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都内で数店舗を展開している美容室のオーナーも、業務転換を迫られている
マイナンバーで訪れる“中規模チェーン”倒産の危機
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151127-00010002-jisin-soci
週刊FLASH12月8日号
「届いた?」「まだなんだよね」。全国の職場でこんな会話が交わされていることだろう。11月中に全世帯にマイナンバーを届けると政府は宣言していたが、23日現在、通知カードの配布率はわずか50%にすぎない。
まだかまだかと気になるマイナンバーだが、これに戦々恐々としている人たちがいる。中小・零細企業の経営者だ。この12桁の個人番号に加え、同時に配布が始まった13桁の法人番号によって、厚生年金などの社会保険の未加入が炙り出されてしまうのだ。社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
「国税庁が把握している法人事業所数は約250万社。一方、厚生労働省によると、厚生年金の加入事業所数は約180万社なんです。つまり、差し引き70万社は、ほぼ厚生年金に未加入ということになります」
これまで、厚生年金に加入していない企業を炙り出すことは困難だった。国税庁、日本年金機構、厚生労働省のあいだで、情報を共有できなかったためだ。しかし、今回のマイナンバーの付与で、簡単に捕捉可能になる。
もちろん、苦しくてもきちんと社会保険料を支払っている中小企業はたくさんある。しかし、悪質な未払い企業は、過去2年分の保険料を徴収される。たとえば、従業員20人のスーパーマーケットの場合を考えよう。違法と知りつつ社会保険は未加入だった。従業員の平均年収が300万円だとすると、20人なら人件費は年間6千万円になる。社会保険料はその3割なので年間1千800万円。2年間の未払いを遡って請求されれば、計3千600万円にもなる!
「未払いがいくら違法とはいえ、この制度では倒産や従業員の減給、クビ切りをする中小企業が続出しかねません。過去に年金機構から指導が入り、当社に相談があった事例でも、2社が社会保険料を払えずに倒産してしまいました」(北村氏)
名古屋で社労士事務所を開業している北見昌朗氏のもとにも相談が急増しているという。
「先日の事例は、従業員20人くらいの学習塾の経営者でした。今は雇用保険だけ入っていて、社会保険は未加入。どうすればいいかという相談です。しかし、保険料は過去2年で2千万円にもなる……。いま、その支払いで悩んでいる会社は相当あります」(北見氏)
都内で数店舗を展開している美容室のオーナーも、業務転換を迫られている。
「うちは非正規のインターン生の社会保険料の支払いを免れるため、毎週違う店舗で働かせ、労働時間を少なく申告していたのです。非正規雇用の場合、勤務時間を一定時間以内に抑えれば、社会保険料は支払わなくてもよかったですから。しかし、マイナンバーで収入を捕捉されれば、常勤状態で勤務していたことがバレバレ(苦笑)。制度開始に合わせて、従業員は形だけ正社員にします。社会保険料の支払い義務が発生しますが、未払いがバレて2年間遡って払うよりましですから」
こう聞くといかにも脱法行為に走る経営者の悪知恵に聞こえるが、従業員側にも利点はあった。社会保険料は労使折半で、給料から天引きされて手取り額が下がってしまう。それを嫌がる従業員もいる。都内の学生街で3店舗を構える居酒屋の社員従業員が語る。
「うちのパートさんは主婦が多く、扶養控除を外れたがらないんです。だからフルタイム勤務でもパートさんには社会保険料は払っていません。でも、会社からは、パートを含めた全従業員に“マイナンバーを提出しろ”と指示が出ています。今後どうなるのか……」
前出の北見氏は悲観的に見る。
「危ないのが、数店舗を運営するような小規模の居酒屋や飲食店チェーン。マイナンバーの管理義務でコスト増……。さらに、来年から労働基準法の改正でパート従業員にも年間5日間の有給休暇が義務化される。これで人件費は1割くらいアップします。コストアップに耐え切れず、廃業や減給の嵐になるのでは」
2年間遡っての保険料支払いを命じられたら、庶民の味方だった居酒屋や定食屋はバタバタ潰れて、街から姿を消してしまう。それでは本末転倒だ。
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