アトキンソンは、たびたびノーベル賞候補に名前の挙がる「格差研究のゴッドファーザー」。オックスフォード大学ナフィールドカレッジ元学長で、現在オックスフォード大学フェロー


だがアトキンソンの最も重要で深遠な研究は、不平等の歴史的、実証的な分析であり、それもまったく危なげなく活用される理論的モデルを尊重しつつ、慎重かつ穏健な形で実施されているのだ。その特徴的なアプローチは、歴史的でもあり、実証的でもあり、理論的でもある。その極度の精緻さと疑問の余地なき誠実さ、社会科学の研究者としての役割と、イギリス、ヨーロッパ、世界の市民としての立場とを倫理的に融和させたアトキンソンは、何十年にもわたり、何世代もの学生や若き研究者にとってお手本のような存在だった。


サイモン・クズネッツと共に、アトキンソンは概ね社会科学と政治経済学のなかで新しい分野を創始した。それは所得と財産の分配の歴史的トレンド研究という分野だ。もちろん、分配と長期トレンドの問題はすでに19世紀政治科学、特にトマス・マルサスやデヴィッド・リカード、カール・マルクスの著作に登場している。だがこうした著者たちは、限られたデータしか使えず、しばしば純粋理論的な考察にとどまるしかなかった。


所得や財産の分配に関する分析が、実際に歴史的な情報源をもとに可能となったのは、20世紀後半になってクズネッツとアトキンソンの研究が登場してからのことだ。1953年の力作『所得と貯蓄における所得上位層のシェア』で、クズネッツはアメリカの国民所得と財産に関する系統だった記録(クズネッツ自身が推す説を手伝った記録)と連邦所得税(長きにわたる政治的な戦いの後で1913年に創設)が提供してくれるデータを組み合わせ、年次の所得分布に関する世界初の歴史的な記述を確立した。そのついでに、あるよい報せも生み出した。不平等は減っているというのだ。


1978年に、『イギリスの個人資産分布』という本質的な本(アラン・ハリソンと共著)で、アトキンソンはクズネッツを出し抜き追い越した。彼は1910年代から1970年代までのイギリス相続記録を系統的に使い、各種の経済的、社会的、政治的な力が所得分配に見られる展開の理解をどこまで助けてくれるのか、堂々たる分析を行った。その分布は、この極度に荒っぽい時期には特に注目されていたものなのだ。


所得と財産の不平等に関するその後のあらゆる歴史トレンド研究は、ある程度はクズネッツとアトキンソンの画期的な研究の後追いとなる。その歴史的で先駆的な著作は除いても、アトキンソンは何十年にもわたり、現代社会における不平等と貧困の継続に関する国際研究を行う国際的専門家の主導的存在だった。また、こうした問題に関する国際協力を不屈の努力で構築した人物でもあった。


■献身的で皮肉な本


『21世紀の不平等』で、アトキンソンは学術研究の領域を離れ、行動と公的介入の領域へと足を踏み入れた。これにより、彼はキャリアの発端から実は決して捨てたことのない、公的な知識人という役割に立ち戻ることとなった。イギリスの資産分配に関する1978年の歴史的な研究以前に、アトキンソンはすでに独自の形で公的介入となる本を数冊執筆している。特に『イギリスにおける貧困と社会保障改革』(1969)と『不平等な分配:イギリスの資産』(1972) を挙げよう。アトキンソンにかかると、歴史、経済学、政治の境界線は決して厳密なものではない。彼は常に学者と市民を融和させようとしてきた。それはしばしばひっそりと行われたが、ときにはもっと率直な形でも行われた。


とはいえ『21世紀の不平等』は、これまでのアトキンソンの著書よりもずっとその方向に深入りする。アトキンソンはリスクを取り、筋の通った行動計画を提示する。それを読むと、お馴染みのアトキンソンの文体により、あらゆる議論を公平に検討し、そのすべてをなるべくよいほうに解釈するという独特のやり方が、単純明快に行われているのがわかる。だが本書でアトキンソンは従来とは一線を画し、生来の慎重さが通常は許容するよりもはるかにドラスチックな形で、ある立場をとっている。読んで笑い出す本ではないが、彼の生徒や同僚たちが実によく知っているあの辛辣な皮肉も見られる。その皮肉はもっと学術的な刊行物だとこれほどはっきりと表れてはこない。


そうした一例が、1988年の歴史的な出来事に関する記述の部分だ。そのとき、マーガレット・サッチャーの財務大臣だったナイジェル・ローソンが、イギリス議会を率いてトップ限界所得税率を40パーセントに引き下げた(鉄の女が1979年に政権の座についたときには、それが83パーセントだった)。ある保守党議員はあまりに興奮して、自分で可決を支援した減税により得られる節税規模を計算するのに「電卓のゼロが足りないほどだ」と述べたとか。それは陰惨な瞬間であり、アトキンソンの鋭い舌鋒の使用が完全に正当化される場面だ。


イギリスにおける半世紀にわたる累進課税方針との決別は、サッチャリズムの決定的な成果だった(ちょうどアメリカの最高税率を28パーセントに引き下げた1986年税制改革法案が、レーガニズムの決定的な成果だったように)。トニー・ブレア率いる新しい労働党の政権下でも、それが真剣に疑問視されることはなかった(アトキンソンは、ブレアにことさらよい感情は抱いていない)。これはレーガン減税が、クリントン政権やオバマ政権期に民主党に疑問視されなかったのと同じだ。また、新生トーリー党政権下で、この税率が真面目に疑問視されることも期待できない。


もう一つ象徴的な逸話があり、これはアトキンソンの生徒や同僚の多くを驚かせるかもしれない。その1988年の歴史的投票に際し、当のアトキンソンは下院にいて、シャドウキャビネット室でパソコンとマイクロ税シミュレータを忙しく叩いていたというのだ。同僚ホリー・サザーランドの助けを借りて、彼は財務大臣が演説を終える前に、提出された予算案を計算し終えた――科学研究とコンピュータコードが、新しい形の参加型民主主義を生み出せるというひねくれた証拠というべきか。


■財政的累進性と国民保険をめぐる戦い


もっと累進的な税構造に戻るという発想は、明らかにアトキンソンが提示する行動計画の大きな部分を占める。このイギリス人経済学者は、それについて疑問の余地を残さない。トップ所得税率の目をむくような引き下げは、1980年代以来の不平等増大に大きく貢献しているし、社会全体に対してそれに見合うだけの便益はもたらしていない。だから、限界税率は決して50パーセントを超えてはならないなどというタブーは一瞬たりともためらわずに捨て去らねばならない。


アトキンソンは、イギリス所得税の最高税率を、年間所得10万ポンド以上なら55パーセント、20万ポンド以上の所得なら65パーセントにするという、きわめて広範な改革を提案し、さらに国民保険への拠出金上限を引き上げろと言う。


これが実現すれば、イギリスの社会保障と所得再分配制度の大幅拡充の財源となる。特に家族手当の大幅な増額(倍増、あるいは提案されている変種の一つだと実に4倍)、資源の少ない人々のための退職手当や失業手当の増額だ(第一子の家族手当は、これにより週20ポンドから40ポンドに上がり、変種の一つだと90ポンドに上がる。同時に、これらの手当は課税対象となる)。 アトキンソンはこうした手段や改革シナリオに一連の変種を提示しつつ、条件つきの資源移転ではなく、ユニバーサル社会セーフティネット政策(つまり誰にでも開かれている)への回帰を可能にする各種手段をも支持する。


こうした提案は統計的にも収支があうし、税で完全に財源が確保できるものだが、もしそれが採用されれば、イギリスの不平等と貧困水準は大きく下がるだろう。アトキンソンとサザーランドのシミュレーションによると、それらの水準は現在のアメリカに準ずる水準から、ヨーロッパやOECDの平均程度にまで近づく。これはアトキンソンの第一の提案セットの中心的な目標だ。財政的再分配ですべてが解決すると思ってはいけないが、それでもどこかから手を着ける必要があるのだ。


■ラディカルな改革主義:権利の新しい哲学


だがアトキンソンの行動計画は、そこで止まりなどしない。彼のプログラムの核心にあるのは、労働と資本の市場の働きそのものを転換させようという狙いだ。そのために、いまは最も少ない権利しか持たない人々のために、新しい権利を導入しようとする。その提案には、失業者のための最低賃金での公共雇用保証、労働組合の新しい権利、技術変化の公的規制、資本アクセスの民主化が含まれる。これは本書で提案された多くの改革のさわりでしかない。


こうした提案を詳述する代わりに、私は資本と所有権へのもっと広いアクセスの問題に特に注目したい。アトキンソンはここで、ことさら革新的な提案を二つしている。一つは、国民的貯蓄プログラムを創設し、預金者がみんな資本に対する収益保証を受けられるようにする(対象となる個人の資本量には上限を設ける)というものだ。


公平な金融収益に対するアクセスにはひどい不平等があり、特に出発点となる投資の規模で収益率が大きく変わる(この状況はほぼ間違いなく、過去数十年の金融規制緩和により悪化した)。それを考えると、この提案は特にしっかりしたものだと私には思える。アトキンソンの見方では、それは公共財産への新しいアプローチというもっと大きな問題と密接に絡み合っており、新しい形のソヴリン・ウェルス・ファンド創設の可能性とも関係してくる。公共当局は、単に債務を積み上げ続け、持ち物をすべて果てしなく民営化するだけではすまないはずだ。


一方で、国民保証保険つき貯蓄プログラムと並行して、アトキンソンは「万人に相続財産を」プログラムの創設を唱える。これはあらゆる若き市民が18歳で成人年齢に達したら、資本給付をもらえるという形を採る。こうした給付はすべて、相続税やもっと累進的な税構造を財源とする。具体的な形で、アトキンソンは現在のイギリス相続税からの税収を見れば、新成人1人当たり5000ポンドを少し上回る資本給付の財源となると推計している。


そして相続税制の大幅な改革を訴え、特に大規模な遺産では累進性を高めろと主張する(所得税と同じく、上限税率を65パーセントと提案している)。こうした改革は、新成人1人当たり1万ポンドの資本給付を可能にする。


私見ながら、私自身は個人への金銭的給付という発想には昔からちょっと抵抗があったと言わざるを得ない。私はたいがい、ある種の基本的な財――教育、医療、文化など――へのアクセス保証に専念するほうが好みだ。だがどちらのアプローチが好きでも、相続税を使って、そうした税を財源とする権利配分と直接関連づけるという発想は、私にはきわめて有望に思える。


アトキンソンの示す解決策のすさまじい利点は、「万人への相続財産」の財源こそが相続税の目的なのだという考え方をはっきり述べられるということだ。各人に与えられる金額を、相続税率と直接結びつけることで、ひょっとしたらこの問題に関する民主的議論の前提すら変えられるのではないか。


■人頭税の復活と資産税の問題


本書のなかで最もおもしろい部分の一つは、イギリスでの人頭税をめぐる論争についての部分だ。これは悪名高いほど収奪性の強い税金、あるいは経済学者の言い方だとランプサム税だ――金持ちだろうと貧乏人だろうと、みんな同じ金額をポンドで支払うのだ。これは1989.1990年にマーガレット・サッチャーが古いレーティング式の税(こちらは住宅にかかる定率税で、納税額は概ね住宅価額に比例する)のかわりに導入したものだ。


だから人頭税は、最も貧しい納税者に最も大きな増税となり、最も豊かな納税者には大幅減税となった。この改革が不人気だったと言ったら控え目すぎる。都市暴動や議会放棄が生じ、鉄の女は頑固に抵抗したものの、ついに1990年11月に保守党議員たちにより投票で首相の座を追われ、すぐにジョン・メイジャーに交替したら、すぐに人頭税を廃止した。明らかに改革として受け入れ難かったのだ。


これほど知られていないこととして、1993年に人頭税にかわり導入され、いまだに続いている新しい地方税「カウンシル税」は、実は人頭税とほぼ同じくらい逆進性が強いのだ。ここではアトキンソンが集めたデータがことさら衝撃的だ。


保有不動産の価値が10万ポンドほどだった個人は、平均で1000ポンド程度のカウンシル税を支払うが、不動産価値が100万ポンドならおよそ2000〜2500ポンドですむ。これは確かにサッチャーが構想していたものよりも逆進性は遥かに弱いが、それでも逆進性が極度に高いことにはかわりない。実際、税率は最貧納税者には1パーセントなのが、最も裕福な層は0.2〜0.25パーセントで、平均税率はイギリス全体で2014〜2015年には0.54パーセントだ。ほとんどのヨーロッパ諸国やアメリカでは、地方税は通常は不動産資産の価値に比例する。


アトキンソンはきわめて正当にも、同じアプローチをイギリスにも導入しようと提案する。こうした改革は、一貫性をもって実施すれば不動産への累進課税の第一歩になるかもしれず、いずれは純資産(金融資産や負債を含む)への累進課税にもつながるかもしれない。この点で、イギリスの不動産取引課税(「印紙税」)はすでにかなり累進的で、過去数年でその度合いがさらに高まったことは驚きだ。


取引に支払われる印紙税率は、物件が12万5000ポンド以下なら0パーセント、12万5000ポンド〜25万ポンドなら1パーセント、そしてその後25万〜50万ポンドで3パーセント、50万〜100万ポンドは4パーセント、100万〜200万ポンドは5パーセント(これは2011年に導入された新税率だ)、200万ポンド以上の物件だと7パーセント(2012年に導入)だ。


労働党政権が導入した5パーセントの税率は、当初は保守党に強く批判されていたことは認識しておこう。だが保守党がその後政権につくと、7パーセントの税率を導入した。これは、不平等増大、特に富の上位層への集中と、不動産へのアクセス確保で若い世代が直面する厳しい課題というもっと大きな国民的状況のなかで、もっと累進的な課税システムの必要性は党派的な政治傾向を超えて感じられているということを明確にしている。これはまた、アトキンソンが主張しているように、不動産課税の全体的な仕組みをもっと一貫性をもって考え直す必要性をも示している。年次固定資産税が逆進的なのに、なぜ取引課税がこれほど急な累進性を示すべきなのかは理解しがたい。


■イギリス、ヨーロッパ、世界


アトキンソンの行動計画に対して一つだけ批判ができるとすれば、それがあまりにイギリスにばかり専念しているということだ。その社会、財政、予算提案はすべてイギリス政府のために構想されており、国際問題に当てられる紙幅は比較的限られたものだ。


たとえば、彼は大規模多国籍企業への最低限課税という発想を一瞬採りあげるが、そうした税金の可能性は「検討すべきアイデア」の分類に追いやられ、しっかりした提案にはならない。ヨーロッパの税制競争や、タックスヘイブンの世界地図においてイギリスが果たす中心的な役割を考えれば、利潤に対する共通税制の確立提案や、金融証券の世界的な登録制度――あるいは少なくとも欧米だけでも――の開発といった提案をもっと前面に出してもよいと思われる。


アトキンソンは明らかにそうした問題に触れてはいるし、「世界税務当局」の創設や、国際開発援助をGDPの1パーセントに引き上げる可能性などについても扱っている。だがイギリスについての提案ほどの検討はされていない。


だがこの批判はまさに、本書の主な強みにもなっている。基本的には、アトキンソンは臆病な政府が行動しない口実など本当は持っていないことを示している。というのも、自国だけでも行動することは十分可能だからだ。アトキンソンが提示する行動計画の核心は、国際的な協力といったあてにならない見通しを待つことなしにイギリスが単独実施できるものだ。それを言うなら、イギリス以外の国にも修正して適用できるのだ。


■EUに抱いている幻滅。しかし、希望の炎は消したくない


行間を読めば間違いなく、アトキンソンがEUに対して抱いている幻滅をある程度はかいま見られる。でもアトキンソンが指摘するように、彼はEUの昔からの支持者であり、特にイギリスが1973年にEU加盟を果たしたときにはそうだった。その時代、多くの加盟国はイギリスの福祉国家の税収により財源(特に国民健康サービス)を疑問視した。


それは、福祉国家の費用が雇用者の負担となっている諸国にとって、容認し難い競争形態と見られた。当時のイギリス左派の相当部分は、ヨーロッパとその「純粋で完全」な競争へのこだわりのなかに、社会正義と平等性の政策に対する敵意を見て取った。「当時、こうした疑念は正当なものではなかった」とアトキンソンは語る。ここには、現在ならもっと正当性があると付け加えたい雰囲気が感じられるが、アトキンソンは決してそこまでは言わない。EUの希望の炎を消したくないからだ。


本書は楽観論者であり、イギリス、ヨーロッパ、全世界の市民によって書かれた本だ。それが伝える、もっと公正な経済についての幅広い感覚は、本書が持つ多くの魅力の一つだ。それは個別の選挙の結果がどうなろうと、モデルとなる本なのである。


 

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コメント
 
1. 2015年11月27日 19:28:08 : OO6Zlan35k
「金持ちはけち」は米国だけか、日欧の「謎」で新研究−鍵は貧富の差 (1)
2015/11/27 17:48 JST
    (ブルームバーグ):所得格差が大きいほど、金持ちは施しをしなくなる。米国で最近行われた研究でこんな傾向が分かった。
米科学アカデミー紀要に今週発表された研究は、貧富の差と利他主義との関係を調べた最初のものだ。米国でのこれまでの一部の研究では、金持ちは中産階級よりもけちであることを示した。しかし欧州と日本での研究では、同じ傾向は見られなかった。
論文の共同執筆者、トロント大学ロットマン経営大学院のステファヌ・コテ氏は「この点が私たちにとってちょっとした謎だった。そこで、金持ちが経済的不平等の大きい社会に住んでいるかどうかが行動を左右する要因なのではないかと考えた」と言う。
研究者らは全米の1500人を対象とした既存の研究の結果を参照した。同研究では「ディクテーター(独裁者)ゲーム」という方法を使って人々の利他精神を測定する。参加者は10枚の慈善を目的としたくじ券を与えられ、その一部を匿名の他の参加者に譲渡する機会を与えられる。
今回の研究はその結果を各州の所得格差の度合いと比較した。すると、格差が大きい州に住む金持ちは、格差が小さい州の住民に比べけちであることが分かった。金持ちとしては、世帯の年収が12万5000ドル(約1530万円)以上の人を選んだ。
発見した傾向について確認するため研究者らはさらに、オンラインで新たに700人の参加者を募り、それぞれが住む州の所得格差について事実と異なるデータを示してディクテーター・ゲームを行った。この実験でも、自分の州の格差が大きいと考えている金持ちはくじ券を人にあげない傾向があった。
論文の執筆者たちは、富が少数の人に集中するとこれらの金持ちは「自分は他の人より重要で多くの物を受け取る資格がある」と感じるようになり、「自分がお金を持っているのは正しいことだと確信」する結果、他人に施しをしようという意志がなくなるのかもしれないと分析している。
原題:Income Inequality Makes Rich People Stingier(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク John Tozzi jtozzi2@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Alex Dickinson adickinson11@bloomberg.net
更新日時: 2015/11/27 17:48 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NYGOXC6S972901.html

2. 2015年11月28日 06:06:58 : xqEk6mxhpE
ピケティ先生、まだ生きて居られたんですね。

3. 2015年11月28日 09:53:07 : Oozg29Kcag
『21世紀の資本』とおなじ訳者(3人のうち2人)か。
時間をかけて英訳を参照しながら読んだら、門外漢なりに理解できた。
http://www.nybooks.com/articles/archives/2015/jun/25/practical-vision-more-equal-society/

>多くの加盟国はイギリスの福祉国家の税収により財源(特に国民健康サービス)を疑問視した。

これは明らかなタイポだな。
「税収により財源」→「税収による財源」

>(クズネッツ自身が推す説を手伝った記録)

この訳はひどい。
英訳: (records that he himself had helped to create)

で、ピケティやアトキンソンの立場に近い日本の経済学者は誰なのか。


4. 2015年11月29日 00:15:30 : pyKd9RZIaM
23. 2015年2月06日 22:52:41 : KRR3muyQu2
金融緩和はマイナス金利製造機であり、
格差製造機でもある
その格差製造機をオンの状態にしておいて、
そこでで生産された格差を
税金で穴埋めするというのは
本末転倒であろう、
かんわ政策ミスを 
何故わざわざ国民に押し付ける?
先ずは問題のネタ元金融緩和の排除が先ではないのか!
ネオコン擁護のオバマはQE政策発の格差問題を富裕層に課税させ被害層の怒りを富裕層に転嫁
分断、反目させる事で、かんわ政策ミスのガス抜きとした。
被害層には最低賃金引き上げや社会保障という小手先処理で誤魔化した。
同じ処方でマイナス緩和続行を売込む事がピクテイ訪日の意図とみた。



5. 2015年11月29日 01:20:19 : LjMCkTbcIQ
ペクテ用意の真意

0金利緩和でデフレ格差問題を作った勢力が、社会主義という問題解決案をあらかじめ用意した。
今浮上している最低賃上げ、など等だ、そして
その0金利で金融封鎖させ金は米国債に還流する、こうゆう事であり、問題の出元は金融緩和、この処分こそが先決である。
安部、黒田解任、緩和廃案となれば最低賃金問題など霧散となる。
金融緩和という大穴放置、いや大穴隠しに最低賃上げ、介護支援,経済特区など等、一生懸命やってますを偽装しまくる自民はタダ飯食らいの寄生政権、存在価値も無い。



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