1. 2015年11月10日 21:15:15
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http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-LE366_1109_B_NS_20151110031808.jpg 米企業の利益、成長よりも「質」が重要に米利上げでも銀行株が上昇しない理由とは? By BEN LEVISOHN 2015 年 11 月 10 日 17:20 JST •利益の質が重要 カナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナル(VRX)の不正会計疑惑、ドイツ自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW、ティッカーはVOW3)による排ガス不正問題、IBM(IBM)の会計処理をめぐる問題など、企業の行動や財務状況に疑いの目が向けられている。最近の例が示唆しているのは、企業の利益成長にのみ注目すると判断を誤るということだ。利益成長をけん引している要因を理解することが重要だ。 バリアントと同様に同業他社の買収に積極的なアイルランドの製薬会社、エンドー・インターナショナル(ENDP)が5日発表した第3四半期決算では利益と売上高がともに予想を上回ったにもかかわらず、株価は15%下落した。ニューヨークを本拠とする証券会社であるコンバージェクスのストラテジスト、ニコラス・コラス氏は、投資家は成長率を押し上げるために複雑な戦略を用いる企業を敬遠するようになると指摘する。 1株当たり利益(EPS)を押し上げる自社株買いでさえ、投資家の支持を失っているように見える。米自然食品チェーン大手ホール・フーズ・マーケット(WFM)は先週、予想を下回る業績と同時に10億ドルを借り入れて自社株買いを行うと発表したが、株価はS&P500指数の0.4%の下落に対し、1.6%下落した。 パビリオン・グローバル・マーケッツのストラテジスト、アレックス・ベルフルール氏は、自社株買いを行った企業の株価は第3四半期にS&P500指数を2.7%ポイント、アンダーパフォームしたと指摘した。同氏はホール・フーズのように多くの企業が自社株買いのために借り入れを増やしたことをその要因に挙げた。 ENLARGE しかし、企業が利益を良く見せるために利用するのは自社株買いだけではない。ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、アンドリュー・ラプソーン氏は、企業が一般的に認められた会計原則(GAAP)に基づく利益ではなく一時的要因を除いた利益を強調したり、利益予想を容易に達成できるような低い水準に下げたりすると指摘する。 このような理由から、ラプソーン氏は利益成長の大きさではなく利益の「質」を重視している。これは、バリュエーションが高い急成長企業の場合には特に重要だ。ラプソーン氏は利益の質を測定するために、「10の一般的な利益操作要素」を基にスクリーニングを行う。それらの要素には、純利益とキャッシュフローの差異、売掛金の異常な増加、利益率の減少、負債水準の上昇継続などが含まれる。ソシエテ・ジェネラルのデータによると、FTSE世界指数構成企業で利益の質が低い企業は、1990年以降の80%以上の期間で同指数をアンダーパフォームした。 企業が利益を良く見せる必要があるのは売り上げが低迷している時期が多く、第3四半期の決算発表がそれに当たる。これまで決算発表を行ったS&P500指数構成企業の売上高は4.4%減少し、売上高予想を上回った企業の割合は43%にすぎない。一方、利益が予想を上回った企業は70%だ。 売上高が予想を上回った企業を市場が高く評価するのは当然だ。ゴールドマン・サックスのストラテジスト、デービッド・コスティン氏は、10月30日時点で、売上高が予想を上回った企業の73%が決算発表日以降にS&P500指数をアウトパフォームしたと指摘する。コスティン氏は、成長が見込める銘柄として大型の一般消費財、ヘルスケア銘柄を挙げる。売上高の伸びは利益の増加よりもねつ造が難しい。 •利上げと金融株について再考する 米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は4日の下院金融サービス委員会で、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを行うのが「適切かもしれない」と証言した。そして、金曜日に公表された10月の雇用統計は非農業部門就業者数が27万1000人の大幅増となり、先物市場は12月利上げを70%織り込んだ。 これは金融株には大きなニュースだ。上場投資信託(ETF)の金融セレクト・セクターSPDR(XLF)は先週2.7%上昇し、週間ベースでは7月以降で最大の上げ幅となった。金利上昇で銀行は融資で利益を上げることが可能となり、投資によるリターン増加で銀行の利益は増加する。 問題は銀行の利益がどれだけ増加するかだ。数週間前に筆者は、利上げで米国経済が景気後退に陥れば、利上げは銀行にとって最悪の場合、利益ではなく害になると述べた。しかし、SNLフィナンシャルのネイサン・ストバール氏は、最善の場合でも銀行業界は以前のような状況に戻らないと指摘する。 問題の一端は、新たな規制で銀行の貸出能力が制限されることにある。新たな資本要件で銀行が金融危機以前のようにレバレッジをかけることが困難となり、貸し出す金額が減少する。資産の縮小で利益は減少し、金利が上昇してもこの状況は変わらない。 金利上昇で、通常は銀行が保有する証券のリターンも上昇するが、今回はこのリターンも低下する可能性が高い。というのも、規制によって銀行が緊急時に容易に売却できる証券の保有を増やすことを要求されているからだ。このため、高いリターンを生み出す「高リスク」資産の保有は減少することになる。 短期金利と銀行融資の利回りの間には強い相関性があるが、銀行間の競争激化によって利回りの上昇はこれまでより低くなることが予想される。「金利上昇で銀行の収益性は高まるが、リターンは金融危機前の水準には届かないだろう」とストバール氏は指摘する。 FSBの新規制、欧米銀への影響少ない 欧米の大手銀行は比較的わずかな追加コストで「総損失吸収能力」の最低要件を満たす見通し PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES By PAUL J. DAVIES 2015 年 11 月 10 日 16:47 JST 大手金融機関の「大きすぎてつぶせない」という問題に終止符を打とうと対策を進める金融当局は、金融機関に1兆2000億ドル(約147兆円)という恐ろしい数字を突き付けた。主要国・地域の中央銀行や金融監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)が9日発表した新銀行規制で必要となる起債総額を最大に見積もった場合の数字だ。 新規則は大手銀行が多額の損失を出したときに既存の株式や債券で穴埋めできるようにするもので、救済に税金が投入される可能性を最小限にすることを目的としている。 しかし現実には、この総損失吸収能力(TLAC)に関する規制が適用されても、欧米の銀行の多くは多額の債券を発行する必要はない。欧州の大半の地域で法改正によって要件が満たしやすくなる上、償還期限を迎える優先債を少しだけ異なる種類の債券で借り換えれば、規制の要件をほぼクリアできる。 株主への影響は大きくはないが、銀行が新規制に違反すればリスクが生じる。規制で定められた要件が満たされるまで配当が自動的に制限されるからだ。 予想外だったのは中国の4大銀行が適用除外とならなかったことだ。それでも、中国の銀行に求められた要件の達成期限は先進国の銀行より6年遅い。 金融機関は保有するリスク加重資産のうち、株式やさまざまな種類の債券が占める割合を2019年までに16%、2022年までに18%とする必要がある。中国の銀行2025年と2028年までにそれぞれの要件を達成するよう求められている。 しかし、世界の金融システム上重要な銀行に求められる資本の上積みなどの資本バッファーは損失吸収能力にカウントされない。 一方、債券では、偶発転換社債などの劣後債や無担保優先債(ただし無担保優先債が預金やデリバティブ負債より返済順位が低い場合)が損失吸収能力に含まれる。 米国と英国では、持ち株会社が発行した優先債はほぼ全て損失吸収能力に算入される。英国の銀行は既に持ち株会社が発行する債券を増額し始めており、スイスの金融機関は債券発行のために持ち株会社を設立している。 銀行に持ち株会社がないドイツでは、新たに法律を制定して、銀行が発行する全ての優先債の返済順位を預金とデリバティブ負債より低くする。アナリストらによると、その他の欧州の国もほとんどがドイツと同じ手法を採用するとみられる。 国際決済銀行(BIS)によると、こうした全ての要素を考慮すると、欧州と米国の銀行は2019年までに約2800億ドル、2022年までに4550億ドルの起債が必要になるという。 中国の4大銀行に必要な起債額はさらに大きく、2025年までに2870億ドル、2028年までに3780億ドルを調達しなければならない。 欧州の銀行にとって起債による負担は限定的だ。シティグループのアナリストの試算では、欧州の銀行に求められる起債額は平均で2017年の利益予想の2%にすぎない。 結局、銀行が再び公的資金で救済されることはないという保証はできない。しかし、TLAC規則が導入されることでその可能性は大幅に低下する。しかも、必要な資金はほんのわずかだ。悪い話ではない。
NY連銀の新たな参考金利、包括的銀行間金利の指標に By KATY BURNE 2015 年 11 月 10 日 15:53 JST ニューヨーク連銀の分析担当者らは9日、同行のブログサイト「リバティー・ストリート・エコノミクス」に掲載したブログで、2016年初頭に公表を開始する同行の最新の参考金利であるオーバーナイト(翌日)物銀行調達金利(OBFR)は、米国の銀行間資金調達コストの包括的な新指標になるとの見通しを示した。 OBFRは、フェデラルファンド(FF)市場とユーロドル市場の取引から算出され、「米国に本拠を置く銀行のオーバーナイト物資金調達コストの新たな尺度を提供する」と述べている。 分析担当者らによると、OBFRは「他の既存の金利よりも多くの取引」に基づいており、「市場参加者により包括的なオーバーナイト物無担保借り入れコストの尺度を示す」ことができる。 ニューヨーク連銀はこれまでに、新たなオーバーナイト物参考金利を16年初めのどこかで実地に移すと発表し、近くなったら追加情報と導入時期を通知するとしていた。2月には別に、同行が主なオーバーナイト物金利の指標とする日々のFF実効金利について、資金取引仲介業者から提供された数字ではなく、金融機関から直接集計した係数から算出したい意向を示していた。また、FF金利とOBFRの計算方法も、中央値から加重中央値に変更する計画だ。 ニューヨーク連銀が2月に発表した声明によると、新たな資料はFR2420と呼ばれる報告係数を用い、仲介された資料だけよりも幅広いFF取引を捉え、実効FF金利を計算する上でより大きな母数を提供するとしている。 天候はアナリスト・リポートにどう影響するか−米論文 雨のニューヨーク証券取引所 PHOTO: SCOTT EELLS/BLOOMBERG NEWS By CHARLIE WELLS 2015 年 11 月 10 日 16:50 JST
悪天候は投資家にとって良いものではない。 雨、風、そして雲は、市場を知り尽くした人々にさえ「緩やかな鬱(うつ)状態」を生じさせ、金融ニュースに対する対応が遅れる原因になるという研究結果が明らかになった。 米スタンフォード大学経営大学院のエド・ドハーン助教(会計学Ph.D)率いるチームの研究によると、証券アナリストは、悪天候の中で仕事をすると、好天候の場合よりも収益発表に対する反応が鈍くなることが分かったという。アナリストは、投資の決断に利用されるリポートを作成している。たとえ数分間であってもリポートの発表が遅れると、投資家は収益を得る機会を失うこともある。 ドハーン助教(会計学Ph.D)は「行動ファイナンス論において、人間は完全に合理的な存在だとわれわれは考えたがる。しかしわれわれは心理学から、人間はあらゆる種類の刺激に極めて影響されやすいことを学んでいる。自宅の環境から雲、風、そして雨まであらゆるものに影響されるのだ」と述べた。同助教は他のメンバーとともにチームでこの研究プロジェクトを実施し、報告を執筆した。 米スタンフォード大学経営大学院のエド・ドハーン助教 ENLARGE 米スタンフォード大学経営大学院のエド・ドハーン助教 PHOTO: STANFORD アナリストに対する天候の影響を調べるため、同チームは証券会社アナリスト(セルサイド・アナリスト」と呼ばれる)5456人が1994−2004年に書いた63万6000本の市場に関するリポートを検討した。研究者たちは、各アナリストがどこでそのリポートを書いたかを確認、この63万6000件のリポートの書かれたときの天候をチェックした。 その結果、企業収益が発表された時に悪天候下にいたアナリストは、年間利益予測やその企業の株式を買うべきか、売るべきか、見送るべきかについての投資判断、あるいは目標価格の設定を発表する確率が好天候下のアナリストより9−18%も少なかった。ドハーン博士によれば、分析では天候の影響だけを測定するため、証券会社やアナリストによる違い、あるいは市場の地合いなどの影響を取り除いたという。 ドハーン博士はこうして得た知見を、天候と心理的ムードに関するより広範な研究結果に結び付けている。それによると、陰気な天候によって、人は穏やかなうつ状態になり、認識力が低下、無感動になり、活動も鈍化するという。 研究はまた、天候が株価に及ぼす効果についても若干の考察を行った。ニューヨーク市からの気象データに基づくと、企業業績のニュースに対する株価の反応は、悪天候の日のほうが好天候の日よりも鈍かったという。 アナリスト行動を研究し、ドハーン論文を査読したハーバード大学経営大学院のローレン・コーエン教授(金融論)は、個々のベースでは「天候がムードに影響を及ぼす例があらゆる現場に沢山ある」と述べた。しかし市場全体に対する影響を示すのは難しい。同教授は「天候が市場におけるあらゆる調査対象にどのように影響するかを示さねばならないし、調査対象は地理的に拡散している」と語った。同様に、コーエン教授は、天候と株価との関連を実証するのは至難の業だとし、それは特定企業の株価については、単一の投資家が大きな違いをもたらすことがあり得るからだと述べた。 ドハーン博士は、今回の研究論文が革新的なところは、個々のアナリストに対する天候の影響に関する知見だとし、天候と株価との関係についてはさらに研究が必要だと述べた。 |