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国家的会議で3百名の錚々たる学者を「ザワつかせた」女子高生の鋭すぎる質問とは?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151115-00010003-bjournal-soci
Business Journal 11月15日(日)22時31分配信
ある国家プロジェクトのキックオフ・シンポジウムに参加した時のことである。このシンポジウムで、生涯忘れられない出来事を目撃した。
このプロジェクトは政府の肝いりで、予算も数百億円規模のものだ。バイオ関連の大型事業で、これが成功すればあらゆる産業に多大な恩恵があるため、各方面からトップの研究者が参画している。
シンポジウムでは、政府関係者、ノーベル賞を受賞した学者、著名な経営者、有名大学の高名な教授など、そうそうたるメンバーがプレゼンを行った。
3時間のシンポジウムの最後に、プロジェクトリーダーから今後の計画が発表された。今後4年間で世界初の画期的な手法を開発するという。現段階では未知の技術のため具体的な手法も確立されていないが、国内の一流の学者や研究者の力を借りながら試行錯誤して完成させ、4年後には日本がバイオの世界で世界をリードしていくという壮大な内容だった。
シンポジウムの最後で質疑応答の時間があり、300名の参加者(ほとんどが国内外の学者)から、さまざまな専門的な質問が上がった。「大変素晴らしい発表をありがとうございます。……」という、お決まりの枕詞から始まる質問に次々に答えるプロジェクトリーダー。
質問時間の最後に、プロジェクトリーダーから提案があった。
「今回は高校生の参加者がいらっしゃいますので、高校生からも質問をいただけますか?」
会場には招待客として高校生のグループが参加していた。未来の日本を担う若者たちに大きな夢を見せたいという配慮だったのだろう。
今回のシンポジウムは専門性の高い発表内容ばかりだったので、「3時間もよく聴いていたものだ」と感心していたのだが、一人の女子高生が力強く挙手をした。その女子高生にマイクが渡され、会場の大人たちは固唾をのんで彼女に注目した。
「今回のプロジェクトは、『どうやったらできるのか今はわからない』ということでしたが、なぜ4年という期間や数百億円という予算を決めることができるのですか?」
この質問に、大人たちは苦笑混じりに感嘆の声を上げ、今回のシンポジウムで最大の拍手が起こった。一流の研究者たちが発表したプレゼンよりはるかに大きな拍手だ。これは、まことに純粋な質問であり、大人たちは“大人の約束”として絶対に聞かない、いや聞けない質問である。
プロジェクトリーダーは頭をかきながら「大変鋭い質問です」と苦悩しつつ、あれこれ理屈を並べながら答えていた。女子高生は場の雰囲気を察したのか、「わかりました」と答えて着席した。おそらく納得はしていなかっただろう。
●リーダーに求められる資質とは
このシンポジウムは極めて専門性の高い内容で、筆者もさすがに退屈してしまい「参加しなくても良かったかな」と思っていたが、女子高生の鋭い質問を聞くことができて、参加して良かったとつくづく思った。この女子高生の質問から、2つのことを学ぶことができたからだ。
ひとつは、純粋な質問にこそ物事の本質があるということ。もうひとつは、未知のものに挑戦する夢に対し、リーダーは毅然とした態度で責任を持って可能性を語らなければならないということだ。
女子高生には、「夢のようなことをどうやって実現できるの? 答えのないものをどうやって見つけるの?」という無垢な興味もあっただろう。答えのある学校教育では想像もできない世界である。
答えのない世界で答えを出すことによって人類は進歩してきた、という事実を知る絶好のチャンスだったが、プロジェクトリーダーはそれを表現することができず“言葉によるごまかし”をしてしまった。女子高生は落胆したに違いない。大人でも「このプロジェクトは、そもそも予算ありきの政府プロジェクトなのか」と勘ぐりたくもなる答え方だった。
どんな組織のリーダーであっても、夢を語り可能性を示さなければ人はついていかない。国家プロジェクトであっても、強いリーダーがいなくては成功が確約されるわけではない。予算ありきのプロジェクトになれば、計画を白紙撤回した新国立競技場のようなことが起こりかねない。
これは会社組織でも同じである。売り上げ目標ありきの経営を行えば、人は疲弊し、ひいては数字のごまかしに発展しかねない。それは東芝の不適切会計の例を見るまでもない。
人は数字で動くのではなく、夢や可能性に対して動こうとするものである。そうして未知の答えを発見し、発展していくものである。そこを見失ってはいけない。今の日本には、本末転倒してしまった組織が多すぎる。
シンポジウムで見つけた唯一の希望は、そうそうたる“偉い”大人たちを前にして、勇気を持って本質的な質問を投げかけた女子高生だった。まだこの国には可能性が残っている――。そう思わせてくれた出来事だった。
鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー
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