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パリの同時多発テロ以降、世界各地で事件が続いている。地政学リスクやテロは株式市場にとって大きな懸念材料だ(写真:ロイター/アフロ)
OPEC「減産合意」なら株式市場はどうなるか 産油国の動向から目を離してはいけない
http://toyokeizai.net/articles/-/94097
2015年11月26日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
日本株は膠着状態にある。市場では、政府の補正予算やこの時期特有のアノマリーなどに期待する声も多く、「日経平均株価の2万円超えは時間の問題」との声も聞かれる。しかし、米国では利上げへの懸念や地政学的リスクを背景に上値を買う動きに乏しく、日本の事情だけで上昇するには力不足の状況にある。またここにきてドル円相場の上値が徐々に重くなっていることも、日本株の潜在的な重石になっている可能性がある。
■地政学リスクに慌ててはいけない
パリで起きた同時多発テロやアフリカのマリで起きたテロ事件など、頻発するテロに加え、今度はシリア空爆に関する報道が市場を不安定にしつつある。24日の米国市場では、シリア国境でトルコ軍機がロシア軍機を撃墜したとの報道で地政学的リスクに対する懸念が強まり、ダウ平均株価は一時大きく売り込まれる場面が見られた。
これらの不透明要因に対する市場の最初の反応はどうしても売りになりがちである。しかし、その後は世界経済や株価への影響がないことを確認すると、すぐに買い戻されることが少なくない。テロや中東情勢不安は確かに市場にとっては懸念材料ではあるが、その内容をよく吟味し、慌てて手仕舞い売りを出すことは避けたいところである。そして、それ以外の要因で株価が不安定になりつつある点を見逃さないようにしたい。
その一つが原油相場の動向であり、ドル相場の変調の兆しである。これまで原油価格の下落は、個人消費にとってプラスとの見方から、下落は歓迎されてきた。しかし、これだけ価格が下げると、資源関連企業の収益が大きく落ち込み、これらの企業の株価が大きく落ち込む原因になっている。
結果的に、市場を不安定にさせる要因となり、いまでは「原油価格が上昇すると、資源関連株が買われるのでよい」といった都合の良い発言も聞かれるようになっている。しかし、今後原油価格が上昇すれば、低いコストで生産していた製造業の負担は増えることになり、企業業績は圧迫され、株価もそれを反映して上値を追うのが困難になるだろう。
その原油価格だが、中東産油国の盟主であるサウジアラビアのスタンスに変化の兆しが見られるとの報道が目に付く。現在の原油価格の水準では、サウジといえども単年度の財政赤字は避けられない状況であり、国際通貨基金(IMF)は、現在の原油価格の水準が続けば、サウジといえども5年程度で外貨準備が枯渇すると警告している。そのため、今後はこれまでの持久戦がいよいよ破綻に向かうとの見方が出始めてもおかしくない。
12月4日にはOPEC総会が開催されるが、その前日の3日にOPEC加盟国と非加盟国による協議の開催について、調整が進んでいるとの報道がある。その結果、ロシアも交えた大規模な減産合意がなされないとも限らない。そうなれば、市場へインパクトはきわめて大きなものになる。
現在、シリアではイスラム国(IS)の掃討を目的に空爆が行われているが、過去の事例を見る限り、原油価格はこれらの地政学的リスクや、テロなどを理由に上昇することはあまりない。やはり、需給バランスを根本的に変えるような材料、つまり産油国による減産が原油価格の押し上げにはもっとも影響が大きいといえる。原油価格が一段安となり、新安値を更新すれば、減産の検討はきわめて現実的なものになろう。OPEC総会まで産油国の動向や発言には、これまで以上に注意が必要である。
■12月にも訪れる「相場の大転換」に備えよ
原油価格が押し上げられるもうひとつの材料に、ドル相場の動向がある。市場では、米利上げを背景にドル高基調が続くとの見方が多い。また、欧米の金融政策の違いから、ユーロドルは「1ユーロ=1ドル」のパリティ(等価)に向かうとの見方も根強い。しかし、はたしてそうだろうか。直近3回の米利上げでは、米国の利上げに対して、日本は金融緩和を行っていたが、結果的にドル安・円高に進んでいる。ECBが追加緩和に動くとしても、織り込みが進めば、ユーロの下値は堅くなろう。
また逆説的ではあるが、原油相場の上昇がきっかけとなり、ユーロが買い戻される可能性も否定できない。本欄でも繰り返すように、筆者はこれから12月中旬までとそれ以降は、市場環境が大きく変わる可能性が高いとみている。その兆しが為替相場や原油市場に徐々に見られ始めている。資源国通貨の豪ドルが大きく値を戻し始めており、この動きにも注目したい。
株高期待が大きいのは結構なことではあるが、今後は2019年まで、株式からコモディティに主役が代わる可能性が高い。3年間続いたドル円相場の上昇もすでに最終盤である。「相場の大転換」に備え、株式も持ち高を徐々に調整し、ドル安・コモディティの反発に備えたいところである。今後1週間(11月26日〜12月2日)の日経平均株価の予想レンジは、1万9250円〜1万9950円としたい。
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