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「内閣官房 HP」より
低所得者は病院にいけない、危険な食品蔓延、失業者増&賃金低下…TPPの恐怖
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151116-00010007-bjournal-soci
Business Journal 11月16日(月)22時31分配信
本連載の前回記事では、TPP批准により日本が受ける悪影響についてみてきましたが、なかでも「毒素条項」とも呼ばれる「ISD(ISDS)条項」の危険性について触れました。ISD条項とは「Investor-State Dispute Settlement」の略で「投資家対国家の紛争解決」を意味します。FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)にも入っているものですが、訴訟大好き米国の多国籍大企業は、これによって相手国政府を訴えることが認められます。日本企業が途上国を訴えるケースは想定できても、米国政府を相手に訴えるケースはほとんど想像できないでしょう。
このISD条項は、本来は途上国政府が政変で転覆した際などに、先進国の進出企業が投資で被った損害を補償してもらうための条項でしたが、NAFTA(1994年に発効した米国・カナダ・メキシコ3カ国の北米自由貿易協定)の頃から変質し、投資家や企業が相手国の制度や規制や政策、慣行などにまで異議申し立てを行うようになってきたという経緯があります。
たとえば、日本に進出してきた米国企業が、日本の法律により自社の営業活動が阻害されて損害を被っていると考えた場合には、世界銀行傘下の「投資紛争解決国際センター(ICSID)」に提訴できるのです。ICSIDでは、原告企業と被告(訴えられた国)の選任が各1名で、双方が合意したもう1名の、たった3者で判定が行われます。しかも上訴が認められない一発裁定です。これで、その国の国会で決められた法律でさえ、勝手に変えてしまうことさえできるのです。
では、この恐るべきISD条項によって、日本の何が問題になり、米国の企業から提訴される可能性があるのでしょうか。
●「食」の安全が損なわれる
店頭で売られている納豆の包装を見ると、「大豆(遺伝子組み換えでない)」という表示がなされています。こうした表示には、遺伝子組み換え作物の種子で世界シェア90%を占め、遺伝子組み換え特許を数多くもった米国の巨大多国籍企業モンサントなどは到底納得しないでしょう。遺伝子組み換え表示そのものを禁止するように、ISD条項で日本政府を訴える可能性があります。
ほかにも日本の食品においては、添加物基準、残留農薬基準、ポストハーベスト基準(保存や輸送のための殺虫剤など)などが厳しいことを、米国の輸出業者から問題にされ、次々と基準値が緩められる事態が起こります。その結果、安くても危険な野菜や果物の輸入が激増します。
EUでは輸入禁止されており、発がん性が懸念される成長ホルモンで速成的に太らせた安価な豚や牛が今まで以上に輸入され、日本の畜産農家は大打撃を受ける懸念もあります。
●国民皆保険にも影響
日本には国民皆保険制度があります。これによって、富裕層も低所得層も、怪我や病気をした時に皆が等しく安心して全国一律料金で、必要とされる保険診療が受けられるようになっています。
がんや脳卒中で、100万円前後の医療費がかかった場合、3割負担でも30万円の高額負担になりますが、日本の健康保険制度には「高額療養費制度」があり、あとから一定の金額を超えた部分(所得区分あり)を戻してくれます。平均的な年収の人なら、この場合でも実質10万円以内の負担額ですむようになっているのです(これなら貯蓄があれば賄えます)。
しかし、これでは保険会社は困ります。消費者が保険に入る必要性が薄れるからです。近年は日本の保険会社が、莫大な費用を使って広告を打ってきた成果もあって、死亡保険よりも医療保険に入る人が増えていますが、健保の「高額療養費制度」があることを知らない人が入っているだけです。しかも、民間の医療保険は免責特約条項のオンパレードで、イザという時でも「不払い」が常態化しているため、役に立たない医療保険だらけであるということがほとんど知られていません。そもそも当の保険会社の社員が「絶対に入りたくない」という代物なのが、日本の民間医療保険なのです。
こんな日本の状況には、けっして米国の保険会社は納得しないでしょう。本国では高額な医療費を前提とした医療保険(かかる病院まで指定される)を金持ち相手に売り込んでいますが、日本ではそんな保険は売り込めません。
まず、手始めに米国の保険会社は、「非関税障壁」として日本で認められていない「混合診療」の解禁を求めてくるでしょう。ISD条項で政府を訴えます。たった3人で決める国際紛争解決法廷で、日本が「混合診療」を解禁しないのは「不平等」「差別的」と認められれば、健康保険制度を改めるよりほかなくなる可能性大なのです。
ちなみに、「混合診療」とは、歯科だけで一部例外的に認められている「自由診療(保険外診療)」と「保険診療」を組み合わせた診療のことです。歯に金などの詰め物をする治療やインプラント治療などは、歯医者が自由に値段を決められる「自由診療」と健保が7割負担してくれる「保険診療」の組み合わせがOKになっています。一方、一般の医療では認められないため、自由診療を受けた場合は全額が自己負担になります。
今は歯科医院の数がコンビニエンスストアよりも多いほど競争が激しいため、自由診療ばかりしたがる歯医者のところへは一部の富裕層しか行きません。しかし、かつて1970〜80年代に歯医者が不足していた時代には、「保険でお願いします」などと患者がいおうものなら、「保険の治療なんかじゃ、すぐに歯が駄目になるよ」などと脅されて、数十万円のボッタクリ治療を強要されていたものです。
「混合診療」を解禁すると、そういうことが一般の医療現場でも起こるようになるのです。現在でも、美容整形は「自由診療」が多いため、派手な広告宣伝を繰り返して客を集めています。
医者は「自由診療」をしたがり、患者は「保険診療」では相手にされなくなるという事態が懸念されるのです。医療費はどんどん高額化して、金持ちしか病院にかかれなくなります。ジェネリック医薬品も、知的財産権の長期独占が可能になって普及が妨げられたり、政府が薬価を2年毎に決める制度にも「不平等」だとISD条項で政府を訴えれば、薬価は高騰します。
米国では、盲腸手術で数百万円、ちょっとした日帰り手術でも100万円程度が当たり前の水準です。ゆえに金持ちは日頃から、イザという時に8割を保険で賄ってもらうために、民間の高額保険に入っています。入っていないとオチオチ医者にもかかれないからです。医療費が原因で自己破産したというケースが米国で多いゆえんなのです。
日本には、相互扶助の精神で、営利を目的としない保険制度としての「共済」があります。JA共済、全労済、都道府県民共済などの認可共済です。死亡と入院医療がセットになっており、格安の掛金で万一の時に備えられるコストパフォーマンス抜群の制度設計がなされています。ちなみに都道府県民共済の「埼玉県民共済」の加入者還元率は96%にも上ります。
米国の保険会社は、これにも注文をつけてくるでしょう。一般の法人税と比べて共済組合の法人税が安いことや、加入者の利便性が民間の保険よりも高いことが、著しく保険会社の営業を妨害しているとISD条項で問題にするわけです。共済組合制度そのものを「非関税障壁」として潰しにかかってくる可能性もゼロではありません。
●賃金下落
TPPは、サービス貿易も自由化の対象です。サービスの提供主体(事業者と労働者)が国境を超えて自由な取引を行うことが認められています。すると途上国の低賃金労働者も一緒に入国できないことにはおかしなことになります。日本の入管制度では、単純労働者の入国は禁止され、外国人技能実習制度と南米の日系移民の2世、3世とその家族だけが認められています。つまり、外国人は高度技能が認められた人だけが就労ビザの下で外国人労働者として入国が認められていますが、この制度もISD条項で訴えられるかもしれません。
途上国の労働者の流入に門戸を開くのは、事実上の労働者移民の解禁を意味します。理容や美容の技術免許、あん摩・指圧・鍼灸師の技能資格や通訳案内士の資格なども、厳しすぎる制度としてやり玉に上がりかねません。
グローバルな自由貿易が「先進国の賃金下落と失業者増大を起こす」というのは、近年の定説です。先進国と途上国間で賃金の平準化作用が起こるので、先進国労働者の賃金には下方圧力がはたらきます。そうでない場合、産業の空洞化が生じるだけです。途上国の労働者の流入が、日本人労働者の職を奪い、賃金をさらに引き下げかねないわけです。実際、米国ではNAFTA(1994年発効の米国、カナダ、3国の北米自由貿易協定)以降、工場閉鎖や移民の増加で失業率増大、賃金下落が激しくなっています。日本の大企業にとってはチャンスです。さらに内部留保が貯まりまくるからです。ちなみに14年度の内部留保額354兆円うち、現預金はなんと210兆円にまで上っています(日本のGDPの4割強)。
●地方経済にもダメージ
公共事業も自由化の対象です。調達の基準額も大幅に下げられて、小規模な事業まで外国企業の入札の対象になります。地方の公共事業で支えられてきた地域経済は、外国企業の参入で空洞化の懸念も出てくるでしょう。募集も発注も英語表記が求められれば、コストアップ要因です。公共工事のカルテルや談合などはもとよりご法度ですが、地方自治体の事業経費の増大と地域経済の崩壊も懸念されます。
ほかにも懸念事項は数々ありますが、以上見ていただいただけでもTPPは、国民にとって百害あって一利なしの協定なのです。ごく一部の輸出大企業のために、そして米国の多国籍大企業のために、私たち日本人の生活がこれ以上犠牲になり、壊滅的な打撃を受けてよいはずはありません。
TPPを阻止したいと考える人は、賛成派議員には投票しないのが一番です。まずは、来年の参議院選挙で18歳以上の若者が中心になって、TPP大反対の国民の声を届けてほしいと期待しています。
文=神樹兵輔/マネーコンサルタント
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