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ワタミ本社ビル(「Wikipedia」より)
ワタミ、新店舗が観光スポット化!必ず復活できる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151121-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 11月21日(土)22時30分配信
ワタミが訪日外国人客を意識した和食居酒屋「炉ばたや銀政 銀座数寄屋橋総本店」(130席)を開店したのは14年3月のことだった。「温故知新(日本の魅力再発見)」「エンターテイメント・シズル感の演出」「家庭では味わえない価値の提供」をコンセプトにした大型の炉端焼き店である。大きなオープンカウンターを中心にして、テーブル席、宴会席を配している。鮮魚、刺身、焼魚を目の前で調理して、皿に盛った料理を大きなしゃもじに載せて客に直接渡す。飲料は日本酒を前面に打ち出し、英語、中国語、韓国語のメニューを用意した。客単価はワタミの中で最も高い4000円以上。
筆者は14年6月にワタミ前社長の桑原豊氏にインタビューした。
「銀政は非常に好調です。訪日外国人客も予想通り来店しています。銀政は坐・和民を業態転換して、14年9月に六本木店、同年11月には新宿野村ビル店を開店します。年内にもう1〜2店舗開店したいと思っています」
ワタミが遅ればせながら取り組んだ、訪日外国人客を狙った銀政は好調に推移していた。
ところが、筆者が桑原氏にインタビューした後、ワタミは主力の和民、坐・和民、わたみん家の既存店の売上高が予想以上に悪化し、15年3月期で128億円の巨額な赤字を出した。不振店舗の閉鎖は102店舖に拡大、ワタミは新業態開発に投資している余裕がないほどに追い込まれた。
桑原氏は「ワタミはブラックじゃない」とブラック企業批判を全否定するなど、創業者の渡邉美樹氏に代わって憎まれ役を務めたが、2期連続約180億円の大幅な赤字の責任をとり、15年3月1日付で代表権を持たない取締役に退いた。これによって新業態開発は計画がいったん先送りされた。
桑原氏の後任には常務取締役の清水邦晃氏(44)が就任した。清水氏は創業者の渡邉氏と同じ明治大学に在学。明大在学中からワタミでアルバイトとして働き、明大を中退してワタミに入社。完全な実力主義の企業風土の中で成果を上げ03年8月、最年少で執行役員兼ゴハン事業本部長に抜擢された。05年9月、ワタミが介護のアール(アールの介護)を買収した時取締役に就任、06年4月同社社長に就任、ワタミの介護事業急成長の立役者となった。14年10月から常務取締役を務めていた。
「清水氏はリーダーシップには欠けるところがあるが、人望のある人物で現場の社員やアルバイトから非常に好かれています。ブラック企業批判に嫌気して、会社を辞める人も多かったのが実情ですが、清水氏が社長に就いたことで、社員やアルバイトも『もう少しがんばってみよう』と考え直した人も多いはずです。ワタミへの逆風が吹く中で、清水氏の社長就任はベストの選択だったと思います」(ワタミ関係者)
しかしながら、2期連続赤字の後を受けて清水氏が社長に就いてからは、資金繰りが悪化し、新業態開発などカネのかかることは先送りされた。この時期、ワタミは水面下で証券会社などを通じ、居食屋「和民」の売却に動いたといわれる。それが思うように運ばず、買い手の多い介護事業の売却を進めたという。こうして今年10月、介護事業を210億円で売却すると発表、財務悪化に歯止めをかけた。そしてワタミは、このタイミングで反転攻勢に打って出るのだ。
●創業者からのエール
今年9月、東京・新橋に新業態の居酒屋「ニッポンまぐろ漁業団」(94坪、176席)を開店した。サントリー酒類市場開発本部グルメ開発部と連携して、開発した。店内は漁港・波止場、漁師の憩いの酒場、漁具小屋、船長のお屋敷という4つのゾーンに分割、「まぐろ尽くし六点の食べ比べ」(2人前1790円)など、メニューの4割程度はマグロ料理だ。
第1号店の新橋店は好調だ。だが、「食材がまぐろで特殊なこともあり、多店舗展開は難しいだろう」(業界筋)といわれている。しかし、ワタミはまぐろ漁業団を経営不振の和民、坐・和民、わたみん家などを業態転換するために開発した。3〜5年で30店舗程度まで展開する方針だという。
創業者で参議院議員の渡邉美樹氏は、SNSのフェイスブックを正式な情報発信ツールとしている。今年10月2日、ワタミは介護事業の株式を210億円で損保ジャパン日本興亜ホールディングスに譲渡する契約を結んだが、同日渡邉氏はフェイスブックに長文を書いた。ポイントを抜粋しよう。
「2年で200億の赤字の会社です。本気の再建です」
「『介護サービスの原則維持』、『社員・スタッフの雇用維持』を前提にした今回の経営譲渡は、大義の決断、涙の選択だと創業者の私も受け止めております」
ワタミは06年にアールの介護とワタミメディカルサービスを合併、ワタミの介護と社名変更した。以来、首都圏を中心に介護付き有料老人ホーム113カ所(15年9月末現在)を展開してきた。最も資産価値があると評価されていた介護事業の売却に追い込まれたのだから、まさに断腸の思いであったと思われる。渡邉氏はフェイスブックの記事をこう結んだ。
「ワタミ奇跡の大復活も今日が『はじまり』です」
●「奇跡の大復活」の機関車役
渡邉氏が「奇跡の大復活」の機関車役を期待するのが、今年11月1日にオープンした完全予約制による訪日外国人(インバウンド)専門の日本料理店「銀政−GINMASA 六本木店」である。同店は昨年開店した「炉ばたや銀政 六本木店」を進化、発展させ、訪日外国人専門店に業態転換した。
この銀政は安倍政権が推進するアベノミクスに乗って、「地方創生」「クールジャパン」戦略の一環を担う店舗と位置付けられている。銀政は大手旅行代理店のエイチ・アイ・エス、訪日外国人旅行を専門とするJTBグローバルマーケティング&トラベルなどと提携した。観光コースに組み込まれ、団体ツアー客は確実にやって来る。
ワタミは“爆買い”の中国人客を意識し、ツーリズムマーケティング・プロモーションを手掛ける中国企業のサイバーマートなどとも提携、銀聯カード使用者には特典を付与する。銀政は都道府県庁と連携してイベントを常時開催する。ちなみに、11月からの開店第1弾のイベントは「京都フェア」である。
「サービス面では7カ国語対応ウェブ予約システム(英・中・韓・仏・独・西・伊)を立ち上げました。店では翻訳コールセンター(テレビ電話)を常時設置、多言語ツールの『Yubisashi』を導入、メニューは英・中・韓が標準装備で、英語が話せるスタッフを配置します。また、有線放送のUSENと連携し、演出用の音響システムを充実させました。さらに大日本印刷の協力で映像システムを使って地方自治体のPR活動にも努めます。メニューは寿司、天ぷら、鍋、すき焼き、しゃぶしゃぶなどのほかに、ラーメン、煮物、お好み焼き、焼きそばなどをコース形式で提供、ビュッフェも設けます。
オープンキッチン方式で調理風景を見ながら、炉端焼きのライブ感・シズル感を味わってもらいます。飲食だけにとどまらず、『見る』『触る』『体験』を通じて日本酒、観光、民謡など日本の文化・伝統を楽しんでもらうために、浴衣などの貸出しサービスを実施します。訪日客参加型のイベントを開催、思い出をつくってもらい、日本を訪れたら必ず立ち寄りたいクール・ジャパン・スポットとして確立させたいと思っています。お土産に各種調味料を販売します」(広報CSR部リリース)
ちなみに料金は昼の和食ランチが2000円(税別、以下同)、「小田原鮮魚寿司と短角和牛ステーキのディナー」が5500円となっている。
訪日外国人が急増し、「良質な日本食を食べ、日本の伝統文化や芸能などに直接触れたい」という要望が急激に高まっている。それなのに、これまで銀政のような飲食店は開発されてこなかった。銀政は観光庁をはじめ地方自治体などが鳴り物入りでバックアップする、オールジャパン体制の観光スポットである。
●カギは銀政の大ヒット
エイチ・アイ・エスなどは「銀政のような訪日客向けの店舗をなるべく早く10店舗くらい展開し、訪日外国人の要望に応えるべきだ」と、ワタミとの連携を強化している。おそらく銀政は人気の観光スポットとなり、多店舗化が早まるだろう。
ワタミは今期(16年3月期)に5万人と見込んでいた訪日外国人客を、銀政のオープンで倍増の約10万人に上方修正した。ワタミが短期的に大復活するためには、銀政を大ヒットさせることが、一番手っ取り早いのである。
ワタミが今期訪日外国人10万人を達成するのは、決して難しい数字ではない。というのは、ワタミは中国を中心に和民を100店舗展開、年間1200万人の顧客を持っているからだ。
00年7月、香港に和民を設立。01年11月、海外1号店として和民 香港店を出店した。モデル店となったのが古き良き「日本の食卓」をコンセプトとしたジャパニーズ・ダイニング「ゴハン」(現在国内は閉店)であった。海外では日本のような酒と料理が一体となる居酒屋のような業態はほとんどない。ワタミは居酒屋ではなく、日本食メニューを重視した居食屋を前面に打ち出したことで、現地に受け入れられた。
ワタミは香港をベースに中国本土の深せん、上海、広州へと店舗を広げた。台湾、シンガポールにも進出し、現在では香港に本社を置くワタミインターナショナル(桑原豊社長)が、直営・フランチャイズ(FC)で約100店舗展開している。
海外展開で最大のターゲットにしてきたのが、中国市場である。日本の外食企業の多くは、収益が厳しい中国本土に進出するのを嫌がり、親日的なタイやインドネシアなどASEAN(東南アジア諸国連合)に進出している。
ワタミは香港に進出してから15年経ち、海外事業はワタミ急成長の象徴的な事業となった。日本国内の和民のようにブラック企業批判を受けていないので、ブランドが傷ついていない。ワタミにとって香港、上海、広州、台湾、シンガポールの店舗に来店する1200万人の顧客のうち、仮に3%が訪日客となって銀政などワタミの店舗に来店したとすれば、同社の訪日外国人数は36万人を数える。仮に客単価6000円とすれば、年間21億6000万円の増収になる。
ワタミは訪日外国人ビジネスで成功する条件が整っている。長期低迷し現場が少し元気をなくしているが、16年3月期で訪日外国人数約10万人の獲得に成功すれば、大復活の第一歩となるだろう。銀政の「一点突破、全面展開」で反転攻勢をかければ、今期から来期にかけて復活してくるはずだ。
●「赤・和民」から「黒・和民」への転換
ワタミは1984年5月、居酒屋の神様と呼ばれる石井誠二氏が創業したつぼ八とFC契約を締結、第1号店として居酒屋「つぼ八 高円寺北口店」を改装オープンした。時代は空前絶後の居酒屋ブームだった。酎ハイブームの元祖である居酒屋「村さ来」には、年間200店舗近くがFC加盟した。一流企業に勤めるサラリーマンが脱サラしてFCに加盟し、一旗揚げようとした。
ワタミ創業者の渡邉氏は92年に自社ブランドの1号店、和民 笹塚店を開店した。その結果、つぼ八とのFC契約の解消に追い込まれ、つぼ八の店舗を順次和民に変更した。この時の渡邉氏の決断が大成功し、和民の快進撃が始まった。
ワタミのビジネスモデルは、洋風居酒屋のつぼ八の成功モデルを進化・発展させたものだ。駅前や繁華街のビルの空中階(2階以上、1階の路面店より家賃が安い)に100坪以上の店舗を借り、150〜200席前後の大箱をつくった。カップル、グループ、ファミリー、宴会需要などに対応、総合型タイプの居酒屋で客単価3000円以上、20〜30代の若者に支持された。
ワタミは当初手づくり料理にこだわり、店長、調理長以下一丸となって、冷凍食品を使わずに店舗で手づくりの仕込みを行なっていた。これがワタミの人気の秘密であったが、これだと手間暇がかかって多店舗化が遅れる。
ワタミが東証2部に上場した98年、すかいらーくグループ出身の桑原豊前社長が和食レストラン「藍屋」の創業を経験して、ワタミに入社した。営業本部長、常務取締役などを歴任、09年に社長に就任、渡邉氏は会長に就き、桑原―渡邉の二人三脚体制が確立した。桑原氏は「店舗運営の合理化、システム化に優れ、コストカッターの専門家だ」(ワタミ関係者)といわれる。桑原氏がワタミに入って1年後の99年頃から、集中仕込みセンター「ワタミ手づくり厨房」(略称、センター)が建設され、調理の合理化が進んだ。
「このセンターがワタミの大量出店の原動力になりました。それまでワタミは店長や調理長のレベルが高く、プロ意識が強かった。店舗オペレーションの能力、質も高く、白木屋(モンテローザ)やつぼ八、村さ来などと競合しても勝ってきた。けれども、センターがつくられ大量出店が始まった結果、人材育成が間に合わず、店長や調理長のレベルが低くても登用せざるを得ない状況が起こってきました。センターがワタミのひとつの転機になったと思います」(ワタミ関係者)
こうしてワタミは全国展開のスピードを上げ、650〜700店舗近くまで出店した。店長のレベルが低下したり、サービスの質が下がったりしても、誰にでもオペレーションできるシステムが構築されていたので問題は先送りされた。
ワタミが全国展開してゆく中で、センターは全国12カ所で稼働するようになったが、それはもろ刃の剣でもあった。店舗が増えている時は強い味方になったが、ワタミが15年度から16年度にかけて190店舗近く閉店し、国内500店舗体制以下に縮小するのに伴い、稼働率が下がり、赤字を垂れ流すことになった。
とはいえ、ワタミは中長期的に多様化、専門店化した店を増やす方針である。またセンターは宅食事業のベースともなるので、簡単に閉鎖するわけにはいかないだろう。
いずれにせよ、センターを増やしていった00年代前半以降、ワタミは、外食事業をベースに農業、宅食、介護、メガソーラーなどへ事業を拡大・発展させた。この時期がワタミの頂点であったといえる。
文=中村芳平/外食ジャーナリスト
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