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コラム:「師走の円安」アノマリー再現か=鈴木健吾氏
http://jp.reuters.com/article/2015/11/13/column-kengosuzuki-idJPKCN0T20R320151113
2015年 11月 13日 18:40 JST
鈴木健吾みずほ証券 チーフFXストラテジスト
[東京 13日] - 相場には、周期性やアノマリー(Anomaly)などと呼ばれる特徴的な動きがみられることがある。たとえば株式市場では、日本の「節分天井、彼岸底」や英米の「Sell in May(5月に売れ)」といった格言がよく知られている。実際、相場の「癖」は投資のタイミングを考える際において参考になる場合も多い。
ドル円相場にこのような格言があるかは定かではないが、それでも特徴的な動きは観測できる。たとえば今年、ドル円は毎月10日前後に月間の高値を付ける傾向がある。
今年もすでに10カ月が過ぎたが、2月は12日、3月は10日、4月は13日、8月は12日、9月は10日に月間の高値を記録している。5日が高値となった6月も含めれば10カ月中6カ月の高値が10日前後に集中しており、11月も9日の1ドル=123.60円を高値にドル円は上値の重い値動きをみせている。
アノマリーとは直訳すれば理論的に異常であることや説明できない事象のことを指すが、このような相場の特徴的な動きについては理論的な説明とまではいかなくても、背景程度なら指摘することが可能だ。前述のドル円の値動きについては、為替市場の焦点が米国の景気回復動向と連邦準備理事会(FRB)の利上げのタイミングに集まるなかで、米重要経済指標の発表スケジュールがこのような値動きを引き起こしているのではないか。
為替市場が重視する米重要経済指標は月末・月初に集中する傾向がある。月の最終週には国内総生産(GDP)や個人所得、個人消費が発表され、月が替わるとISM製造業景気指数やISM非製造業景気指数、ADP雇用統計などが続き、クライマックスは第1週の金曜(正確には毎月12日を含む週に調査を行い、その3週間後の金曜日に結果が発表されるが、大抵、翌月の第1週の金曜日がこれにあたる)に発表される雇用統計だ。
その後、第2週には小売統計が発表されるが徐々に市場にとって「小粒」な指標が増えていく。米国が緩やかな景気回復傾向にあり、FRBが利上げのタイミングを模索するなか、米重要経済指標に対する評価や期待を背景にドルは月末から月初に向けて上昇傾向を強める。一連の発表が終わると上昇が一段落して利食いなどによる調整的な値動きが強まり、また月末になると再び上昇傾向を強める、といった動きの繰り返しが、結果として毎月10日前後の月間高値を形作っているのではないか。
<ドル円の年初来高値更新へ条件整う>
前述の通り、今月も9日にかけて上昇基調を強め、一時123円台後半を示現した。10月半ばからすでに5円以上の上昇となっており、短期筋が利食いに動く可能性や米利上げ観測が新興国市場にもたらす影響を見極めたいなかで、目先はやはり調整的な値動きとなりやすいだろう。
しかし、12月半ばの連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ期待もある状況下、また月末が近づくにつれて期待がドルを押し上げる展開を想定している。
さらに長い年ベースでみても、ドル円相場の特徴的な動きは観測できる。2007年から2011年頃にかけては夏から秋頃に下落し、その後、年末から翌年序盤に上昇する傾向が顕著となった。2012年以降も年終盤から年始にかけての上昇傾向は継続しており、2012年、2013年、2014年ともに年の高値は12月に記録している。
背景には2007年頃からの一連の金融危機とこれに対するFRBの対応があると考えている。2007年に金融市場を揺るがしたサブプライム問題は8月9日のパリバショックがその発端となり、その後9月にかけて危機が加速した。
翌2008年は9月15日にリーマンショックが起き、2009年10月には政権交代が実現したギリシャにて前政権の粉飾が明らかになるとともにギリシャ債務危機がスタートした。2010年は9月30日、銀行救済の巨額負担のためアイルランドの財政赤字が急増することが発表され、その後アイルランドは金融支援申請へと進んでいく。つまり、毎年世界の金融市場を揺るがす事件がいずれも8月から10月頃に集中して勃発している。
このような市場の動揺に対応し、FRBは2007年以降、機動的に利下げを実施していたが、2008年12月にはついに事実上のゼロ金利政策を導入するとともに政府機関債の購入に言及し量的緩和(QE)へと突入していく。2010年11月にはQE2を導入し、2011年9月にはツイストオペを開始。2012年9月にはQE3を導入するなど、重要な金融政策の導入や変更は9月頃から年末にかけて集中している。2013年に量的緩和ペースの縮小(テーパリング)を発表したのも12月のFOMCだ。
ドル円相場はこのような一連の動きを反映し、危機が強まる夏から秋にかけてリスクオフの円買いなどから下落傾向を強め、その後、年終盤にかけてはFRBの政策対応に対するドル買いなどに反転。年末から翌年序盤にかけて上昇するものの、次の夏から秋には再び別の危機が到来、といったサイクルになったとみられる。
加えて、日本サイドでも2012年の年末に成立した安倍政権に対する期待や、2014年10月31日の日銀によるサプライズ緩和などが、ドル円の年末上昇アノマリーに拍車をかけることとなった。
今年、ドル円の上下レンジは115.85円(1月16日)から125.86円(6月5日)の10.01円。昨年までの直近5年間の平均はおよそ15円強、同10年間の平均は16円半程度となっており、このまま年末を迎えれば変動相場制に移行してからの最小値幅を記録するほどの小幅な値動きにとどまっている。
しかし、前述の通りドル円相場は年末から年始にかけて上昇する傾向がある。奇しくも年末年始に向けて、12月にはFRBがついに利上げに踏み切る可能性が高まり、日本サイドでも補正予算などを通じたアベノミクスに対する期待再燃や日銀に対する追加緩和期待もくすぶるなど、アノマリーを再現する条件は整っている。今年もあと1カ月半となったが、ここからドル円が年初来高値を更新していく可能性は意外に高いのではないかと考えている。
*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。
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