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介護職場で3年間離職者ゼロ実現 採用方法大幅見直しが転機(女性セブン)
http://www.asyura2.com/15/hasan102/msg/378.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 11 月 08 日 16:12:15: igsppGRN/E9PQ
 

介護職場で3年間離職者ゼロ実現 採用方法大幅見直しが転機
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151108-00000020-pseven-soci
女性セブン2015年11月19日号


 3人の老人の不審死が明らかになった川崎の入居者転落死事件。問題の老人ホームは今も営業を続け、2か月が経っても事件の真相解明には至っていない。入居老人の不審死や虐待などについての報道が目立つようになった昨今だが、その裏には介護現場の過酷な労働があるという。昼夜を問わない激務、低賃金、離職者も多いなどの問題が取り沙汰されている。

 そんな中で、職場環境を目覚ましく変革した介護現場がある。社会福祉法人 合掌苑(東京都町田市)だ。離職率が高いこの業界で、3年間、離職者(1年以内)ゼロ。それは、2012年から職員の採用方法を大幅に見直したことにある。同苑採用担当・加藤洋子さんが語る。

「2009年の年間離職者は10%を超えていました。サービスの品質向上のためには、長く働いているスタッフが多いことが重要なポイントですし、人が足りなくなると“誰でもいいから採用しなきゃ!”と誤った判断をしてしまうことがある。

 まず見直したのが、採用のプロセスです。合掌苑の理念に共感し『ここで働きたい』という気持ちの高い人材を採用するプロセスを作りました。面接をして、通過した人には4日間のインターンシップをしてもらいます。身体の介助も含めて、現場をしっかり見ていただきます。その後、グループワークや面接を繰り返し、本当にここで仕事がしたいかどうか、確認します」

 以前は学歴や専門的な知識を重要視し、採用していたが、そうした意識も変え、人間性に着目している。働き始めてからの環境改善にも力を入れた。

「日勤、夜勤と勤務時間が不規則なのは、スタッフにとって負担になる。そこで、2011年から夜勤専従スタッフを確保するようにしました。また、10日〜2週間の連続休暇も取得できるようにしています。身心共に健康な状態でいることが、サービスの質の向上や安定、入居者様にとって安心した生活につながると考えています」(お客様相談室マネジャー・神尾昌志さん)


 

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コメント
 
1. 2015年11月08日 20:36:03 : jXbiWWJBCA

衣服に汚物・手回らず無視…老人ホームの質、見分け方は
清川卓史、中村靖三郎、見市紀世子
2015年11月8日19時38分

介護職員による虐待件数の推移

 有料老人ホームをめぐる問題が相次いで明らかになっています。高めの料金を支払うかわりに快適な手厚いケアを受けられるはずなのに、何が起きているのでしょうか。
 神奈川県の40代女性は、有料老人ホームに入居していた祖母の部屋を訪ねたときのショックが忘れられない。昨年9月のことだ。
 臭いが鼻についた。認知症の祖母が着ていたカーディガンや寝具には便がこびりついていた。トイレの便座、手すりも便で汚れていた。洗面台に水あかとかび、テレビ台にはほこり。ナースコールを押しても反応はなかった。
 まだ暑さを感じる気候だったが、窓は閉め切られ、エアコンもついていなかった。足元のおぼつかない祖母がきちんと水分補給できているのか気になったが、ホームのスタッフには「ご自分で摂取できています」と返された。
 部屋や衣類の汚れを指摘すると、「すぐ確認します」という返答があった。気になって翌日に再訪問すると、祖母は前日と同じ汚れた服を身に着け、部屋は清掃されていなかった。施設側は「人手不足で、できませんでした」と平謝りだった。
 入居費用は月額25万円程度。祖母の年金だけでは足りず、息子である女性の父親(70代)の年金も投じた「終(つい)のすみか」だった。
 祖母のお金で日用品の買い物をする際、職員が自分のポイントカードにポイントをためていたことも発覚。不信感が高まって転居先を探し、今年1月になって空きがあったグループホームに転居した。
 有料老人ホームで起きた一連の問題と、自ら目撃した現場の実態が底流でつながっているように思えてならない。「あのとき私が気づいていなかったらと思うとゾッとする。泣き寝入りの人はたくさんいると思います」
■ネグレクト常態化
 東京都内の有料老人ホームで介護職員として働く50代の女性は「人手不足で、ネグレクト(放置)と言っても過言ではない状況が常態化している。質のよい介護などしたくてもできない。それが月30万円近くを入居者から受け取る有料老人ホームの実態です」と打ち明ける。
 入居者の大半が認知症だ。身体的介助が必要な人も数多くいる。排泄(はいせつ)介助と歯みがき、自室誘導などが重なる食後の時間帯や、夜勤帯は特に忙しい。個室やトイレの複数のナースコールが同時に鳴る。「早く来てー」と叫ぶ入居者たち。対応が追いつかず、ナースコールを引き抜きたい衝動をこらえながら「待ってくださいね」と言い続ける。「そのうち鳴っている状態に心身がまひしてしまう。最後は(入居者が)叫んでも無視しています」
 夜勤がきついから、と「妊活」のため職場を去った優秀な女性職員がいた。穴埋めに来るのは経験の浅い新人だ。中堅の介護福祉士でも夜勤手当などを含めて手取りは月20万円台前半。「募集しても人が集まらない」と上司も不機嫌だ。介護施設の現場は慢性的な疲弊状態にあるという。
 おむつを外してしまった認知症の入居者を「だめじゃない!」と子どもを怒るように叱責(しっせき)する同僚の姿を時折見かける。「心を鬼にするか、まひさせないと、今の現場では生きていけません」
■職員が虐待、13年度221件
 介護職員による虐待件数は急増している。厚生労働省によると、2013年度に自治体が介護職員らによる虐待と認定したのは221件。施設別で最も多かったのは特別養護老人ホーム(特養)の69件で、有料老人ホームは26件だった。自治体が受けた相談や通報は計962件に上った。
 虐待の背景には何があるのか。介護を市民の視点から追ってきた「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」の小竹雅子さんは「施設の急増に、人材確保と行政の指導力が追いつかない」と分析する。特に近年、異業種からの民間参入が目立つ有料老人ホームの数は14年に9581件で、この10年で約10倍になった。
 介護現場の人手不足は深刻だ。15年8月の有効求人倍率は全体の1・23倍に対し、介護分野は2・67倍。その理由に待遇の悪さも指摘されており、介護職員の平均月給は約22万円と全産業の平均より11万円ほど低い。平均勤続年数も全産業の半分以下の5・7年。1年間で辞める人の割合は全産業(常勤)より3割多い16%に上る。人手不足で、経験の乏しい職員で穴埋めせざるを得ないのが現状だ。
 小竹さんは「介護職員を虐待まで追い込まないよう専門技術の習得が必須だが、労働環境が整っていない」と指摘する。厚労省が虐待の発生要因を自治体に調査(複数回答)すると、最多は「教育・知識などに関する問題」で66%、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」が26%を占めた。厚労省は団塊の世代が全員75歳になる25年には介護職員が約37万7千人不足すると推計。安倍政権は「介護離職ゼロ」の目標を掲げるが、「介護職の離職」を減らすめども立っていない。
 虐待の実態をつかむ難しさもある。13年度中に自治体が相談や通報を受けて調査した事案のうち3分の1は虐待の有無を認定できなかった。
 さいたま市は家族らから通報があると、「調査に入ると施設側に入居者を特定される可能性がある」と家族の意向を確認。すると、調査を拒む家族が多いという。入居者が行き場を失うといった懸念からとみられる。
 家族の了承がなければ、原則として事実確認は施設任せになる。「行政が主体的に調査できなければ、証拠をつかむのは極めて難しい」と担当者。また、千葉市の担当者は「記録を書き換えられたら見破りようがない」と話す。
     ◇
 有料老人ホーム選びは、老後の生活に大きくかかわります。失敗しないためには、どんな点に気をつけたらいいのでしょうか。劣悪な施設を見分ける注意点や対応策を専門家に聞きました。
■職員の表情や清掃状況は
 建物の外観がきれいでも、内部の介護の「質」はわからない。入居を決める前に、施設をよく知ることが重要だ。
 高齢者住宅財団の高橋紘士理事長は、有料老人ホームを選ぶ際の注意点として「見学をして泊まり、食事をする。1カ所だけ見に行くのではなく、複数を比較することが大切」と指摘。焦って選ばないように早めの準備を勧める。
 実際に見学する時にこそ、劣悪な施設かどうか見破るヒントがある。介護保険制度が始まる前から「特養ホームを良くする市民の会」で活動してきたNPO法人「Uビジョン研究所」の本間郁子理事長は、職員が笑顔かどうか、配膳がぞんざいでないかなどに注目するという。
■退職者数もヒントに
 インターネット上にも手がかりがある。介護の苦情や消費者トラブルを長年分析してきた元国民生活センター調査室長の木間昭子さんは、介護保険法に基づいてネット上で公表されている「介護サービス情報公表システム」の活用を勧める。このシステムは、有料老人ホームなど介護保険の対象となる施設を地域やサービス種別ごとに検索できる。気になる施設があれば、介護職員に関する項目のうち「退職者数」「経験年数」などを見ておきたい。
 木間さんは「多くの職員が辞める施設は、労働環境に問題がある可能性がある。職員が頻繁に入れ替われば入居者の特性を把握した介護がしにくくなり、介護事故の原因にもなる。経験年数も重要です」と話す。
 もちろんデータだけで判断するのは危うい。気になる点があれば、施設側に説明を求めるようにしよう。
 一例として、転落死や虐待が問題となっている「Sアミーユ川崎幸町」(川崎市)の従業員情報を調べてみた。開示されている情報では、8月31日時点の常勤介護職員数は29人で、2014年度の退職者数は18人。6割ほどが入れ替わったことになる。更新前の開示情報によると、13年度には22人が退職していた。
 運営会社の親会社メッセージ(岡山市)に確認したところ、系列施設への異動も「退職者」に含めており、実際に会社を辞めたのは14年度で11人だという。ただ11人でも常勤介護職員の4割近い。同社経営企画部は「離職率が高いのは事実。採用後の教育およびフォロー態勢に問題があったと思われる」と説明する。
http://www.asahi.com/articles/ASHBF65D9HBFULZU00W.html?iref=com_alist_6_01 

2. 2015年11月10日 14:03:58 : nJF6kGWndY
「三世代同居」は最高の子育て・介護支援策?

血縁より大事な「助け合える」関係

2015年11月10日(火)河合 薫


 学生時代、“独身キャリアウーマン”に憧れていた私の友人は、社会人2年目に結婚。
「DINKSだよ。だって、子どもできたら、仕事続けられないもん」
“不覚”にも結婚してしまったと苦笑いする彼女は、“DINKS”を宣言していた。

 そんな彼女が、幸せ満タンの笑みで赤ちゃんを抱く写真を送ってきたのは、DINKS宣伝からわずか3年後。その翌年には、
「来月から仕事に復帰します! これまでとは違う部署で、心機一転。仕事も育児も、全力でがんばる!」とのメールがあった。

 ある日、彼女から珍しく電話があった。いつもはメールなのに、「なんじゃ?」と慌てて出たところ、「は…い…」とすすり泣く声。
 「ヒック…○○がね(子どもの名前)、熱で苦しんでる時にね、ヒック……、私、営業先の接待してたの……ビェ〜〜ン」
と泣き出したのである。

 彼女の説明によれば、高熱に驚いたベビーシッターさんが、会社に電話。
 「△△さんをお願いします」
 と電話口で伝えたところ
 「△△ですか……、どこの部署の△△でしょうか?」
 「□□です」
 「□□には、△△はおりませんけど……」
 という事態が起きてしまったのだ。

 不幸な事件が起きてしまった理由は、4つ。
 1.育休復帰時、新しい部署に異動になったこと。
 2.会社では旧姓を使っていたこと。
 3.結婚していることを知らない同僚たちがいたこと。
 4.「育児を言い訳にしたくない」と、自分から子どものことを話すことを極力避けていたこと。

 あれから20年。さすがにここ数年は言わなくなったけど、彼女は「私はなんやかんやいって、自分のことしか考えていない」と、自責の念に苦しんでいた。

 先日、「選択的夫婦別姓」という、姓の意味、家族のカタチへの判断が、最高裁の手に委ねられることになり、賛否は二分した。

 「まぁ、相手の男の姓にもよるよね〜」
 「私も、結婚ためらったの旦那の姓のせいだよ! 絶対に“あの頃は〜ハァッ”とか言われるでしょ(笑)」
 「私なんて、今の姓、昔の旦那のだもんね。仕事の関係もあったけど、あっという間に離婚したから、さすがに親に申し訳なくて。自分で責任を持ちたかったの」
 「研究者は死活問題。結婚前の論文、業績として認めてもらえなかった〜〜」
 「うちは養子。なんか申し訳なくて。家系が途切れるって、わけが分からん」

 たかが姓、されど姓。同じ女性でも、姓の選択基準はさまざまだ。
 「選択的」と言っているのだから、賛成も反対もない、と思うのだが、反対する人たちは、「家族の一体感が薄れる。バラバラになる」、「子どもが可哀想」と口を揃える。

 同じ姓を名乗っていても、バラバラになるときはバラバラになる。社会的コミュニティーの最小単位は家族ではない。会話だ。会話のない家庭の子どもほど可哀想なことはない。

 そもそも家族って何なのだろう。明治時代の家族のカタチを守り続ける意味は、どこにあるのだろうか。
 家族のカタチは、仕事を続ける女性だけじゃなく、「私は専業主婦だから」と言ってる女性にも、「オレには関係ない〜」と思っている男性にも、大きな問題である。

 そこで、今回は「家族のカタチ」について、あれこれ考えてみようと思う。

 まずは、夫婦別姓、再婚禁止期間廃止などのニュースが駆け巡った一週間ほど前に、「な、なんじゃこりゃ!」と一斉に女性たちから攻撃を受けた、ニュースを紹介する。

「三世代同居」ですべて解決?

 「3世代同居で所得税など優遇 子育て支援で政府検討」という見出しで、産経新聞が報じた(以下抜粋)。

 「政府は、『新三本の矢』の『第2の矢』である子育て支援の一環として、親世代との同居を目的とした改修工事の費用について、所得税や相続税を軽減する方向で検討を始めた。世代間の助け合いで子育て負担を緩和、出生率低下に歯止めをかけるのが狙い」

 “子育て”という時代のキーワードに、同居、負担緩和、出生率低下がくっついたとなれば、「な、ナニ〜〜!」っと、騒ぎの1つ2つ起きて当然である。ネットではかなりの盛り上がりをみせた。女性たちが一斉に「ふざけるな!」と怒った。

 ところが、メディアは興味がないのか、あまり大きく報じなかった。しかも、合点がいかないのが、11月7日には「保育の受け皿『50万人分整備』」(朝日新聞)という見出しで、「保育の受け皿の確保、新婚夫婦や子育て世帯の公的賃貸住宅への優先的な入居や家賃負担の軽減、介護施設の増加」といった政府の「緊急対策」の一つとして、「三世代同居案」を報じたのだ。

 不気味だ。
 なぜなら、「そんなことより保育所を増やせ!」「同居できない人はどうすりゃいいんだ!」「介護施設を増やせ!」と、2週間前にネットに上げられていた不平不満が、「受皿確保、新婚夫婦、介護施設」とすべて網羅。
 まさか、まずは小さく花火を上げて、反応見て決めたとか?
 そういえば、一億総活躍社会のホームページに、「平成27年10月21日(水)から平成27年11月6日(金)まで。皆さまからのご意見をお寄せください」なんてのもありましたね?

 いずれにしても、受け皿「50万人整備」ならそれはそれで結構なことだが、だからといって三世代同居案が変わるわけじゃない。
 この“案”の根底には、なんでやねん、とぽか〜んと口があく、わけの分かんない論理が潜んでいるのである。

 「平成 28 年度税制改正要望事項」には、
 少子化社会対策大綱、女性活躍推進本部提言などで、「家族間の助け合い」が必要とされてるため、この制度が必要と書かれている。
 また、

20.6%が三世代同居を理想
78.7%が祖父母の育児や家事の手助けが望ましい
出産や育児に関する最も重要な支援提供者は親(=祖父母)
 との結果が、内閣府や国立社会保障・人口問題研究所の調査で明らかになっていて、「ジジババの力」は必要不可欠。
 で、この制度が実行されれば、

結婚、妊娠、出産、育児に対する子育て層の不安や負担が軽減
少子化対策につながる
子育て層を担い手とした親世代の介護が自助で行われ、介護費が抑制される
高齢社会対策にもつながる
若者の経済的不安も、子育ての経済的不安も解消
 など、さまざまな問題が解消され、さらに、
「世代間交流がもたらす子の人格形成における好影響や、女性の就労促進による税収増及び世帯収入増による経済効果が見込まれる」のだという。
 ふむ。これは…ある意味、すごい。

 「これで少子化も、女性活用も、在宅介護も、非正規の低賃金も、待機児童も、空き家対策も、ぜ〜んぶ解決できちゃうじゃん。共働き世帯が1000万を突破して増え続けてるし、みんなのためになるよ!」ってこと。

 「俺たち超イケテル〜。三世代同居って、キーワード、思いついちゃったもんね〜」

 と、“ドヤ顔“で、これを提案した。そんな姿が目に浮かぶ内容だったのである。
 この国の、いや、これを提案した人たちは、「家族」と一緒に住みさえすれば、何でもできる! と、考えているのだ。
 三世代同居――。確かに、それで解決されることもあるかもしれない。私も、三世代同居をうらやましく思うことはある。

 うっかり、ホントにうっかり、子どもを産むのを忘れ、自分のことだけ考え、生きてきたが(私のことです)、そのことを一回だけ後悔したことがある。
 父に“変化”が起きて、実家に通う日々が続いたときだ。「連れて行く孫がいれば、もっと父は笑ってくれるのに」。そんなふうに思うことがあった。自分勝手に生きてきたことを、正直、悔いた。
 四六時中「大丈夫かな」と父のことが頭から離れないし、母は限界に達していて母のことも心配で。「一緒に住んでいた方が楽かも」と思うこともあった。

 だが、リアル同居はそんなに甘いもんじゃないと思う。「育児負担をほにゃららら〜」って言うけど、ただでさえ出産年齢が高くなった世の中だ。育児と介護の両方が、現役世代にのしかかる可能性は高い。

介護や子育てを家族に押し付ける

 「子育て支援」という耳障りのいい言葉を使い、ただただ、
 「女性のみなさん! しっかり働いて、子ども産んで、親の介護もよろしくね!」っと言ってるようなもんだ。「介護離職ゼロ目指して、休業中の賃金上げるように企業には頼んでおいたし、非正規の賃金も上げてね、って言っておいたから。あとは頼むよ!」
 と言ってるだけ。

 「介護。子育て。福祉はみなさんの家でよろしく!と、家族に押し付けた。日本では、戦後一貫して社会保障に大きな支出をせず、企業内福利厚生が公的福祉を補完してきたけど、福祉政策までをも、家族に押し付けた。

 家族イデオロギーに基づいた政策は、子育て、介護など、他者の助けを借りる必要のある問題を、社会問題ではなく、個人の問題という、自己責任にすり替える。婚姻関係は、異性間だけで結ばれなきゃダメ。妻は子どもを産まなきゃダメ。高齢になった親の世話は子どもがしなきゃダメ。つまり、外に頼るな、と。

 時代とともに、企業のカタチも、家族のカタチも、変わってきたというのに、なぜ、都合のいいときだけ、家族かくあるべしという、家族イデオロギーを持ち出す?

 「会社に迷惑をかけてまで、なぜ女性は会社を辞めたがらないのか。共働きをしないと生活が苦しくなるからだろうけど、私たちが子育てをした頃は、みんな貧乏暮らしだった。保育所の待機児童の問題も異常。子どもは、自分の家で育てるもの。だから昔は、みんな親と同居していた。いまの若い人は親と同居したくないし、収入が減るのも嫌だから、保育所に子どもを預けて働くのが当然という。迷惑千万。出産したら女性は会社をお辞めなさい」

 2年前の、作家の曾野綾子さんの、「出産したら女性は会社をお辞めなさい」発言と一緒だ。

 もちろん、ただ「税を優遇しますよ〜」って言ってるだけなのかもしれない。だが、時代にそぐわない家族イデオロギーの先に待ち構えているのは、「孤立」と「貧困」。
 「GDP(国内総生産)600兆円」、「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」を目指す国にとって、人は単なる「労働力」。つべこべ言わずに働いてほしい。生身の人間の心など、一切関係ないのである。

人生を左右するのは「血縁」より「人と人」の関係性

 そもそも家族=血縁関係と当たり前のように考えているようだが、心理調査をやるときに、「家族」をどう問うかは極めて難しい。「配偶者」ではなく「同居人」、「既婚」ではなく「パートナー」、といった具合に、血のつながりではなく、関係性をベースにした問いをたてる。
 理由は簡単。人間の心、人の持つ生きる力、人生の満足度などを左右するのは、「血縁」ではなく、「人と人」の関係性だからだ。

 先日、プライベートの研究会で、「家族のカタチ」を改めて考えさせれたプレゼンがあった。
 プレゼンテーターの女性は、地方在住の2人の子どもを持つワーキングマザー。多くのワーキングマザーたちがそうであるように、妻として、母として、そして、仕事を持つ1人の人間として、両立に悩んできた女性だ。
 彼女が勤める会社には、ワーキングマザーのためのフルタイムの就業制度があったが、手のかかる就学前の子どもたちと仕事の両立には、いくつもの壁があった。

 そんな彼女を救ったのが、「持続可能な自律的コミュニティーで、資産価値向上を目指す新しい日本型テラスハウス」だった。
 そこで暮らしている住民たちは、年齢もバラバラ、職業もバラバラ、出身地もバラバラ、世帯の家族構成もバラバラ、住居の契約形態も賃貸、分譲とバラバラだらけ。
 ライフスタイルもさまざまで、ワーキングマザーもいれば、専業主婦もいる。子育てまっただ中の人もいれば、リタイヤした人たちもいる。
 そんなバラバラの人たちが、まるで「家族」のようにつながっているのだそうだ。

 会議のある大切な日の朝、子どもが熱を出しても大丈夫。
 ラインにメッセージを流せば、「昼までならうちで」「じゃあ、その後はうちで」と手を挙げてくれる人たちがいる。
 かつて血縁で繋がる大家族にあった「助け合い」が、互いにケアしあう日常が、強制ではなく自然に行われていた。
 「このテラスハウスのおかげで、私は育児と仕事を両立できています」と、彼女は満足げに語っていた。

 テラスハウスの開発者が目指したのは、「人間の絆を基本にそれぞれの居住者のつながりを大切にする住宅地」だ。
 その思いの原型は、子どもの頃に住んでいた団地の“豊かさ”だったそうだ。

同じ団地に住む同級生たちと、外で毎日のように遊び回る
夕方になると母親たちが台所のベランダから「ご飯よ!」と声をかける
窓越しに見える、友達の部屋の明かり
「おかえり」と笑顔で迎えてくれる下の階のおばあさん
父親からこっぴどく怒られた次の日に、慰めてくれた団地内のおばさんたち
 「昭和の時代には、どこにでもあった顔の見えるコミュニティーを、再現したい。経済大国でありながら、生活の豊かさを感じにくい現代社会だからこそ、開発する意味がある」ーー。
 そんな開発者の思いが込められた、テラスハウスだったのである。

 とはいえ、“思い”だけで実現できたわけじゃない。
 テラスハウスの中央に作られた共有の庭に、子どもたちが集い、お花の世話をし、プールを持ち込んで水遊びする。ハロウィーンパーティーなどのファミリーイベントは、子育て世帯が一緒に催し、クリスマスにはみんなでリースを作り、テラスハウス中に飾り付けをし、イルミネーションを作り、みんな集まって点灯式を開催する。

 人と人が結びつく場、機会、時間を、開発者たちが積極的に作り、一世帯、また一世帯と、参加する世帯が増えた。互いの顔が見える関係が、助け合い、見守り合い、互いにケアし合う日常を作ったのだ。

 ソーシャルキャピタル。目に見えない、人と人のつながり。一つの住宅の中で「人間が持つ資源(キャピタル)」に投資し続けたことで、資産価値の高いコミュニティー(リターン)が生まれた。

家族を超えた家族を

 健康社会学者のアーロン・アントノフスキーは、1980年代に書いた著書の中で、「日本人の困難を乗り越える力は高い」と記している。その理由の一つが、「親と子、親と地域、子と地域」の結びつきだった。
 子どもたちの遊び声、雷オヤジの怒鳴り声、母親たちの井戸端会議ーー、そんな日常のたわいもない風景の中に、家族を超えた家族があったのである。

 家族=血縁だけじゃない。たとえ血縁関係があっても、ケアし合わない“家族”もいる。互いにケアしあう関係性の中で作られた、家族のカタチ。そういったオトナ同士の関わりも、一つの家族なんじゃないだろうか。血縁関係ではない、心の関係、とでもいうのだろうか。

 もし、心の関係も家族として認める社会になれば、夫婦別姓や再婚禁止期間だけじゃなく、LGBTの問題や、孤独、貧困なども含めた現代社会に蔓延するさまざまな問題にも、解決の糸口が見えてくるように思う。
 “活躍”する社会より、「助けて」と言える社会の方がいい。……っと、家族を作り忘れたミドル女は願うわけです。

このコラムについて
河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/110900020/?ST=print


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