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日銀の現状維持
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52755891.html
2015年11月19日 在野のアナリスト
フィリピンのマニラで開かれているAPEC会合で、日米首脳会談が開かれました。米国がどこよりも長く時間を割いたのは、米外交が行き詰っているからでもあります。ISILの対応では露国と手を組みましたが、アサド政権の存続で一致したわけではないでしょう。そうなると、ISILをつぶした後はアサド政権と、反政府組織との戦争になる。新たな米露代理戦争の構図にもどるだけです。どの国もテロを恐れて突出することを避ける一方、ニワカ同盟でお茶を濁しているに過ぎません。
当初、オバマ政権は親中路線をとり、助長をゆるしてしまった。今、中国の封じこめに転じてみれば日本を巻きこんで、圧力を日米で分かち合おうとする。外交の失敗のツケを日本に押し付けるため、の友好です。会談後の記者会見で、安倍首相が語るときに厳しい目で見つめていたオバマ大統領。友人を温かく見守る、という目ではなく、余計なコトを言わないか、監視する目つきでした。この辺りに想いのすれ違いが顕著に現れます。安倍氏がぽろっと日米同盟を「利用する…」と口をすべらせましたが、こうした点、双方が利用するということだけが一致したのでしょう。
日銀が金融政策決定会合を開き、現状維持を決めました。わずかな変化としては、各種指標で予想物価上昇率が「弱含んでいる」とみとめた。また黒田総裁は16年度後半に予定通り物価が2%に達しても「もう少し緩和状態がのびても」問題ない、としました。一方で財務に影響があったとしても「追加緩和しないことはない」と、あくまで目標達成を最優先としましたが、非常に危険なことです。欧州債務危機でもそうだったように、危機とみなされればどんな対策も通用しなくなる。逆にいえば、市場に不安が生じる前に勝負を決しなければならないのに、財務への影響に懸念が出ても…という認識を総裁がもつことは、リスクに歯止めが利かないと示した形にもなります。
CPIが0%でも金融緩和の効果が出ていないということでは「全くない」と強く否定しましたが、否定せざるを得ないほど効果が出ていない、ということでもあります。すでに3年半もやって、効果が出ないものを続ける、拡大する、などという行動に正当性がないのは論を待つ必要がないほどです。さらに引当金制度の導入を公表したように、日銀は出口に向かっている、との認識を市場も強めています。もう効果がないのだから止めるべき、と考える人も多いのです。
市場関係者の間でも追加緩和のタイミングは来年の4月以降、との予想が増えています。しかしだからこそ、12月に追加緩和をすればサプライズ効果がでる、との話もあります。日銀は間違え続けているのだから、今回とて間違えないはずがない、という根拠のない話すら吹聴されるほど。今や日銀は、相場に変動を与える要因としかみられていない。仮に追加緩和をしても、以前ほどに相場を上昇させる力はなく、ふたたび円安、輸出企業の業績改善、という経路だけなら、早晩その効果が剥落することが確実です。なぜなら上積みにしかなっていない、全体へ波及しないからです。
今日の相場も、日米合弁系の強い買いで支えられる一方、朝高後に上値の重さを意識させました。中国が貸出金利を引き下げましたが、中国の景気の弱さをより強く印象づけます。米国は利上げを『米景気は強い』と好感して上昇しましたが、楽観市場だからこその解釈です。日銀が追加緩和をするようだと、今後は日本経済の弱さ、を意識させるのかもしれません。2四半期連続のマイナス成長、リセッション入りを強く意識させる日本が打つ追加緩和、今後はマイナス面を強く意識させる局面も出てくるのかもしれませんね。
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