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シャープを巨額の税金で「救済」する価値はあるのか? 市場原理をゆがめるな! このままではJAL、東電の二の舞になる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46286
2015年11月10日(火) 町田 徹 現代ビジネス
■目を覆いたくなるような惨状
シャープの経営危機が深刻化していることの象徴だろう。先週初め(11月2日)、同社の株価は、取引時間中に約50年ぶりという安値を付けた。
先々週末に発表した2015年度上期(2015年4〜9月期)の連結最終損益は836億円の赤字で、通期で2期連続の最終赤字を回避することに暗雲が漂っているのだから、無理もないだろう。
そんな中でくすぶっているのが、官民ファンド「産業革新機構」によるシャープ救済案である。同社の主力商品である液晶を様々な工業製品で不可欠な“産業の米”とみなして、この分野を中国、韓国勢に牛耳られないために保護する必要がある、というのが救済の大義名分だ。
しかし、“産業の米”と言えば、かつての鉄鋼にしろ、半導体にしろ、今や特殊な製品とは言えず、価格本位で仕入れればよい製品だ。そんな論理を盾にシャープ救済を目論む案には、「だから官民ファンドなど不要なのだ」と首を傾げたくなる。
誰の目にも明らかなのは、目を覆いたくなるようなシャープの惨状だ。
先月(10月)30日発表の2015年4〜9月期連結決算によると、売上高は前期比3.6%減の1兆2796億円、営業損益は251億円の赤字(前期は292億円の黒字)、経常損益は386億円の赤字(前期は107億円の黒字)である。そして最終損益は前期の47億円の黒字から836億円の赤字に転落した。
同業のソニーやパナソニックが復調軌道に乗る中で、相変わらずシャープは1人負けだ。2012年3月期に3760億円の最終赤字、2013年3月期に5453億円の最終赤字を出した後、2014年3月期に115億円の最終黒字を確保したものの、2015年3月期に再び2223億円の最終赤字に転落。
同社は2016年3月期の最終損益の会社予想を発表していないが、上半期の状況をみると、通期でも最終赤字の脱出が難しい状況にあることは明らかだろう。
シャープは今年6月、巨額最終赤字の発生に伴う経営破綻を回避するため、減資による利益剰余金の欠損の解消と、増資(優先株発行)による資本増強を迫られた。
安易としか思えない判断で、その支援に応じたのは、みずほ銀行、東京三菱UFJ銀行のメガバンク2行と官民ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)である。引受額はメガバンク2行がそれぞれ1000億円、JISが250億円だった。
■格下げはトリプルCプラスにまで急落
当時、筆者の取材に応じたメガバンク筋は、「膿は出し切った」と支援の動機を語っていたが、その評価が正しかったとは言い難い。シャープは2015年4〜9月期に、新たに連結ベースで464億円の特別損失を計上せざるを得なかった。
その内訳は、収益性が停止し投資の回収が見込めなくなった生産設備の減損損失が111億円、従業員の希望退職や解雇に伴う事業構造改革費用が353億円となっている。
この中間決算を受けて、米系格付け機関スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、すでにジャンクボンド扱いの「シングルBマイナス」だった同社の格付けをさらに低い「トリプルCプラス」に引き下げた。
そんな惨憺たる中間決算を控えた先月10日頃、新聞各紙をにぎわせたのが、官民ファンドの産業革新機構によるシャープ本体への出資計画だった。
産業革新機構は、政府が2009年に民間企業26社と設立した政府系ファンドで、出資金の大半を国が出している。シャープの液晶部門とはライバル関係にあるジャパンディスプレイにも約8000億円の資金を融通し、筆頭株主になっている。
これまでシャープは、液晶事業を分社化し、新会社に産業革新機構、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業、米アップルから出資を受け入れる案を検討していた。今回の計画では、産業革新機構が主導権を握り、分社化を取りやめて、シャープ本体に同機構が出資する。それによってシャープの液晶事業が海外企業の掌中に落ちるのを防ぐという。
背景には、テレビ、PC、スマホに限らず様々な工業製品に組み込まれるようになった、言わば“産業の米”である日本の液晶を守るという大義名分がある。
■低迷の元凶はここにある
「日本の産業競争力全体を左右しかねない。(この分野を)中国や台湾、韓国に抑えられるのは、賢明と言えない」(経済産業省)というのである。政府が肩入れしているとあって、今なお、この産業革新機構によるシャープ本体への出資案は、シャープ再建策の本命と目されている。
確かに、高度成長期の鉄鋼や1970年代後半以降の半導体のように“産業の米”と呼ばれ、一時期、産業の中核を担うとされた製品はある。その当時は、幅広い分野で利用されており、「産業全体の基盤」「生活に必要不可欠なもの」と持て囃されていた。
しかし、工業製品の重要性は、時代や技術の流れによって、絶えず変化するものだ。安全保障や国防に関わる特殊なもの、一部のものを除いて、汎用化すれば、世界のどこから調達しても問題のない製品となっていく。
そんな移ろい易い製品を自国で生産し続けるために、巨額の税金を投入した官民ファンドが、特定の企業を救済するのは、市場原理に反する行為としか言いようがない。
特に、産業革新機構は、従来の業種や企業の枠を超えてチャレンジする「オープンイノベーション」によって、次世代の国富を担う産業を創出することを使命として設立されたはずである。
すでに革新的な技術だった時期が過ぎ、価格が競争力の決め手となっている液晶商品の生産を存続させるために出資するというのは、その使命をないがしろにする行為に他ならない。
液晶を抱える「ディスプレイデバイス」部門こそが、シャープ低迷の元凶になっている問題も見逃せない。
2015年4〜9月期の部門別営業損益をみると、「ディスプレイデバイス」部門は264億円の赤字で、主力8部門の中で最悪の業績だったのだ。
■なぜ不採算部門を切れないのか
ちなみに、シャープの部門別営業損益のトップは「ビジネスソリューション」(167億円の黒字)だ。
以下、「通信」(105億円の黒字)、「電子デバイス」(80億円の黒字)、「健康・環境」(25億円の黒字)、「コンシューマーエレクトロニクス」(19億円の赤字)、エネルギーソリューション」(26億円の赤字)、「デジタル情報家電」(150億円の赤字)となっている。
冷徹に採算を考えるならば、シャープにとって、最初に撤退を決断すべき不採算部門が液晶部門なのである。
会社更生法を申請した日本航空(JAL)の再建や、未曽有の原子力事故を起こした東京電力の支援など、日本は政府主導で市場原理に反する私企業の救済を繰り返してきた。それらは、淘汰されるべきだった企業の存続を意味し、その後の関連市場の競争関係を歪める弊害を招いた。
もともと、日本は電機メーカーが林立している。シャープで再び、JALや東電と同じ轍を踏む必要はないはずである。
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