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愛知県営名古屋空港から離陸したMRJ=11日午前9時35分、愛知県(本社ヘリから、竹川禎一郎撮影)
YS−11挫折でMRJが学んだこと 「優れたモノづくり」だけでは足りない
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151120-00000500-biz_fsi-nb
SankeiBiz 2015/11/22 08:08
伊勢湾に面した木曽川の河口付近にある大起産業の工場(三重県木曽岬町)。ドリルの大きな音が響き渡る。ここで、MRJ(三菱リージョナルジェット)の中胴前部や後部のドア周りの構造物が造られている。同社の小森禎和は11日、MRJの初飛行の様子を自宅のテレビで娘と観賞した。「お父さんも一緒に造ったんだよ」と話しかけると、娘は笑顔でほほ笑んだ。三菱重工業は来年10月から中小企業10社を集め、松阪工場(同県松阪市)でMRJの部品を共同生産する。一貫生産でコスト競争力を高めるのが狙いだ。中胴前部の組み立てを手掛けるテックササキ(名古屋市熱田区)専務の大西清幸は「自分たちで生産管理も行い、納期短縮やコスト削減に貢献し、量産を支えたい」と力強く話す。
日本の航空機産業の成長には、安全性や性能などモノづくりの技術に加えて、販売やサービスというソフト面の能力も不可欠だ。MRJの1機当たりの価格(90席タイプで約58億円)は、他社の同型機と比べてまだ高い。三菱航空機は開発と並行して、販売拡大につながるコスト削減を急ぐ。それは、苦い結果に終わった“日の丸航空機”YS−11の挫折から学んだ教訓の一つだ。
42年前、戦後初の国産プロペラ旅客機「YS−11」が182機目を最後に生産を終了。販売不振で累積した赤字は360億円。三菱重工相談役の西岡喬は「赤字体質の原因は経営主体が不明確だったため」と振り返る。YS−11は国を中心に三菱重工や富士重工業などが出資する「日本航空機製造(日航製)」が開発・販売。部品製造や組み立てを重工各社が分担する体制だった。
しかし、それまで防衛庁(当時)向けの製品が主だった重工各社のコスト意識は低く、高い製造費用をそのまま日航製に請求。ライバル機より高い価格があだとなり、海外での販売は低迷。値引きに応じれば、売るだけ赤字となる構造的な問題を抱えていた。加えて、営業活動や航空会社向けの保守・整備を行う、サービス拠点も十分ではなかった。優れた機体というモノづくりの評価とは裏腹に「高コスト体質」と「不十分なサービス」という2つの病巣が、YS−11をむしばんだ。
三菱航空機社長の森本浩通は「営業とカスタマーサポートで競合他社と差別化を図りたい」と話す。営業は現在、日米欧に拠点を置き、約50人体制で受注活動を行っている。商社出身の営業も入り、手ごわい海外の航空会社との交渉を行っている。また、カスタマーサポートは米ボーイングと提携し、ノウハウを吸収している。2017年の初納入まで世界のアフターサービス網を構築する。現在、ANAの意見を取り入れ、日本らしいきめ細かなサービスを提供する準備を進めている。不十分なサービス体制、というYS−11の失敗を糧とした戦略だ。
MRJと同じ小型ジェット旅客機の市場は、現在エンブラエル(ブラジル)とボンバルディア(カナダ)の2強が市場の8割超を占めている。4年前に初就航したスホイ(ロシア)のシェアは1.1%。中国国有企業も小型機「ARJ21」(90席)を開発しており、今後は日本、ロシア、中国勢が2強に挑む構図となる。
民間機事業は膨大な初期投資を長期間かけて回収するビジネスモデルだ。MRJの受注は累計407機。採算ラインは超えたが、利益を出す600機にはまだ届かない。三菱重工会長の大宮英明は「2500機以上の受注を獲得したい」と意気込む。「モノづくり」プラスαとなる付加価値をいかに生み出すか。それが、日本の航空産業の離陸につながるエンジンとなる。
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