2. 2015年11月20日 18:43:15
: OO6Zlan35k
アングル:商品相場は09年より状況悪化、先行きに一段リスクも [シンガポール 18日 ロイター] - 商品(コモディティ)市場では原油や銅、石炭が5年超ぶりの安値水準で取引されている。投資家の一部には底入れが近いとみて、買い持ちを増やす動きが出ているが、2009年のような力強い反発を期待する向きには一段の慎重さが求められそうだ。 銅などの工業原料については2008─09年の金融危機後、中国が救世主として登場し、需要拡大のための大規模な景気刺激策を打ち出した。当時、中国の需要下支えの能力は信頼され、銅先物価格のフォワードカーブは期先物ほど価格が高くなる「順ざや」となっていた。 しかし今回ははるかに警戒感が強く、原油・銅・石炭の先物価格は2016年前半にかけて下落からほぼ横ばいとなっている。 中国の経済活動の急減速や資源集約型でない産業へのシフトが原因として挙げられており、銅価格が今年30%超下落する引き金ともなった。この10年間、ベースメタルや鉄の世界最大の消費国だった中国では大量の在庫も積み上がっている。 エナジー・アスペクツのアナリスト、Virendra Chauhan氏は「中国が断固として工業中心の経済から国内消費主導型に転換するならば、金属市場に長期的に強気姿勢をとる理由は見当たらない」指摘する。
原油先物も2009年初めには翌年1月限の価格がスポット価格を30%強上回るなど、先高観が強かった。今はそれほどの楽観論は広がっていない。 期先物の2017年1月限は2016年1月限を1バレル=6ドル上回る価格で取引され、かろうじて順ざやを確保しているが、限月間のスプレッドは6年前の半分にとどまる。 2008─09年以降、米シェールオイルの生産量が急増し、中東やロシアも過去最高の生産量に到達したことで、市場の需給関係が崩れて2014年半ばから原油価格は60%下落した。大半のアナリストは供給過剰が2016年以降も続くと予想する。 海峡石油化工(0852.HK) のシンガポール拠点の原油責任者、Oystein Berentsen氏は「横ばいのカーブはシェールオイル・ブームに関係している。価格がわずかに上昇した途端に生産者が売り始めるため、カーブの戻りが妨げられる」と指摘する。 間違いなく最悪の状況にあるのが石炭だ。中国のエネルギー需要のほぼ3分の2を満たす石炭の価格は10年超ぶり安値圏に沈んでおり、先物価格はそれを一段と下回って低迷する。中国が重工業から脱却し、よりクリーンなエネルギー源に軸足を移すにつれ、石炭需要は低下の一途をたどっている。 そのため、米ゴールドマン・サックス(GS.N)など一部のアナリストは、現在の生産体制で将来の需要をまかなうのに十分だとして、これ以上の投資をやめるよう呼びかけている。 一方で、底入れが近いと判断した安値拾いの動きも出ている。データによると、原油と銅に関しては足元でトレーダーのロングポジション(買い持ち)が増える傾向にある。 米原油先物の非商業部門のロングポジションは5月以来の高水準にあり、ロンドン金属取引所(LME)銅先物のファンド勢のロングポジションは6月以来の高水準にある。 こうした動きの背景には、原油値下がりで燃料需要が拡大するとの予想や、中国が他の新興国のインフラ事業に進出し、金属の使用が増えるとの期待感がある。これに対し、投資銀行ジェフリーズは需要の伸び悩みは原油価格の主要な下振れリスクだと警告している。 (Gavin Maguire、Henning Gloystein記者 翻訳:長谷川晶子 編集:加藤京子) http://jp.reuters.com/article/2015/11/20/angle-comodity-risk-idJPKCN0T90VO20151120
コラム:悲観論が見落とす世界成長エンジン 村上尚己アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト [東京 20日] - 中国ショックと言われた世界株価急落直後の8月末に書いたコラムで、中国などに対する悲観論の高まりがもたらしたファンダメンタルズと市場価格の乖(かい)離が「無視できない有望な投資機会」になり得ると述べた。 その後の約1カ月は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ先送りや、資源大手企業の破たん懸念浮上といったニュースのため、市場心理は揺れ動き、リスク資産は総じて安値圏で推移した。 そして、10月初旬から米国を中心に株価が反発したが、実際には大きな材料が出たわけではなかった。9月FOMCで利上げ先送りが決まった後にリスク資産が下げたことで後講釈的に悲観論が強まり、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第4弾(QE4)発動シナリオや2016年の世界景気後退リスクが聞かれるようになっていた。 それらが「悲観への傾斜」だったことが時間の経過とともに認識され、先進国の株式市場などでは11月初旬までにほぼファンダメンタルズに相応な価格水準まで戻したとみられる。 一方で、過度な悲観が和らいだ10月から、ファンダメンタルズを映す経済指標にも改善を示すものが散見された。10月のグローバル製造業の景況感指数(PMI)は51.4と、2015年春先以来の水準まで改善した。新興国や資源分野における厳しい生産削減が夏場まで続いていたが、それが一巡しつつある。夏場に市場が不安定だった時期に、中国失速で世界景気後退に至るとささやかれ始めたが、そのとき実際には製造業循環は底入れしつつあったとみられる。 景況感指数を地域別にみると、危機の震源地とされた中国を含めたアジア諸国で持ち直しており、生産調整は一巡しつつあると考えられる。中国当局による人民元切り下げが市場の不安心理を高めたが、それはリーズナブルな政策対応で、また中国当局の経済安定化政策が機能不全に陥っていたわけではない。実際、住宅市場は底入れの兆しがみえ、個人消費は持ち直した。過剰設備を抱える同国の製造業の苦境が続く中で、政策対応と家計需要の堅調さによるサービス業のすそ野の拡大が、中国経済失速の歯止め役になっている可能性がある。 <景気判断見極めには非製造業の景況感がより重要に>
ところで、製造業の景況感や生産動向は、景気循環の動きを敏感に反映するため、景気動向全般の方向性の判断材料として有用な指標である。一方、2000年代に高成長を謳歌(おうか)した中国を中心とした新興国における2010年以降の経済成長の減速は、製造業や資源セクターなどモノの生産活動を抑制している。また、シェール革命が米国企業の生産・投資拡大を後押ししたが、このブーム終焉も製造業の生産活動の逆風になった。これらは、すう勢的にグローバルな製造業の生産活動を抑制する要因になっている。 製造業を取り巻く逆風の弊害は新興国で主に表れるが、米国にも及んでいる。米供給管理協会(ISM)による製造業・非製造業の景況感指数は、足元の景気指標の判断材料として有用で市場の注目度も高い。同サーベイの景況感において、2015年半ばから、製造業が停滞する一方で、非製造業の改善傾向が続き、両者の差が拡大した、 景気循環の観点から、景気敏感セクターである製造業で景況感の変調がまず早く表れるので、製造業と非製造業の景況感の格差は、「景気全体の失速」あるいは「景気後退」を示す1つのシグナルになる。景況感格差の広がりと景気循環の動きをシンプルに結びつければ、2015年夏場にも将来の景気後退のサインが出たことになる。ちなみに、両者の景況感指数の格差は足元で約9ポイントまで広がっているが、2000年末や2009年初頭など景気後退期にも同様の動きがみられた。 ただ、2015年の米国の製造業と非製造業の景況感格差は、両者が逆方向で動く中で拡大しており、過去2回の景気後退期とは異なっている。製造業に対しては新興国経済のブーム終焉や資源価格下落などの中期的な逆風が強まり、非製造業に対しては過去の金融緩和策が景気刺激的に作用するという順風が大きくなっている。こうした構図のなか、両者の景況格差が広がった。2015年に起きている米国の製造業と非製造業の格差は、景気循環の振幅が引き起こした側面より、製造業を取り巻く大きな環境変化が招いた側面が大きいと考えられる。 つまり、製造業の景況感指数の変化は景気判断を行う上で有用な材料だが、同セクターを取り巻く大きな逆風を踏まえると、それを景気循環の判断材料としてシンプルに利用すると景気判断を見誤りかねない。金融市場の値動きと景気循環の位置づけとの対比から投資判断を導く際には、先進国や主要新興国の小売・サービスなど非製造業の景況判断により着目する必要性が高まっているのではないか。景気循環の振幅と構造変化の影響が入り混じるので、経済指標の動きが複雑化して、それらの解釈が難しくなっているとも言える。 冒頭で述べたが、8月末の世界株価急落が「投資機会」になり得ると判断した根拠の1つに、グローバルな製造業循環は調整局面にあったものの、米国の非製造業の景況感に変調の兆しはなく、同国の国内需要の伸びが当時かなり堅調だったことが挙げられる。 米国の年内利上げ開始が濃厚になっているが、2016年にかけて米欧の総需要の底堅さが、世界経済の成長をけん引する可能性が高いと判断している。 *村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) http://jp.reuters.com/article/2015/11/20/column-naokimurakami-idJPKCN0T908X20151120 |