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非正規社員の比率が初の4割台。で、得をしたのは誰か?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151124-00069130-hbolz-soci
HARBOR BUSINESS Online 11月24日(火)16時21分配信
先日、厚生労働省が発表した「雇用の構造に関する実態調査」がじわりと話題になっている。1994年の同調査開始以来、初めて、非正規社員の率が4割台を記録したからだ。
新卒の採用では売り手市場と言われ、中途採用の世界でも人手不足の悲鳴が方々であがっている。なのに、非正規社員がまだ増え続けているのはなぜなのか。
経済ニュースの大本営・日本経済新聞は〈非正規社員40.5%、「不本意」は減少 厚労省14年調査〉という見出しを掲げて、こう報じた。
〈パートや派遣など非正規社員は40.5%で4年前に実施した前回調査から1.8ポイント上がった。非正規社員を選んだ理由は「自分の都合のよい時間に働ける」という回答が4割近くで最も多かった。雇用環境の改善で、不本意ながら非正規社員を選んだという回答は4.4ポイント減り、18.1%だった〉
たんたんと数字を並べているだけで、これといった分析もオピニオンも出していない。ただ、「4割超えましたが、自分でそうしたくて非正規を選んだ人が多く、労働環境は順調であります」と政財界の権力者たちの機嫌が良くなりそうな囁きを行間にこめている。
もちろん、他のマスコミ、特にリベラル系と称される方面はまったく別の論調だ。大手で目立ったのは毎日新聞社説〈非正規雇用4割「氷河期時代」の支援を〉だ。
毎日新聞は、〈「アベノミクスによって雇用は100万人以上増えた」と安倍晋三首相は主張するが、増えているのは賃金が低く身分も不安定な非正規社員だ〉と政権批判をする。
〈特に、30〜40代の非正規社員が増えていることを看過してはならない。1993年〜02年ごろの就職氷河期に学校を卒業した人々は条件の良い就職先がなく、非正規の職を転々としてきたケースが少なくない〉
この論調は、民主党・岡田代表の〈アベノミクスの3年間で、安倍総理は100万人以上雇用が増えたと言うが、正規は確実に減っている〉〈非正規が増えているのを年代別に見ると25歳から44歳ぐらいまでの、これから結婚し家庭を持ち、子どもを生み育てるという世代の正規労働が相当の勢いで減っている。相当深刻な事態だ〉という政権批判とほぼ一致している。
他方、リベラル寄りの東北のブロック紙・河北新報は、社説〈増える非正規労働/均等待遇が「活躍」の前提だ〉で、女性の味方スタンスを取った。日本の雇用に対して、正規/非正規に加えて、男/女の差別もあるじゃないか、というわけだ。
〈雇用形態や性別による賃金などの差別を是正し、均等待遇を実現させるための実効的な政策を急ぐべきだ。「同一価値労働同一賃金」の原則の確立は、国連女性差別撤廃委員会や国際労働機関から繰り返し勧告されていることだ〉
個人的に異論はない。が、そう糾弾すれば解決するほど簡単な話でないということは、購読者も、おそらく河北新報の論説委員だって分かっているはずだ。もう少し政治色を抑えたというか、科学的な目線でこのニュースを語る者はいないのか。
私が注目したいのは、非正規社員の増加は、定年退職した高齢者の再雇用が増えたからだという指摘だ。それをていねいに論じたのは、東洋経済オンラインの〈非正規雇用比率「4割大台乗せ」の正しい見方〉という記事。2013年月施工の改正高齢者雇用安定法が再雇用を促したという。
〈定年退職者の再雇用者の割合は、前回調査2010年の15.3%から17.5%に増加している。また、定年前に関係会社やグループ会社に移る事例は、厚生労働省では明確に追跡し切れておらず、そのような人は、今回の統計では、「パートタイム労働者」としてカウントされている可能性が高い。そして、この「パートタイム労働者」の割合も、前回の57.6%から60.6%に増加している〉
同記事は、〈高年齢者雇用安定法も、結局もともと正社員だった人だけが恩恵を受けられる仕組み〉だとし、〈順調に正社員を続けてきた人と、レールから外れてしまい従来から非正社員だった人との間で、「非正規」の枠の中でも、格差が生じる状態になってきているということが、本質的な問題〉とする。
かなり腑に落ちる解説だ。いきなり印象批評になって恐縮だが、この記事を読んで、明け方の公園を大股でウォーキングする初老の夫婦の群れが目に浮かんだ。徹夜明けで家路を急いでいると、そういうおじさま・おばさま方が向こうからスタスタやって来るのである。彼らは、たいていブランドモノのウォーキングシューズを履いており、顔つきからしておそらく相応に富裕層だ。金もあって、健康も気遣える。偏見かもしれないが、「逃げ切り組ってこの人たちなんだなあ」と、よく思う。
そして、そうした健康おじさま・おばさまの中に、たまに違うオーラをまとった老人を見かける。歩き続けているのだが足元がいまいち定まらない。服は寝間着で、シューズでなくてサンダル履きだったりする。あの老人たちはおそらく認知症で徘徊中なのだ。明け方の公園で私が目にする光景は、ミもフタもない老老格差に他ならないのだろう。
でも、ウォーキング夫婦たちは気にもとめていないように見える。なんともシュールな光景を目の当たりにした私は、これも現実社会の縮図だなあと感じている。
<文/オバタカズユキ 撮影/Nobuyuki Hayashi>
おばた・かずゆき/フリーライター、コラムニスト。1964年東京都生まれ。大学卒業後、一瞬の出版社勤務を経て、1989年より文筆業に。著書に『大学図鑑!』(ダイヤモンド社、監修)、『何のために働くか』(幻冬舎文庫)、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)などがある。裏方として制作に携わった本には『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)、『統合失調症がやってきた』(イースト・プレス)などがある。
ハーバー・ビジネス・オンライン
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