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12月の利上げを示唆しているイエレンFRB議長。10月雇用統計は市場予想を上回るものだった(写真:AP/アフロ)
あの時と酷似、上げ相場は弱気から生まれる 「荒い値動き」が想定される楽しみな1週間に
http://toyokeizai.net/articles/-/91690
2015年11月08日 平野 憲一 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト 東洋経済
1987年2月NTT第1次放出、11月第2次放出、翌1988年10月第3次放出と進む中で、アメリカの利上げと原油安、日本の金利低下と株高が起こり、バブル景気が過熱化していった。今回、郵政第1次放出が始まり、アメリカは利上げタイミングを探り、原油価格は低迷を続け、日本の金利はゼロからマイナスになろうとしている。似ている!
さらに、当時NTT株人気化で株初心者が「株は儲かるもの」と認識するようになったが、今回の郵政株でも、しばらく忘れられていた「株は儲かるもの」が復活した。
■追加緩和の可能性は高い
10月22日のNY株、ダウは320.55ドル高の1万7489.16ドル、ナスダックは79.93ポイント高の4920.05ポイントと急変した。ECBのドラギ総裁が、理事会終了後の記者会見で、12月に資産購入の拡大など追加の量的金融緩和に踏み切ることを示唆したためだ。
さらに中国人民銀行が10月23日、銀行金利の自由化と同時に政策金利を0.25%引き下げ、同時に預金準備率も下げた。この日から世界の流動性は、1ランク水準を上げた。日本の10月ハロウィン緩和は見送られたが、今月11月16日にはおそらくマイナスとなる7〜9月期のGDPが発表される。前回もマイナスなので、2期連続のマイナスとなる。そしてその直後の18-19日が日銀政策決定会合だ。2期連続GDPマイナスで何も出ないとは考えられない。この時の追加緩和が出る可能性はかなり高いと思われる。
日本取引所グループの決算会見で、清田瞭CEOは「市場はリスクオフからリスクオンに変わりつつある」と指摘した。取引所が株高のお墨付きを出したようなものだが、投資家はまだ疑心暗鬼のままだ。
筆者の友人のファンドマネジャーたちも弱気が多い。先週も、ヨーロッパ筋の資金を担当する友人が、「平野さん。ここは強気を言うところではないよ。来期どころか今下期にも日本の企業業績は失速するから。自動車産業も今がピークだよ」と忠告してくれた。
彼は心から筆者のことを心配してくれている。しかし、友情と相場は別物。涙が出そうな(年を取ると涙もろくなる)忠告を聞きながら、心はめらめらと燃える。上げ相場は弱気から生まれることを、45年の経験で筆者の体が知っているからだ。
■弱気派は中国経済減速を懸念
弱気の原因はやはり中国で、5中全会が終わり、日中首脳会談も催されたが、その霧は晴れていない。1日(日)に発表された国家統計局10月の中国製造業PMIは49.8と、9月からは横ばいとなったが、市場予想50.0を下回った。財新版製造業PMIは48.3で、前回の47.2から1.1ポイント改善されたが、依然2指数とも、良しあしの分かれ目である50を下回っている。
しかるに、生産調整は遅々として進まずだ。中国の生産過剰の代表例が鉄鋼だが、過剰解消には10年かかると中国側が認めている。共産主義国の宿命だが、産業を健全化するために、急激な改革で労働者の首を切ったら本末転倒になる。ニューノーマル政策を取るのも、雇用を維持しながら、緩やかに構造改革をしていかなければならないからだ。その緩衝剤となるのが流動性供給である。
一部の見方だが、中国の市中銀行の貸出債権を、人民銀行(中央銀行)が担保として認めるかもしれないと言われている。もしこれが認可されたら超ド級のQE(量的緩和)となる。
中国人民銀行、ECB、日銀とそろった高水準な流動性供給源に、FRBが利上げしても名目的でQEは続けるとなったら結果は目に見えている。2万円なぞ単なる通過点だ。
■市場予想上回った米雇用統計
大注目の10月雇用統計で、非農業部門就業者数は前月比27万1000人増と市場予想の18万人増を大きく上回った。また、失業率も2008年4月以来7年半ぶりの水準となる5.0%に低下し、平均時給も前年同月比2.5%増と大きく伸びて、12月利上げ説が急速に高まった。金利先物に基づき算出する利上げ確率は70%だ。
それを受けて先週末のダウは一時94ドル安となったが、その後は景気回復への期待感から下げ渋り、引けはプラスとなった。市場は利上げがあってもそれを吸収できる地合いになっていると指摘されていたが、それを証明した形となった。フランクフルト株も好感し、ドイツDAXは100.29ポイント(0.92%)高の10988.03となり、8月高値に迫っている。
このような結果を予想したのか、先週末の日経平均は郵政3社の上昇一服感がある中でも堅調に推移し、難しいと言われていた200日移動平均(1万9249円35銭)を引けで抜いた。たまっていたカラ売りの買い戻しでここまで来たが、ガス抜きが済んだとは思えない。カラ売り筋は大きなリスクに直面している。買い方ファンドも1万7000円で買えず、逆に、戻りいっぱいと考えた1万9000円では売っていた。持たざるリスクで頭を抱えていることだろう。
今週末はオプションSQを迎える。この急激なステージ変化で荒い動きも想定される。とても楽しみな1週間になりそうだ。今週の日経平均予想レンジは1万9000円〜1万9900円とする。
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