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【プロが警告】年金が危ない! こんなにハイリスクで運用されてるってご存知ですか?そろそろ「中国株暴落」の悪影響が出てくる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46453
2015年11月20日(金) 山崎 元「ニュースの深層」 :現代ビジネス
■公的年金運用目標、3つの問題点
本連載でも何度か書いてきたように、筆者は公的年金の「基本ポートフォリオ」に端的に表れる運用計画に対して批判的な見解を持っている。
基本ポートフォリオとは、2014年10月31日に日銀の追加緩和策と同日に発表された、「国内株式25%、外国株式35%、外国債券15%、国内債券35%」というGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオを指す。
そしてGPIFの基本ポートフォリオと同じ構成で定められた「モデル・ポートフォリオ」は、地方公務員共済、国家公務員共済、私学共済のいわゆる三共済に対しても、目標として参照すべき運用方針として与えられている。
この基本方針について問題だと思うポイントは主に以下の3つだ。
1.「名目賃金上昇率+1.7%」のリターンを目指せ、という厚労大臣の運用目標の与え方は、リスクを考慮せずいきなり目標リターンだけを与える形になっている。これは運用の基本から逸脱しており、不適切であること。
2.基本ポートフォリオの「リスク」について十分な説明と合意形成が行われてないと考えること。
3.運用計画の時間設定が25年と非現実的に長いなど、運用の現実を踏まえない運用計画の策定プロセス(たとえば現在10年国債でも0.3%の利回りしかないのに、国内債券の期待リターンは名目で2.6%もある)。
基本ポートフォリオのリスクは年率リターンの標準偏差で12.8%ほどあると想定されており(「年金積立金管理運用独立行政法人 中期計画の変更について」2014年10月31日)、名目の期待リターン(経済中位ケース)が4.57%なので、マイナス2標準偏差のイベントを考えると、マイナス21.03%(=4.57−2×12.8)のリターンを想定しなければならない。
これは、約140兆円の運用資産に対して約29兆4千億円の損失に相当する。
この数字自体は、公開されている検討資料にも載っているので、「情報は開示しています」と強弁することは可能だが、国会などで国民に十分説明されたようには思えない。
また、筆者の知り合いのある運用実務者からは、「リターンで目標を与えるのはいいとしても、名目賃金上昇率(おおむね物価上昇率と同じと考えていい)プラス1.7%といった控えめな運用目標に対して、基本ポートフォリオは過大なリスクを取っているのではないか」といった意見を貰った。
筆者の意見とは一部異なるが、現在の基本ポートフォリオに懐疑的で、策定プロセスに疑問を持っている点は同じだ。
基本ポートフォリオは、「名目賃金上昇率+1.7%を達成できそうなポートフォリオの中で、最もリスクが小さく、リスク当たりのリターンの効率が高い」という論理で作られたと説明されているが、確かに、内外の株式で50%、外債も合わせたリスク資産が65%といった、ここまでハイリスクなポートフォリオが必要なのかという点には疑問無しとしない。
■公的年金の運用責任の所在は?
一般には正確に理解していない向きが多いと感じるので、ここでは特に、公的年金の運用責任の所在について説明しておきたい。
GPIFの運用資産を140兆円とする。仮にある年度に関して(四半期でも、5年でも理屈は同じだ)、国内株式と外国株式がマイナス20%、外国債券と国内債券が0%のリターンだったとしよう。この時に、賃金上昇率は0%で、GPIFは12兆円の損を出した。この状態をどう評価すべきか。
12兆円の損失というのは、リーマンショックがあった年度にもなかった規模だ。由々しき事態であることは間違いない。
この場合、GPIFのCIO(運用責任者)以下の運用担当部局はどう評価されるべきかというと、基本ポートフォリオから想定される損失が14兆円なので(内外の株式が50%あってこれらがマイナス20%なので、基本ポートフォリオから想定される損失は全体の10%つまり、14兆円だ)、「大変良くやった!」と評価されるのでなければならない。
140兆円に対する2兆円を利回りに換算すると1.4%強のプラスだから、運用成績としては相当に立派だ。
このとき、「プロなのに損を防げなかったのか」と運用現場に文句を言うのは端的に言って筋違いだ。この損の大半の責任は基本ポートフォリオに表れているGPIFの運用の基本方針にある。
基本ポートフォリオは、各種の有識者を集めて作った運用委員会の検討結果をGPIFの責任者たる理事長が採択し、これを厚労大臣に報告して認められたものだ。
この「実質的な評価」はなかなか難しい。
専門家としての知見を背景にこのような運用計画(≒基本ポートフォリオ)をよいものとして答申した運用委員会の委員諸氏には、この時点でそれなりの責任感を感じてもらう必要がある。
140兆円に対する「名目賃金上昇率+1.7%」は2兆3千8百億円だから、基本ポートフォリオの14兆円の損失は、実質的に16兆3千8百億円と評価する必要がある。
「運用計画は25年のタイムスパンで考えたものだ」、「運用の評価は5年程度の期間を要する」といった運用委員の言い訳は想定できるが、これは少なくとも半分以上適当ではない。
運用判断の力を評価する上で1年ではなく長い期間がある方がいいことには一理あるが、すでに発生した損益と今後のリターンには基本的に関係はないので、「長い目(=期間)で見ると損益は均される(はずだ)」という意見には何ら信憑性がない。
専門家たる運用委員は、自分が関わって作った「基本ポートフォリオ」が良い結果をもたらしたか、そうでなかったかに関して、切実な責任意識を持つべきだ。
ただし、GPIFのような巨額のポートフォリオは小回りが利かないから、「勝つ時もあれば、負ける時もある」、「勝った時に褒めてもらえばいいし、5年程度を均して好結果ならいい」といった割り切りは必要だ。
■GPIFの理事長はどう責任を負うのか
さて、運用委員会を組織し、その答申を採択したGPIFの理事長にはより重い責任がある。こうした組織のトップが、結果に対してどのようなレベルで責任を取るのが適当なのかは難しい問題だ。
仮にここで想定したような損失が発生した場合、GPIFの理事長は、「運用基本方針に関する私の判断は今年度の結果に鑑みて失敗だった」と認める必要はあるが、この失敗は(12兆円の損でも!)、彼が辞任すべきだというほどの失敗ではないと考える。
国民に対して損失の説明の矢面に立ち結果に対する評価を受けて身の処し方を考えるべきは、GPIFに指示を与え、GPIFから提示された基本方針を認めた厚労大臣だろう。まして、GPIFは基本ポートフォリオから想定される損よりも小さな損で運用しており、理事長はその組織のトップマネジメントなのだ。
以上に想定したような状況なら、厚労大臣の辞任なくして、GPIF理事長のクビという事態はあり得ないと、筆者は考える。
現実にありそうなことは、「長期投資」を言い訳にして、両方とも居残る展開だ。ただし、12兆円程度の損失は基本ポートフォリオ策定の時点で十分に想定できた額の損なので、「想定外だった」と言うならおかしい。
もっとも、形式的に大臣の責任ということは、実質的に所管官庁の官僚の責任だ。運用目標の与え方から、これに対する運用の基本方針(≒基本ポートフォリオ)について、厚生労働省の年金局は、「これでいい」と本当に思っているのだろうか。筆者は、その点が一番知りたい。
まず、どのくらいのリスクまで許容できると考えているのか、次に名目賃金上昇率+1.7%を目指すとして現在の基本ポートフォリオが持つほどのリスクをとる必要があると本当に思っているのか、の二点が当面問題だ。
公的年金は、主に中国関連の材料で内外の株価が下落した7−9月期の運用成績がそろそろ発表されるはずだが、その損失額の当否に関しては、GPIFの運用責任者よりも厚労省や基本ポートフォリオを作成した運用委員に質問すべきだろう。
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