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日銀算出の「生鮮食品とエネルギーを除く」消費者物価指数は9月に1.2%上昇(撮影:尾形文繁)
消費者物価2カ月連続減でも「物価は上昇基調」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151107-00091636-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 11月7日(土)19時56分配信
前々回に続き、消費者物価について取り上げます。総務省がこのほど発表した9月の消費者物価指数は、変動の激しい生鮮食品を除く指数で前年同月比0.1%下落となり、2年4か月ぶりに下落に転じた8月(同0.1%下落)に続いて2カ月連続のマイナスとなりました。
下落の最大の原因は、8月と同じように原油価格値下がりの影響です。ガソリンが同19.5%下落したのをはじめ、電気代やガス代などを含めたエネルギーが同12.1%下落し、いずれも前月より値下がり率が拡大しました。
ただ、下落はエネルギーなど一部の品目に集中しています。下落した品目数は前月(131品目)より少ない124にとどまった一方、上昇した品目は351で前月(339品目)より増えました。
総務省が同時に発表した「食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」では同0.9%の上昇となっています。しかもこの上昇率は7月0.6%、8月0.8%、そして9月の0.9%と、緩やかながら拡大傾向になります。つまり、物価は全体として上昇基調にあると言えるのです。
前々回でも書きましたが、総務省が発表する消費者物価指数には、(1)総合指数(2)生鮮食品を除く総合指数(いわゆるコア指数)(3)食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合指数(コアコア指数)――の3種類があります。(1)は実際の物価全体を表しますが、生鮮食品は天候要因によって変動が大きくなるため、経済活動を反映した物価動向の基調を判断するには(2)を見る必要があります。日銀の「2%目標」も(2)を尺度にしています。
しかし、最近のような原油価格の大幅な値下がりも、いわば一時的な特殊要因なので、物価の基調をより的確に判断するには(3)が適切なのです。ただ、この指数は食料品も除いて算出しているため、現在のように特に原油下落の影響が大きい状況下では、さらに的確に物価の基調を表すにはやや不十分です。
そこで最近は日銀が、総務省のデータをもとに「生鮮食品とエネルギーを除く」という指数を独自に算出するようになりました。その指数を見ると、7月は前年同月比0.9%上昇、8月は同1.1%上昇、9月は1.2%上昇となっており、4種類の指数で上昇率が最大となっています。
この数字から見れば、デフレ脱却に向かって着実に進んでいると言えるわけです。黒田日銀総裁が「物価の上昇基調が続いている」と繰り返し強調しているのもこれが根拠になっています。日銀が10月末に追加緩和を見送った理由も、まさにここにあります。
■ 今回は基準改定で指数押し上げの可能性
一方、総務省は消費者物価指数の基準改定の準備を進めています。総務省は従来から、西暦年の末尾にゼロか05のつく年の翌年に5年ごとに基準を改定しており、今回は現在の「2010年基準」から「2015年基準」に改定します。
その主な内容は次の通りです。(1)指数を100とする基準の年を10年から15年に更新、(2)調査対象となる品目を33品目追加(コンビニ・コーヒー、電動アシスト自転車など)、32品目を廃止(電気ポット、ふで入れなど)するほか、8品目を4品目に統合し新たな品目数は585に、(3)15年平均の1カ月間1世帯当たりの品目別消費支出額などをもとに、品目ごとにウエートをかけて指数を算出、――。
総務省は近く改定内容を正式に決定し、来年8月発表分(7月分の指数)から新基準に移行する予定です。
このような基準改定を行うのは消費構造の変化に対応するためです。追加品目や廃止品目を見てもわかるように、時代とともに多くの家庭が消費する品目や頻度は変化するので、調査対象もそれに応じて順次入れ替えていく必要があるのです。今回の改定案を見ると、妥当なものが並んでいると言えるでしょう。
もっとも、改定時の前後は品目の入れ替えやウエートの変化が、物価指数の変動率に微妙な影響を与えるケースが多い点には注意が必要です。実は、過去の基準改定時には、改定前より改定後の物価指数が切り下がるケースが多かったのです。
例えば、前回の改定時の11年7月。同月から10年を100とする基準に改定され、前年同月比で0.1%の上昇となりましたが、旧基準(05年=100)では同0.7%の上昇でした。つまり基準改定によって0.6ポイントも押し下げられたのです。11年の平均で見ても、旧基準で前年比0.3%の上昇だったのに対し、新基準では0.3%下落で、プラスからマイナスへ大きくブレる結果になりました。
さかのぼって、06年の改定時には前年比の変動率が0.4ポイント、01年には0.2ポイントそれぞれ押し下げられています。これらはデフレが大きく影響していました。基準改定時には消費支出が減少している品目が廃止され、増加している品目が追加されます。また、前年の消費支出額を基に、品目ごとにウエートをつけて指数を算出するので、消費の増加している品目のウエートが高くなり指数全体への寄与度も高まります。
デフレの時期には、値下がりの目立つデジタル家電や携帯電話などへの支出が増え、指数の改定時にはそれらの占めるウエートが高まる傾向があるため、指数を押し下げたとみられます。
これに対して、今回は少し様子が違うようです。エネルギーを除くと全体として物価は緩やかながら上昇基調にあります。このため、基準改定で値上がりしている品目の比重が高まり、指数を押し上げる可能性があります。
入れ替え品目の候補を見ても、支出が増えている品目を追加するので、それらの多くは価格も上昇しているものが多くなっています。逆に廃止対象の品目は支出の減っている品目。つまり価格も値下がりしているものが多いので、全体としては指数の押し上げ要因になりそうです。
■ 油価下落による押し下げ影響は徐々に剥落
基準改定の実施は来年8月で、かなり先の話ですが、今から意識しておくといいでしょう。そのころには原油価格の動きも変化している可能性があることも念頭に置いておいたほうがいいかもしれません。少なくとも、原油価格の下落による物価指数の押し下げという要因が今後は徐々に薄れてくる公算が大きいと思われます。
原油価格は昨年の11月以降、急速に下落したため物価を押し下げる要因になりましたが、今年2月ごろからはほぼ安値圏での推移になっているので、今年末から来年にかけては前年同月比ではほとんど下落しない計算です。
今後さらに原油価格の下落が続く可能性がないわけではありませんが、多少の下落はありえても、現在の水準からさらに大きく下落する確率は低いとみられます。最近の物価低迷の最大原因である原油価格下落が止まるなら、今後は緩やかながらも物価上昇の基調が徐々にはっきりしそうです。日銀が10月に追加緩和を見送ったのも、そうした展開を読んでいるからかもしれません。物価情勢と日銀の動きからますます目が離せません。
※岡田 晃
おかだ・あきら●経済評論家。日本経済新聞に入社。産業部記者、編集委員などを経てテレビ東京経済部長、テレビ東京アメリカ社長など歴任。人気番組「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、コメンテーターも担当。現在は大阪経済大学客員教授。著書に「やさしい『経済ニュース』の読み方」(三笠書房刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
岡田 晃
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