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[ポジション]国債、マイナス金利拡大
中短期に海外マネー流入 開く日米差、円安要因に
東京債券市場で、国債のマイナス金利での取引が広がっている。日米の金融政策の方向の違いに着目した海外マネーが流入。11月に2年債が4カ月ぶりにマイナス金利となり、さらに期間の長い債券にも金利低下が波及している。米国とは金利差が開く一方で、円安を招く一因にもなっている。
「いま唯一勢いがあるのは海外投資家の買い注文ですね」。国債トレーダーからはこんな声が複数聞かれる。
財務省のデータはそれを裏付ける。10月初めから11月7日までの1カ月あまりで外国人は日本の債券を9兆円あまり買い越した。年明けから買い越しが続いていたがここへきて急加速。特に11月1〜7日の週には短期国債を中心に2兆円以上買い越し、約半年ぶりの大きさになった。
背景にあるのがドルの調達コストの異変だ。米銀などがドルを出し惜しむ中で米利上げ観測が高まり米ドルの需給が逼迫している。円をドルに換えるには金利差以外に年0.8%程度の手数料が必要になっている。反対にドルを円に換えるとこの手数料を受け取れる。
この手数料に着目したのが海外ヘッジファンドだ。ドルを円に換えるだけで手数料が得られる。日本国債は資金の置き場とするだけなので小幅のマイナス金利でも利益が得られるというわけだ。
海外勢の投資対象は償還の期間が短い国債が主な投資対象だったが、最近は対象を広げる動きが出ている。この結果、償還まで3〜5年の国債の金利にも低下圧力がかかっている。5年物国債は16日に0.035%にまで低下した。米利上げ観測が日本の長期金利を低下させるという一風変わった構図になっている。
一方で、銀行など国内投資家の売りはここへきてぱたりとやんでいる。日銀の集計では8月末の国内銀行の国債残高は112兆円。2013年4月の異次元緩和から38兆円も減った。ある銀行の運用担当者は「金融取引の担保に必要なうえ、預金の増加で運用原資はむしろ増えており、さらに残高を大きく減らすのは難しい」と話す。実際に米金利上昇や株高の日でも日本国債への売りはすぐに途切れてしまう。
こうした市場の雰囲気を端的に表すのが「S&P/JPX日本国債VIX指数」。米国株の下落警戒感を示す「VIX指数」の日本国債版だ。この指数が先週1.53%台と今年最低の水準に低下した。昨年夏に付けたリーマン・ショック後の最低(1.46%)に迫る低さだ。緩やかな金利低下が続くことを見込んだ取引が増えている。
日銀の関係者の多くは「金利低下は緩和効果の表れ」と前向きに捉えている。日米金利差が拡大すれば円安・ドル高にもつながりやすく、物価上昇には追い風だ。
だが、中短期債の金利は0%近辺で、10年債でも0.3%前後と1月に付けた史上最低(0.195%)と大差ない。さらに金利が低下しても、「追加緩和の効果が出にくくなる」との声は日銀内にもある。マイナス金利が広がれば国債の取引が一段と細り日銀の国債買い入れが円滑に進まなくなるリスクも高まる。昨秋には日銀が予定していた額の短期国債を買えなくなる事態も起きた。
「なんでもやる」と短期決戦で臨んだ異次元緩和にはきしみが出始めている。日銀が見込む物価目標の達成時期は16年度後半だが、足元では再び原油が下がり始めた。達成時期の先送りも徐々に限界が近づく。日銀にとって金利低下は必ずしも心地の良いものではないはずだ。
(後藤達也)
[日経新聞11月17日朝刊P.17]
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短期国債の「マイナス金利」最低に 長期の2年債に波及も[日経新聞]
2015/11/22 0:08
債券市場で償還までの期限が短い短期国債を中心に「マイナス金利」が拡大している。業者間の取引を仲介する日本相互証券では3カ月物の金利が20日に前日比0.03%低いマイナス0.150%と過去最低になった。2年物の長期国債にもマイナス金利が波及してきた。海外投資家が日本国債投資を大幅に増やしていることが主因だ。
海外投資家の日本国債投資が急増した背景にはドルの調達コストの上昇がある。金融規制の強化で米国の銀行などがドルの供給を絞ったところに米利上げ観測が加わり、ドルの需給が逼迫。市場で円をドルに換える場合の上乗せ金利は3カ月物で0.7%程度と、2011年11月のユーロ危機以来の水準に拡大した。反対に海外投資家が持つドルを円に換えれば、上乗せ金利を受け取れる。日本国債がマイナス金利でも上乗せ金利を加えれば、プラスの金利で運用できるわけだ。
年末にかけてドルの調達コストは高止まるとみられ、海外投資家の国債投資が続きそうだ。20日の取引時間中には日銀の買い入れが減り、金利のマイナス幅が縮まる場面もあったが、大幅な上昇は見込みづらい。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGF21H07_R21C15A1NN1000/?n_cid=TPRN0003
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