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東芝本社ビル(「Wikipedia」より)
東芝、「サザエさん効果」はいつまで続く?不正会計問題より深刻な「体力不足」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151111-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 11月11日(水)22時31分配信
「東芝がこの程度の会社とは思わなかった」。数十年の株式投資歴を持つ70代の自営業者は言う。彼が呆れているのは、今夏に明らかになった不正決算問題ではない。東芝の企業としての実力に失望しているのだ。
ショック安、すなわち企業の株価が不祥事や大事故によって急落した局面で買いに出て、戻り(株価の回復)を待つ手法で成功してきたベテラン投資家からすれば、東芝の不正決算問題は恰好の狙い目だった。だが分析の末に投資は見送ったそうだ。究極の逆張りともいえる、この種の投資の成否を決めるのは当該企業の復元力の有無だが、東芝の場合は大きな期待はできない、との結論が出たのだろう。
改めて東芝の業績や主要な財務データを調べてみると、投資家の判断はうなずける。総合電機大手3社の日立、東芝、三菱電機を比較してみると、東芝の数値が著しく劣ることはわかる。売上高こそ3社内2位ではあるが、収益力ではほかの2社に大きく引き離され、企業としての安定性を表す自己資本比率などでもほか2社はもとより、ほかの大手電機メーカーと比較しても下位のレベル。誇れるものは規模だけであり、張り子の虎といえよう。
【総合電機大手3社の財務データ(2015年3月期連結ベース)】
・売上高(日立を1とした場合の比):日立1、東芝0.68、三菱電機0.44
・営業利益(同):日立1、東芝0.28、三菱電機0.53
・自己資本比率:日立23.6%、東芝17.1%、三菱電機45.4%
・1株あたり純資産:日立606円、東芝256円、三菱電機858円
・直近3期ROE最高値:日立11.2%、東芝6.5%、三菱電機13.9%
優良企業と呼ぶにはほど遠い実情や複数期にも及ぶ不正会計が露見してもなお、東芝のイメージはそれほど毀損していない印象はある。これも有価証券の虚偽記載とその提出の大幅な遅延など上場廃止の基準に抵触していながら、上場維持を決めた東京証券取引所のお手盛りや、古くは東芝会長、経団連会長、臨時行政調査会長を歴任した土光敏夫氏、現在では同社会長、東証会長を経て日本郵政社長を務める西室泰三氏に至る華麗な人脈の威光のためだろうか。
●サザエさん効果
日本を代表する大手メーカー、政府与党にも影響力を持つ経営者OB、そして何より大広告主である点が追及をためらわせたのか、マスコミの報道も総じて迫力を欠くものだった。特に経済メディアには、批判なのか擁護なのか、理解に苦しむような玉虫色の記事さえあった。
興味深いデータがある。国内経済メディアの代表格である日本経済新聞が総合電機大手3社を紙面で取り上げた回数(朝夕刊合計・広告記事を除く)だ。東芝の不正発覚前、2014年の1年間の累計で掲載件数は日立227回、東芝191回、三菱電機94回になる。東芝は日立の8割強、三菱電機の倍以上も記事として取り上げられているわけで、事業規模や業績と照らし合わせても頻出していることがわかる。問題の発覚後も日経新聞は東芝の一部事業のソニーへの売却(売却額は200億円)について「事業規模を考えればリストラと呼べるものではない」(証券アナリスト)との指摘があるにもかかわらず、1面トップ(10月24日朝刊)で報じており、特段の配慮は続いているようだ。
世間一般への訴求力という面では、人気テレビ番組「サザエさん」(フジテレビ系)の存在は無視できないだろう。東芝といえばサザエさんを連想するほど、スポンサーとしての認知度は高い。とかくアニメが陥りがちなバイオレンス、ナンセンス、エロスの対極にある好感度抜群の内容とキャラクターが、東芝のイメージ悪化をある程度防いでいることは間違いあるまい。
もっとも、実態が伴わなければ化けの皮はいずれ剥がれるものだ。前述したように、株式市場に通じる投資家の視点では、東芝はすでに再生に疑問符が付く銘柄なのである。
文=島野清志/評論家
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