★阿修羅♪ > 経世済民102 > 805.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
日本叩売りのアベノミクス ブルームバーグに慰められ(世相を斬る あいば達也)
http://www.asyura2.com/15/hasan102/msg/805.html
投稿者 笑坊 日時 2015 年 11 月 24 日 07:39:56: EaaOcpw/cGfrA
 

http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/bfba57039fa3c6dcd618b4817b5c15af
2015年11月24日

別に、2四半期連続でGDPがマイナス成長でも、安倍政権にしてみれば、景気の先々を織り込む東証株価が安定的であれば、景気はそこそこなのだろうと感じているのが、日本人のメジャーだ。雇用が安定しているとNHKが言えば、そうだろうね、としたり顔になるのが日本人社会の、大人のたしなみのようなものである。しかし、ブルームバーグが社説で、「日本がパニックに陥る理由はない」とわざわざ社説で言及している事が、日本経済、延いては世界経済の容態の重篤さをあらわしている。


≪ 日本がパニックに陥る理由ない、
  2四半期連続マイナス成長でも−社説

 (ブルームバーグ):日本の7−9月期の実質国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナスとなったとのニュースは、安倍晋三首相の経済政策に懐 疑的な向きにはアベノミクスの新たな攻撃材料となるだろう。そうした人々の疑念はもっともなものだが、日本がパニックに陥ったり、進路を変更したりする理由はまだない。

1つには日本の場合、リセッション(景気後退)といっても他のほとんどの地域とは意味するものが同じではない点が挙げられる。日本は過去20年間に7回、 2012年12月の第2次安倍政権発足以降に限れば2回、こうした状況に見舞われている。日本の人口減少を踏まえれば、すう勢的な成長率は0.5%程度で、7−9月期に記録した年率換算で0.8%程度の小幅な減少でもマイナス圏に落ち込む事態となり得る。いずれにせよ四半期ベースの統計は大きくぶれる可能性がある。

同時に、日本の大手輸出業者の利益は円安を背景に大きく膨らみ続けている。トヨタ自動車の7−9月の営業利益は過去最高の8274億円と、米ゼネラル・ モーターズ(GM)とフォード・モーターの合計の上回った。トヨタを含む数社は自社株買いや配当支払いを通じ、株主に利益の一部を還元している。投資家は引き続き楽観的で、日経平均株価は9月以降、ブルームバーグがカバーする世界93の主要株価指数で上位4番目の好パフォーマンスだ。

アベノミクスの他の成果がささやかだとしても、少なくとも正しい方向に向かっている。女性を中心に労働参加率は上昇しつつあるが、失業率は18年ぶりの低水準にある。労働者の多くが先行きが限られているパートタイム雇用に就いているが、正規雇用の数は増え始めている。賃金は緩やかに上昇中だ。東京の都心部 以外でも不動産価格は上向きつつある。さらに、日本銀行による多額の量的緩和策にもかかわらずコアインフレ率はかたくなに動こうとしないが、東大日次物価指数など他の指標は少なくとも一部の小売価格の上昇を示している。

最近のデータで最も懸念すべき統計は設備投資の減少だ。企業は在庫を取り崩すとともに、新工場や設備への投資を手控えている。だが、これは全く驚くべきことではない。日本の最大の貿易相手国である中国の景気減速が主因となって、世界経済の見通しは不透明な状態が続いている。それに加えて、最高の状況にあっ ても日本の人口動態の下では国内市場は着実に縮小していくことが必至だ。

中国の低迷が予期せぬ逆風にならなかったとしても、日本の復活に向けた取り組みは多の識者が認めるよりも常により長い期間を要してきた。エネルギーや医薬品、農業部門の開放のほか、環太平洋連携協定(TPP)の下での関税削減、日本株式会社の行動を制約してきた株式持ち合いの解消など、困難な構造改革が進められている。しかし、これらが直ちに利益をもたらすことは期待できない。

恐らく公共投資や税制上の優遇措置も含め、安倍首相は企業の賃上げや設備投資を促す新たな措置を検討中とされる。もっと歓迎すべきなのはこれまで聖域とされることが多かった改革を新たに推進しようとする動きだ。必要な技能を持つ労働者を中心とした移民の受け入れ拡大や、正規雇用促進のための労働規制の緩和などがそうした例だ。アベノミクスは息絶えていない。ただ、安倍首相のやるべき仕事が完了したというにはほど遠いのも事実だ。
*原題:Latest Recession Is No Reason for Japan to Panic: Editorial(抜粋) ≫(ブルームバーグ:社説)


社説では≪投資家は引き続き楽観的で、日経平均株価は9月以降、ブルームバーグがカバーする世界93の主要株価指数で上位4番目の好パフォーマンスだ。≫と書いているが、最近の東証日経の終値付近で、日銀及び投信の買いパフォーマンスが顕著で、僅かな額だけのプラスで終わらせる不文律が出来つつあると観察している。つまり、高パフォーマンスを奏でているのは、公的資金の介入である点を、ネグっている。世界の名だたる金融ファンドが軒並みマイナスを計上していると云うことは、グローバル金融資本主義の踊り場が到来したことを告げている。踊り場から、上るのか下るのか、誰も答えを出しかねている。

≪女性を中心に労働参加率は上昇しつつあるが、失業率は18年ぶりの低水準にある。労働者の多くが先行きが限られているパートタイム雇用に就いているが、正規雇用の数は増え始めている。賃金は緩やかに上昇中だ。東京の都心部 以外でも不動産価格は上向きつつある。≫と、事実の一部をNHKよりは分析的に書いているが、まだまだ手ぬるい評価だ。なぜ、専業主婦で、子供を産み育てられない経済状況かを表しているわけで、亭主の安い収入では、日々の暮らしでさえ事欠くか、不安をぬぐえないのだろう。賃金の緩やかな上昇は、公共事業による矢鱈な工事の人手不足に起因している。つまり、現業人材の不足であり、3K、4Kの賃金が上昇しているのだ。つまり、個別にはワーキングプワーが増加するが、家族単位で見れば、家庭全体収入が上昇していると云う、マジック(騙し絵)なのである。

≪新工場や設備への投資を手控えている。だが、これは全く驚くべきことではない。日本の最大の貿易相手国である中国の景気減速が主因となって、世界経済の見通しは不透明な状態が続いている。それに加えて、最高の状況にあっ ても日本の人口動態の下では国内市場は着実に縮小していくことが必至だ。 ≫と言うが、日本の最大の貿易相手国である中国との関係は容易ならざるもので、アメリカ政府のような裏表外交と云う芸当が出来なのが日本人である。反目している最大貿易国の景気に左右される日本企業では、設備投資が思うに任せないのは当然だ。

つまりは、安直なM&Aで市場を買うのが精一杯の状況だ。まあ、この点は、アメリカ企業も同じだろう。ただ、日本ほど、内需の市場規模が急激に購買力を失わないのが救いなのだ。だから、後述するように、人口増加を画策せざるを得ない。それが、産めよ増やせよ、が本命ではなく、「移民」が本命視されている。 *このあたりが、安倍政権の日本売りのコアな部分だろう。

≪エネルギーや医薬品、農業部門の開放のほか、環太平洋連携協定(TPP)の下での関税削減、日本株式会社の行動を制約してきた株式持ち合いの解消など、困難な構造改革が進められている。しかし、これらが直ちに利益をもたらすことは期待できない。 ≫この考えが、既に行き詰まりを見せている、市場原理に沿った金融資本主義の典型例だが、共生の精神を美的に称賛された国際的に容認されている、緩やかな共同体意識までもを、経済の枠組みを構造的に変えることで、ぶち壊すことになる。第三者を意識しない世界ほど怖いものはない。

最後に、「難民」受け入れでも、何でも良いから、日本経済の再生には、生活困窮者の数を、現状の日本人だけで賄うのは無理だから、最終的には「移民」の受け入れに向かうことだろう、と言って、社説は焦らなくて大丈夫だよ、と言っている(笑)。≪恐らく公共投資や税制上の優遇措置も含め、安倍首相は企業の賃上げや設備投資を促す新たな措置を検討中とされる。もっと歓迎すべきなのはこれまで聖域とされることが多かった改革を新たに推進しようとする動きだ。必要な技能を持つ労働者を中心とした移民の受け入れ拡大や、正規雇用促進のための労働規制の緩和などがそうした例だ。≫
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2015年11月24日 14:03:20 : OO6Zlan35k
Vol.340:ついに白旗を上げたクルーグマン(1)>

    テーマ:リフレ政策の失敗が明らかになった 
     HP: http://www.cool-knowledge.com/
(過去の有料版からも抜粋し載せています)
無料版の登録/解除: http://www.mag2.com/m/0000048497.html
有料版の登録/解除: http://www.mag2.com/m/P0000018.html
     感想/連絡:yoshida@cool-knowledge.com
           Systems Research Ltd.  吉田繁治
   42995部 

おはようございます。三連休、いかがお過ごしでしたか。しばらく、
送信が途絶えていたことをお詫びします。言い訳にすぎませんが、
約2か月間は、本を書くことに注力していました。1週間ほど前に最
終校正を終えたので、12月初旬には、書店やアマゾンに出るでしょ
う。そのときは、またご案内します。

内閣府が11月16日に公表した、2015年7-9月期の実質GDPは、年率換
算で0.8%のマイナスでした。4-6月期も0.8%のマイナスでしたか
ら、2期連続です。

IMFの定義では、GDPのマイナスが2期続いた場合、景気の停滞では
なくリセッション(不況)とされます。日銀は、相変わらず、「穏
やかな回復」としていますが、このGDPのマイナスがなぜ回復なの
か。

リーマン危機以降の、わが国の実質GDPを示します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2007年  +2.2%  福田内閣(07.6〜08.9)
2008年  -1.0%  麻生内閣(08.9〜09.9)
2009年  -5.5%  鳩山内閣(09.9〜10.6)
2010年  +4.7%  管内閣(10.6〜11.9)
2011年  -0.5%  野田内閣(11.9〜12.12)
2012年  +1.7%  野田内閣(〜12.12)
2013年  +1.6%  安倍内閣(12.12〜現在)
2014年  -0.1%  安倍内閣(12.12〜現在)
2015年  -0.8%(半期) 安倍内閣
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
民主党時代の単純平均成長率 0.27%/年
安倍内閣での実質GDP成長率  0.23%/年
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2008年9月に米国発のリーマン危機で、輸出が急減し、わが国の
GDPも、-5.5%という準恐慌的な減速を見ています。それを入れた、
民主党時代の約3年は、単純平均で見た成長率が0.27%でした。

日本を再生させるという鳴り物入りで登場した安倍政権3年間での
成長率は0.23%と、リーマン危機があった民主党の時期より低い。
一体、どういうことかと思うのです。(注)世帯所得の増加がない
ため、14年4月からの消費税の、3%増税が効いています。

日銀が国債を買ってマネーを増発する異次元緩和を開始して2年6か
月が経ちました。2013年4月には、「2-2-2」と言い、2年で、マネ
タリーリー・ベース(つまり通貨発行量)を2倍に増やし、2%のイ
ンフレにして、経済を成長させるとされていました。

そのリフレ策では、米国のノーベル賞経済学者、ポール・クルーグ
マン(元NY大学教授)が1998年に書いた『流動性の罠(わな)』が
元になっています。リフレ策とは、中央銀行が通貨を増発すること
によって、デフレをインフレにもって行く金融策です。

インターネットで公開されていたLiquidity Trap(流動性の罠)
の論文を見て、メール・マガジンでも紹介し、「日本は今後、通貨
の増発策をとるだろう」を書いて送ったことを記憶しています。

(注)現在は、山形浩生氏が01年に翻訳したものが公開されていま
す。http://cruel.org/krugman/krugback.pdf

内閣官房参与の浜田宏一氏が、クルーグマン論文を安倍首相に説明
し、安倍内閣のもっとも大きな経済政策として、採用されています。

人々を驚かす金額の「異次元の緩和」を実行するために、日銀には、
黒田東彦総裁と岩田規久男副総裁が送り込まれました。

クルーグマンの流動性の罠論は、ほぼそのまま、安倍内閣と日銀の
政策になったのです。

量的緩和は、円安を実現するための、20から30兆円の「ドル国債買
い」という介入も伴っていたため、浜田氏は、後の日本を破産させ
る亡国のエコノミストになるかも知れないと書いて送信したことも
憶えています。(注)ゆうちょ銀行、かんぽそして公的年金基金を
運用するGPIFなどによるドル債買いです。

安倍政権と黒田日銀は、わが国の財政の破産を早期化させたとして、
歴史に名を残すかも知れません。平成の高橋是清の失敗です。

(注)財政破産とは、政府の義務的な支払いができなくなることで
す。国債の利払い(10兆円)と償還(120兆円)、公務員の人件費
(35兆円)、年金の支払い(40兆円)、医療費・介護費の支払い
(40兆円)、その他の政策的支出を、削減してしか支払えないこと
です。

財政破産は、国債を発行するとき、その金利が2.5%から3%に上が
るときから始まります。

異次元緩和の金融政策を考えたクルーグマンは、最近のNYタイムズ
紙のコラムで、10月20日と11月2日の2回、異次元緩和は、目的とし
た狙い(2%のインフレ)を果たせず、失敗に終わったという主旨
の論考を、NYタイムズ紙に載せています。

(『Rethinking Japan(日本経済の再考)』15.10.20 :『Liquidity
Traps, Temporary and Permanent(日本の流動性の罠の一次性と永
久性)』11.02)
http://krugman.blogs.nytimes.com/2015/10/20/rethinking-japan/

http://krugman.blogs.nytimes.com/2015/11/02/liquidity-traps-temporary-and-permanent

いずれも、日本の3年の政府政策にかかわる重要なものです。なぜ
か日本の経済メディアでは、これについて、一言も書きません。不
思議です。当方で紹介する理由がこれです。

クルーグマンのコラムには、経済学の重要な概念が多く含まれるの
で、解説をしながら進めます。

少し長い『Rethinking Japan(日本経済の再考)』15.10.20は、先々
週の有料版で取り上げました。

ここでは、多少短い『Liquidity Traps, Temporary and
Permanent(一時的ではなかった日本の流動性の罠)』11.02)を、
紹介し、解説風なコメントを書き入れます。

クルーグマンの英語はなかなか難しい。私の翻訳(意訳)に間違い
があるといけないので、原文も載せます。翻訳や解釈に間違いがあ
れば、ご一報ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<Vol.340:ついに、白旗を上げたクルーグマン(1)>
     2015年11月22日:無料版

【目次】

1.流動性の罠論で書いたリフレ政策は、間違いだった
2.間違えた理由
3.マネー・サプライを増やすことができれば、物価も上がる
4.日本の自然成長力(潜在成長率)はマイナスだった

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.流動性の罠で書いたリフレ政策は、間違いだった

Liquidity Traps, Temporary and Permanent(2015.11.02)

Larry Summers reacts to an offhand post of mine, seeking to
draw a distinction between our views. I actually don’t
think our views differ significantly now, but he’s right
that what he has been saying differs from the approach I
took way back in 1998. And I’ve both acknowledged that and
admitted that the approach I took then seems inadequate now
(1)

<一時的ではなかった日本の流動性の罠:
(元財務長官・ハーバード大学総長の)ラリー・サマーズ氏は、私
と見解が違うということを強調するため、私の率直な記事に反論し
ている。私には、意味ある違いとは思ない。しかし、遡れば1998年
に私が書いた『流動性の罠』と、現在の自分の見解は違うというの
は、彼が言う通り、事実だ。
日本に対する見方では、現在の考えは違うこと、そして、当時の私
の見解(流動性の罠)が不適当であったことを、ここで認める。翻
訳(1)>

クルーグマンは、1998年に書いた『流動性の罠(わな)』は、日本
に適用するのが不適当だったと、素直に誤りを認めています。

「流動性の罠」論とは、どんなものだったか。

【金利0%でも、物価が下がるときは、実質金利は高くなる】
物価が下がってゆくデフレ経済の中で、人々が抱く将来物価の上昇
率が例えば2%のマイナスであるときは、本当の負担である実質金
利は以下になります

実質金利=名目金利(0%)─期待物価上昇率(−2%)=2%

名目金利は、0%以下になりえません(ゼロ金利制約と言う)。

例えば銀行の預金金利をマイナス1%に下げれば、皆が、必要な金
額以上の預金は引き出して、現金で保管するからです。銀行は取付
けが起こったときのように、資金不足で破産するでしょう。

1998年の日本のように、中央銀行が金利をゼロにしても、人々の期
待物価上昇がマイナスのときは、現金を好む傾向(流動性選好と言
う)が生じて、借り入れでの投資は増えず、買い物も急がれること
はない。このときは0%以下がない金利政策は、無効になります。

方法はないのか。「いや、ある」と論証したのがクルーグマンの
『流動性の罠論』(1998年)でした。

【期待物価上昇率が上がれば、実質金利はマイナスになり得る】
政府と日銀が、物価目標を掲げて、物価を絶対に上げると言いなが
ら、通貨を大きく増発すればいい。これによって、人々が予想する
期待物価上昇率が例えば2%に上がれば、実質金利はマイナス2%に
下がる。

〔実質金利=名目金利(0%)─期待物価上昇率(+2%)=─2%〕

例えば、住宅ローンの金利は、変動なら0.7%程度です。ここで、
住宅価格が、将来、2%/年で上がると期待されるようになると、
実質金利は[名目金利0.7%−住宅価格の期待上昇率2%=−1.3%
〕に下がります。4000万円の住宅なら、0.7%の金利を払っても毎
年1.3%(52万円)値上がり益が期待できます。こうなると、住宅
需要は増えるでしょう。

企業も、商品物価が2%上がると予想できるなら、0%に近い金利で
借り入れをして、メーカーは生産設備を、小売業は店舗を増やすた
めの設備投資を行うでしょう。

世帯も、預金ゼロで預けたままではなくなります。来年は1000円の
ものが1020円に上がるとなれば、消費税が上がったときのような、
早期の買い物が起こるでしょう。

名目金利はゼロ以下にできなくても、期待物価上昇率を2%に上げ
ることができれば、実質金利がマイナスになって、現金が好まれる
流動性の罠から脱却できる。これが、クル─グマンの『流動性の
罠』論でした。

【日本政府の政策になった】
浜田宏一氏から説明を受けて納得した安倍首相は、クルーグマンの
リフレ策を全面的に採用し、2013年4月からは、日銀が、「2年をメ
ドに物価上昇が2%になるように、円を増発する」政策を実行した
のです。

浜田氏は「これが欧米の標準の経済学」と言っていました。日銀の
白川芳明前総裁は、リフレ策の有効性に抗議して、任期の少し前に
辞任しています。

【2013年はうまく行った】
初期は、円安で株価が上がり、高額品消費が上向いて、輸入物価が
上がり、2%のインフレ目標は達成できるかのような印象もありま
した。この時期、安倍首相は得意の絶頂の発言をしていたのです。

(注)この景気は、10兆円(GDPの2%)の補正予算によってもたら
されたものです。リフレの金融政策の効果ではなかったことが明ら
かになっています。

【消費税増税後、おかしくなった】
ところが、消費税の3%増税後の、消費と設備投資(両方が需要)
の落ち込みは、予想外に大きなものでした。

その理由は、
・世帯の所得の増加がマイナス0.7%(2014年:総務省)であり、
・消費税と輸入物価上昇で上がった物価(2.7%:総務省)をカ
バーできなかったからです。

(注)このあたりの事情も、なぜか、マスコミは報じませんね。
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm

【物価は上がらない】
消費が増えなければ、物価は上がりません。2015年6月の、消費者
物価の上昇は0.4%、7月 0.2%、8月 0.2%、9月 0.0%です(全品
目)。(注)食品と、下がったエネルギーを除いても、0.9%の上
昇でしかない。

【クルーグマンの白旗】
以上の事実を受けて、クルーマンは以下のように言って、白旗を上
げたのです(2015年10月20日が最初:NYタイムズ紙)。

And I’ve both acknowledged that and admitted that the
approach I took then seems inadequate now(日本に対する見方
では、現在の考えは違うということ、そして、当時の見解(流動性
の罠)が不適当であったことを認める)

日本の異次元緩和は失敗したということです。異次元緩和を発案し
た当人が、誤りを認めてしまいました。

【表情が暗くなった黒田総裁】
ところが、日銀の黒田総裁は、毎月の記者会見で、「景気は、穏や
かな回復基調にある。異次元緩和は、初期の目的を果たしている」
と言い続けています。

安倍首相は、国会で質問を受けるのがいやなのか、体調も悪く見え、
必要に思える臨時国会を開かず、外遊します。外遊は、仕事の時間
を短くできるので、実は、治療かもしれません。

日銀は、今月も、年間で80兆円買い増すペースで、国債を買い続け
ていて、マネタリー・ベースを増やしています。11月12日には、現
金の発行は92兆円ですが、銀行が日銀内にもつ当座預金には、244
兆円もが貯まっているのです。2年半で増発した円は、180兆円です。
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac151110.htm/

一体これからさきどうなるのか。日銀は、どこまでも、2%のイン
フレ目標を果たさないままに、国債を買い続けるのか・・・と思え
るのです。

■2.間違えた理由

Back in 1998, when I tried to think through the logic of
the liquidity trap, I used a strategic simplification: I
envisaged an economy in which the current level of the
Wicksellian natural rate of interest was negative, but that
rate would return to a normal, positive level at some
future date. (2)

<1998年にさかのぼると、流動性の罠の論理を元に考えようとして、
意図的に単純化していたことを告白せねばならない。日本の、実質
GDPの当時の自然成長率をマイナスと見て、自然金利もマイナスと
見ていた。しかし日本の自然金利は、しばらく後に正常になり、プ
ラスに戻るだろうと見ていたのだ。翻訳(2)>

最初に、マネーという少ない要素で考えすぎたのが、間違いの原因
だったと言っています。「strategic simplification(意図的に単
純化してしまった)」というのがクルーグマン流の、言い訳でしょ
う。

クルーグマンが犯した間違いはどこにあったか? 
ここです。
 ↓
「日本の自然金利は、しばらく後には正常になり、プラスに戻るだ
ろうと見ていたのです」

自然金利とは、潜在成長力が100%発揮され、インフレにも、デフ
レにもならない金利率という意味です。

たとえば日本のGDPの潜在成長率が1%の場合、自然金利も1%です。
潜在成長力がマイナス2%なら、自然金利もマイナス2%です。この
ため、0%ではデフレを生む金利になります。

クルーグマンは、
・1998年の日本では自然成長率(=潜在成長率)、自然金利の両方
がマイナスだが、
・それは、しばらく後にはプラスになると見ていたと言います。

自然成長率2%のプラスになれば、自然金利も2%になります。ここ
で物価を上がるようになり、実質金利をマイナス2%にすれば、自
然金利と4%の差が出ます。これは、具体的にはどういうことを生
むのか?

実質GDPは2%成長し、物価も2%上昇する(名目GDPは4%上昇)。
この中で、日銀の政策で名目金利は0%であり、物価の期待上昇率
(2%)を引いた実質金利は、マイ0ナス2%である。これは何を意
味するか? 

借り入れが増え、企業の設備投資、世帯の住宅購入、世帯の耐久財
購入、そして、世帯の、食品を含む消費財の買い物が増えることで
ある。これによって、日本のGDPは、名目で4%以上成長するように
なるだろう。

ところが、クルーグマンの見立てと違い、日本は、生産年齢の人口
の減少(年率0.6%)から、GDPの潜在成長力が0%以下の「長期停
滞(Secular Stagnation)」の状態にあり、それが長期に続いてい
る。(・・・とクルーグマンは言っています)

日本の自然成長率(=潜在成長率)がプラスに戻ると見たのが、自
分の誤りだった。実際は、潜在成長率がマイナスのままだったから、
異次元緩和でマネーを増発しても、それが借り入れ需要の増加を生
んで、設備投資や消費を増やすことはなかった。

設備投資や消費が増えないから、日本の物価は、インフレ目標のよ
うには、上がらなかった。

■3.マネー・サプライを増やすことができれば、物価も上がる

This assumption provided a neat way to deal with the
intuition that increasing the money supply must eventually
raise prices by the same proportional amount; it was easy
to show that this proposition applied only if the money
increase was perceived as permanent, so that the liquidity
trap became an expectations problem.(3)

<以上の考えは、マネー・サプライを増加させれば、結局、その増
加率と同じ割合物価が上昇するに違いなという直観を活かすうまい
方法と思えた。この案は、通貨の増加が永久に続くと受け取られる
ときのみ効果があることを示すのは、容易だった。通貨が増加し続
けると人々から予想されれば、日本が1998年当時に陥っていた流動
性の罠から、脱出できると思えたからだ。翻訳(3)>

日本経済の自然成長率がプラスなら、マネー・サプライ(M3)を増
やせば、マネーが増えた分、物価が上昇します。マネー・サプライ
の90%以上は、世帯と企業の預金です。この世帯と企業の預金の合
計は、銀行から借り入れをすることによって増えます。

(注1)わが国では、マネー・サプライを2004年からマネー・スト
ック(郵貯を含むM3)と呼んでいます。2015年10月のマネーストッ
ク(M3)は1232兆円です。前年比で2.9%しか増えていません。
わが国では、マネー・ストックの増加が4%以下のときは、物価は
マイナスになる傾向があり、4%でほぼゼロ、7%増加でほぼ2%の
物価上昇とされています。
異次元緩和後2年半経っても、マネー・ストック(M3)は2.9%しか
増えていないため、デフレ傾向が続くでしょう。
https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms1510.pdf

(注2)物価と、マネー・ストックの関係は以下とされています。
マネー・ストック増加率(M)×マネー・ストックが使われる
回転率(V)=P(物価上昇率)×実質GDP増加率(T)
わが国では、マネー・ストックが使われる回転率は4%くらい低下
する傾向があります。つまり、マネー・ストック増加率(M)が4%
のとき、物価上昇はゼロです。このマネー・ストックが7%(約80
兆円)くらい増えると、物価上昇は2%になる可能性があります。
しかし、2015年10月現在の増加は2.9%(36兆円)に過ぎない。こ
れは、異次元緩和がまるで効果を生んでいないことを意味していま
す。

クルーグマンは、
・日本のGDPの潜在成長力はプラスに戻るだろうから、
・日銀は永久に異次元緩和を続けるだろうと国民が思うようになれ
ば、期待物価は上がると考えていたと言っています。

(注)期待物価とは、人々が予想する物価上昇率です。

■4.日本の自然成長力(潜在成長率)はマイナスだった

But what is this future period of Wicksellian normality of
which we speak?
Japan now looks like an economy in which a negative natural
rate is a more or less permanent condition. So,
increasingly, does Europe. And the US may be in the same
boat, if only because persistent weakness abroad will lead
to a strong dollar, and we will end up importing demand
weakness.(4)

<しかし、現在、問題にしている「GDPの自然成長率のマイナス」
が今後も続いた場合どうなるのか。現在の日本は、マイナスの自然
金利が、多かれ少なかれ、永続的なった経済に見える。

海外経済の弱さが長引いてドル高を招き、それが需要不足の輸入に
なれば、欧州も米国も、次第に日本と同じ船に乗ることになるかも
しれない。翻訳(4)>

クルーグマンの1998年の見立てとは違い、日本のGDPの自然成長率
(潜在成長率)は、マイナスだった。このため、異次元緩和は、マ
ネー・ストックを、物価を上げる6%や7%増やすことができなかっ
た。つまり、異次元緩和は失敗してしまった。今後は、欧州も、米
国も、自然成長率(潜在成長率)のマイナスに向かうだろう。

以上が、クルーグマンが2015年10月と11月に上げた、敗北の白旗で
す。

クルーグマンは、「いやぁ、間違いでした。済みません。」と白旗
を上げるだけで済むでしょう。シナリオを書いた人が、手を上げた
のです。

間違えた政策を首相に吹きこんだ浜田宏一参与、そして政策を指揮
した安倍首相、実行した黒田総裁と岩田副総裁は、ピエロになって
しまいました。

失敗した異次元緩和を、今日も、今後も続ける日本はどうなるのか。
日銀は、国債を買い増す異次元緩和を、止めることはできません。

日銀が異次元緩和での国債買いを止めると言った瞬間に、国債価格
が暴落し、金利は高騰するからです。金利の2.5%から3%への高騰
は、国家財政の破産を意味します。

健康問題が深刻とも言われている安倍首相の辞任があれば、異次元
緩和はどうなるか?

われわれは、自分では左右できない、マクロの日本経済の中を生き
ています。政策の失敗は、われわれの今後の経済環境とわれわれに
降りかかってくるのです。対策は、まずどうなるかを見通すこと、
その上でどうするか、でしょう、

以下、次号で書きます。

【後記】
改めて感じるのは、経済学は、主に、米国の学者が言ったこと、書
いたことを翻訳するだけの、輸入の学であることです。

日本人による、日本経済の分析ができていない。
これが、クルーグマンの間違った説を鵜呑みにし、実行した理由で
しょう。


2. 2015年11月24日 14:35:47 : LY52bYZiZQ
Business | 2015年 11月 24日 14:05 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

社会保障費、伸び5000億円弱に抑制 財政審が建議提出

http://s3.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20151124&t=2&i=1097267842&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPEBAN04J
11月24日、財政制度等審議会は2016年度予算の編成に関する建議を取りまとめた。都内の財務省で2011年8月撮影(2015年 ロイター/Yuriko Nakao)
⁅東京 24日 ロイター⁆ - 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は24日、2016年度予算の編成に関する建議を取りまとめた。社会保障費の増加を高齢化による伸びの範囲内(5000億円弱)に抑える一方、それ以外の歳出は、人口減少を踏まえ「自然減」を前提とすべきと強調した。今年6月に策定した「経済・財政再生計画」の初年度の16年度から歳出改革に取り組むよう求めた。

同審議会の吉川洋会長(東大院教授)が同日午後、麻生太郎財務相に提出した。麻生財務相は同日夕の経済財政諮問会議(議長、安倍晋三首相)で報告する。

建議は、骨太方針で示された一般歳出の伸び(今後3年で1.6兆円)に触れ、「目安から逸脱するようなことは断じてあってはならない」と指摘。

16年度予算最大の焦点となる診療報酬改定では、医師の技術料を指す「本体」のマイナス改定が必要とし、薬価引き下げで生じる財源を「本体」に充てない考えも示した。

教育分野は、少子化に伴い、24年度までに教職員定数が約3万7000人減少するとの試算を示した。教職員数と教育効果の関係は、明確な科学的根拠に基づいた議論が必要とした上で、「『子どものため』という名目で感覚的に教育関係予算の額を増大させることに着目するのは正しい政策判断とはいえない」とした。

(梅川崇)

http://jp.reuters.com/article/2015/11/24/jp-fiscal-plan-idJPKBN0TD09B20151124


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民102掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民102掲示板  
次へ