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銀行・証券会社が、高齢者の金融資産を勝手に売買し巨額損失を与える被害が蔓延
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151116-00010002-bjournal-soci
Business Journal 11月16日(月)22時31分配信
●ご両親のお金を「真面目な金融マン」から守ってください
先日、ある講演会に講師として招かれた際に、別の講師から控え室で聞いた話に考えさせられた。この方は、もともとは日系大手証券会社の投資調査部門の出身者で、長く外資系証券会社に勤めて、その後に独立された方で、筆者よりも少し年上だ。
彼のご両親は、その日系大手証券に証券口座を開いて、国債を購入していたのだという。ところが最近、彼が両親の証券取引口座の中身を見ると、高齢者に必要だとも理解が可能だとも思えない手数料の高い投資信託が何本も並んでおり、しかも勝手に売買されていたようだという。ご両親は、息子が以前勤めていた会社でもあり、担当者を信頼していたのだろう。取引口座の中にある商品については、詳しく理解していない様子だったという。
他方、近年はコンプライアンス(法令遵守)がうるさいので、証券会社の担当者は顧客がリスクの説明を受けて納得したことや、手持ちの投資信託を売却して別の投資信託に「乗り換える」売買が顧客の自発的な意思に基づくこと等に関して、顧客自身による署名と捺印のある書類を整える等の手続きを十分踏んでいたことだろう。つまり、売買は証券会社側で勝手に行われていたようなのだが、あとから訴訟に及んでも、投資家側に勝ち目はないだろう。
その講演会の講師は結局、両親の口座の商品をすべて換金して資金を引き出し、取引口座を解約したのだという。自分のいわば古巣に対して、複雑な感情を抱いたであろうことは想像に難くない。
実は、筆者の父親は今年89歳で、もう金融的な判断を自分で行うことは難しいが、先日介護施設に入った彼の証券取引口座の明細を見ると、残高の4分の1くらいが「通貨選択型」と呼ばれる毎月分配型の手数料の高い投資信託で占められていた。息子である筆者が、「これを買ってはいけない」「持っていたらすぐに解約して構わない」と日頃から言っている商品を、彼が中身まで理解して買ったのだとは思わないが、今よりももう少し元気だった頃に証券会社の担当者に勧められて「付き合って」しまったのだろう。
●銀行員は決してお金を任せていい相手ではない
日本では、多額の金融資産を持っている人の多くが高齢者だが、彼らの資産が適切に管理されているかどうかは、極めて心許ない。
危険な相手は証券会社ばかりではない。「週刊朝日」(11月13日号/朝日新聞出版)に、『認知症患者を食い物にする「ハイエナ」金融機関』と題する記事が掲載されているが、この記事に登場する2008年に認知症と診断された女性は、12年に司法書士の後見人が付くまでに、取引していた信託銀行で投資信託や新興国の国債などで40回も売買を繰り返し、資産の約半分である1億円ほどの損失を被り、この信託銀行は1500万円以上の手数料を得ていたという事例が紹介されている。
一般的な傾向として、銀行員は証券マンよりも信用されている。特に、高齢者はまだ高金利だった自分が若い時分に、銀行の預金や金融債でお金を増やした経験を覚えている場合がある。
しかし、1998年の「投信窓販」(銀行の窓口での投資信託販売)解禁以来年月が経って、銀行員もすっかり投信販売に慣れたし、収益を稼ぎたい状況は銀行も証券と同じだ。銀行員は決してお金を任せていい相手ではない。むしろ、現実の銀行のビジネスと顧客側の銀行員に対する信頼感とのギャップこそが危険だ。
●金融セールスによる被害は身近な問題
認知症の場合でも、認知症まで至らない段階であっても、高齢者の保護と高齢者の自己決定権(自分の物事を自分で判断する権利)の関係は微妙だ。高齢者本人が「この金融商品を買いたい!」と明確に主張しているのであれば、金融機関は法的な形式さえ整えばそれに応じるに違いないし、それが悪いことだともいえないが、金融マン(女性も含む)の側が高齢者を「その気」に誘導することはしばしば可能だし、そうしたケースが多々あるはずだ。
高齢者を「食い物」にするにあたって、証券会社社員や銀行員が特別に悪い人である必要はない。彼らが自分の会社に忠実な「真面目な金融マン」であるだけで必要十分条件を満たしている。
先の週刊朝日の記事では、認知症の高齢者の場合、後見人を付けるくらいしか有効な対策がないと書いているが、場合によっては後見人が金融機関と親しい場合もないとはいえない。金融的な判断力を失っている高齢者の場合、後見人を付けるとしても、正しい判断ができる身内がダブルチェックできる体制が必要だろう。
拙稿を読んでくださっている読者及び、読者のご両親の年齢は様々だろうが、何はともあれ、ご両親の金融資産が今どこにあって、どのように運用されているかを、一度確認してあげてほしい。
ご両親自身が、相手が子供であっても、自分のお金の詳細を見せたくないと思うケースや、金融マンに対して親近感を抱いて彼・彼女との取引が切れることを恐れるケースなど、現実には様々な障害があるかもしれないが、「金融セールスによる被害は身近な問題なのだ」ということを粘り強く伝えてほしい。
ビジネスの世界では、「高齢者の金融資産からいかに稼ぐか」が大きなテーマであり、現実のビジネスなのだろうが、せめてその0.1%くらいの規模であっても、高齢者の資産を悪いセールスからどう守るかということをテーマにしたビジネスがあってもいいように思う。
文=山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表
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