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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第151回 合成の誤謬を打破せよ!
http://wjn.jp/article/detail/1354924/
週刊実話 2015年12月3日号
9月1日に財務省が発表した2014年度の法人企業統計によると、金融・保険業を除く全産業の利益剰余金は354兆2774億円に達し、対前年比で26兆4218億円増となった。1年前と比べてすら、企業は内部留保を約8%も増加させたのである。
企業が内部留保増加分の26兆円強を国内の設備投資に回してくれていたら、それだけでもわが国のGDPは5%成長したことになる。あるいは雇用者報酬(人件費)として分配してくれれば、国民の懐が一気に分厚くなり、消費税増税のインパクトを跳ね返すほどの消費ブームが起きた可能性すらある。
断っておくが、筆者は別に企業が内部留保を増やすことが「悪」であると言いたいわけではない。共産党のように、内部留保に課税すべき、などという気もない(私有財産権の侵害である)。
現在のグローバル株主資本主義の下では、企業が「いざというとき」のために預金を貯め込むのは合理的な話だ。しかも、日本の場合は政府が財政出動を拡大せず、揚げ句に消費税増税で内需の中心である個人消費を抑制しているわけである。
結果的に不況が続き、企業経営者ができるだけ「いざというとき」に備えようとするのは、当然の経営なのだ。
とはいえ、企業の内部留保中心主義が従業員(国民)の所得を抑制し、日本経済全体を縮小させているのは紛れもない事実なのである。
現在の日本は、
○家計の所得が伸びず、消費税増税や円安の影響で実質消費を減らす。
○企業は利益を稼いでも十分に設備投資や人件費に回さない。
○政府は介護報酬や公共事業費を削る。
というわけで、家計、企業、政府がそろいもそろって「GDPを増やさない」方向に走っているのだ。これで経済が成長したら、まさしく奇跡である。何しろ経済成長とは、実質GDPの拡大を意味するからだ。
そして、GDPとは支出面から見ると、「民間最終消費支出」「政府最終消費支出」「民間住宅」「民間企業設備」「公的固定資本形成」「純輸出」に分解できる。
現在は世界的に「GDP成長率>貿易増加率」の状況、いわゆるスロートレードの時代に入っており、外需(純輸出)が伸びることは期待できない。国内の民間や政府が支出を増やし、GDPを成長させる以外に経済成長の手段は存在しないも同然だ。
もっとも、デフレが長引く中、家計や企業といった民間が「自己防衛」に走り支出を減らすのは「合理的」である。ミクロレベルでの合理的な行動がマクロ(国民経済)に合成されると、極めて非合理な結果をもたらす。すなわち、合成の誤謬だ。現在の日本経済を苦しめているのは、まさにこの合成の誤謬なのである。
だからこそ、合理性を無視して(通貨発行権があるため)支出ができる政府が「GDPになる支出」を増やさなければならないのだ。
それでも、やらない。政府や政治家は、いいかげんに理解する必要がある。
デフレ期に合成の誤謬を打破できるのは政府しかいない。まさに、政府はそのためにこそ存在しているといっても過言ではないのだ。
デフレ期の政府として、日本政府は「何」に支出するべきなのだろうか。安倍総理は10月5日の自民党国土強靱化総合調査会の会合において、以下の通り発言した。
「民主党の『コンクリートから人へ』というスローガンは“受け”は良かったが、コンクリートは人を守ることを忘れさせてしまった」
「スローガンは政治の場において国民に分かりやすく目標をつくるが、間違ったスローガンは国を大いに危うくする」
コンクリートは人を守る。事実だ。それでは安倍総理は、以下の事実をどのように説明するのだろうか。
実は、安倍政権は補正予算を含めると、別に民主党時代と比べて公共事業費を増やしているわけでも何でもない。確かに一般予算で見れば、今までで最低だった民主党政権期(2012年度、4.6兆円)と比べると増えている。とはいえ、'14年度の増加分のうち、0.6兆円は社会資本整備事業特別会計の一般会計化によるものだ。
このまま'15年度補正予算で十分な公共事業支出がなされない場合(もう5カ月しかないが)、安倍政権は民主党政権期よりも公共事業費を減らしたことになってしまう。
安倍総理が「コンクリートから人へ」を批判しながら、公共事業費をむしろ減らす方向にもっていこうとしているのはなぜだろうか。現実には、安倍政権にしても「コンクリートから人へ」を継承している。
ここはいっそ、
「コンクリートで人を守る」
という「正しいスローガン」を訴え、公共事業・公共投資・治水予算を全て継続的に拡大することを明言し、まずは補正予算と来年の通常予算から「国民を守るコンクリート」におカネを支出してはどうだろうか。
政府が「国民を守るコンクリート」に支出をすれば、需要創出というわけで、デフレ脱却も確実なものになる。しかも、公共投資から用地費等を除いた公的固定資本形成は、GDPの需要項目の一つなのだ。経済成長率も、一気に高まる。
合成の誤謬を打破できるのは政府しかいない。という真実を理解しているならば、別にためらう必要はないはずである。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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