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「QBハウス HP」より
誤解だらけのQBハウスの世界戦略 プロ養成徹底、出店地域の価格引き下げ…
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151113-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 11月13日(金)22時31分配信
先日馴染みの床屋さんに出かけたところ、いつもいた女性理容師さんの姿が見えない。ご主人に尋ねたら、少し寂しげに「QBハウスに勤めました」という。「20年選手で腕も確かだったのですが、シャンプーで手がかぶれるのがひどくなって」という。「10分カット1000円(税込み1080円)」を売りにしているQBハウスなら、カットだけなので手が荒れるようなこともないという。私の白髪染めなどを達者にこなしてくれていた女性の転出が少し意外だった。というのは、なんとなく「1000円カットのQBハウスはスピードこそ速いものの、技術的にはどうなのか」という先入観があったからだ。
●新社長が技術尊重に舵を切った
QBハウスを運営するキュービーネット社は1995年に創立されて、現在国内に489店舗、海外に100店舗を展開している。来店客数は年間1500万人を越えるという、理容美容業界では大手にのし上がった。
「10分間でヘアカットだけ」「1000円」というビジネス・モデルは創業者の小西國義氏が編み出した。現社長の北野泰男氏は2005年に入社、前職は日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)というバンカーだった。09年に社長に就任している。
「私自身は技術者ではなく、完全にビジネスマネジメントの面からこの事業に携わっている」(「季刊MS&コンサルティング 2013年夏号」)と、プロ経営者として自負する北野社長はスタイリストと顧客、両方の満足に対してさまざまな手を打ってきた。「スタイリスト」とは、理容技術者に対する同社呼称だ。
社員満足を向上させるには、スタイリストをプロの技術者として尊重し、育成するということだった。前述した私がお世話になった女性のように手荒れなどの問題を抱えていた理容師も活躍できるし、国家資格を取ったのに現場に出ていなかった理容師には、1日8時間のカットスクールを有給で講習している。年に1度の社内イベント「QBカットコンテスト」では、全国2000人以上の頂点を目指してスタイリストたちがカット技術を競う。
これらの施策の結果、以前は50%だったターンオーバー(離職率)が12%までに下がったという(4月6日付キャリコネニュース記事より)。
真骨頂が、9月に発表された15年度「JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)」第3回調査(サービス産業生産性協議会)の生活関連サービス部門で1位に輝いたことだろう。
この調査について実は私は、7月に疑問を投げかけた。
「飲食店部門の顧客満足度で、しゃぶしゃぶの木曽路が7位でモスバーガーが1位というのは、無理がある。来店客数に絶対的な差があるからだ」(7月12日付本連載記事「モスが顧客満足度1位なんて本当か?」)
しかし、今回のQBハウス1位には文句の付けようがない。というのは、2位となったのが昨年1位だったプラージュ(阪南理美容株式会社)という、こちらは全国に650店を展開する日本最大規模の理美容店チェーンだからだ。
●世界を目指すブルー・オーシャンモデルか
カット専業としてユニークな業態を確立したQBハウスは、『ブルー・オーシャン戦略』(W・チャン・キム他/ランダムハウス講談社/05年刊)に取り上げられた。
私は同セオリーを拙著『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(ぱる出版/13年刊)で、「青い鳥幻想を広げた最悪のセオリー」と批判した。そしてその年、私のセミナーで『ブルー・オーシャン戦略』が称揚した企業事例の「その後」を検証してもらったら、唯一「しっかり生き残っています」と報告されたのがQBハウスだった。
そして今年9月に至り、『新版ブルー・オーシャン戦略』が刊行され、それは私のような立場からの論難への言い訳に満ち満ちている大冊となっている。そこで鬼の首を取ったかのように称揚されているのが、QBハウスの「その後“も”躍進」事例だ。
原書で著者たちが掲げた「ブルー・オーシャン」は、「競争のない市場空間を切り開き」、その状態は10−15年続くという荒唐無稽な桃源郷だった。QBハウスに競争、競合がないわけではない。前述したプラージュでは1400円で「ヘア・カット+シャンプー」の価格を押し出している。私の自宅最寄り駅にもQBハウスがあるが、駅周辺の理髪店は1500円〜1800円でシャンプーと顔剃りも施される総合調髪を提供している。つまり、QBハウスが出店した当該地域市場の価格を引き下げているのだ。
これは、チャン・キム氏らが主張する「ブルー・オーシャン」的な成り行きではない。戦略セオリー的には、単純に「イノベーター」とそれに追随する「フォロワー」と説明できる。「フォロワー」が出現すると、先行した「イノベーター」のほうがそのビジネス・モデルではデファクト・スタンダード(事実上の標準)としての認知を高めるので、有利なポジションを強化できるという現象だ。
●転変するQBハウスの資本
キュービーネットは投資資本の間を転々としてきた。06年に小西氏から同社の74%株式をオリックスが30億円で購入し、同氏はこれを機に退任した。オリックスは78%まで取得した後、10年に至りジャフコに約100億円で売却し、ジャフコは残りの株式も取得した。14年末に今度は投資ファンドのインテグラルがジャフコから購入するのだが、その時の価格がまた約100億円だとされる。インテグラルは当時スカイマーク救済に奔走していたのだが、一方でキュービーネットの経営も手がけていたわけだ。
気になるのは、ジャフコが取得した価格からインテグラルに転売された価格が増大していないことだ。投資ファンドがエグジットする場合、ハイ・リターンを求めるのが通常なので相対での譲渡で企業価値の向上が認められなかった、ということになる。また、オリックスもジャフコもIPO(上場)というエグジットの道を選択せず、他ファンドへの2次譲渡としてしまった。
上場は果たしていないものの、キュービーネットの業績は悪くない。15年6月期の年商は150億円で前年比8%の伸びで、利益もしっかり出ている。年商でみると、阪南理美容社(365億円)、アルテサロン(168億円)に次ぐ業界3位である。ちなみに、このランクからもキュービーネットはブルー・オーシャンの事例ではないことがわかる。
「3年後までには250店を増やし、国内600店、海外150店としたい」(同社松本修管理本部長)とし、同業上位他社より海外志向が強い。「ビジネス・モデル的には創業時から変わっていない」とも松本氏はしているが、「北野社長体制で引き続き力を入れていくのが、ヒト、特にスタイリストの養成で、サービス業で人手不足の時代となっていることから、ヒトの確保と養成が当社の成長を決める」との認識を示した。
国内でも成長余地はあるだろうが、日本発祥のサービス形態が海外でもどれだけ大きく育っていけるのか、私はそちらのほうに注目していきたい。
文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント
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