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東芝、歴代3社長を提訴 内向きな名声レースの末路 常識離れした「東芝の常識」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151110-00010011-bjournal-bus_all
Business Journal 11月10日(火)22時32分配信
不正会計問題に揺れる東芝は7日、2015年4〜9月期連結決算の営業損益が904億円の赤字になると発表した。同社の上期が営業赤字となるのは6年振り。さらに同日、同社は西田厚聡氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏の歴代3社長とCFO(最高財務責任者)2人に対し、計3億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
本連載の前回記事では、世間を騒がせた東芝の不正・粉飾会計事件に関する不可解なマスコミや業界、政府の対応を検証したが、今回は東芝内部の動きについてみていきたい。そもそも「天下の東芝」が、なぜかくも子供じみた不正経理を行ったのか、その理由を合理的に類推してみたい。
●世間の常識が及ばない
まず考えられるのは、東芝に象徴される「サラリーマン社長」を頂く一流大企業の病理である。経営コンサルタントの大前研一氏も指摘しているが、サラリーマン社長は任期を終えて引退しても自社に間接的影響力を残すが、会長職となり本業とは距離を置き、専任スタッフを抱えてコストのかかる財界活動などに勤しみ、「専用車」「個室」が維持されることが暗黙の了解となっている。辞任した東芝の歴代3社長は、今回の事件の責任を取って辞任した後でさえもこの3つの厚遇を引き続き受けていたという(9月21日付「産経ニュース」記事より)。
東芝という企業が社内しか見ていないとしか思えないこの感覚は、世間の常識の及ばないところである。創業社長・会長の多くが財界活動から距離を置いているのとは対照的である。もうひとつは、叙勲であろう。叙勲の要件は、主に70歳以上の者を対象に「一般的に個々の活動が長期にわたっていること」とされているので、社長を退任後も会長、相談役として企業になるべく居残る動機が存在するようだ。いずれにしても、表向き本業を外れた由緒のある一流大企業の社長にとって、社外活動はとても重要なものであるようだ。
社長退任後の社外活動の中心は財界活動であり、その頂点は経団連であろう。なかでも、戦後の東芝を立て直した石坂泰三・土光敏夫の両氏が経団連会長に就任し、その後は1980年の佐波正一氏以降、13年の佐々木則夫氏まで歴代の東芝社長は経団連副会長に就任していることをみればわかるように、東芝社長にとって経団連の要職を務めるのが当然であった。
特に、パソコン事業を立ち上げ辣腕で知られた西田氏は、会長への就任と前後する2009年5月に経団連副会長に就任する。第三者委員会の報告書にもあるように、この前後から「チャレンジ」と呼ばれる利益のかさ上げなどの不正会計がその後、佐々木氏、西田氏の影響が強い田中氏の社長時代まで常態化している。
存在しない利益を上積みして、税金まで払うのである。米国のように株価を操作して一部の幹部が利益を得るというわけでもない。財テクで大きな損失を生んでそれを隠し通さなければならなかったオリンパスのような状況でもない。株主代表訴訟という大きなリスクがあるなかで、このような不正行為を継続することの合理性は外部者にはまったく理解できない。
●「東芝のため」
ひとつ考えられるとすれば、業績が低迷していた東芝を立て直した西田氏が、土光氏以来の経団連会長職就任を社長時代から視野に入れていた可能性であろうか。企業業績が良いことは、経団連の会長職就任にとって重要である。東芝は業績が良くないといけなかったのである。実際に第三者委員会の調査によれば、西田氏は経団連副会長就任前の08年に、出身母体であるパソコン事業において50億円の利益水増し圧力をかけている。
あいにく09年の社長交代時期に、サブプライム・ローンによる金融危機により東芝は赤字決算に転落し、業績悪化の引責という名目で会長職に退くが、経団連の御手洗冨士夫会長が交代するタイミングが10年にめぐってきたという意味では、東芝社長退任・会長就任はむしろ好都合であったといえよう。そして、波に乗る原子力畑の佐々木氏を後任社長に据えたのは、パソコン事業の限界が見えた中で、東芝の業績回復にとっては望ましかった。ゆえに、当初両氏の関係は険悪なものではなかったといわれている。しかし、西田氏の経団連会長就任は、東芝の岡村正元社長が日本商工会議所会頭を務めていたために実現しなかったとされている。
その後も東芝は不正会計を続けた。西田氏は13年に経団連副会長を退任し、佐々木氏が同職に就任していることからみるに、佐々木氏も14年の経団連会長就任を視野に入れていたかもしれない。両氏とも目指すところは同じで、企業業績を良くみせるために社内の不正会計を続けたのではないか。同床異夢ともいえるが、このことが両氏を犬猿の仲にさせたのかもしれない。いずれにしても、日本の組織における帰属意識の強さを考えると、両氏は自身が経団連会長になることは「東芝のため」と思っていたことは、あながち嘘ではあるまい。
●内向きな名声レース
しかし、ここでひとつ疑問に思うのは、佐々木氏の社長退任時に西田氏が相談役にならず会長職を続け、彼の子飼いともいわれる調達部門の田中氏を社長に据えたことである。10年の経団連会長レースに敗れた西田氏が、通例であれば佐々木氏が会長になるのが普通であるところを、わざわざ副会長職を新設して佐々木氏を就任させてまで、なぜ会長職にとどまったのかは定かではない。佐々木氏が気に入らないから居残った、というだけでは説明がつかない。当時すでに委員会設置会社であった東芝の指名委員会委員の推挙だったと西田氏は言ったそうだが、西田氏が東芝内規である会長職の定年70歳まであと一年を残すだけであるのに、副会長職を新設してまで会長職に居残るのも奇妙である。
実際に、内規に従って14年6月に相談役に退くが、奇しくも同年春に経団連会長は榊原定征東レ会長に内定している。一縷の望みを託した経団連会長レースは終わったということかもしれない。西田氏は会長退任に当たり、その後任に副会長の佐々木氏ではなく社長経験のない室町正志氏(現社長)を会長に指名している。これは、確執を公言していた佐々木氏の次期経団連会長就任への道を断つためであったのであろうか。いずれにしても、今回の一件で、しばらく東芝出身の経団連会長の出現の可能性は消えた。
たとえ東芝を思ってのことであったとしても、歴代経営陣が東芝という優等生会社の経営を忘れ、内向きな名声レースに走ったゆえに起こったのが不正会計であったのではないか。
次稿では、このような馬鹿げたことが、一部の人間によってではなく組織として起こるのはなぜなのかを考察してみたい。
文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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