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日米vs.急速に親中国化する欧州&中国の対立が先鋭化 なぜ人民元が国際通貨化?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151111-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 11月11日(水)22時31分配信
中国の人民元が、IMF(国際通貨基金)の特別引き出し権(SDR:Special Drawing Rights)に採用される見込みだという。人民元の採用については、日米が慎重な姿勢を取る一方、ドイツや英国などが積極的に支持する構図になっている。
もともとIMF自身は、国際化のさらなる進展のために人民元採用に前向きだった。そこに、欧州諸国が中国に歩み寄る姿勢を鮮明化していることが重要な支援材料になっている。実際に、11月のIMF会議で採用が決まると、人民元は名実ともに国際通貨としての地位を確立できる。中国にとって、人民元が有力な国際通貨としてのお墨付きを受ける意味は大きい。
IMFは、国際金融や為替の安定性を維持するために創設された国際機関だ。それぞれの加盟国は予めIMFに資金を拠出し、その出資比率に応じて必要な時に資金を借りる権利を持つ。SDRは借り入れを受ける権利のことであり、また、借り入れを受ける時の資金の単位でもある。現在、SDRの価値を算出するときに採用されている通貨は、ドル・ユーロ・ポンド・円の4通貨であり、これらの通貨を加重平均するバスケット方式によってSDRの価値を算定する仕組みになっている。今後、通貨バスケットの中に人民元が入ることになりそうだ。
●今でも政府管理通貨である人民元
中国が採用を積極的に働きかけ、ドイツや英国などが積極的に支援するスタンスを示すバスケット採用通貨については、IMFの明確な基準が存在する。ひとつは、加盟国が発行する通貨の中で過去5年間で財・サービスの輸出額が最も多いこと。もうひとつは、自由に売買が可能な「自由利用可能通貨」であることだ。その基準に基づいて、5年毎に見直しされることになっている。今年は見直し年に当たる。
2つの基準に照らして人民元を考えると、まず1つ目の基準については問題ない。近年の中国の輸出額をみると、その基準をクリアしていることは明らかだ。
しかし、2つ目の基準については重大な問題がある。人民元は厳格に政府によって管理されており、必ずしも自由に取引が可能とはいえない。現在の人民元の取引は、中国本土内の取引=オンショア人民元(CNY)市場と、香港中心の中国本土外の取引=オフショア人民元(CNH)市場とに分かれている。中国本土内での取引は、中国人民銀行による強い管理体制の下で行なわれており、実際の為替レートは事実上、人民銀行が決める水準に限られる。現在では、人民元のレートは基本的にドルとほぼ連動している。そのため、人民元がドルと厳格に固定されているわけではなく、緩やかなドル連動制=ソフトドルペッグ制と呼ばれている。
一方、香港を中心とした中国本土外での人民元の取引は、中国政府の厳しい規制が及ばない。そのため、国境を跨いだクロスボーダーの決済や、為替レートの変動の制限などはなく比較的自由に取引が可能だ。
●人民元の扱いをめぐる国際情勢
中国人民銀行が取引レートを一方的に決め、しかも中国本土では取引に大きな制限がある人民元について、わが国や米国は人民元のバスケット入りに慎重なスタンスを取ってきた。それに対して中国政府は、今後一段と人民元の国際化を促進すると表明しており、今年8月11日に、事実上の人民元切り下げを行ったときにも、当該措置は人民元の国際化への一環と説明していた。
また、「今後も人民元取引の自由化を積極的に推進する」と明言してきた。それと同時に、中国政府は人民元をSDRのバスケットに組み入れて、人民元が主要国際通貨のひとつと認識されることをIMFに積極的に働きかけてきた。
近年、そうした中国政府の要請に対する強力な援軍が現れた。英国やドイツなどを中心とする欧州諸国が、中国政府の要請を明確に支持するスタンスを取り始めたのである。そうした情勢の変化によって、中国をめぐっては、IMF内部で「中国に接近する欧州諸国vs.中国と距離を置く日米」という構図が鮮明化しつつある。
一部の欧州諸国が親中国のスタンスを明確にし始めた背景には、人口減少などの問題を抱えて安定成長期にある欧州経済にとって、13億人の人口を抱える中国=巨大消費地としての重要性を増していることがある。特に、強力な輸出産業を持つドイツは、中国市場への積極的な進出によって世界市場でのマーケットシェアを拡大しており、今後もそうした展開を進めることが最大課題のひとつになっている。
●親中国の欧州諸国と日本の対応
スコットランドの独立やEUからの脱退などの問題を抱える英国にとっても、中国の存在は大きい。10月の習近平主席の訪英時には最大限の歓待の意図を示し、原子力発電所建設に関するプロジェクトにも中国からの支援を受ける意向を示した。また、世界有数の金融都市ロンドンを抱える英国にとって、人民元の決済口座をロンドンに確保し、今後拡大が見込まれる人民元取引を集中させたいとの意図は明確だ。そうした英国政府の姿勢について国内から「やりすぎ」との批判が出ているものの、当面英国政府の親中国のスタンスは変わらないだろう。
世界の覇権国であり、長年にわたって英国など主要欧州諸国と強力な同盟関係を維持してきた米国にとって、英国やドイツなどが露骨に中国にすり寄ることは予想外の展開だったかもしれない。特に、南シナ海での強引な人工島建設に伴う問題が顕在化している現在、米国の意図を軽視する欧州諸国の態度にはやや困惑を感じているかもしれない。
中国との領土問題を抱える日本にとっても、欧州諸国のスタンスはプラス要因ではない。ただ、欧州諸国と正面から対立する構図は得策ではない。今後の主要国の態度を注視すると同時に、冷静な大人の態度が必要だ。
足元で中国経済は、過剰供給能力と過剰債務の問題に直面している。少子高齢化の人口問題も無視できない。そうした課題を抱える中国経済の減速は明確化している。中国にかつてのような高成長を望むことはできない。中国経済の成長鈍化が一段と鮮明化すると、したたかな欧州諸国は親中国一辺倒の政策運営はできなくなるだろう。そうした変化を敏感につかみ、日本は国際情勢の変化をうまく使えばよい。そのチャンスはくるはずだ。
文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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