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海老名市立図書館(「Wikipedia」より/Araisyohei)
メチャクチャ運営騒動のツタヤ図書館、共同事業者を激怒させたツタヤの問題行動
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12387.html
2015.11.13 文=佐伯雄大 Business Journal
神奈川県・海老名市立図書館の共同運営をめぐって対立していたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と図書館流通センター(TRC)が、そのすったもんだを謝罪する文書を海老名市の内野優市長宛てに提出し、2019年3月末の指定管理の契約期間満了まで協力して運営していくことを表明した。先月30日に開かれた定例会見で内野市長が明らかにした。TRCはこれまでCCCを痛烈に批判し、共同企業体の解消も視野に入れていた態度を一変し、両社は和解した。その裏で何が起きたのか。
事の発端は、先月1日に海老名市立図書館がリニューアルオープンしてから4日後の同月5日に遡る。TRCはCCCに対して、協業関係を解消するとともに今後も連携しないことを伝達したという。折しも、その前日にはタイ・バンコクの風俗店情報を掲載した図書を蔵書していたことが市議会議員の告発で発覚したと報じられていた。
図書館関係者は次のように話す。
「海老名市立図書館(分館の有馬図書館も含む)は、13年からTRCが指定管理業者として運営を受託し、14年からは5年契約でCCCとの共同企業体が運営することになった。その背景には、CCCが運営する武雄市図書館(佐賀県)に感銘を受けた内野市長の意向があり、当初はCCCの増田宗昭社長とTRCの石井昭社長のトップ会談で友好的な協業関係を構築していた。TRCはCCCの生み出す集客力に、CCCはTRCのこれまでの経験や実績をそれぞれ評価していたようだ。それがたった1年で険悪な関係になるとは思っていなかった」
また、別の図書館関係者は語る。
「この1年でTRCの態度が180度変わったのは、CCCに問題があったようだ。共同企業体といえば聞こえはいいが、筆頭企業であるCCCが、パートナーであるはずのTRCをまるで下請け業者のように扱ったことが石井社長の逆鱗に触れたようだ。10億円近くかけて改装した立派な中央図書館の選書・蔵書・運営というおいしいところはすべてCCCが持っていき、TRCは分館である公民館図書室規模の有馬図書館を運営することになった。図書館業界で長く実績を築いてきたTRCにとってはこの上ない屈辱で、業界の生き字引的存在である石井社長にとっては許せなかったのだろう。その怒りが爆発するきっかけとなったのが、4日の蔵書問題発覚だった。その少し前には愛知県小牧市がCCCとTRCの共同企業体による新図書館構想を白紙撤回したこともあり、これ以上CCCのとばっちりを食うのを避けたいと考えて、5日にCCCに協業解消を申し入れたのです。その時点で石井社長はマスコミ向けに発表することも考えていたが、周囲が抑えたようです」
■図書分類問題
企業理念の違いは、実は図書館運営に関するプライドの問題でもあった。特にTRCを刺激したのが、CCCが独自に構築したという「ライフスタイル分類」という新たな図書分類だ。ライフスタイルの提案を訴えるCCCらしい分類方法ではあるが、問題はその中身にある。
よく指摘されるのが『旧約聖書出エジプト記』が旅行の棚にあるなど、その分類があたかもタイトルを頼りに振り分けているとしかみられない点だ。さらに、そう訝るのにも理由がある。パートナー企業であるTRCにすら、その分類方法は「企業秘密」として公開していないからだ。入荷・返却された本をどこに置くか、スタッフが図書を配架する際にも元の場所がわからないという混乱もあった。従来の図書館のNDC分類が完璧とはいえないものの、「ライフスタイル分類」への疑問は付きまとう。
「これまでの図書館の価値観を否定して、CCCによる新しい図書館の価値観を示すのが彼らのスタンスだったはず。とすれば、これまでの図書館を支えてきたTRCを見下そうとしていたのはわかる。書店業界においても、当初は雑誌売り場としかみられていなかったCCCが運営するTSUTAYA(ツタヤ)が書籍も売っていこうと書店化に取り組んだときも、これまでの書店のやり方に否定的でした。20年前は再販問題との絡みでタブーだった『ポイントサービス』や『古本販売』にいち早く取り組んだのもツタヤでした」(出版業界関係者)
■一転、和解へ
こうしたTRC・石井社長の怒りがついに噴火したのが、10月26日付業界紙「文化通信」の記事だった。この報道を皮切りに、一般紙やネットメディアがこぞってこの問題を取り上げた。10月28日には日本経済新聞がいち早く、海老名市立図書館における「共同企業体の解消はなくなった」と報じ、10月30日の和解会見へとつながっていく。
その後、CCCとTRCの問題はあっという間に収束したのだが、図書館関係者は語る。
「実は11月15日(8日告示)に海老名市長選が行われる。内野市長は4選出馬を表明していた。10月1日の海老名市立図書館のリニューアルオープン、29日のららぽーと海老名のグランドオープンと2つの施設の成功を手土産に、再選を果たそうと計算していたのではないかとみられています。ららぽーと海老名は大盛況だったが、海老名市立図書館で味噌を付けられた。CCC とTRCの不和を放置していては、指定管理を進める市長にも逆風となる。そこで、早急な手打ちを両社に迫ったのでしょう。TRCは指定管理業者として多くの自治体と取引関係にあるため、海老名市とケンカをしてまで契約を破棄するような無茶はできない。結局は27日、28日と2日にわたって市と両社の3者で話し合い、市長が両社を説き伏せたようです」
今回の一件が、広がりつつある自治体による公共施設の民間業者委託の動きに一石を投じたのは間違いないだろう。
(文=佐伯雄大)
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