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認知症老人「1000万人」社会の衝撃〜まもなく日本が迎える超異常事態。そのとき何が起きるのか?医療も介護も年金も、ぜんぶ吹っ飛ぶ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46359
2015年11月18日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
全国民の10人に1人が認知症。町を歩けば、認知症の人を見かけない日はない——日本は間もなく、そして確実に、そういう国になる。その時になって「想定外だ」と嘆いても、もはや手遅れなのだ。
■もう手の打ちようがない
2025年、日本の認知症患者・認知症予備軍の数は合計1000万人を突破する——。65歳以上の3人に1人、全国民の約10人に1人がボケるという、人類の歴史でも例を見ない事態が、10年後に迫っている。
元大蔵省主計官で、政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏が警告する。
「残念ながら、日本の人口が2060年頃まで減り続けること、そして現役世代と65歳以上の高齢者の人口比率が限りなく『1対1』に近づくことは、現在の人口構成から確定しています。特効薬が開発されない限りは、認知症の高齢者も確実に増え続けるでしょう。
10人に1人が認知症ともなれば、現在のような高い水準の介護・医療サービスをすべての人に行きわたらせることは、とうてい不可能と言わざるを得ません。
財政破綻を避け、なおかつ現状の社会保障を維持しようとすると、現役世代の収入を9割以上召し上げなければならないからです」
日本はこの瞬間にも、未曾有の「認知症『超』大国」への道を突き進んでいる。
そして、日本中に認知症の高齢者が溢れるころには、現行の医療・介護制度、そして年金制度も間違いなく崩壊している。認めたくはないが、それが現実だ。
2025年には、団塊の世代800万人が75歳を超え、後期高齢者となる。そしてその子供たち、いわゆる「団塊ジュニア」——就職氷河期に直面し、非正規雇用の割合が約20%に達する、今の40代——が、介護する側になる。
医療・介護の負担は重くなる一方、それを支える経済力は、ますます細ってゆく。
■政治家も厚労省も無責任
しかし、政治家も官僚も何ら具体的な策を立てられず、「自分が任期中に責任を問われなければそれでいい」と、知らんふりを決め込むばかり。厚生労働省関係者が話す。
「政治家は、認知症や高齢化の問題に『オレの知ったことか』『票にならない』と言って、誰もまともに取り組もうとしない。
一方で厚労官僚は、『将来のことを考えるのは政治家の仕事』『われわれは、目先の課題をこなすだけ』と、責任を押し付け合っています。どちらも内心では、『もう、どうすることもできない』と気が付いているのです。
厚労省は今年初めに『新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)』を発表しましたが、そこでも『では、誰がいつ何をやるのか』ということは明確になっていない」
認知症の激増が、数年以内に社会問題になることは明らかだ。しかし、これに対応するための政府機関はいまだになく、認知症のためのセーフティネット作りも、地方自治体の自主努力に頼っているのが現状である。
一方で政府は、今年6月に「2025年までに、全国の病院の病床数を、最大で今よりも約20万床減らす」という方針を掲げた。ただでさえ介護施設の数が足りない中で、「認知症が重い高齢者は出て行ってもらう」という施設も増えてきている。
「これからは、認知症老人の面倒は、家族が自宅で見るのが当たり前。カネがないなら、尚更だ」——政府は、暗にそう言いたいのである。
■「認認介護」が急増する
世の中全体が、認知症老人の面倒を見きれなくなったとき、何が起こるのか。
間違いなく急増するのが、夫婦の片方が認知症になった後、介護にあたっていた夫や妻まで認知症を発症し、しかも誰もそのことに気付かないという「隠れ認認介護」世帯である。神奈川県・川崎幸クリニックの杉山孝博院長が言う。
「すでに『認認介護』の問題は顕在化しつつあります。80歳前後の認知症発症率はおよそ20%なので、夫婦ともに認知症になる割合は単純計算で8%。現在でも、少なくとも11組に1組の夫婦が、ともに認知症ということになります。
夫婦で認知症の進み具合が大きく違う場合は、訪問看護師が服薬管理などのサポートをすれば、症状の軽いほうが介護することはできます。
しかし、片方が食事をとれない状態だったり、痰の吸引などの医療行為が必要な場合、または暴力をふるうといった症状があるときは、介護が成り立たなくなってしまうことも少なくありません」
■暴走する「認知症ドライバー」
離れて暮らす子供が仕事に忙しいと、発覚が遅れてしまう。また、認知症になりかけている、いわゆる「まだらボケ」状態の患者には、自分が認知症になったことを受け入れられない人もいる。本人が電話口では「大丈夫だから」と言っていても、実際に会ってみるとボケていた、というケースは珍しくない。
東京都内に住む佐藤徹郎さん(58歳・仮名)は、半年前から関西の実家との往復生活を送っている。数年前に佐藤さんの母親が脳卒中で倒れて以来、父親がその介護にあたってきたが、今度は父親が認知症を発症したからだ。
佐藤さんは昨年末に帰省した際、父親の様子がおかしいことに気付いた。
「父は当初『オレはボケてない』『大丈夫だ』と言っていました。でも、家事を終えて東京に戻った私に、何度も電話してくるんです。『財布はどこだっけ』とか、『今日はどこに行くんだっけ』と、他愛もない内容が多いんですが……。かかってくるたび、心配になりますね。
今は2週間に1回実家へ行き、洗濯や掃除を済ませ、作りおきの料理を作って帰る生活ですが、私自身も体調が万全というわけではないので、率直に言って辛いです。かといって、自分と妻の生活を考えると、仕事を辞めるわけにもいきません。
施設に入ってもらうことはもちろん考えています。でも、母の医療費もかかりますし、何より父自身にまだ『自分は認知症だ』という自覚が薄いんです。しばらくは、この暮らしを続けるしかないと思っています」
ましてや、子供がいない夫婦や、ひとり暮らしの高齢者が認知症になった場合には、自治体の係員やヘルパーなどが自宅を訪れないかぎり、誰も気付かないまま放置されてしまう。街を徘徊しても探す人はおらず、万引きや傷害といった事件、自動車事故などを起こして、ようやく認知症と分かる——そんな事態がすでに起こり始めている。
10月28日、宮崎市内で73歳の認知症患者の男性が車を暴走させ、7人が死傷した事故は記憶に新しい。この男性は妻と2人で暮らしていたが、妻も「夫の運転が危険だとは思っていなかった」というから驚かされる。埼玉県で働く、あるケアマネジャーが話す。
「宮崎の事故は他人事ではないので、怖くなりました。私が担当している認知症の方にも、車の運転を続けている人が少なくありませんから。
お世話をしている認知症の方が、スーパーマーケットの駐車場で隣の車にぶつけて、連絡をもらうことはよくあります。路上でも、決してスピードを出しているわけではなくても信号無視をしてしまったり、歩行者に気を取られて電柱にぶつかるなど、大事故につながりかねないトラブルがしょっちゅう起きています。
でも、ご家族が免許を取り上げようとすると、怒る方が多いんです。そういう方は『運転には自信がある』と必ずおっしゃる。放置していたら危ないからと、自宅から離れた駐車場に車を置くようにしたご家族がいましたが、本人にばれて大ゲンカになっていました」
たとえ家族が説得して、運転免許を返納したとしても、そもそも認知症だと「自分はもう免許を持っていない」ということ自体を忘れてしまう。
かくして、街には道路を蛇行し、逆走し、暴走する「認知症ドライバー」が解き放たれる。65歳以上の免許保有者数は、'13年末時点で約1534万人だが、2025年には約2824万人と、ほぼ倍増する見通しだ。免許返納の義務付けなどが実施されない限りは、事故の数も同じく倍になる。
■介護士が「徴兵」される日
10年後の日本では、すでに国民のおよそ3人に1人が65歳以上である。
ファミリーレストランでは認知症の客を高齢者店員がもてなし、コンビニのレジにも高齢者と外国人ばかり。電車の座席は半分が優先席に変わり、スーパーやデパートでは迷子放送ではなく「認知症放送」が日常茶飯事になる。
認知症高齢者の資産を狙って、詐欺だけでなく誘拐事件も多発するはずだ。昨年1年間でも、認知症が原因で行方不明になったとみられる人の数は1万783人にのぼっている。
また今月3日には、宮城県仙台市で78歳の男性がヘルパーの60代女性を果物ナイフで切りつけ、殺人未遂の疑いで逮捕された。動機は「食事にラップをかけられたから」だった。都内の有料老人ホームに勤めるヘルパーは、あまり語られることのない介護現場のトラブルについてこう話す。
「実は、最も大変なのが認知症になり始めた軽症のときです。男性の入所者の場合、体重も腕力もあるので男性のヘルパーをつけるのですが、『女性のヘルパーがいい』と嫌がって暴れる方が少なくありません。
周囲の人を殴ったり、認知症が進んだ人を『このクズ』とか『バカ野郎が』などと罵る人や、中には他の入所者の持ち物を盗んでしまう人もいて、ある程度は仕方がないことだと分かっていても閉口します。
一方で、最近は入所者のご家族にも『自分らしい暮らしをさせてやってください』とか『囲碁が好きなので、なるべく相手をしてあげて』といった注文をつける方が増えているように感じます。
でも実際には、『介護サービス』とはいっても人間同士ですから、なかなか心を開いてくれない入所者もいる。介護士の側も、熟練度はバラバラですし、皆が皆、聖人君子ではありません。トラブルは増える一方です」
こうした苦労に加えて、介護の現場は低賃金と人手不足にも常に悩まされている。現在、福祉施設職員の平均月収は手取りで21万円前後と、一般平均の32万円を10万円以上も下回るという。神奈川県・汐田総合病院の宮澤由美医師が話す。
「私が知っている介護職員には、『実家暮らしだから何とかなっているけれど、今の収入では結婚と子育てはムリ』という人が多い。仕事の内容に見合わない低賃金なのです。看護師や理学療法士の資格をとって転職するために、勉強している人の話も耳にします。
『本来なら、家族がやるべき仕事だ』とか『医師や看護師のような専門技術を持っていない』といった、介護職に対する世間の偏見が根強いことも問題です。人手不足は深刻で、政府は2025年に253万人の介護職員が必要になると推計していますが、このままだとおよそ38万人も不足するといわれています」
慶應義塾大学の佐渡充洋助教と厚生労働省の試算によれば、昨年の時点で認知症の介護・医療費、家族の負担といった「社会的費用」は年間14・5兆円にのぼっている。2025年には、その額は20兆円近くに膨らむ見通しだ。
認知症対策に使われる国家予算があまりに膨大になれば、「認知症の高齢者に、そこまでしてカネをつぎ込む必要があるのか」という議論も今後は起こりかねない。
誰を切り捨て、誰を助けるのか。それとも、全員で一緒に滅ぶのか——年金の原資が吹っ飛ぶかどうかの瀬戸際に追い込まれれば、全国民が見て見ぬふりを続けてきた、まさに「パンドラの箱」が開く。
こんな空恐ろしい事実もある。政府は、「経済財政の中長期試算」を2023年分までしか発表していないのだ。
もし政府が、2025年前後に「社会保障制度が立ち行かなくなり、日本は財政破綻する」と予期しているのだとしたら。日本はその頃、徴兵制ならぬ「徴介護制」もやむを得ないような状況に追い込まれているかもしれない。
■介護離職者も数十万人に
'00年に介護保険制度が導入された後、福祉・介護分野へ乗り込んだ民間企業は数多かった。しかし、大手のコムスンやワタミは不祥事などもあり撤退。倒産に追い込まれる事業者も増える一方だ。
「介護は、モノを作って売るといった事業とは勝手が違いますし、どんどん儲かるというわけでもありません。営利企業が参入しても、なかなかうまくいかないのが実情です」(前出・宮澤氏)
認知症の高齢者はどんどん増えるのに、介護の担い手はまったく足りない。にもかかわらず、安倍総理は今年9月「2020年代初頭までに、介護離職ゼロを目指す」という目標をぶち上げた。厳しい現実と、明らかに食い違った目標だ。
総理の発言と反対に、これから2025年までの間、介護離職の増加が大問題となるのは間違いない。総務省の調べによると、その数はすでに年間10万人に達している。10年後には数十万人になるだろう。
働かないと、生活が立ち行かない。しかし、自分が介護するしかない——こう悩む人も、認知症の高齢者と同じ数だけ増える。
「今後数十年間、現役世代の人口が増えることはありません。一人一人の収入が大幅に増えるということもないでしょう。
それなのに、いきなり『もう国は面倒を見きれないから、認知症は家族で何とかしてくれ』と言われて、対応できる人がどれだけいるでしょうか。まずは現役世代の所得水準を上げることが必要なはずです」(前出・松谷氏)
現役世代の活力と生産力が介護に食われ、経済のパイが縮み、社会保障の財源となる税収はますます減る。日本はもう、そんな負のスパイラルに片足を突っ込んでいる。
十分な介護を受けられない認知症の高齢者が、町に溢れる日があと10年でやってくる。日本人は「座して死を待つ」しかないのか。
「週刊現代」2015年11月21日号より
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