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検疫所の食品監視員年度推移(「厚生労働省 HP」より)
輸入食品の検査率、わずか8.8%の衝撃 残留農薬等の危険な食品輸入増の恐れも
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151110-00010006-bjournal-soci
Business Journal 11月10日(火)22時32分配信
厚生労働省が2014年度の輸入食品監視統計を発表した。そこで明らかになったことは、輸入食品の検査率がなんと8.8%と10%を大きく下回り、02年度以来最低の検査率になったことである。08年度の12.7%から6年間で3.9%も検査率が低下したのである。その低下率は30.7%にも及ぶ。
その原因を探ると、輸入食品の届出件数は08年度の182万1269件から14年度は221万6012件と21.6%増加しているのに対して、検査件数は、08年度の23万1638件から14年度の19万5390件と逆に15.7%も減少しているのである。輸入食品の輸入件数が急増しているのに対して検査件数を減少させているのであるから、検査率が急減するのも当然である。
政府が行っている輸入食品検査である行政検査率の推移を見てみると、これも08年度の3.1%から14年度2.6%と落ち込んでいる。驚くべきことに、数値は公表されている輸入食品監視統計で、1975年以来39年間で過去最低の検査率なのである。要するに、国の輸入食品検査体制が、輸入食品の輸入件数の急増に追いついていないのである。行政検査件数は03年度の約7万件から14年度の5万7446件まで落ち込んでいる。
このような状況のなかで、日本は関税撤廃率95%にも及ぶTPPの批准をしようとしている。現在の輸入食品数量(重量ベース)の内、TPP加盟11カ国からの輸入数量は、実に61.8%にも上る。現在の輸入食品の6割がTPP11カ国からの輸入なのである。その輸入品の関税が95%撤廃されるのであるから、輸入が急増することは明らかである。現在でさえ輸入食品の件数が急増しているなかで、TPP批准により輸入食品件数のさらなる急増は不可避である。
●検査体制の弱体化
では、輸入食品検査体制をそれに見合うかたちに強化できるのか。厚生労働省の考え方では、とても無理どころか、弱体化せざるを得ない状況である。
現在、輸入食品検査に携わる食品衛生監視員の全国配置人員は、わずか406人である。それもここ数年は、399人に据え置かれていた。また、検査センターは横浜と神戸の2カ所に集中しているが、横浜検疫所輸入食品・検疫検査センターは第1種住宅地域にあるので、増設も改築もできない状況のなかで、検査機器が立錐の余地もなく配置され、前処理工程も狭い机の上で処理するために、食品安全の専門家もコンタミ汚染の危険があると指摘するぐらいの状況である。
抜本的な対策がないまま、これ以上検査件数を増やすことは不可能である。さらに、配置されている食品衛生監視員は休日出勤も常態化するなど厳しい労働環境であるだけでなく、妊娠出産を控える正規職員にとっても重圧がかかっており、監視員からは「TPP批准による影響が怖い」との声も出ている。
食品衛生監視員の労働環境が守られなければ、輸入食品検査体制の強化どころか、健康を害する職員の続出で検査体制の弱体化に追い込まれかねない。
では、なぜ厚労省は輸入食品検査体制の抜本的強化に取り組めないのか。その足かせになっているのが、国家公務員の総定員法である。食品衛生監視員を増員すると、それに見合う同省内の公務員を削減しなければならないのである。同省内のパワーバランスの中で、監視員の大幅増員に踏み切れないのである。
しかし、自衛隊員は、国家公務員総定員法の対象外になっている。輸入食品検査に携わる食品衛生監視員も国民の健康と生命を守っているのであり、国家公務員総定員法の対象外にすべきである。
政府はTPPで食の安全は守られたというが、輸入食品の水際の検査体制が破綻寸前のなかで、残留農薬や残留抗生物質、残留合成ホルモン剤が混入した輸入食品が大手を振って無検査で輸入され、国民の食卓に上がっていく危険性が高まっている。
文=小倉正行/フリーライター
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