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旭化成建材(株)による杭工事実績3,040件に関する調査報告(「旭化成 HP」より)
工事担当者の3割がデータ改竄…旭化成の窮地 稼ぎ柱ヘーベルハウスに大打撃
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151126-00010007-bjournal-bus_all
Business Journal 11月26日(木)22時32分配信
旭化成建材による杭打ちデータ偽装問題の拡大で、親会社である旭化成の業績への影響が深刻なものになりつつある。
旭化成は11月6日、2016年3月期連結純利益の見通しを下方修正した。売上高は前期比0.7%増の2兆円、営業利益は3.8%増の1640億円と当初予想を据え置いたが、純利益は13.9%減の910億円(当初1060億円)に引き下げた。だが、純利益を下方修正した理由は、来春行う組織改正に合わせたシステム改修費が負担になるためだとしている。
偽装問題については「今後の調査の進捗状況等によっては、引当金を計上すること等により、当社の連結業績に影響が生じる可能性がありますが、現時点ではその影響額を合理的に見積もることは困難」(決算短信)として、業績予想に織り込んでいない。今後、マンションの建て替えや住民への補償などが具体化すれば、その対策費用を計上する必要に迫られる。
旭化成は偽装問題の影響を受ける建材事業部門の業績見通しを見直した。建材事業の下期(15年10月〜16年3月)の売上高は244億円(当初予想280億円)、営業利益は19億円(同25億円)に減額した。決算発表した小堀秀毅専務執行役員は、その理由について「杭打ち工事の問題で、営業活動がかなり制限されるとみている」と説明した。
しかし、新規受注の落ち込みが、この程度で収まるとの見方は少ない。過去10年間で杭打ちした全国3040件のうち2864件の調査を終え、360件でデータの偽装があったことが明らかになった。50人以上の現場責任者が、これに関与していた。旭化成の平居正仁副社長は企業風土を問う質問に対し、「外部調査委員会が調査しているのでコメントは控えたい」と繰り返した。
●「先輩から教わって改竄」
13日に公表した2376件のうち改竄があったのは266件で、調査した物件の1割以上に相当。35都道府県にまたがっている。旭化成建材の工事担当者は180人で、改竄に関与したのはそのうちの3割にあたる。ほとんどが下請けからの出向だという。
2日に会見した経営陣は組織ぐるみの不正を重ねて否定したが、13日の会見で従業員800人規模の企業で、出向者が多いとはいえ50人以上もが不正に手を染めていた実態が浮き彫りになった。もはや「個人がやったこと」では通らない。複数の現場担当者は同社の聞き取り調査に対し「データが取れなかったときに、先輩から教わって改竄を始めた」と説明したという。
国土交通省は建設業法違反の疑いで旭化成建材本社を立ち入り検査した。今後、「営業停止」などの行政処分を下すことになる。営業停止は通常2週間程度だが、今回のケースでは一罰百戒の意味も込めて厳罰が予想される。
現在販売中の新築マンションは、「旭化成グループは使っていません」とうたうのが当たり前のようになっている。旭化成建材は三井住友建設のほかにも、清水建設、竹中工務店、大林組、鹿島、大成建設の下請けとして入った工事がある。発覚後、建材事業の営業活動を自粛しており、今後大手ゼネコンからの新規受注が全面ストップすることもあり得る。
建材事業の16年3月期(通期)の売上高は500億円、営業利益は50億円を見込んでいる。来期は大半の売り上げと営業利益が消える可能性がある。これに対策費用などの損失が重くのしかかる。建材事業の解体が俎上に上ることも考えられる事態なのだ。
●旭化成の顔に泥
純粋持ち株会社である旭化成は傘下に「ケミカル・繊維」「住宅・建材」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」の4事業領域を持つ。
旭化成ブランドのイメージダウンで最も深刻な影響が懸念されているのが、旭化成ホームズだ。「住宅・建材」事業の中核となっている「へーベルハウス」のブランドで知られる住宅メーカーである。住宅事業の16年3月期の売上高は5870億円、営業利益は620億円の見通し。売上高は全社の3割弱、営業利益は4割弱を占める稼ぎ頭だ。
今や、実業団駅伝チームとともに「へーベルハウス」は旭化成の顔ともいっていい存在だ。9月に茨城県を襲った洪水では決壊した鬼怒川周辺で大半の住宅が濁流に流されるなか、へーベルハウスの住宅だけが残ったことで強度・耐久性への評価が一段と高まっていた。
旭化成ホームズは、戸建て住宅では積水ハウス、大和ハウス工業に続く第3勢力に浮上していた。不動産経済研究所と市場経済研究所がまとめた14年度全国戸建て供給ランキングでは大東建託が6万6314戸で断トツの首位である。
旭化成ホームズの15年度の供給計画戸数は前年度比12.4%増の1万9650戸。大手戸建て住宅メーカーの中で唯一、2ケタの伸びを計画していた。小堀専務執行役員は住宅事業についても、「今後の受注いかんでは来期業績に影響する」と認めた。住宅事業は旭化成のドル箱。販売が落ち込めば、旭化成本体の業績に大きな打撃となる。
●経営トップの進退
旭化成の小堀専務は経営責任について、「これだけ世間を騒がせているので、原因究明の結果が出れば検討していく」と述べた。旭化成建材は国交省から建設業法に基づく行政処分を受け、役員の処分が行われることになろう。
そうなれば、親会社である旭化成の浅野敏雄社長の引責辞任は免れない。浅野社長は東京大学薬学部卒で、旭化成入社後は医薬品畑一筋。ヘルスケア(医薬・医療)部門である旭化成ファーマ社長から昨年4月、本体の社長に抜擢されたばかり。ヘルスケア部門出身者の社長の就任は初めてだった。旭化成の中核事業は合成繊維から、住宅、エレクトロニクスへと広がりをみせている。ヘルスケア事業を第3の柱にするのが浅野社長のミッションだった。
伊藤一郎会長は東大経済学部卒。旭化成本流の繊維畑出身。経団連の審議員会副議長を務めているが、これは辞任することになりそうだ。もしそうなれば、東芝の佐々木則夫副会長が粉飾決算問題で経団連の副会長を辞任したのに続き、母体企業の不祥事による辞任となる。
文=編集部
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