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[大機小機]欧州危機の新たな火種
欧州銀行の多くが急激な業績の落ち込みに見舞われている。グローバル化が進む中で、資本効率を高め、利益の極大化を求められた欧州銀行は、伝統的な銀行業務から米国型の投資銀行(IB)業務に傾斜していった。金融危機後、米IB業界は新たな金融ルールや市場環境に適応した体制で再生したが、欧州銀行のIB業務では体制の見直しが進まず、現在の苦境の原因となった。
米IBの最大のライバルと言われたドイツ銀行は2015年7〜9月期に62億ユーロの純損失を発表し、市場に衝撃を与えた。総額約70兆ドルとも言われるデリバティブ(金融派生商品)取引や、ギリシャなど南欧債券への投資で巨額の損失を抱える一方、多くの不適切行為にかかわり、賠償金やリーガルコストは過去数年で100億ドルを超えている。
先月には大規模な人員整理やIB業務の分割といった改革案と同時に2年間の配当支払いの停止を発表したが、事態は極めて深刻だ。他の多くの欧州銀行も程度の差はあるが、厳しい状況は変らず、今後、欧州のIB業務の統合、縮小、撤退は不可避となろう。
欧州銀行には新たな問題も浮上している。英国の欧州連合(EU)からの離脱を意味する「Brexit」がにわかに現実味を帯びてきた。17年末までに賛否を問う国民投票が実施されるが、EU残留派のキャメロン首相は投票結果を楽観していたようである。しかしユーロ圏の果てしない混乱に難民危機が重なって英国民のEUへの不信感が高まり、最近の世論調査では国民の大多数がEU離脱を望んでいるとされる。
もしEU離脱となれば欧州銀行への影響は深刻だ。多くの欧州銀行はロンドンの金融街シティにIB業務の本部を置くが、取引量は既に大きく減っている。シティの欧州系IBの重要なビジネスにEU市場への金融サービスがある。現在は取引は自由だが、英国がEU離脱となれば新たな制約が課される可能性が高い。欧州系IB業務の痛手は大きく、シティからの撤退が相次ぐことにもなろう。
いずれにせよ欧州銀行の弱体化は免れない。グローバルな金融市場では米国勢のシェアはますます拡大し、経済と共に金融の世界でも米国1強時代の再来となりそうである。
(逗子)
[日経新聞11月18日朝刊P.17]
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