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財務省「内部留保金への課税」検討の脅威〜非協力的な大企業が晒される日も近い?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46483
2015年11月21日(土) 歳川 隆雄 現代ビジネス
■財務次官が「可能性はあります」
先週の某日夜、財務省の田中一穂事務次官と会食する機会があった。当方は、筆者を含めて数人のジャーナリトの面々。毎度ながら言い訳で恐縮だが、完オフ懇談なので当夜の会話の仔細を紹介するわけにはいかない。
だが、驚いたことに翌日の『日本経済新聞』(電子版)に以下のような記事があったのだ。
<麻生太郎財務金融相は13日午前の閣議後記者会見で、企業の内部留保への課税を求める声が一部で出ていることについて「二重課税になる。安易にやるべきではない」との考えを述べた。企業の内部留保が積み上がっている背景として90年代以降の株価などの下落を受け、経営者が依然として慎重になっている見方を示した。>
それだけではなかった。同日午後、時事通信も次のような記事を配信している。
<自民党の中堅・若手議員でつくる勉強会「次世代の税制を考える会」(幹事世話人・鈴木馨祐衆院議員)は12日、企業の内部留保への課税を検討するよう政府や党税制調査会に働き掛けていく方針を固めた。>
冒頭に「某日夜」と記したが、隠しても意味がない。実は田中次官との会食は12日のことである。なぜ、驚いたのかである。完オフ懇談だが、以下の一点だけは良しと判断、田中次官が述べたことを紹介したい。
当夜の懇談で筆者は、まさに「最近、内部留保税が取り沙汰されているが、次官はどう考えておられるのか」と質問した。驚いたことに、田中次官がアサッリと「内部留保課税ですか?考えているといえば、考えています」と認めた上で、「(省内で)欧米のヘッジファンドの連中と付き合っている者たちからの提言として、そうした話があります」と語った。
加えて、「実は『スカーレット・レター』と呼んでいるのですが、利益を設備投資に回さない、人件費を上げない、それでいて海外のM&Aにつぎ込むような企業を『赤』や『青』に色分けして各々に課税する。薄く広くですが。まあ警告の意味ですが、検討しているといえば、検討しています」と断じたのである。
翌日の麻生大臣会見と時事配信、これは果たして偶然であったのか。正直言って筆者は、この「スカーレット・レター」(緋色の文字)という言葉そのものを知らなかった。週が明けた今週初めに専門家に教えを請うた。
その人物の受け売りである。語源は、清教徒で姦通者に懲罰として赤い色のアルファベットの「A」の一文字を胸に付けさせたことに由来するという。要は、違反者・汚い者を皆に特定することで孤立感と屈辱を味わさせる罰則のことだ。
■自民党の中堅、若手からも声が上がる
この説明を田中次官の発言に重ね合わせると、設備投資に資金を回さない、人件費を上げないなど、所謂「非協力的企業」を特定し、罰則として課税するということである。非協力と言っても度合いが異なる。その度合いを「赤」や「青」に色分けし、その程度によって罰則=税率を変えるというのだ。
確かに、一部の企業を晒し者にすることで他企業の支出意欲を促す効果はあるだろう。税制度としては累進税率に似ているが、収入で税率が決まるのではなく政府が罰則体系基準を設けて税率を決めることになり、問題がないわけではない。
興味深いのは、自民党税調インナー(非公式会合に出席する幹部)予備軍的な中堅・若手の勉強会から内部留保課税を検討すべきだとの声が上がったことである。因みに、鈴木衆院議員は旧大蔵省OBで、会見で否定してみせた麻生財務相の為公会(麻生派)メンバーである。
田中財務次官は完オフに相応しく、新聞・出版界が強い関心を持つ軽減税率の導入問題から中国主導で年内に正式発足するAIIB(アジアインフラ投資銀行)の問題点まで縦横無尽に、かつ闊達に話をしてくれた。が、どうもその話の中に「内部留保課税」問題をさりげなく紛れ込ませて筆者らの関心を喚起したフシが濃厚である。
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