3. 2015年11月19日 21:54:21
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焦点:日銀、原油安背景の追加緩和に距離 期待・賃上げに波及警戒[東京 19日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は19日の会見で、足元で原油価格が大きく下落し、物価への下押し圧力が強まる中、原油安を背景とした追加金融緩和にあらためて距離を置く姿勢を示した。ただ、原油安が背景とはいえ、実際の物価が低迷を続ければ日銀が重視するインフレ期待や来年の賃上げに影響する可能性がある。金融政策は綱渡りの展開が続きそうだ。 日銀は10月30日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、ドバイ原油価格を前提を、それまでの足元1バレル60ドル、先行き同70ドル程度から、足元同50ドル、先行き同60ドル台前半に引き下げた。 これに伴って2015、16年度の消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しを大きく下方修正。目標とする物価2%の達成時期を16年度後半に先送りしたが、「後ずれの一番大きな要因は原油。物価の基調は着実に改善している」(同日の黒田総裁会見)として追加緩和を見送った。 しかし、その後も原油価格は下げ止まらず、足元のドバイ原油価格は一時40ドル割れまで下落。変動の激しい原油価格の先行きは見通しづらいが、仮に低迷が続けば、さらなるコアCPI見通しの下方修正と物価2%達成時期の後ずれは避けられない。 総裁は会見で、足元の原油安と物価2%の達成時期との関係を問われ、「(原油価格は)かなり振れている。どうなるかは長い目でその時点で考えればいい」とし、「直ちに足元の価格で到達時期が後ずれすると決める必要はない」と強調。次に経済・物価の見通しを示す来年1月の展望リポートまで、原油価格動向を見極めていく姿勢をにじませた。 総裁がある程度の余裕を持って原油安に対応していく姿勢を示した背景には、最近のドバイ原油下落の背景には供給要因が大きいと見ている点がありそうだ。 中国を中心とした新興国経済の減速が背景との見方も根強いが、総裁は会見で中国の原油輸入量が着実に伸びていることに触れ、「中国が輸入を減らしてドバイなどに影響しているというのは、あまり当たっていない」と指摘。 一方、「イランその他からの供給が増えるのではないかという見方もだいぶ出ていて、供給面から下がっているかもしれない」とし、中国経済減速などを中心とした需要要因との指摘に懐疑的な見方を示した。 もっとも、原油安が短期的な物価の下押し圧力になるのは事実。日銀は19日の会合後に公表した声明で、インフレ期待について「やや長い目でみれば、全体として上昇している」との判断を維持しながらも、「このところ弱めの指標もみられている」との表現を新たに盛り込んだ。 低調な推移が続くブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)や4日に内閣府が公表した10月の消費動向調査において、家計の物価上昇見通しが減少したことなどが理由とみられる。 特に消費動向調査はガソリン価格の動向に反応しやすいともいわれており、最近の原油安がインフレ期待の低下につながっている可能性がある。 また、日銀が持続的な物価上昇の実現に向けて最も重視している来年の賃上げについても、中国など世界経済に対する不透明感が払しょくされていない状況下、コアCPIの低迷が企業による賃上げ抑制の材料にもなりかねない。 実際の物価と賃上げの関連について、総裁は「足元で(物価が)ゼロ%程度で推移していることは、今後の物価、賃金に何らかの影響を与えている可能性はある」としながらも、企業の価格設定行動の変化を中心に物価の基調は着実に改善していると述べ、「足元でCPIがゼロ程度になっていることが、来年の春闘に決定的に効くとは考えていない」との認識を示した。 日銀は、原油安を背景とした物価下振れへの政策対応に距離感を示しながらも、そのインフレ期待への影響など2次的波及効果を常に警戒している。 原油安は交易条件の改善による実質所得の増加で中長期的に日本経済に恩恵をもたらすが、日銀にとって当面は短期的な物価下押し圧力とインフレ期待への影響を注視していくことになりそうだ。 (伊藤純夫 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/2015/11/19/analysis-boj-meeting-idJPKCN0T817320151119
コラム:日銀が追加緩和に動かない理由 佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長 [東京 19日] - 日銀は大方の予想通り、今回も金融政策を据え置いた。その決定を受けて円が買われているのを見ると、一部には追加緩和期待から円の売り持ちポジションを造成していた向きがいたのかもしれない。 過去2週間ほど円は主要通貨の中で比較的弱い通貨だったが、これは日銀の追加緩和に対する期待による円売りが要因となっていた可能性がある。 実際、一部海外投資家の日銀に対する追加緩和期待は強い。もちろん、真剣に日本経済のことを思い追加緩和が必要と考え、日銀は今こそ動くべきだとの意見も多い。しかし、中には、ここまで円安・株高を演出してきた海外投資家にそっぽを向かれないように追加緩和を行う必要があるのではないか、などという意見まで聞かれることもある。 金融政策は、日本経済全体や日本に住んで円という通貨を使っている人々の生活安定のために行われるのであって、誰かのポジションのために行われるものではないだろう。 日銀は昨年10月の追加緩和以降、1年間にわたり政策変更を行っていない。中には、日銀はこの1年間何もやっていないと批判する向きもいるかもしれない。しかし、今年に入って以降、日銀は政府が発行した120.3兆円の長期国債のうち97.8兆円を購入している。日銀のバランスシート規模は昨年10月時点では対国内総生産(GDP)比58%だったが、今年10月末時点では75%まで拡大している。 また、日銀は昨年11月以降の1年間で2兆9760億円分の上場投資信託(ETF)を購入している。つまり、日銀は量的質的緩和政策を今でも続けている。中央銀行のバランスシート規模を大きくすることが本当に金融緩和になるなら、緩和度合いは今でも膨らんでいることになる。 <黒田総裁「グローバルスタンダード」発言の真意> 筆者は、日銀の追加緩和はしばらくないと見ている。根拠の1つは、他でもない、日銀が2%の物価上昇を目指す理由だ。黒田日銀総裁は昨年3月の講演の中で2%の物価上昇を目指す理由の1つとして、「グローバルスタンダード」を挙げている。つまり、主要国の多くが2%の物価上昇率を目指しているから、日銀も同じ程度の物価上昇を目指すということである。 これは単なる人まねではなく、円相場を安定させるという狙いがあると考えられる。ドル円相場が長期的には円高方向へのトレンドを続けていたのは、日本のインフレ率が平均的に米国のインフレ率を下回っていたからだ。デフレとは、物の価格が下がることを意味するが、同時に通貨の価値が上昇していることを意味する。インフレはその逆に物の価格が上がることを意味するが、同時に通貨の価値が下落していることを意味する。 もし日本と米国のインフレ率の長期的な平均値に差がなくなれば、ドル円相場はあるレベルを中心に上下動するだけで、長期的な方向性を持たなくなる。ドル円相場が長期的に見て、60円台まで下落してしまうとか、180円台まで上昇してしまうとか、心配する必要はなくなる。 ちなみに、ユーロドル相場は長期的に見ても方向感を持たず、おおむね1.12ドル近辺を中心に上下動しているだけだ。これは米国とユーロ圏のインフレ率の長期平均に差がほとんどないからである。つまり、日銀も米連邦準備理事会(FRB)も平均的なインフレ率を2%程度にすることができれば、ドル円相場は短期的には大きく上下動するかもしれないが、長期的に水準を変えて行くようなトレンドは持たなくなる。 黒田総裁および日銀が、このように各国のインフレ率を横目で見ながら金融政策を行っているのであれば、今は2%のインフレ率達成を焦る必要はないと考えるかもしれない。なぜなら、米国、ユーロ圏、英国、スウェーデンなど主要国の多くの消費者物価指数は足元で前年比0.0%近辺にあるからだ。 現状、主要国で前年比2%を達成している国はノルウェーしかない。また、日銀が最近好んで参照している、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数、つまり米国のコアと同じベースで見ると、前年比プラス1.2%となっている。これは米国の前年比プラス1.9%よりは低い水準だが、ユーロ圏、英国、スウェーデン、スイスよりは高い上昇率だ。日本のインフレ率は、現状でおおむね他の先進国の平均的な水準にある。こうした環境が長期的に続くのであれば、円相場は総じて安定するはずである。 <賃金上昇率は日銀緩和では上向かない> もっとも、その他主要国のインフレ率が日本と同じ低水準を今後も続けるかどうかは、ここから数カ月が見極めどころになる。仮に原油価格が現状程度で推移すると仮定すると、原油価格の前年比マイナス幅は今年末から来年初めにかけて急速に縮小することになる。 日本の消費者物価指数の中で、エネルギー価格の前年比は9月時点でマイナス12.1%だが、仮にエネルギー価格の水準が変わらないとすれば、来年1月には前年比マイナス幅は6%台まで低下する。他主要国では、エネルギー価格のマイナス寄与が小さくなるにつれて全体の消費者物価指数が上昇してくるだろう。その時、日本でも同様に上昇してくるかどうかが注目される。 さて、日銀はなぜ追加緩和をしないかという点に話を戻そう。今の時点で、追加緩和を行うことによってインフレ率押し上げを進めないもう1つの理由も、黒田総裁は昨年3月の講演で触れている。総裁は当時、「賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらないことだ」と述べて、目指すべきは「賃金も物価も緩やかに上がる世界」と指摘した。 しかし、実際には賃金の上昇はやや鈍い。前述したように生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数は前年比プラス1.2%上昇しているが、賃金の上昇率は0.5%前後にとどまっている。ここからインフレ率をいたずらに上昇させてしまうと、実質的な賃金の伸びがマイナスとなってしまう可能性がある。 国内経済政策の焦点は今や日銀の金融政策から、企業行動の方にシフトしており、必要な対策は財政・税制対策になってきていると考えられる。日銀が追加緩和をしても、企業が雇用者に支払う給料を増やすとは思えない。 世界経済を取り巻く環境は常に変化している。以前成功した政策が今でも成功するとは限らない。日銀は世界経済情勢の変化を眺めながら、今までとは異なる有効な手段を考えているのかもしれないし、今は動かないことが得策と考えているのかもしれない。 *佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) *本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。 http://jp.reuters.com/article/2015/11/19/column-torusasaki-idJPKCN0T80TS20151119 UPDATE 2-物価2%目標、早期達成のコミットメントは不変=日銀総裁 (内容を追加しました)
[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で、2%の物価目標を「2年程度を念頭にできるだけ早期に達成するコミットメント(約束)に変わりはない」と述べた。原油価格が急落しているが「目標達成が後ずれると今から決める必要はない」と反論した。 日銀は10月末の会合で、目標達成時期を2016年度前半から後半に延期。一方、政策運営の目安である消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)が前年比でマイナスにもかかわらず、追加緩和を見送った。市場関係者の間では、日銀が「毎回の会合から2年程度の期間で目標達成が見通せればよい、とする政策運営にシフトした」との観測も出ていたが、総裁はこれを否定、早期目標達成の意志を示した。 もっとも「量的・質的緩和(QQE)」がスタートした2013年4月からすでに2年半が経過しており、現時点でメドとしている16年度後半に2%が実現しても、のべ3年半だ。総裁は、当初から「2年の期間しか緩和を継続するとは言っていない」「期限を区切った政策でなく、物価目標を実現するまで継続する政策だ」と指摘し、緩和を続ける期間よりも実現できるまで継続する重要性を強調した。 原油価格の下落が11月に入り加速し、日銀が指標とするドバイ産は足元40ドルと10月末時点の日銀想定(50ドル)から大幅に下振れている。総裁は「目標達成時期は原油価格で左右される」と述べ、16年度後半からのさらなる延期の可能性を否定しなかった。同時に、原油価格が「足もとで振れているから直ちに2%達成時期が後ずれると今から決める必要はない」と述べた。また、中国の原油輸入増を指摘し、原油下落は供給要因だと強調した。 今回の声明文で予想物価上昇率について「弱めの指標もみられている」と記載した理由は、「アンケート調査やBEI(市場の物価観、ブレーク・イーブン・インフレ率)などに弱含んだ動きがみられるため」と説明。食料や日用品の値上げを取り上げ、「長い目でみれば予想物価上昇率は全体として上昇している」とした。 また、足元のコアCPIがゼロ%にとどまっていることが「春闘に決定的に効くとは考えていない」と述べ、積極的な賃上げに期待を示した。 <同時テロ影響限定的、マイナス金利は緩和効果> 国債買い入れの限界論や日銀の財務懸念、金融システムへの悪影響などQQE継続に伴う問題については、「(いずれでも)問題が生じることはない」と否定した。物価がゼロ%でも中央銀行の金融緩和の「効果が出ていないということでは全くない」とも述べた。 また、ドル資金の調達コストの上昇により海外投資家による短期国債需要が増大し、短期国債の金利のマイナス幅が拡大しているが、この点は「QQEの効果が相当効いているということ。現時点で特に問題があるとは感じていない」と指摘。 邦銀のドル資金調達についても「特段の問題は見られず、一定期間混乱しても十分な流動性準備を確保している」と語った。 さらに、パリの同時多発攻撃に関しては「欧州の金融市場が平静を保っている」ことなどを根拠に、世界経済や日本経済への影響は「現時点で限定的」と判断。「世界経済、日本経済に下方リスクをもたらす恐れがないか今後注視する」との考えも示した。 日銀は13日、金利上昇などによる将来の収益減少に備え引当金制度を導入するとの方針を公表したが、「緩和からの出口とは関係がない」と述べた。 (竹本能文、伊藤純夫) http://jp.reuters.com/article/2015/11/19/idJPL3N13E2PH20151119?rpc=223 コラム:16年は予想外の市場変動も、円高なら「日銀の出番」 田巻 一彦 [東京 19日 ロイター] - 2016年は、「利上げ」の米国と「緩和強化」のユーロ圏という構図の中で、予想外の市場変動シナリオが現実化する可能性がある。 ドル高を背景に米国のデフレ圧力が高まり、景気回復シナリオの挫折が予想され始めた時、日本は円高に直面している可能性がある。そこで「日銀の出番」という展開がありそうだ。 <逆方向の米欧金融政策、最大のリスク要因に> 米欧の金融政策の方向性が、全く逆方向というあまり前例のない展開が、これから始まろうとしている。12月米利上げを前に、すでにドル指数.DXYは今月18日に7カ月ぶり高値を付け、さらに上伸すれば12年ぶりの高値を記録するところまで来ている。 一方、ユーロはパリ同時攻撃後も対ドルで急落せずに1.07ドル付近で推移している。だが、欧州中銀(ECB)が12月に追加緩和すれば、1ユーロ=1ドルに接近するとの観測も浮上。これからユーロ安/ドル高が加速しやすい構図になるとの見方が、市場で急速に広がりをみせている。 だが、ドル建ての進展は、世界各国に進出している米企業の採算を悪化させ、米株式市場に大きな重荷としてのしかかることになるだろう。 また、国内景気の停滞による過剰生産の調整を狙い、中国企業が安値輸出の攻勢をかけてくることも予想される。 さらに中国など新興国の景気減速でコモディティ価格が大幅に下げており、特に銅や亜鉛、ニッケルなどの国際価格は前年比20─40%のマイナスとなっている。 ドル高と低価格の輸入品、コモディティ価格の下落が米国の物価押し下げ要因となって表面化するリスクがある。 <唯一の米国エンジン停止なら、リスクオフに> 堅調な個人消費を核に、住宅投資の活発さが維持できればいいが、上記のようなデフレの波が相次いで米国に及んできた場合、景気減速と物価停滞がダブルで表面化することになりかねない。 マーケットがその予兆をつかみ出すと、「リスクオン」心理は急速に後退し、「リスクオフ」心理が株式市場を圧迫すると予想される。 来年のどこかでこうした事態に直面すると、世界経済をけん引してきたのが米国だけという構図が響き、エンジンの停止した船のようになりかねない。 今はだれも予想できないことだが、世界景気が急減速するリスクは、それほど小さくはないと指摘したい。 その際に日本で何が起きているのか──。リスクオフによる円高と株安の再来という展開があり得そうだ。 <円高転換リスクで、日銀バズーカ発射か> ここで今年12月以降の日本の動向を予想してみると、米利上げ後もリスクオンが続いている市場では、ユーロ安/円高の引力よりも、ドル高/円安が力強く、円はジワリと安くなっているのではないか。 日本株は円安を好感し、日経平均.N225は2万円を突破する勢いになっていてもおかしくない。 だが、海外市場でリスクオフへの転換が起きた途端、円は急速に買い戻され、それにつれて株安が進む展開になるだろう。 日銀は円安/株高が進んでいる間は、量的・質的金融緩和(QQE)政策の効果を確認しつつ、政策を維持しているシナリオを進んでいると考える。「2%を目指す」という黒田東彦総裁への市場の信認は維持され、勢いは緩やかながら、景気の前向きの循環メカニズムは働いているからだ。 ところが、為替市場に円高圧力がのしかかってくれば、事態は急変する。企業と個人の心理は悪化し、安倍晋三内閣が景気の「体温計」として重視してきた株価が下げ幅を拡大する公算が大きくなる。 日銀はここで、思い切った追加緩和策を打って、デフレへの「逆戻り」現象を阻止しようとするだろう。 言い換えれば、ドル/円が小幅の円安や現状維持ならQQE政策も維持する判断を下すが、円高になれば「ちゅうちょなく」追加緩和に踏み切るという展開が予想される。 19日の会見で、黒田総裁は米利上げのペースがゆっくりしたものになると米連邦準備理事会(FRB)関係者が発言していることに言及し「私もそう思っている」と述べた。 黒田総裁の想定通りに極めて緩やかな利上げを織り込んで、ドルの上昇が緩慢であれば、これまで予想してきたような「動乱的」市場変動は回避できる可能性が高まる。 しかし、先読みを身上とする市場関係者が、ドル高方向に傾斜する可能性は捨てきれない。 2016年の日銀の政策スタンスは、為替市場の動向で大きく変わることになるだろう。 http://jp.reuters.com/article/2015/11/19/boj-yen-column-idJPKCN0T80TP20151119 日銀総裁会見:識者はこうみる [東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日の金融政策決定会合後の記者会見で、2%の物価目標を「2年程度を念頭にできるだけ早期に達成するコミットメント(必達目標・約束)に変わりはない」と述べた。市場関係者の見方は以下の通り。 <三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアマーケットエコノミスト 六車治美氏> 日銀は、予想物価上昇率について、弱めの指標が見られていると判断を引き下げた。黒田東彦総裁は会見で、アンケート調査やBEIなどの弱含みを素直に認めたが、全体として予想物価上昇率は上昇しているとの判断を変える必要はないとの認識を示し、苦しい弁明となった。日銀としては、前回の会合で物価目標2%の達成時期を後ずれさせたことで、現実に即した表現に変えたのだろう。 また、賃金上昇率について、総裁はやや鈍いという感は否めないと述べ、来年の春闘が重要であることを強調した。春闘で賃上げが伸びなかった場合、金融政策において手詰まり感があるのではないか。 黒田総裁の会見内容を踏まえると、日銀は当面の金融政策について様子見のスタンスだろう。下振れリスクが顕在化し、株安・円高が進行すれば動くかもしれないが、その局面まで追加緩和のカードは温存したいのではないか。 <いちよしアセットマネジメント 執行役員 秋野充成氏> 日銀は市場の期待感を引き延ばしつつ、可能な限りベストなタイミングで追加緩和を実施したいと考えているはず。そのため、強気な見方を維持しながら、必要があれば緩和するという従来のスタンスを押し通すしかない。年内は12月の会合のみだが、すぐに景況感が悪化するとも思えず、足元の株価や為替の水準を考慮すれば、緩和に踏み切るのは難しいだろう。 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFX/EMストラテジスト 棚瀬順哉氏> 日銀が従来から心配しているインフレ期待や賃金上昇について、思ったより弱い状況であるにもかかわらず好循環が続くとの見通しを維持したことなどをみても、きょうの決定会合・総裁会見から、早期緩和を示唆するような内容は出てこなかった。 JPモルガンとしては、来年11月まで日銀は追加緩和を実施しないとの見方を変えていない。 決定会合で現状維持が伝わった後、ドル/円相場が円高に振れたことについては、米連邦準備理事会(FRB)の要人発言や米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を受けて、ドル・ロングが積み上がっていたことが背景だとみている。 しかし、12月利上げをあらためて織り込む形での米金利上昇やドル買いは、そろそろ苦しくなってきているようだ。 現行水準からドルが一段高になるためには、12月米利上げ以降、来年も速いペースの利上げが実施されるとの思惑など、新たな材料が必要だとみられる。 http://jp.reuters.com/article/2015/11/19/boj-market-angle-idJPKCN0T80WG20151119
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